ハッピー・ブライダル・フェア! 〜ついでにモラも捕まえてね〜


     



<オープニング>


 扉を開ければ、純白のフリルとレースの海が広がる。
 そこは広い広い、ウォークインクローゼット。吊されていたりボディに着せ付けられたりしている全てが、ドレスだった。
 それも、結婚式の主人公、花嫁が着るべき――ウエディングドレス。
 ここは、とある結婚式場。チャペルと披露宴会場に、ドレスルームや美容室など必要な施設が全て併設されており、結婚式の準備をこの1カ所で揃えることができるのがウリだ。
 今はブライダルフェアが開催されており、カップルが気軽に式場の雰囲気を見ることができる。料理の試食や、ドレスの試着ができて、人出は上々のようだ。
「これいいなあ。あ、これも、こっちのも!」
「ねえ、試着してくるから、デジカメで写真撮ってね!」
 嬉しそうに、恋人連れの女性たちがドレスを見て回っていた。
 男性陣はちょっとげんなりしつつ、幸せそうな彼女につきあってあげている。そんな光景。
「わ、あのドレスふわふわ。ファーがついてるのかな、変わってる〜」
 1人の女性が、目についたドレスに近づいてゆく。と。
「……? あれ?」
 ドレスの首元にふわふわとついていた筈のファーが、消えてしまった。
「おかしいなあ。……でも、このドレス可愛い! 着ちゃおうっと」
 女性は首を傾げつつ、テンションが上がっているので気にせず、ドレスをハンガーから下ろして試着室に入っていった。
 もきゅっ。
 もきゅもきゅもきゅー。キュピピ!
 ドレスの海の影から、なにやら怪しげな鳴き声が聞こえてくる……。

「皆様、いらっしゃいませ」
 志之宮・吉花(高校生運命予報士・bn0227)が。、教室に能力者たちを招き入れた。
「とある結婚式場にて、ただいまブライダルフェアが開催されております」
 にっこりと笑って、吉花はメニューブックに挟んでいたチラシを取り出し、皆に渡した。
 貸しドレスの試着や、お料理の試食などができるそうで、カップルだけでなく家族や親族などの付き添いも可なので、1組でもカップルが居れば入場に問題はなさそうだ。
 また、試着はウエディングドレスだけでなく、新郎用のフロックコートなどの礼服や、列席する親族の子用の小さなドレスや礼服などもあるるらしい。
「お料理の試食は、ガーデンウエディング用の芝生庭園で、フレンチのランチを頂くことができます。予約はこちらで取らせて頂きましたので、どうぞ、楽しんでいらしてください。庭園からはチャペルが見えます。丁度、挙式の予行演習をするカップルさんが見えるようですよ」
 手回しは万端、ということである。
 ただし、運命予報士の言うことだから、裏がないわけはない。
「ついでに、そのフェア会場に出没している野良モーラットを2匹、捕まえてきて下さいませ」
 ほーら来た。
 まだ特に被害は出ていないが、モーラットは一応妖獣なので、一般人の目撃者が多数出ては世界結界に悪影響だし、見つかってびっくりした拍子にパチパチ火花でも散らされようものなら、怪我人くらいは出てしまう。
 事が起る前に、回収するにこしたことはない。
 モーラットは能力者を見つけると寄ってくるので、すぐに見つかる。ふわふわのドレスがいっぱいあるウォークインクローゼットがお気に入りのようだ。
 追いかけると逃げるので、チャペルなど他の場所まで追いかけっこになるかもしれないが、花やウェルカムベアなどの装飾品に白いものが多いので、なんとかごまかしが効くだろう。
「試着のドレスを選んでいる間に発見できると思いますので、あとはゆっくりとブライダルフェアをお楽しみ下さいませ」
 捕まえたモーラットたちは学園に連れ帰ってプールに放すことになる。いったん捕まえれば大人しくしていてくれるので、フェアを楽しんでいる間は大きめのバッグなどに詰めておくと良いだろう。
「では、行ってらっしゃいませ」
 吉花はメニューブックを閉じ、能力者たちを送り出した。

