その銃弾は、あらゆるモノを撃ち抜く殺戮の弾丸


<オープニング>


「みんな、集まってるわね?」
 放課後の武道場。少し遅れてやってきた八重垣・巴(高校生運命予報士・bn0282)は集まった能力者達を見回した。
「今回は、とある合戦場跡にある強力な残留思念の対処をお願いしたいの」
 その合戦場跡は現在でもとある山間部に草原として残っている。周囲に小さいながらも山に囲まれているため交通の便も悪く、開発が遅れて未だに手付かずになっているのだという。
「でも、そこにいつ開発の手が入るかはわからないわ。だから、今の内に残留思念を詠唱銀でゴースト化させて対処する必要があるわ」
 巴は一枚の地図を取り出すと、能力者達の目の前で広げた。
「残留思念は、草原のこの辺り――ほぼ中心辺りにあるの。残留思念の周囲はかなりの広さで草も生えずに荒地になっているから、行けばすぐにわかるわ。障害物もないし、広さも問題なし。時間も早朝を選べば人の目も気にしなくていいわ」
 そして、この残留思念からは四体の地縛霊が出現する。
「一番厄介なのは、甲冑に身を包んで大量の火縄銃を背後に浮べた地縛霊よ。遠距離の視界内に回避が困難な大量の銃弾の雨を降らせたり、遠距離の広範囲に後ろの空間から召喚した巨大な火縄銃で撃ち抜いたり、背後の火縄銃を整列させる事により回復と攻撃力を大幅に上昇させる構えを取るわ。後、銃弾の雨には『足止め』の効果が巨大な火縄銃の銃撃には『追撃』の効果があるから要注意ね。攻撃に防御、後回復まであるバランスの取れたタイプの敵よ、特に構えを取ってからの攻撃力はかなりのものだから注意して」
 これに、三体の槍を持った鎧武者が一緒に出現する。
「こいつは遠距離まで届く単体を対象とした精気を吸収する攻撃をしてくるわ。後、自分と他の単体を回復させると同時に攻撃力を上げる能力があるの……四体と数こそ少ないけど、この能力の一つ一つはかなり厄介よ?」
 この四体の地縛霊は前衛に二体の槍の鎧武者が並び、中衛に火縄銃の武者、そして後衛に槍の鎧武者の一体が控える状態で出現する。
「イメージとしてわかりやすいのは、槍の鎧武者が正逆三角形の頂点にいて、その中心に火縄銃の武者がいるって感じね。一体一体が六メートルの距離はなれているから爆発範囲に収まらないのが面倒ね……こっちも陣形をきちんと考えないと押し切られるわよ?」
 巴はそこまで告げると、信頼の笑みで能力者達を見回した。
「いい? 相手は厄介な能力をいくつも持ってるけど、それを連携に使えるほどの知性が無いわ。かなり強力な地縛霊だけど、こちらがきちんと戦術を練って対処すれば勝てない相手じゃないわ――大丈夫、あなた達なら出来るって、私は信じているわ」
 じゃあ、頑張ってね、と巴は締めくくり能力者達を見送った。

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参加者
芹沢・彼方(銀葬祈鋼・b05664)
フェンリル・フローズヴィトニル(氷狼・b05682)
瀬良・陸都(紅一葉・b06939)
光明院・朱雀(真白燐蟲使い・b34022)
方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)
儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)
武神・志摩(連綿たる拳と剣の伝承者・b37465)
ディアナ・レットムーン(月天使・b47834)
八塚・辰房(幻龍舞踏・b59657)
風霧・來那(風と踊る魔法使い・b71827)



