<リプレイ>
● 10代は長いようで短く、短いようで長い。 志筑涼子も銀誓館での波乱に満ちた学生時代を終え、10代最後の年を迎えるに至っていた。 一応大学に進学した19歳の彼女が、この記念すべき年の誕生日パーティに希望したのが―― 「合コンですぅ! 早速おっぱじめるとするですぅ!」 そも、合コンとは合同コンパ(コンパニー)の略であり、二つ以上のグループが交友・会合を行う事を言い、現代では男女の出会いを目的として行われるものが殆どである。 今回は、その「合コン」の予行演習がパーティのテーマとなったのだった。
「……で、どう言う風に始めれば良いんでしたっけぇ? 金澤さん知ってますぅ?」 「いえ、合コンは生まれて初めてなので」 結社「牌の音」同僚の陽介に無茶ぶりしてみるも、真面目な高校生である彼は合コン未経験。 「じゃあ鈴木さん!」 「私も行った事がないので……」 今度は一期先輩で大学生の奈津美へ尋ねるが、彼女もどちらかと言えば奥手であり、合コンに参加するタイプでは無い様だ。引く手あまたではありそうだが。 「仕方ない。こうなったら合コンの鬼こと御門さんに聞く事にしましょうかぁ」 「誰が合コンの鬼だ……立ち話もなんだし、とりあえず適当に席に着こうぜ」 言われてみれば、この空き教室は飲食店と言う設定。高次の言葉に従って、男女向かい合わせに着席する。 久しぶりの再会だと言うのに、相変わらずの涼子。高校時代と同じ様に接しようと考えていた高次にとっては、やや安堵と言った所だろうか。 「今は大学生か。いや人間、成長するものね」 「ふふ、キャンパスガールになった私は一味違いますよぅ」 古くからの知り合いである摩那のほめ言葉に、根拠無く自信満々に答える涼子。 「さて、合コンといえば。私にどーんと任せなさい。まずは自己紹介ね」 多少前置きが長くなったが、いよいよ合コンの幕が開いた。
● 自己紹介は、第一印象を決する極めて重要なファクター。 話す趣味や特技の内容は勿論、しゃべり方、仕草、視線etc……それらの要素を活かして異性から好印象を得られるかどうかが、その後の戦いに大きな影響を及ぼす。 「えっと……ジェニファーですぅ♪ 大勢の前で喋るのは、ちょっと恥ずかしいけど……よろしくね♪」 もじもじと身をくねらせながら、恥ずかしそうに自己紹介をするジェニファー。持ち前の容姿に加え、何と言ってもそのダイナマイトバディは、それだけで男子の視線を釘付けにする威力を秘めている。 それに加えて恥らう乙女を演出する辺り、極めて戦略的と言える。 「みんなこんにちは♪ 龍麻です」 一方男性陣の先鋒を務めたのは龍麻。何故かパンダの着ぐるみを纏っており、依頼の時に見せるクールさからは想像も出来ない。 (「何と言うもふもふ感……」) 克乙も思わず魅了されるパンダ龍麻の質感。めぐる達小学生は勿論、可愛いもの好きの女子達には好評の様子。 しかも着ぐるみを脱いだらイケメンでしたと言ういわゆる「変身」も残しており、意外と悪くないかも知れない。 「えっと、じゃあ次は御剣さ」 「銀誓館学園第2期卒業生御剣光。麻雀のできない男に興味ありません。この中で血を賭けた麻雀、首吊り麻雀、海で大亀の背中に乗って麻雀をした事がある人はあたしの所に来なさい! 以上!」 凄まじい勢いでそこまで言い切った光は、悠然と着席。 静まり返る場。 独創的なアピールは、異性に強い印象を抱かせる武器となるが、やりすぎると引かれてしまう諸刃の剣である。 「釣克乙です。趣味はGTツアーやお茶を飲む事、淹れる事です。特技はいつの間にかどこにでも現れる、大事な日をつい忘れる事でしょうか」 「先生、最後のは違うと思いますー」 お約束の外しと随所からの突っ込みで、ムードを和らげる。非常にスタンダードな挨拶で軌道修正をした克乙。 誠実な人となりを表す様なアピールは、肉食系の女子には特にウケがよさそうだ。 「趣味は農作業、特技は苗を均等に植える事、好きな物は大根、苦手なのは南瓜っ。えーっと後は……えっ笑顔が自慢ですっ!」 癒しオーラ満点の小夏は、いかにも彼女らしい自己紹介で参加者に安らぎをもたらす。 涼子を立てるために少し抑えたと言うおめかしも、かえって彼女の魅力を引き出す結果になっているかも知れない。 「趣味は悪戯ですっ……最近はどえすさんとか言われたりしたりしますが、そんなことないですよ? あくまでの悪戯の一環ですっ♪」 そんな小夏に続いて挨拶したのは祐理。年齢以上に落ち着いた口調で語られるのは、やや衝撃的な内容。 しかし、SかMかを明確にする事で、互いに対象を絞り込むことが出来るのはメリットだろう。