ペット達に安らぎを


<オープニング>


●都内某所
 良心的な値段で火葬をしてくれるペット専用の葬儀会社があった。
 値段は他社の半額以下。
 どんなに時間が遅くても、すぐに駆けつけ、深夜価格も良心価格。
 だが、それには裏があった。
 飼い主の手によって葬儀会社に手渡されたペットの行く先は、火葬場ではなく葬儀会社の裏庭。
 その理由は火葬に掛かる費用を掛けたくなかったため。
 しばらくの間は誰にも気づかれる事なく、仕事を続けていく事が出来たようだが、裏山にペット達の死体が増えていくにつれ、その事実を隠しきれなくなってしまったようである。
 その途端、葬儀会社に講義が殺到っ!
 この件に関して、葬儀会社は必死に言い訳をしたが、いくつも証拠を突きつけられて、廃業してしまったようである。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化した葬儀会社。
 廃墟と化した葬儀会社には、リビングデッドと化したペット達がウロついていて、人間達に対して激しく憎悪を抱いているわ。
 まぁ……、仕方がないでしょうね。
 きちんと埋葬される事なく、裏山に捨てられたんだから……。
 だから何を言っても無駄よ。
 何を言っても、その言葉がペット達に届く事はないからね。
 それとペット達の死体が積み上げられていた場所が特殊空間と化していて、飼い主と思しき女性の地縛霊が留まっているわ。
 しかも、彼女の悲鳴は、衝撃波レベルの破壊力。
 きっと、彼女は自分が可愛がっていたペットを捨てられて、酷く悲しんでいたんでしょうね。
 そう言った意味では彼女も被害者かも知れないけど、ゴーストと化してしまった以上、放っておく事が出来ないわ。
 ここは心を鬼にしてゴーストを退治して!

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参加者
真咲・久遠(螺旋の月・b01439)
武内・恵太(フリッカーハート・b02430)
周防・すみれ(妄想乙女・b16633)
亜麻・空(レトロスペクティブ・b17770)
藤堂・修也(宵闇のディアボロス・b18705)
武田・克己(梟雄・b22518)
綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
剣杜・メリー(真いやらしいは正義・b34934)
志倉・翼(ただの観察者・b42787)
鬼灯・遙(天道のディシプリン・b46409)
リーリィ・デロンギ(剣帝の娘・b52531)



