強欲の壷


<オープニング>


●都内某所
 多くの金持ちが魅入られた壷がある。
 その壷には奇妙な文様が描かれており、それが埋蔵金の在り処を示していたらしい。
 金持ち達はその謎を解き明かすため、私財を投げ打って解読に励んだが、誰ひとりとして埋蔵金の在り処を知る事が出来なかった。
 それもそのはず……。
 壷の作者が面白半分で作った噂を、金持ちが信じただけなのだから……。
 だが、金持ち達はそれすら信じず、必ず埋蔵金があると思い込んでいた。
 それだけ、この壷に記された暗号が難解で、いかにもそれっぽかったという事だが、あるはずのないものを血眼になって探しても見つかるわけがない。
 それに気づいた金持ちは自分が損した分を取り戻すため、埋蔵金の伝説に尾ひれをつけ、他の金持ちに売りつけていたようだ。
 そう言った事を繰り返すうちに埋蔵金の伝説は人づてに広まり、壷の値段もグングンと上がっていったらしい。
 他の金持ちには謎を解く事は出来なかったが、自分にはそれを解明する事が出来る、という思い込みと共に……。
 それから、しばらくして……。
 壷を最後に所有していた金持ちの屋敷で、関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、色々といわれのある壷を所有していた金持ちの屋敷……。
 この壷は埋蔵金の在り処を模様に示しているって話だけど、ちょっとマユツバっぽいんだよね。
 でも、この壷を求めていた人達は、埋蔵金の伝説が真実だって思い込んでいたみたい。
 リビングデッドと化したのも、そういった人達の一部。
 彼らはこの屋敷の忍び込んで壷を盗み出そうとしていたんだけど、何かトラップに引っかかったらしく、命を落としてしまったようなの。
 それでも、リビングデッド達は壷を手に入れるつもりでいるらしく、自分達以外の相手を殺る気満々……。
 巨大なハンマーや、バールのようなものを振り回して襲い掛かってくるみたい。
 それと、壷が保管されていた場所が特殊空間と化していて、いかにも神経質そうなオジさんが地縛霊と化して留まっているわ。
 地縛霊が何者なのか分からないけど、壷を守るためなら、自分がいくら傷ついても構わないらしく、部屋の中にある燭台や、護身用のナイフ、スタンガンなどを使って攻撃を仕掛けてくるようなの。
 ただし、壷を狙われると他の事を考える事が出来なくなっちゃうから、ある意味チャンスかも。
 だからと言って、壷を破壊しちゃったら、地縛霊が烈火の如く怒り狂って、まったく手がつけられなくなるから気をつけてね。

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参加者
遠野・由香里(紫紺の癒し手・b15424)
皇・光(デビルズペイン・b16218)
黒星・緋焔(シャイくまくまっ・b20967)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
出雲崎・夏野(ステキ魔弾術士・b32906)
アル・アジス(魔を断つ剣・b35583)
レイリア・ヴァナディース(戦場のヴァルキュリア・b37129)
司狼・朱鷺親(灼惧仁・b37959)
アルビナ・フォルトナウ(小学生ヘリオン・b38706)
瀬良・柚希(熾天の旋律・b49411)
冬月・火憐(天妖月狐・b53299)
黒菱・涅雅(アンリミテッドアンビション・b62200)