事実、彼女に苛められたい男子は少なからず存在する筈だ。……って何のこっちゃ。 「武内恵太、趣味はバイクで眼鏡好き。よろしくな」 恵太はこれまでに数回の合コン参加歴があり、持ち前の明るさもあって違和感ない挨拶っぷり。 しかし彼女が居る彼にとっては、合コンで注目を引いてしまうのも痛し痒しと言った所だろうか。 「金澤陽介です。好みの女性は、自分を包みこんでくれる母性的なお姉さんタイプの人かな」 一方こちらは、自己紹介のついでに好みのタイプを暴露する陽介。 好みを明確にする事は相手を限定してしまう危険を伴うが、そのリスクを背負っても彼なら十分に戦えるだろう。 「あー、御門高」「志筑涼子ですぅ! 趣味はお花とお琴を少々、特技は男性に尽くす事ですぅ」 「被ってる上に全部嘘だろそれ」 「嘘も方便。少しの嘘はスパイスみたいなもんですぅ」 「志筑の場合、少しじゃないだろー」 やれやれと着席しつつ高次。 そうこうしながらも、一先ず全員の自己紹介が無事(?)終了した。
● 「相変らず美味しそうっすね」 「後は季節のフルーツも用意してあるから、ホットプレートでクレープも焼こう」 調理担当の法眼は、氷点下まで冷やした鉄板の上でアイスクリームを練り上げる。翔はそれらをトレイに乗せて皆の前へ。 スイーツの他にもスナック菓子から軽食までがずらりと並び、すっかりパーティらしくなってきた。 「ハッ! 見て見て祐理ちゃんっ! 美味しそうな食べ物も沢山ーっ♪」 「では、皆さんに給仕しましょうか」 色気より食い気といった小夏の様子に、ちょっぴり苦笑しつつ言う祐理。二人は翔と共に、皆の前へ食べ物や飲み物を運ぶ。 「ご苦労ですぅ。では、いっただっきまー」 「おっと涼子さん、合コンは出会いの場だから食べてばかりはダメよ。元を獲ろうとガツガツ食べるのは悪印象」 無遠慮にがっつこうとした涼子を制するのは摩那。 「むしろ食べない娘の方が好かれるわよ」 と言いながら、自分は涼子の前に置かれた食べ物を次々に口の中へ。 「あ、あの……私の分が無くなるんですけどぉ」 後に摩耶は語った。「合コンは戦争である」と。 「宜しければ、これも召し上がって下さい」 「これってもしかして、手作り?」 「はい……お話する場でしたら、ちょっと摘める感じのお菓子が良いと思って……」 「いやー、これはお店で売れるレベルだよ」 他方、奈津美は持参した手作りのクッキーやマカロンを提供。 料理やお菓子作りの上手い女性は、いつの時代も高く評価されるものだ。 「わ、私も料理は得意ですよぅ」 「例えば?」 「即席麺とか、レトルトカレーとかぁ……」 これに対抗心を燃やす涼子だったが、結果は惨憺たる物に終わるのだった。 「よし、それじゃ質問コーナーといこうか」 助け船を出したのは澪。問い掛けに対して的確な返答をすれば、これまでのマイナスイメージを払拭する事も出来よう。 「1、よく行く飲食店。2、最近かわいいと思ったこと。3、今日の服装で気に入っていること。この3つに答えてくれ。じゃあまずは莉緒に」 「わ、私? えっと飲食店ね……ファストフードとかファミレス……くらいかしら」 急に振られて浮き足立ちながらも、なんとか答える莉緒。 ここで余り見栄を張って高級感を漂わせてしまうと、高嶺の花・高く付く女性というイメージを与えてしまうので注意が必要だ。 「可愛いと思った事は……ペンギンの雛が親鳥から食べ物を貰ってるのを見たとき、とか」 これも簡単そうで難しい質問。余りに狙いすぎた答えは、かえってブリッ子のレッテルを貼られる事になってしまう。 「服装は……そうね、梅雨だけど夏っぽく明るい配色にしたわ。外は蒸し暑いけど屋内だと冷房が効いてる所も多いから、薄手のカーディガンを合わせて……」 外見だけで人を判断する事は出来ないが、お洒落の仕方からもその人の内面性はある程度窺い知れるもの。下手をすれば地雷を踏むことになる。 「よし、じゃあ次は志筑」 「飲食店は、学食以外は滅多に行かないですぅ。人の奢りならどこでも行きますけどぉ。最近可愛いと思った事は……今朝、鏡を見たときですかねぇ。なんつってー。今日の服装は適当にその辺に転がってた奴を着てきましたぁ」 「……残念すぎる」 悩む様子もなくそう答える涼子を見て、澪はがくりと肩を落とす。 涼子はさておき、その他の男女は概ね良好な雰囲気を維持したまま会話を弾ませ、互いに理解を深めることができたようだ。