<リプレイ>

●多くの犠牲
「……ペットはいいわね。可愛いし、癒されるから……。他にも色々と口には出せないような効能がいっぱいあるわ。そんなペット達をちゃんと送ってあげたいっていう飼い主の気持ちを踏みにじるのはよくないわね」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、剣杜・メリー(真いやらしいは正義・b34934)がゴーストの確認された場所にむかう。
 ゴーストが確認された周辺はむせ返るほど獣臭く、息をするだけでも頭がクラクラした。
「ペットの死体を裏山に捨てる。か。全く、人の風上にも置けない事をする奴がいたもんだなぁ。俺が飼い主だったとしても、こんな真似されれば頭に来る」
 険しい表情を浮かべながら、武田・克己(梟雄・b22518)が拳をギュッと握り締める。
 ペットの火葬を行っていた葬儀業者は、飼い主達に対して表向きペットの事を第一に考えているような素振りを見せていたが、実際には酷い扱いでペットをゴミ同然に扱っていた。
「うちも高校まで実家で犬飼っててさー。16年一緒に暮らした柴なんだが、病気と老衰で死んじゃってよ。看取ってやれたのは良かったが、すげー辛かった。ブラシかけてタオルと花と一緒にダン箱入れて、保健所の人に引き取り頼んだな。ぶっちゃけ葬式出すとかで本人(?)が喜ぶとおもえねー。ああいうの飼い主の自己満足だろ。だから、正直大金かけてペット葬儀やる飼い主の気持ちなんぞ、全くわからねーが詐欺はいけねえよなあ、詐欺はよ」
 しみじみとした表情を浮かべながら、武内・恵太(フリッカーハート・b02430)が口を開く。
 それでも、飼い主達はペットを送り出したかったのだろう。
 例え、それが自己満足だったとしても、ペットの魂が救われると信じて……。
「しかし、葬儀屋も何でいずれバレるような事をしてたのかね。こんな事で隠しきれないのは、誰がどう見ても分かると思うんだがな」
 不思議そうに首を傾げながら、真咲・久遠(螺旋の月・b01439)がパンフレットを眺める。
 パンフレットには具体的な金額が書かれており、他の業者と比べて格段に安かった。
 そのため、毎日のように火葬の依頼が来ていたらしく、とうとう誤魔化しきれなくなってしまったようである。
「安い物にはやっぱり裏があるのですわね。しかも、裏山に捨てるなんて祟られても仕方ないレベルですわ。リビングデッド化したペット達も安らかに眠れると良いのですけど……」
 何処か寂しそうな表情を浮かべ、周防・すみれ(妄想乙女・b16633)が裏山を眺めた。
 今となっては、裏山がペット達にとっての墓標……。
 心無い葬儀業者によって汚され、奈落へと落ちた魂が行き着く場所。
「千鞠のお家はペットを飼った事はないのですが、いたらきっと家族みたいに大切だと思うのです。田舎のおばあちゃんの家にいるおばあちゃん猫のぶちさんも、おばあちゃんの家にはなくてはならない大切な家族ですから」
 祖母の家で飼われている猫の事を思い出し、綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)が答えを返す。
 おそらく、この葬儀業者に依頼をした飼い主達も、自分の愛するペットを家族同然に扱っていたのだろう。
 その分、葬儀会社に対する怒りも大きく、抑える事が出来ずに爆発してしまったようである。
 だが、葬儀業者はきちんとした責任を取らず、最後には夜逃げ同然で逃げ出してしまったようだ。
「天寿を全うしたペットを裏山に捨てるとか、非道い会社もあったものですね。何をするにもお金が掛かってしまう世の中だから仕方ない……とはいえ、これではねぇ」
 複雑な気持ちになりながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が呟いた。
 葬儀会社がもう少し別の考えを持っていれば、このような事にはならなかったはずである。
「良心に見えるサービスも、全てお金儲けのためだったわけだなんて……。生命の尊厳……、ペットだからって、死を利用して利益を得ようなんてやり方、最低ね。家族のように思ってた人、手厚く葬ってもらえると思ったから預けた人、いたでしょうに……」
 未だに信じられない様子で、リーリィ・デロンギ(剣帝の娘・b52531)が飼い主達の事を考えた。
 きっと、ペットの飼い主達も業者側がそんな思惑で動いていたとは、夢にも思わなかっただろう。
 その上、真実を知って葬儀業者に抗議をしても、その責任さえ取ってもらえず逃げられてしまったのだから、怒りのぶつけどころがなくて、さぞや無念だったはずである。
「それにしても、なんと酷い事を……。廃業に追い込まれて当然です。飼い主やペット達の事を微塵も考えていないのですね。お金の為に騙していた事も、命を蔑ろにした事も許せない……」
 当時の新聞記事に目を通し、鬼灯・遙(天道のディシプリン・b46409)が葬儀会社に対して怒りを覚えた。
 しかも、ゴーストと化したのは、飼い主やペット達。
 さすがにそれでも浮かばれない。
「ま、なんつーか……。ご愁傷様、としか言いようがねぇな」
 他に言葉が見つからず、藤堂・修也(宵闇のディアボロス・b18705)が廃墟と化した葬儀会社に入っていく。
 それと同時にアチラコチラの物陰から異様な気配が漂い、修也達が警戒心を強めて身構えた。
「動物は大好きっすけど、相手はゴースト、油断せずに行きましょう」
 仲間達に声を掛けながら、亜麻・空(レトロスペクティブ・b17770)がイグニッションをする。
 それと同時にリビングデッド達が殺気立ち、空達を威嚇するようにして激しく唸り声を響かせた。
「ペットと言っても実際は人と同じように生きている。そう思うと何とも複雑な気分だな……。できれば安心して逝ってもらいたいものだ」
 哀しそうな表情を浮かべ、志倉・翼(ただの観察者・b42787)がリビングデッドに視線を送る。
 しかし、リビングデッド達はその感情を飲み込む勢いで、翼達に対して敵意をあらわにするのであった。