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参加者
那智・れいあ(空駆ける銀獅子・b04219)
琴月・ほのり(紅涙の詠媛・b12735)
陽桜祇・柚流(華焔公・b21357)
蘭・兇(空裂・b27823)
彼岸花・紅葉(旅鴉・b31310)
白姫・みやび(シャイネンプリンツェッスィン・b42885)
ティス・リュート(藍玉姫・b59062)
沢下・絵毬(星を抱いて眠る月・b59848)
ヴァン・ジェルヴェール(白猫姫を愛している・b59925)
柳生・狼華(蒼ヲ纏イシ白狼・b62835)
風霧・來那(目指す先は今何処に・b71827)
風戸・祭(中学生月のエアライダー・b76177)



<リプレイ>

●やって来ました、ブライダル・フェア
(「ホントにボクと一緒でいいのかな柚くん」)
 那智・れいあ(空駆ける銀獅子・b04219)は緊張のあまり手と足が同時に出ているが、直せない。
「じゃあ、行こうか。れいあちゃん!」
 陽桜祇・柚流(華焔公・b21357)がれいあの手を取った。
 2人にくっついて、他の皆もエントランスを通り抜ける。
「そらさん、行こうか」
 風霧・來那(目指す先は今何処に・b71827)は連れの少女を手招いた。
「モラを捕まえるのも3回目ですね」
「今度も、首尾よく捕まえたいです……」
 ヴァン・ジェルヴェール(白猫姫を愛している・b59925)とティス・リュート(藍玉姫・b59062)は、ふわふわのウェルカムベア等にモラが紛れていないか注意して見ながら、ゆっくりと進む。
「一種のお祭りみたいな感じだね」
 風戸・祭(中学生月のエアライダー・b76177)は場慣れしないのもさることながら、能力者としての初仕事でもあるので緊張気味だ。
(「何時か遥日さんと……、こうして式を挙げられる日がくると良いなぁ……」)
 柳生・狼華(蒼ヲ纏イシ白狼・b62835)は壁に飾られた写真を眺めながら思う。
「しかしあいつらホント何処でもくるなー」
 蘭・兇(空裂・b27823)は連れと一緒に周囲を見回しながら苦笑した。
「へぇ……ここはこんな風になってるんだね」
 來那が物珍しげに、ウォークインクローゼットの中を見回す。
 試着室はちゃんとカーテンで区切られているので、クローゼットの中までは男性も入って大丈夫。
「ウエディングドレスは女の子の永遠のあこがれなのですわ、みやびも早くすてきなお嫁さんになりたいです」
 白姫・みやび(シャイネンプリンツェッスィン・b42885)はアルブレヒトの手を引きながら紫の瞳を輝かせて、上の方に吊られたドレスを見上げた。
「どのドレスも可愛いなぁ〜」
 琴月・ほのり(紅涙の詠媛・b12735)が、ふと、マーメイドラインのドレスに目を止め、次に、ちらと恋人を横目に見る。
(「和真の横に立つならやっぱり大人っぽいドレスがいいのかなぁ」)
 けれど、いかんせん……体形がはっきりでるデザインはいろいろ問題が……。ほのりは考え込んだ末、別のドレスを手に取った。
(「……まずはモラを捕まえなくっちゃ」)
 狼華は思いつつ、やっぱり気になるデザインのドレスがあるとどうしても目がとまる。
「このドレスを着たティスが見てみたいですね、後で着てみてくれますか?」
 ヴァンは愛する少女に似合いそうなドレスを見つけて、にっこりと笑った。
「うぅむ、実に悩ましい。どれもこれも姐さんならすげー似合いそうなんだよなぁ」
 兇は嬉しそうに悩みながら、あれやこれやと見て回っている。
(「これは何と言うか本当に場違いな……」)
 彼岸花・紅葉(旅鴉・b31310)は華やかなフリルとレースの海の中を泳ぎ切れず、どうしてもきょろきょろしてしまう。
 一緒に来てくれたひなたが楽しそうなのが救いだが、やはりどうにも、居心地が悪い。
 ――何だかすごく下の方から視線を感じる。
「(いた! でござる!)」
 紅葉はドレスの蔭に円らな目をした白い毛玉を発見した。
「ほ〜ら、美味しいお菓子だよ〜」
 沢下・絵毬(星を抱いて眠る月・b59848)が、しゃがみ込んで視線を合わせ、持参してきたお菓子をちらつかせる。
 モラは、寄ってくるかと思いきや、さっとドレスの中に隠れてしまった。
 モキューキュピきゅぴー……。
 モキュピー!
 しばし後。
 ドレスの奥から先程のモラが、白いポケットチーフを被ったもう1匹のモラをエスコートして出てきた。まるで、バージンロードを行く花嫁と花婿のように。
「ここに来る人達の真似? この2匹を先導するとしたら、フラワーガールならぬフラワーモラか……想像するとかなりヤバいかも」
 兇はモラモラウエディングを想像してほんわかしている。
 しかし、所詮モーラット。
「おいで♪ おいしい物をあげるわよ♪」
 みやびがお菓子を出して誘い、更に紅葉がクッキーを差し出したら、花嫁モラが挙式ごっこなんか忘れて跳ねて来た。
 ぴゃぴゃっとお菓子を奪い取り、次にティスお手製の焼き菓子の入ったバスケットに飛び込んだのが運の尽き。
「小物に紛れられてたら見つけられなかったかもしれません」
 ティスが、ヴァンと微苦笑を交わしながらバスケットの蓋を閉め、まず1匹目、御用。
 残る、花婿モラのほうは――。
「モフらせろっ!」
 祭が、クレセントファング喰らわせちゃうぞ!というくらいの勢いで飛びついて逃げられた。場所的にも相手的にもアビリティは使用できないが、要は気合いだ。
 花婿モラは林立するドレスの裾を揺らして、フリルの彼方に消えてしまった。
「ちょっとモラちゃんっ、待ちなさーーーーーーいっ!!」
 狼華が追いかけて、追い込んだ先にはちょうど仲間がいる。
「捕まえましたよ」
 來那が、花婿モラを抱っこして笑った。
「ちょっと狭いけど我慢してね」
 こちらは絵毬のバッグの中へ。モラたちはドラジェやクッキーといったお菓子を差し入れてもらって嬉しそうだ。
「幸せいっぱいの空気に惹かれて野良モラちゃんも来てしまったのでしょうかぁ〜?」
 お菓子をかじる毛玉たちを、ほのりは微笑ましく見詰める。
「もう逃げるなよ〜」
 祭はモラたちを思う存分もきゅもきゅもきゅもきゅ。