● 「「王様だーれだ!」」 王様ゲームは合コンにおいて一般的なゲームだが、以外に歴史は深く、その起源は中世ヨーロッパ以前まで遡ると言う。 「ククク……これが王様ゲームを司る魔物の意思っ……!」 さて、王様を引いたのは妙な悪運を持つ涼子。 「最初だし、軽めにしておきますねぇ。7番と9番が固い抱擁を交わすってことでぇ」 「!」 くじをあけて見れば、7番は龍麻、9番はめぐる。 「本当にやるの?」 「王様の命令は絶対ですぅ!」 「解ったわよ……じゃあ行くわよ龍麻」 「さぁおいで」 両手を広げる龍麻の胸へ飛び込むめぐる。 「うん、凄くもふもふだわ」 「まだ着ぐるみ着てたんですか……もふもふ……」 存分にもふり感を満喫するめぐるを見て、心なしか羨ましそうに呟く克乙。 「田舎の遊園地みたいですぅ」 その後も様々なハプニングを呼ぶ王様ゲームだったが、諸事情により省略させて頂く事にしよう。 「さて、王様ゲームとくれば……もう一つしなきゃいけないゲームがある気がしますぅ」 スティック状のスナック菓子(以下棒菓子)を一本手に、不敵な笑みを浮かべる涼子。 「さぁ御門はん、ひょうぶれすぅ!」 涼子は菓子の端っこを加えつつ、正面の高次を挑発。 「えっ、色々とまずいだろ……それは」 「ふふっ、ならば私の不戦勝ですぅ」 棒菓子ゲームは、男女が顔を真正面から接近させ合うそのドキドキ感を楽しむ物である。唇を離せば負けになるが、離さなければ触れてしまう。そういったチキンレースに、互いが持つ感情も入り混じって、かなりスリリングな光景が展開される事になるわけだが……いずれにしてもこの場では不適切なので結局中断。
合コンと言えば、男女それぞれの陣営における作戦タイム。連携が完璧であれば、勝利はグンと近づく物だ。 「合コンのコツは掴めた?」 「そうですねぇ、まぁ私にかかれば楽勝ですぅ。って、そういえば出雲さんって彼氏さん居ませんでしたっけぇ?」 化粧室内でジェニファーへ答えた涼子は、ふと思い出したように小夏へ。 「ええ、涼子さんと女子大生ごっこして遊んでくるって正直に伝えてありますっ。祐理ちゃんもそうだよね?」 「ええ、節度は程ほどに守らないといけませんね」 「……リア充爆発……リア充……」 「え? 何か言いました?」 「べ、別に何も言ってないですよぅ」 しかし多くの場合、同じ陣営であってもライバルであるケースが殆ど。最後に頼れるのは結局己のみ、と言った所だろうか。
「うーん、他にゲームと言えばぁ……」 「おいおい、俺達にとってゲームとくりゃ決まってるよな!」 戻ってきて見れば、いつのまにか卓について牌を洗っている恵太。 「半荘でも一緒に卓を囲めば相手の事がよく分かるし、麻雀が分からなければ教えて仲良くなれるし、おまけに麻雀も楽しめるしで一石三鳥のいいアイデアだわ」 光ももっともらしい事を言いながら、早々と席へ。 「ほら涼子! アンタも一緒に麻雀するわよ」 「仕方ないですぅ。牌を握ると性格が豹変する設定を出すときが来た様ですねぇ」 「パクリじゃねーか」 「じゃあ眼鏡を取ると過去の牌譜が」 「ロン。親っ跳ねで18000よ」 「げふぁっ!」 かくして麻雀合コンは、その後も大いに盛り上がりを見せるのだった。
● 「凄いですねぇ、鬼一さんが作ったですかぁ」 「うむ、誰かホワイトチョコで祝いのメッセージでも書くか?」 ひとしきり遊んだ後は、法眼が完成させたチョコケーキで涼子を祝う事に。 飴細工で作られた涼子まで乗っており、完全に職人の技だ。 「おぉう、鈴木さんも! とっても美味しそうですぅ。これは家に持って帰って独り占めしますぅ」 「私に出来る事と言ったらこれぐらいですので……」 奈津美もまた、自作のチョコクリームケーキを手渡す。貧乏学生の涼子も、これで暫くは食料に困らず済みそうだ。 「おめでとうな、ドラに恵まれるように」 「おぉ、武内さんもありがとですよぅ」 恵太からは赤5の牌を模したストラップが贈られる。 「皆さん、今日は私の為に集まってくれてありがとですぅ。お陰でいつ合コンに呼ばれても男子のハートを独り占めできそうですぅ!」 「で、呼ばれる予定はあるのか?」 「……」 澪の問いかけに、涼子に電流走る。 「……もし呼ばれなくても、またこういう合コンをやれば良いですぅ! その時は皆さん、また宜しくですよぅ」 今回の演習が実際に役に立つかどうかは疑わしいが、ともかく19歳の誕生日を楽しく過ごす事が出来た様子。 「さ、卓は地獄だ、朝まで盛り上がろうぜぇぇ」 そしてパーティは、この後もいつ果てるとも無く続いてゆくのだった。
|
|
|
参加者:14人
作成日:2010/06/23
得票数:楽しい18
笑える1
泣ける1
|
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
| |