<リプレイ>

●血塗られた壷
「秘宝のありかを示した壷か。こりゃあ、ときめきだぜ☆ ヘルメットを被って、つるはしとスコップ片手にトレジャーハンティング! たぶんじっちゃんの名にかけて!」
 つるはしとスコップを担ぎながら、出雲崎・夏野(ステキ魔弾術士・b32906)が妄想を膨らませる。
 脳裏に浮かぶのは、胸の大きな美女と恋に落ちたり、滝つぼに落ちたり、熊に襲われたりする自分の姿。
 スリルとサスペンスと官能たっぷりの妄想全開。
 気分はまさにトレジャーハンター!
「埋蔵金探しだなんて浪漫溢れる話ですねっ。ボクもすごく興味があるのですがっ」
 興味津々な様子で、黒星・緋焔(シャイくまくまっ・b20967)が関係のありそうな資料に目を通す。
 最後に壷を所有していた金持ちは、は最後まで壷の謎を解き明かそうと躍起になっていたようだが、文様から導き出された場所に行っても、まったく手掛かりを掴む事が出来なかったため、とうとう私財を使い果たして寂しい最後を迎えたらしい。
「この手のお話は男の子が好きそうな話ですね〜♪悪戯心で作った壷がここまで多くの人を巻き込むなんて人間の情熱はすごいですもの〜♪ 私も一度は見てみたいです〜♪」
 のほほんとした表情を浮かべ、瀬良・柚希(熾天の旋律・b49411)がニコリと笑う。
「埋蔵金の在り処を示すとされる……、全くの嘘っぱちの壷……。それが噂を呼び、金の亡者を惹きつける結果になる……ですか。普通に考えると疑ってしまうと思うのですが……」
 不思議そうに首を傾げながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が疑問を口にする。
 もちろん、金持ちの中には途中で気づいた者もいたようだが、それを誰かに言ってしまえば、壷を高く売る事が出来ない。
 そのため、何も知らないフリをして、埋蔵金伝説に尾ひれをつけ、他の金持ちに売っていたようである。
「でも、埋蔵金って一時期流行りましたよね。本当にあったら凄いと思いますが、現実はそう甘くないという事でしょうか……」
 当時の事を思い出しながら、遠野・由香里(紫紺の癒し手・b15424)がボソリと呟く。
 金持ちが生きていた頃は埋蔵金ブームが来ていた時で、テレビでも特集が組まれているほどだった。
 おそらく、壷を所有していた金持ちも、そんな番組に影響を受け、埋蔵金があると思い込んでしまったのだろう。
「確かに『実は嘘です☆』とかないよな。埋蔵金を探すために掛けた費用だって馬鹿にならないんだから……。それこそ、涙目どころじゃないだろうし……。俺の武器が弾けないのに、スラッシュギターくらい切ないよな」
 何処か遠くを見つめながら、夏野が深い溜息を漏らす。
「そんな物に頼るから人生を失敗するのだ。金も地位も名誉も自分の力で手にいれるべきじゃ! だいたい、それが本物かどうかも見抜けぬような真否眼しかなくて、宝を得ようなど片腹痛いわ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、アル・アジス(魔を断つ剣・b35583)が金持ち達を激しく非難する。
「まったくもう、人の欲というのは尽きる事がないですね。もう充分な財を持っているというのに、こんな根も葉もないような話を信じてまで埋蔵金を探すっていうんだから……」
 呆れた様子で溜息をつきながら、冬月・火憐(天妖月狐・b53299)が答えを返す。
 壷に刻まれた暗号には、日本古来の文字や、俳句の一説などが取り入れられており、それが文様を形作っていたので、よほどの知識がなければ解読すら出来なかった。
 ただし、例え解読したとしても、それは意味の無い言葉の羅列。
 そこから答えを導き出すのは、購入した金持ち本人。
 導き出された答えは、解釈によって何通りにもなるため、よほどの財力がなければ、すべてを調べる事さえ出来ない。
 そのため、有り余る金の使い道に困っていた金持ちが興味を持ち、人生を懸けて謎を解き明かそうとしたようである。
「自分の両手に収まるもので満足していればよいものを……」
 何処か寂しそうな表情を浮かべ、司狼・朱鷺親(灼惧仁・b37959)が亡くなった金持ちの事を考えた。
 最初はほんの道楽だったかも知れないが、壷に描かれた奇妙な文様や、いかにもそれっぽい桐の箱、何か関係のありそうな巻物を読むうちに、だんだんのめり込んでいったのだろう。
「まさに兵どもが夢のあとだな……。どんなに栄華を誇っても、そはひとときの夢の如し……か」
 すっかり変わり果ててしまった屋敷を眺め、レイリア・ヴァナディース(戦場のヴァルキュリア・b37129)がゆっくりと歩き出す。
「随分と辛気臭い場所だな。埋蔵金探しで金が尽きたせいか」
 廃墟と化した屋敷に足を踏み入れ、皇・光(デビルズペイン・b16218)がリビングデッド達を睨む。
 リビングデッド達は巨大なハンマーや、バールのようなものを持っており、両目を血走らせて光達を睨み返していた。
「どうやら、交渉する必要すらなさそうね」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、アルビナ・フォルトナウ(小学生ヘリオン・b38706)が口を開く。
「……たくっ! くだえねぇ欲の為に命を落とすとはな。同情はしないが、せめて静かに眠らせてやるぜ」
 すぐさまイグニッションし、黒菱・涅雅(アンリミテッドアンビション・b62200)がリビングデッド達を迎え撃つ。
 それと同時に、リビングデッド達が巨大なハンマーや、バールのようなものを振り回し、次々と襲いかかってきた。