●悲しみの連鎖
「人間に憎悪を抱いている、か……。あんな扱いを受けたら、当然でしょうね。でも、もう葬儀会社はないの。貴方達には悪いけど、その憎悪でこの先誰かが傷つかないよう、ここで斬ります。……ごめんね」
 リビングデッド達に対して謝りながら、リーリィがブラックヒストリーを放つ。
 その一撃を喰らってもリビングデッド達は怯まず、さらに怒りを爆発させてリーリィ達に敵意を向けた。
「小さくてもせいいっぱい生きてたものを適当にされたんじゃ、ものをしゃべれない動物でもそりゃ怒るっての。ペットは何にも悪くないのにな。でも、このままにはしておけない。だからせめて俺達の手で退治してやる。動物は元気なのが一番だけど、んー、まあすでに死んでる事だし……。大人しく彫像でもしてなっての」
 リビングデッド達の攻撃を受け止め、久遠が幻楼七星光を炸裂させる。
 これが本当に正しい選択なのか分からない。
 だが、これ以外にリビングデッドと化したペット達を救う方法も存在していなかった。
「さぁ……、いくか」
 同情が隠しきれない様子でリビングデッド達を眺め、翼がすべてを吹っ切る勢いで黒燐奏甲を発動させる。
「一度、死んでいるペット達を、二度殺すのは忍びないですが……。こちらに襲い掛かってくる以上倒すしかないですよね」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、洋角がリビングデッド達に黒燐暴走弾を打ち込んだ。
 次の瞬間、リビングデッド達が次々と悲鳴をあげ、その瞳には薄っすらと涙を浮かべる。
「それはオレも同じっす。でも、やらなきゃいけない事っすから」
 顔を真っ赤にしながら枕に顔を埋めそうな過去をブラックヒストリーに込め、空が吹っ切れた爽やかな笑顔を浮かべて解き放つ。
「踊ること自体ペット達にとって快楽かどうかわからないけれど、楽しんでもらえたら嬉しいわ。さ、ペット達! 踊りましょう? だって、よく言うじゃない? 地獄のサタも踊らにゃソンって!」
 満面の笑みを浮かべながら、メリーがダンシングワールドを発動させる。
 それと同時にリビングデッド達が踊り出し、一瞬だけ辺りが和やかな雰囲気に包まれた。
「憎いだろうな。……人間が」
 溢れ出しそうになった感情をグッと抑え、翼がライジングヘッドバットを炸裂させる。
 リビングデッド達の全身から放たれる殺気は、まるで鋭く研ぎ澄まされた刃物同然。
 一瞬でも気を抜けば肉塊と化していたのは、自分達の方だったかも知れない。
「こんな事をされれば、当然っす。例え、どんな理由があれ、自分達の存在を否定されたようなものっすから……」
 ギンギンカイザーを一気に飲み干し、空がリビングデッド達の攻撃を避けていく。
 しかし、リビングデッド達は傷つく事も恐れず空達に食らいつき、その肉を引き千切る勢いで激しく首を横に振る。
「できるだけ早く片付けましょう。その方が死んだペットの為になるというものです。こんな姿で居続けたいわけがないと思いますしね」
 リビングデッド達によって傷つけられた右腕を庇い、洋角が黒燐奏甲を発動させて物陰に隠れた。
「お中元がわりに竜巻で魔氷をサービスでつけておくぜ。……遠慮すんなよ」
 爽やかな笑みを浮かべながら、久遠が吹雪の竜巻を発動させる。
 その寒さであっても、リビングデッド達の怒りを冷ます事は出来ず、断末魔が刃物の如く尖って久遠達の心に突き刺さった。
「痛いのは最初だけよ。いいコね、おイキなさい?」
 リビングデッド達に語りかけながら、メリーが白燐大拡散砲を撃ち込んだ。
 次の瞬間、天の川を地上に引き下ろしたかのような白燐蟲の大群を放たれ、あっという間にリビングデッド達をこの世から消滅させる。
「この場所で、安らかに、という言葉はダメなんでしょうね……。でも、裏庭にあるたくさんの亡骸、私達だけではどうにもならないだろうし……。何もできそうにない……」
 虚しさに心を包まれながら、リーリィがションボリと肩を落とす。
 分かっていた事だが、改めてそれが事実である事が分かると、余計に心が痛む。
「だが、祈る事は出来る。その魂が天国に逝けるように……」
 リーリィの事を慰めながら、翼が優しく肩を叩く。
 そして、翼はペット達に黙祷を捧げ、その場を後にするのであった。

