永久に美しく


<オープニング>


●都内某所
 腕のいいメイクアップアーティスト達が働いていたメイクルームがあった。
 彼らに掛かればどんな顔でも、美男美女に大変身!
 そう言った触れ込みで客を集めていた事もあり、成功率は90%以上。
 だが、あまりにもその事をアピールしてしまったせいで、難易度の高い客ばかりが集まってしまい、メイクというより特殊メイク状態。
 そのため、メイクに時間が掛かってしまい、料金もケタ外れに高くなってしまうため、クレームが殺到!
 挙句の果てに磯貝のような顔をした客から、『芸能人の○○さんに似せてくれ』という要望が出たり、モアイ似の奥様から『もっとエレガントに!』が出たりしたせいで、メイクルームはカオス状態。
 『一体、どないせいっちゅーんじゃあ!!』という叫びと共に、メイクルームの閉鎖が決定した。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化したメイクルーム。
 ここで働いていた人達は、芸能人のメイクも担当した事のあるプロばかりって噂。
 それだけ腕が良かったから、他県からもお客が来ていたみたい。
 だから1時間待ち、2時間待ちは当たり前。
 予約しても1ヶ月先まで埋っていたほど。
 ……とは言え、順風満帆ってわけにはいかなかったようなの。
 だんだん人気が出るにつれて、クレームが増えたせいで、店側じゃ対応しきれなくなっちゃったようだから。
 そのせいか、廃墟と化したメイクルームの中には、リビングデッドと化した従業員達がいるわ。
 彼らはメイクをする事を生き甲斐と感じていたらしく、侵入者を見つけると綺麗にしようと躍起になって迫ってくるみたい。
 まぁ、放っておけば綺麗にメイクしてくれるけど、だからと言ってこのまま放っておくわけには行かないわ。
 いつリビングデッド達が牙を剥いてくるのか分からないんだから……。
 そんな緊迫した空気の中でメイクしてもらうのもアレだから、ちゃちゃっと倒しちゃって。
 それと、エレガンスルームが特殊空間と化していて、宇宙人風のメイクを施した男性の地縛霊が留まっているわ。
 彼が何者なのか分からないけど、『おそらく私の実力は宇宙レベル』……って言いたいのかも。
 しかも、特殊空間の中では自分が美男美女になったような錯覚に陥るわ。
 その上、地縛霊が『私を倒せば君達の顔が元に戻るぞ』って脅して衝撃波を飛ばしてくるから、くれぐれも気をつけてね。

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参加者
勅使河原・氷魚(白銀の巫覡・b01098)
リーテ・ハインツ(底無しの胃袋を持つ同人作家・b05215)
亜麻・空(レトロプラシーボ・b17770)
華都・巴(ブランエスクリール・b19541)
九堂・今日介(魔法使い・b24557)
藍月・煌(華護之黒狼・b30873)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
姫神・くくり(掬花・b36996)
秋月・慎斗(ラブイスラフェルエブリデイ・b48239)
金剛院・空花(中学生真雪女・b56447)
シェリエル・ミストレスティ(ハーミットローズ・b58094)
神津木・刻(中学生水練忍者・b70115)