●女の子の夢
「そういや結婚前にドレス着ると結婚が遅れるとかって話があったなぁ……」
 新郎用の礼服を試着した姿の兇が、試着室の前でぶつぶつと呟いている。
「まぁ大丈夫か」
「う……兇、本当?」
 カーテンの中から瑞鳳の声がする。ドレスを前に尻込みしていたと思ったら、もしかして瑞鳳も気にしていたのだろうか。
「うん、そもそも俺がまだ18歳じゃないし」
「変なこと気にしてごめんね。……だって早く兇のお嫁さんになりたいんだもん」
 そろそろと出てきて、兇にしか聞こえない小声で言った瑞鳳が纏ったドレスは、プリンセスラインのドレス。兇が一番見たいと思って選んだのは正しく、オフホワイトのシルクが彼女を一層引き立てている。
「……あ、あぁ、いや、なんと言いますか……すげー似合ってる」
 しばらくぽかんとした顔で見とれてしまった後、兇はやっとそう言って真っ赤になった。
 ティスは自分の気に入ったものはもちろん、ヴァンにも訊いてみながら、あれやこれやと試着している。一番気に入ったドレスにヴェールを合わせて、ティスはおずおずと試着室から出てきた。 
「……ええと、にあうでしょうか……?」
「やっぱり似合ってますよ、うん、いつもより特にかわいいです」
 褒めてもらって嬉しそうに笑ったティスだったが、ヴァンのフロックコート姿をまじまじと見て、今度は顔を真っ赤にする。
「似合ってますか?」
「……いつもの、100倍は素敵です」
 ティスはヴェールの蔭でますます真っ赤になった。
「あのパフスリーブの可愛いー。肩のライン出すのも綺麗……あ、コレ試着したい!」
 次々と試着するれいあに、柚流はにこにこと付き合っている。
 どれも本当に可愛くて綺麗。柚流はそう言うのだけれど、迷ってしまうのが女の子。
 腿のあたりからフリルとレースがふんわりと広がるマーメーイドラインのドレスに、レースの美しいマリアベールを合わせて、れいあが試着室から出てきた。片方の肩から斜めがけになった花とフリルの位置を気にしながら、「どうかな」と視線で問う。
「れいあちゃん、月のお姫様みたい」
 柚流の素直な褒め言葉に、れいあの頬が赤く染まった。
「……あ、あの白兎ぬいぐるみ可愛い!」
 慌てて近くにあったぬいぐるみを手に取ったのは、もちろん照れ隠しだ。
「どんなデザインが好き?」
 絵毬はヴェティルに訊ねながら、手を引っ張ってあちらこちらと見て回り、次々とドレスを体の前に当てる。しかしどんな意匠でも似合うと言われて、絵毬は頬を膨らませた。
「その答えは却下です」
 迷った末に絵毬が選んだのはビーズやスパンコールや刺繍で飾られた、いかにもお嫁さんといった雰囲気のドレス。更衣室に入る前に、ふと。
「ヴェティル君もドレス絶対に似合うと思うんだけどな」
 などと呟いた絵毬にヴェティルは苦笑している。
 ヴェティルがタキシードに着替え終わってしばらく後、試着室から絵毬がこっそり顔だけ出した。
「……笑っちゃ駄目だよ?」
 念押ししたら、ヴェティルが微笑して、花嫁の手を引いてくれる。長く長く、マリアヴェールが裾を引いた。
「似合う?」
 アレンソンレースを柄置きしたドレスの裾をつまんで、絵毬は少し頬を染める。まじまじ見詰められることもだけれど、背中や肩が大胆に出ているタイプのデザインも、少し恥ずかしいらしい。
「……綺麗だ。いつかきっと迎えに行くから、俺の姫君」
 愛してる、とヴェール越しに囁きかけられて、絵毬はこくりと、小さく頷いたのだった。
「こ、こどもっぽいとか笑わないでください、ね?」