●誰にも宝は渡さねぇ!
「……まさしく命がけのトラップと言った所ですね」
 祖霊降臨を発動させながら、由香里がリビングデッド達の攻撃を避けていく。
 リビングデッド達はトラップに引っかかって亡くなったらしく、身体にはトラバサミや無数の槍などが刺さっていた。
「強欲の果てに人を捨てた哀れな亡者か。同じ叶わぬ夢でも風車に立ち向かっていった老騎士の方がまだ浪漫がある。……悪いが宝探しごっこは終了だ」
 旋剣の構えを発動させながら、朱鷺親がリビングデッド達に言い放つ。
 そのため、リビングデッド達が両目をギョロッとさせ、『お前達も壷を狙ってきたんだな』と叫ぶ。
「お前達のような奴らはビー玉で十分じゃ! 貴様らに、魔術の神秘を見せてやろう!」
 魔弾の射手を発動させながら、アルがリビングデッド達にクスリと笑う。
 次の瞬間、リビングデッド達がフンと鼻を鳴らし、『やれるモンなら、やってみろ! お前達を倒す事など、赤子の手を捻る事と同じ事!』と言って再び攻撃を仕掛けてきた。
「かねのもうじゃたちはかかんにこうげきするも、かえりうちにあうのでした……おわり」
 リビングデッド達を射程範囲内に捉え、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 そのため、リビングデッド達が悲鳴をあげ、『俺達が赤子だったー!』と叫んで黒燐蟲の餌食になった。
「ロマンも度を越えればただ愚かなだけです。その尽きない強欲、仮初の生と共に刈り取ってあげます。そして、これは罪を照らし出す七星の輝き、です」
 すぐさま幻楼七星光を発動させ、火憐がリビングデッド達を石化する。
 それでも、リビングデッド達は諦める事なく、唸り声を響かせて襲いかかってきた。
「そのままじっとしていろ。すぐに終わらせてやる!」
 リビングデッドが振り下ろしたバールを避け、涅雅がフレイムバインディングを仕掛ける。
 そのため、リビングデッド達は身動きが取れなくなり、悔しそうにギチギチと歯軋りをした。
「どうしたゴーストども? お前達の求める宝の壺はここにあるぞ!」
 いかにもそれっぽい壷を高々と掲げ、アルがリビングデッド達めがけて放り投げる。
 次の瞬間、リビングデッド達の目の色が変わり、壷を奪い合うようにして次々と飛びかかっていく。
「みんな、必死ですね。あの壷、偽物なのに……」
 複雑な気持ちになりながら、由香里がリビングデッド達に光の槍を放つ。
「灼熱の一撃を見舞ってやる。てめぇらの強欲ごと焼き尽くす!」
 一気に間合いを詰めながら、涅雅がリビングデッドにフェニックスブロウを叩き込む。
 その一撃を喰らってリビングデッドが魔炎に包まれ、『燃える! 俺の情熱のように!』と叫んで消し炭と化す。
 だが、他のリビングデッド達はライバルが減ったとばかりにニヤリと笑い、アルの投げた壷を命懸けで手に入れようとした。
「その濁った心も体も全て、この一撃で吹き飛ばします……!」
 少しずつ間合いを取りながら、火憐が天妖九尾穿を炸裂させる。
 それでも、リビングデッド達は後に引くつもりが無いらしく、『お宝は俺達のモンだ!』と叫んで襲いかかってきた。
「……愚かな」
 クールな表情を浮かべながら、朱鷺親が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、リビングデッド達の断末魔が響き、アルの投げた壷だけがその場に残る。
「……無残! 金の亡者は……あ、この話はもういいですか? 金に目が眩んだら御仕舞、という事ですね」
 リビングデッドがいた場所を眺め、洋角がゆっくりと壷を拾い上げた。
 彼らにとっては、これが宝に見えたのだろう。
 壷が偽物であるかも判断する事が出来ぬまま……。
「ふっ、偽物かどうかも見抜けぬとは哀れなやつらめ……。所詮は頭が腐った死人か……」
 フンと鼻を鳴らしながら、アルが屋敷の奥に視線を送る。
 その視線の先には金持ちが執着した壷の保管されている部屋があった。