<リプレイ>

●美しくあるために……
「メイクって便利っすよねー。以前、メイク前とメイク後の顔を見せて貰った事あるっすけど、まるで別人でしたね」
 しみじみとした表情を浮かべながら、亜麻・空(レトロプラシーボ・b17770)がゴーストの確認された場所にむかう。
 プロの手に掛かれば、メイク前とメイク後では、まったくの別人……。
 それこそ、同一人物だと言われなければ、写真を並べられても気づかない。
「なんか色々と面倒臭そうだな。俺には何でこんなに必死になるのかさっぱりわからないな。顔なんかよりも、まずはその腐った根性を叩き直す方が先じゃないのか?」
 不思議そうに首を傾げながら、神津木・刻(中学生水練忍者・b70115)がボソリと呟いた。
 メイクをして顔を綺麗に見せるよりも、他に大事な事があるはずである。
 少なくとも、そんな考えで綺麗になったとしても、それは上辺だけで本当の魅力ではない……はずだ。
「化粧って擬似整形とも言えますからね。そりゃあ、ケアは大事でしょうけど、飾り立てるばかりが美の全てではありませんわ」
 何処か遠くを見つめながら、勅使河原・氷魚(白銀の巫覡・b01098)が口を開く。
「確かにメイクの力は侮れないね。特に女の子はビックリくらい変わっちゃう子もいるからね。でも、メイクよりももっと凄いのはパソコンの某ソフトだね。アレを使えば顔どころか、体型も思いのまま! お相撲さんのような体型でも、グラビアアイドルのような体型になれるんだもん。アレはもう完全に詐欺だから……」
 以前ネットで見た画像を思い出し、リーテ・ハインツ(底無しの胃袋を持つ同人作家・b05215)が乾いた笑いを響かせた。
 せっかくなのでフランケンシュタインFWの玲也君2号を玲也君そっくりに特殊メイクしてみたところ、ソックリとは言えないがかなり似ている……ような気がする。
 そんな事を考えながら、玲也君2号を眺めるリーテ。
 その瞳には薄っすらと涙が……。
 一体、何時になったら、本物の玲也君に会えるのだろうか……。
「綺麗でいたい、美しくありたいと言うのは、長年の人類の命題ですね。昔から不老不死とかを求める人もいましたし……。メイクで美しく見せるのはいい考えだとは思うのですが……、ちょっと行き過ぎた感じですね」
 何事も程々が一番だと思いながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)がパンフレットを眺めた。
 パンフレットには利用者達の使用前と使用後の写真が載っているのだが、まるで別人のように錯覚してしまうほどだった。
 そのため、勘違いしてしまう利用者が多くても無理はない。
「……とは言え、美しさは女性の多くの者の悩みとも言える内容じゃな。永遠にある事が素晴らしいかは別問題じゃが……。少しだけ興味があるのは妾が未だに僧として未熟だからであろうか。ふむ、まだ妾も修行が足りておらんな」
 反省した様子で首を振りながら、金剛院・空花(中学生真雪女・b56447)が別の事を考え始める。
 しかし、脳裏に過ぎるのは、何故かメイクの事ばかり。
「お化粧……。くくり、まだちびだから、よく……解らない。けど、大人のおねーさん……が、みんな……一生懸命する……から、お化粧は大切……なの……かな?」
 あれこれと想像を巡らせ、姫神・くくり(掬花・b36996)がハテナマークを浮かべる。
「それにしても、ほんとクレイマーって困るわよね。自分の事ばっかりで他人を省みる事ができない人って見てて悲しくなるわ。まぁ、難易度が高いルックスっていうのもあるかもしれないけど、もう少し心に余裕を持って欲しいわね」
 ゴーストが確認された場所に着き、シェリエル・ミストレスティ(ハーミットローズ・b58094)が溜息を漏らす。
 クレームの常連だったのは、理想と現実があまりにも懸け離れた利用者達ばかり。
 例え、一流の腕で特殊メイクをしたとしても、完全に彼女達を満足させる事は出来なかっただろう。
「それじゃ、ここに留まっているゴースト達は、ストレスが溜まる仕事を続けているうちに自棄になった果てという事か。随分とネタまみれになっちまって……」
 ゴーストと化した者達の事を考えながら、秋月・慎斗(ラブイスラフェルエブリデイ・b48239)がほろりと涙を流す。
「それよりも俺は、いっこ上のアス姉ぇに受けた『お化粧ごっこ』を思い出してしまう。俺は、嫌で嫌でしょうが無かった」
 昔の事を思い出しながら、九堂・今日介(魔法使い・b24557)が青ざめた表情を浮かべる。
 今となっては、素敵な思い出に……なってない。
 それどころか、トラウマものだ。
「まぁ、俺は既に美……、げふんごふん! 何でもないです。まぁ、男でもメイクをする人はしているみたいだからなー。……少しは興味あるぜ。んじゃま、とりあえず退治しに特殊空間にお邪魔させてもらいますかねっと」
 すぐさまイグニッションし、華都・巴(ブランエスクリール・b19541)がメイクルームに入っていく。
 メイクルームの中にはリビングデッド達がおり、巴達に気づいて瞳をキュピーンと輝かせた。
「なんちゅーか……、めっちゃ痛々しいから早う倒してまいたいなぁ……」
 大粒の汗を浮かべながら、藍月・煌(華護之黒狼・b30873)がリビングデッド達に視線を送る。
 それと同時にリビングデッド達がメイク道具を構え、一斉に襲い掛かってくるのであった。