●零れたのは涙
「このまま、ここに居てもペット達は帰ってきませんわよ?」
 地縛霊に語りかけながら、すみれがギンギンパワーZを口に含む。
 だが、地縛霊はすみれ達を葬儀業者の関係者だと思い込んでおり、怒りを爆発するようにして衝撃波をぶつけてきた。
「完全に……キレているようだな」
 黒燐奏甲を発動させながら、修也が可能な限り自分の身の安全を確保する。
 そうしなければ、地縛霊が容赦なく攻撃を仕掛け、あっという間に無残な屍をさらす事になるだろう。
「あんたがこんなトコにいるとペットも浮かばれねえんだよ」
 修也を守るようにして陣取り、恵太が接近しながら雪だるまアーマーを使う。
 それと同時に地縛霊がヒステリックな悲鳴をあげ、再び恵太達に対して衝撃波を飛ばしてきた。
「大切なペットを亡くされた悲しみはお察しします。……けど、ここでずっと泣いていてもきっとペットも、ずっと悲しいと思うのですっ」
 一気に間合いを詰めながら、千鞠がクレセントファングを放つ。
 それに合わせて修也が呪いの魔眼を放ち、地縛霊の身体を内側から引き裂いた。
 しかし、地縛霊はグッと唇を噛み締め、『この程度の痛み……。フランソワーズちゃんに受けた苦しみに比べれば可愛いものですわ!』と叫ぶ。
「この戦いは長く続けても悲しいだけ、すぐに終わらせないと」
 地縛霊の気持ちを察し、遙がプロトフォーミュラを発動させる。
 次の瞬間、地縛霊が邪悪な笑みを浮かべ、『ええ、終わらせましょう。あなた達の人生をっ!』と叫ぶ。
「おーし、上等」
 旋剣の構えを発動させながら、克己が地縛霊と対峙するようにして陣取った。
 その途端、地縛霊が衝撃波を放ってきたが、その程度の攻撃で克己が怯む事はない。
「修也、貸しイチな。利子はトイチで頼むわ」
 身代わりになって衝撃波を喰らい、恵太が地縛霊めがけてヒロイックフィーバーを放つ。
 そのため、修也が『金を取るのか!?』と驚いていたが、恵太は『野郎相手にタダで守るほど世の中は甘くねぇ』と答えを返す。
「次……、来ますよ」
 仲間達に対して警告しながら、すみれが地縛霊にデモンストランダムを炸裂させる。
 それと同時に地縛霊が激しく唸り声を響かせ、再び悲鳴をあげて衝撃波を飛ばしてきた。
「私の一番の技ですぐに眠らせてあげる! だから大人しくくらってください!」
 衝撃波を避けるようにして地縛霊の死角に回り込み、遙がプロトスランダムを叩き込む。
 だが、地縛霊は恨めしそうに両目を血走らせ、血管を浮き上がらせて悲鳴を響かせた。
「殺らせてもらう!」
 何度も衝撃波を食らって傷つきながら、克己が地縛霊めがけて紅蓮撃を叩き込む。
 次の瞬間、地縛霊がボロボロと涙を流し、『フランソワーズちゃん』と叫んで跡形もなく消滅した。
「終わりっと……。それにしても、どうしてあいつだけ地縛霊になっちまったんだろうな。他にも、ここに来た飼い主はいたはずなのに……。ま、気にしても仕方ねぇか」
 だんだん考える事が面倒になり、修也が疲れた様子で溜息を漏らす。
「きっと、それだけペットに対する思いが強かったんでしょうね。ゴーストと化してしまうほどに……」
 悲しそうに裏山を眺めながら、千鞠が犠牲となった者達の冥福を祈る。
 それが千鞠に出来る唯一の事だから……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/07/13
得票数:楽しい2  せつない9 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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