 ほのりは結局スタンダードなプリンセスラインのドレスで試着室から出てきた。タキシード姿で迎えてくれた恋人は相変わらず大人っぽくてかっこよくて。
「とても似合ってるよ。……願わくば、もう少し経ってほのりがドレスを着るときにも僕が隣にいられれば良いんだけどね」
 その上、和真はさらりと将来のことまで口にするので、ほのりはもうドキドキして顔をちゃんと見ることもできない。
「う、うん。もっとこのドレスが似合うような素敵な女性になれるよう頑張りますから。その、一緒にいてくださいねぇ?」
 ほのりは真っ赤になりながら、言葉に詰まりながら、それでも一生懸命、今の気持ちを告げるのだった。
「ねぇねぇアルブレヒト、みやびたちも新婚さんみたいに見えるかしら?」
 花嫁さんの後ろでベールを持つ女の子が着る用の白いドレスに身を包んで、みやびが鏡の前でくるりと回る。
「とっても綺麗だよみやび♪」
 最初は無理矢理連れてこられて困り顔だったアルブレヒトだけれど、可愛いドレス姿を見れば自然と笑顔になった。
 ふわり。試着室のカーテンが開いて、桃色がかったふわふわのドレスを着たひなたが出てくる。
「――しかし、なんというか。その、こういうのを着るのは女の子の夢とよく聞くが……」
 紅葉は一瞬目を見開いて、それから瞬いた。ウエディングドレス姿は、確かに可愛らしいのだけれど、て大人っぽさもある。
「不思議な感じだ」
 紅葉の口から、感嘆の溜息が漏れた。ひなたがちょっと不安そうな顔をしているので、はは、と紅葉は笑った。
「まあ要するに、似合ってる、って事でござるな!」
 それでやっと、ひなたも満開の笑顔になった。
「どう……かな? 変じゃない?」
「うん、メルは似合ってるよ。僕の方はどうだろう……?」
 控えめに訊ねるドレス姿のそらに、フロックコート姿の來那が甘く笑みを返す。
「向こうで記念撮影できるそうですよ」
 紅葉たちに声をかけて、來那はそらの手を引いて試着室を出た。
 試着なので野外は無理だけれど、側にあるラウンジには出られる。壁全面がガラスになっていて、チャペルを背景に写真が撮れるのだ。
「ちょっと恥ずかしいけど記念に……」
 照れ臭そうにしながら、來那はポラロイドをそらに渡した。
「……似合いますか?」
 狼華は純白のドレスにヴェール、サンプル用の造花のブーケを持って、タキシード姿の遥日の隣に立つ。
「この場で結婚式を挙げたくなるね……」
「……私も、今すぐ遥日さんのお嫁さんになりたいぐらいですよ」
 シャッター音の後、照れて赤くなる顔をブーケに隠しながら、狼華は遥日の言葉に答えた。
「(僕がちゃんと自立できて、親御さんにも認めてもらえるくらいになったら……きっと迎えに行くよ)」
 柚流の囁きにれいあが照れて俯いてしまったのはシャッターの直後だったので、ギリギリセーフ。
「あ、この際だから次は柚くんもドレス着てみない? お色直しで衣装逆転な趣向いいかも!」
「れいあちゃん、男装姿もきっと似合うよね」
 再び試着室へと誘われながら、柚流は幸せそのものの表情だ。もちろん、笑顔を誘われるのは周囲の幸せそうな光景にも。
「えいっ!」
 ヴァンが、カメラを前にいきなりお姫様抱っこして、ティスを驚かせている。
「やべー……破壊力抜群すぎる。こいつは別の意味で心臓に悪い……」
 その隣では兇が瑞鳳を眺めて、試着であることを残念がっていた。
 そうこうする内に、そろそろお昼の予約時間。
「次は待ちに待った腹ごしらえだ!」
 試着していた礼服を着替えようと、祭がぴゅーっと試着室へ戻って行った。