●どんな人でも美しい
「な、なんじゃ!? こ、こら、いきなり何を!?」
 リビングデッド達に不意をつかれ、空花がハッとした表情を浮かべて尻餅をつく。
 その間にリビングデッド達がテキパキとメイクを終わらせ、満足した様子でニコッと笑う。
 そこにいたのは、絶世の美女。
 仲間達もあまりの変貌に言葉を失い、空花自身も何が起こったのかわからず、キョトンとした表情を浮かべている。
「……って、綺麗なひとに、視線を奪われている場合じゃないぞ、俺!」
 激しく首を横に振り、今日介がスピードスケッチを放つ。
 しかし、それよりも早くリビングデッド達がメイクを終わらせ、今日介が無駄にキラキラと輝いた。
「ま、眩しいっ!」
 あまりの眩しさに視線を逸らし、刻がスラッシュロンドを外す。
 その間にリビングデッドが刻を囲み、手馴れた手つきでメイクを施した。
「あっという間に、みんなが綺麗に……! 執念は求めますが、後は向こうの世界でやってくださいね」
 ある程度、リビングデッド達の腕を認めつつ、洋角が黒燐奏甲を発動させる。
 だが、リビングデッド達はみんなを美しくするため、素早い身のこなしで連携を取り、洋角をメイクすべく一気に迫ってきた。
「むむ! 浮かんだよ! 今回のパラペの……えっ、何? メイクしてくれるの? 気持ちは嬉しいけど、そんな時間が無いから、悪いけどちゃちゃっと倒しちゃうよ! ……あれ? さっきまで浮かんでいたパラペのネタなんだっけ……? 話しかけてくるから忘れちゃったじゃないかー!」
 今にも泣きそうな表情を浮かべ、リーテがリビングデッド達に文句を言う。
 だが、リビングデッド達はリーテを無視して、完璧なメイクを施して満足げな表情を浮かべている。
「この程度のメイクでいい気になるなよ。姉のメイクはもっとスゴかった!!!」
 まったく動揺する事なくメイクを拭い、今日介がなるべく多くのリビングデッド達を巻き込むようにして、プロトヴァイパーを炸裂させた。
 それに合わせて、空花がメイクの影響で可憐な雰囲気を漂わせ、氷雪地獄でリビングデッド達を恐怖のどん底に突き落とす。
「……ん、ちょっとだけ……動く……しない……でね」
 可愛らしくメイクを施され、くくりが茨の領域を発動させた。
 次の瞬間、リビングデッド達の身体に茨が絡まり、次々とメイク道具が床に落ちていく。
「……たくっ! うざいから近寄るな!」
 イライラとした表情を浮かべ、刻が水刃手裏剣を放つ。
 それと同時に、くくりが森王の槍を撃ち込み、リビングデッド達を退けた。
「マ、マズイ……、完全にネタを忘れちゃった。仕方ない。あたしはリビングデッドの似顔絵でも描くか。もちろん凄くブサイクにね!」
 満面の笑みを浮かべながら、リーテがパラノイアペーパーを放つ。
 それに合わせて玲也君2号がファイナルキャノンを撃ち込み、リビングデッドを吹っ飛ばす。
「申し訳ありませんが、自分は現状が気に入っているので、メイクは必要ありませんよ」
 リビングデッド達を射程範囲内に捉え、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、黒燐蟲が弾け飛んでリビングデッド達に纏わりつき、一瞬にして喰らい尽くした。
「……くくり、まだ……お化粧の綺麗……よく……解らない。お化粧する……と……しない……は、どっちが正解……なのかな」
 犠牲者達の冥福を祈りながら、くくりが不思議そうに首を傾げる。
「その時の状況次第かな。でも、これだけの腕を持った人達なのに、もったいないよね。料金をあげて、人数制限をした方が、逆に文句が出て来なくて良かったと思うけど……。料金あげても、受けたいひとは、そのサービスに対する対価だと思って払うし、人数制限も、そのサービスの格が上がるっていう点で受け入れられそうな気もするし……」
 自分の顔と、自分の持ったコミックマスター用のペンを見つめ、今日介が吹き雑な気持ちになって溜息を漏らす。
 何が正しいとは言い切れないが、彼らはプロとして仕事を全うしたかっただけかも知れない。
「そろそろ学園でも戦争の匂いが漂ってきた様じゃ。此処での経験も生かし少しでも多くの力と成れる様に今一度身を引き締めて頑張ろうぞ」
 仲間達に声をかけながら、空花が気合を入れる。
 例え、この戦いが終わったとしても、それですべてが終わったわけではない。
 この世からゴーストが消滅しない限り、また新たな戦いが待っているのだから……。