●この壷は誰にも渡さん!
「お前がここの親玉か。随分と人相の悪い顔をしていやがるな」
 特殊空間に引きずり込まれ、光が地縛霊をジロリと睨む。
 まわりには無数の燭台が並んでおり、いかにも神経質そうな年配の地縛霊が座禅を組んで留まっていた。
「ある意味、壷の守り神ってわけね」
 リフレクトコアを展開しながら、アルビナが地縛霊の隙を窺って走り出す。
 次の瞬間、地縛霊がムクッと立ち上がり、壷を守るようにして、護身用のナイフを構える。
「おっさん、ソレ何かインチキらしいぞっ!!」
 魔弾の射手を発動させ、夏野が壷を指差した。
 だが、地縛霊はまったく信じておらず、『そんな嘘にワシが騙されると思ったか』と鼻で笑う。
「偽物を見分ける眼をもたず、ただいたずらに金のみを追い求めるから、このような事になるのだ。自らの財産を失い、人を信じる気持も失い、お前にはいったい何が残った? ……その壺か? だが、その壺はお前になにもしてくれぬぞ。お前を助ける事もなく、その壺を求めるものは惹きつけ続ける。いい加減に眼を覚ませ。その壺を手放すのだ。その時こそ、お前は、お前を縛るくさびから解放されよう」
 地縛霊に語りかけながら、レイリアがライカンスロープを使う。
 それと同時に地縛霊が隠し持っていたスタンガンを取り出し、力任せに振り下ろす。
「いい年してぴちぴちの大学一年生にスタンガンとか、いくないっ!」
 すぐさま弾けないスラッシュギターでガードし、夏野が不機嫌な表情を浮かべて地縛霊に雷の魔弾を放つ。
 それに合わせて光が暴走黒燐弾を放ち、地縛霊が反撃する機会すら奪う。
「欲深い輩には浄銭剣で浄化してやるのですっ」
 柚希と連携を取りながら、緋焔が石兵気脈砕きを放つ。
「ええ、欲深き者に光槍の裁きを〜♪」
 それに合わせて柚希が雪だるまアーマーを発動させ、地縛霊の死角に回り込む。
 そのため、地縛霊が表情をくわっとさせ、『この壷は誰にも渡さん!』と叫ぶ。
「ならば、その元凶の壺を、壊してくれる!」
 いかにも壷を狙っているように見せつけながら、レイリアが地縛霊に次々と攻撃を仕掛けていった。
 そのため、地縛霊は自分の身体が傷つく事も恐れず、自らの身を挺して壷を守り抜く。
 ……その姿はまさにサムライ。
 地縛霊の両目がまるで鬼神の如く真っ赤に燃えている。
「ただの壷なのに身を挺して守るなんて、ちょっと哀れですねっ」
 同情した様子で視線を送り、緋焔が八卦浄銭剣を振り下ろす。
 おそらく地縛霊も限界なのだろう。
 荒く息を吐きながら、壷を守り抜くと言う一心で、辛うじて立っていた。
「一体、どこを見ていたの?」
 一瞬の隙をついて地縛霊の背後に回り込み、アルビナが見せつけるようにして両手で壷を抱える。
 その途端、地縛霊の顔色が見る見るうちに変わり、『やめろ、それだけは!』と言って酷く動揺した。
 しかも、ここで地縛霊が動けば確実に壷が割られてしまうため、なるべくアルビナを刺激しないように細心の注意を払っている。
「そうやって、身を挺して壷を守るなんて、何だか心が痛みますね〜♪ でも、手加減はしませんよ〜♪」
 緋焔と連携を取って一気に距離を縮め、柚希が地縛霊めがけて光の槍を撃ち込んだ。
 その一撃を喰らって地縛霊が崩れ落ち、『わしの負けだ』と呟き、特殊空間もろとも消滅した。
「……」
 特殊空間が崩壊した事を確認し、アルビナが持参した花束を壷に生ける。
 そして、その花を際立たせるようにして、窓からは美しい月明かりが降り注いでいた。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/06/28
得票数:笑える3  カッコいい9  知的1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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