●ウエディング・マーチ
 芝生庭園でのランチは、試食とはいえ本番と同じメニューなので、かなり豪華だった。
「キャビア! 伊勢エビ! お肉の上にフォアグラ!」
 祭は高そうなメニューの連続にご満悦だった。
 デザートが出てくる頃、チャペルで結婚式の予行が始まった。
 チャペルの扉が開くと、中からは微かにピアノの音が聞こえてくる。本来予行演習は生演奏ではなく録音テープで行うものだけれど、今日は特別。
(「来場者の皆さんのために……、真心込めて弾きますね……」)
 チャペルでウエディングマーチを弾いているのは、狼華だった。
 花嫁が式場の世話係に説明されながらブーケトスをしたら、予行は完了だ。
 青空高く舞い上がったブーケが、近くに見に行っていたみやびの腕の中に収まる。みやびは嬉しそうにブーケを抱えて、恋人に飛びついた。
「(病める時も健やかなる時もアルブレヒト・ツィーテンを夫とし愛しささえ続けることを誓います♪)」
 背伸びをして、一生懸命に囁けば、返されるのは真摯な微笑み。
「(病める時も健やかなる時も……白姫みやびを妻として愛し続けることを……誓います)」
 芝生庭園から見える風景は、本番ではないとはいえ、本当に幸せに満ちたものだった。
(「いいなー。そのうち姐さんにも絶対にいいやつ着せてやるんだからなー!」)
 兇は心に誓っている。
(「和真のとなりに似合う女の子になれるよう、もっと頑張るから……」)
 ほのりはチャペルの前のカップルを少しだけ羨ましく思いながら、恋人と向かい合ってゆったりと食後のコーヒーを楽しんでいる。
(「将来もこうやって隣に居たいな」)
 來那はテーブルクロスの上のそらの手に、そっと手を重ねた。
「(ずっと傍に居てね柚くん)」
 れいあに小声で告げられて、柚流はもちろん頷いて。
「皆の夢が、叶いますように」
 れいあの手を両手で包み込みながら、祈る。
「何年先でも何十年先でも……良いの。私の王子様は貴方だけだもん」
 絵毬の言葉は、きっと恋人のいる女性に共通する思いだろう。
 それはそれとして、やっぱり結婚式場の雰囲気というものは良い。
「デザートも美味ーい!」
 ブランマンジェをぺろりと平らげて、祭は笑顔満開だ。
 抜けるような青空の下、チャペルの鐘が鳴った――。


マスター:階アトリ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/05/20
得票数:楽しい1  ハートフル14 
冒険結果:成功!
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