●私の腕では宇宙一ぃぃぃぃ!!!!
「これが、宇宙レベルの実力……」
 髪をフサァーッとかきあげ、空がギンギンパワーZを口に含む。
 特殊空間の中に入った途端、空達の外見は美男美女に変化しており、みんな自分の姿に惚れ惚れとしている。
「フッ……、この陰のある俺の美しさに勝てると思うんか!」
 あまりの美しさに豹変し、煌がギンギンカイザーを飲み干した。
 自分が美しい姿など、想像する事が出来なかったが、確かにこれは美しい。
「うぅむ、このままだとナルシーちゃんになりそうですわねェ……。過ぎる美意識は己を滅ぼすものです。水仙と化した彼の美少年のようにね」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、氷魚がケルベロスオメガのソウェルに合図を送る。
 それと同時に宇宙人風のメイクをした地縛霊が現われ、『気に入ってくれたかい? なぁに、ほんの挨拶代わりだ』と爽やかな笑みを浮かべた。
「んじゃ、こっちもちょいと黒燐蟲でメイクアップってやつだ」
 含みのある笑みを浮かべ、巴が黒燐奏甲を発動させる。
 だが、地縛霊は自信に満ちた表情を浮かべ、『いいのかな。そんな事をして……。この特殊空間が崩壊すれば、君達は元に戻ってしまうのだよ』と言い放つ。
「なんですって、この美しい顔が消えるなんてー……、 地縛霊くんよ。これだけは言っておく。君の実力は宇宙レベル。そのセンスの斜め上っぷりが宇宙レベルだ。しかし、それ以上に宇宙人メイクの妙な脅しに屈する方がよっぽど嫌だっての!!」
 ノリツッコミをしながら、慎斗が旋剣の構えを発動させる。
 それでも、地縛霊は真っ黒な両目をギラつかせ、『やれるものなら、やってみろ』と慎斗達を挑発した。
「フッ……、お前を倒したところで俺の美しさが変わるとは思えへんけど、俺は生まれた時からこの顔やて、お前みたいな妙な化粧せんでも充分素で勝負できるぷりちーなお顔や」
 自分の美しさに酔いしれながら、煌がスピードスケッチを放つ。
 それに合わせて氷魚がダークハンドを放ち、ジリジリと地縛霊を追い詰めていく。
「……ったく! 本当お前らの特殊空間って面白いよな! んじゃ、行くぜ!」
 一気に間合いを詰めながら、巴がロケットスマッシュを叩き込む。
 それと同時に慎斗が黒影剣を炸裂させ、地縛霊のコスチュームを切り裂いた。
「滅びなさい!」
 地縛霊の死角に回り込み、シェリエルが光の槍を撃ち込んだ。
 そのため、地縛霊が拳をぶるりと震わせ、『いいんだな。元通りになっても……』と叫んで衝撃波を飛ばしてきた。
「まぁ……、確かに……、今の俺はごっつ格好いい気がするし、出来る事なら今すぐ家に帰って鏡を確認したいが……、いかん。誘惑に負けそうだ!」
 悔しそうな表情を浮かべ、巴がその場に崩れ落ちる。
 次の瞬間、氷魚が地縛霊に黒影剣を放ち、『これは単なる夢……。すべては幻ですわ』と呟いた。
「この顔を手放すのは口惜しいっすけど、それ以上にゴーストはほっとけないんっすよね」
 少しずつ間合いを取りながら、空が地縛霊に天妖九尾穿を炸裂させる。
「別に、私が可愛いのはこんな空間のおかげじゃないわ」
 次々と衝撃波を避けながら、シェリエルが地縛霊との距離を縮めていく。
 その答えに地縛霊は納得がいかず、『せっかく美しくしてやったのに!』と悔しんだ。
「あばよ、宇宙人。来世では普通の客に恵まれるといいな」
 地縛霊の懐に潜り込み、慎斗が黒影剣を炸裂させる。
 その一撃を喰らって地縛霊の身体が両断され、断末魔と共に特殊空間が崩壊した。
「……何か悪い夢を見とったような気ぃするわ……。自分が言うてた台詞とか何となく覚えとるけど、無かった事にしとくなぁ。地縛霊の見せた幻やんね。きっとそうやと思う」
 激しくウンウンと頷きながら、煌が自分自身を納得させる。
 あれは特殊空間の影響……。
 そうでなければ、あんな台詞など言うわけがないのだから……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/06/19
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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