<リプレイ>


「戦場跡地……か」
 その草原を見渡し、風霧・來那(風と踊る魔法使い・b71827)が静かに呟いた。
 見渡す限りの朝日に染められた草原には、何もない。多くの命が散り、血が流された地でありながらその痕跡など欠片として残らない――それは、時の流れの無情さを感じさせた。
 だが、残留思念の周囲だけは違う。能力者達がたどりついたそこは、草木の生えない荒れ地となっていた。さながら、そこだけは時の流れに抗ったかのように――無残な爪痕を残している。
「あまり気負わないようにな?」
「……ん、だいじょぶ」
「じゃあ、撒くぞ? 準備はいいか?」
 芹沢・彼方(銀葬祈鋼・b05664)がフェンリル・フローズヴィトニル(氷狼・b05682)の肩に手を置き、詠唱銀を手に残留思念へと歩み寄った。振り返り仲間達の返答を確認した彼方は、残留思念へと詠唱銀を撒く――。
「――ッ!?」
 周囲の空気が、一変した。夏の朝、さやかさでさえあった草原の空気が熱を帯びていく。怒り、憎しみ、悲嘆、苦悶――それは、激しい感情の入り混じった戦場の空気だ。
「蟲がうずきやがる」
 その気配に光明院・朱雀(真白燐蟲使い・b34022)が低く吐き捨てる。その視線の先で、その地縛霊達は姿を現した。
 ガシャリ、と鎧を鳴らし大地に立つ三体の槍兵とその三体が作る三角形の中心に降り立つ、大量の火縄銃を背後に浮べた銃兵――戦場に生き、戦場で殺し、戦場で殺され、戦場に死した古強者達だ。
「戦国の兵士の成れの果て……でしょうか今はもう戦いは終わりました、その幕を引かせて頂きましょう」
「時代が時代ならば問題はございませんでしょうが、今は活躍する時代ではございません。その首討ち取らせて頂きます」
 武神・志摩(連綿たる拳と剣の伝承者・b37465)が、ディアナ・レットムーン(月天使・b47834)が、静かに言い捨てる。それに続き、儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)が凛と言葉を継いだ。
「残念ながら、ここはヴァルハラではありませんの。あなた方の存在、ここで裁ちます」
「あんたらの最後の戦場、付き合ってやるよ!」
 そう言い放ち、八塚・辰房(幻龍舞踏・b59657)は腰を落し身構える。
「中国拳法は武芸百般――槍術を想定した訓練もしてるアル。中国4千年の奥義その身でとくと味わえアル」
「――いざ、参る」
 布槍をはためかせ方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)が、勝利を誓いながら瀬良・陸都(紅一葉・b06939)が宝剣を引き抜いた。
 その時、能力者達の戦意を感じてか銃兵が一つの表情を作った。口の端をわずかにもちあげる――戦の匂いに心躍らせる兵の顔だ。
「――――ッ!」
『――――ッ!』
 ガシャガシャガシャガシャガシャ!! と火縄銃が展開していき、槍兵がその槍を構えていく。双方が言葉で告げる事無く、だが同時に戦いの火蓋を切って落とした。


 前へ二体、後ろに一体――槍兵を頂点とした正三角形のその中心に銃兵が控えるゴースト達に対して能力者達の陣形はこうだ。
 二班に別れ、一つ班の前衛に志摩とディアナ、後衛に陸都とフェンリル、來那、もう一つの班の前衛に瑞麗と彼方、辰房、芽亜、後衛に朱雀といった布陣だ。
「さぁ、どうした? 獲物は目の前だぜ」
 まず辰房が一体の槍へと間合いを詰め、ライカンスロープと共に挑発した。そして、その槍兵へと彼方が螺旋状の文字列を右の拳にまとわせ、叩き込む!
『――ガッ!?』
「囮っつっても……別に倒しちまっても構わねーんだしなぁ」
 バキリ、と槍兵の鎧の胸部を砕きながら、彼方が不敵に言い放った。
「行くぜ、白燐蟲!」
「おまえの相手は私アルよ!」
 朱雀が蟲籠へと白燐蟲を宿し自己強化し、駆けた瑞麗が傷を負っている槍兵へと青龍の力が宿るその右の拳を叩きつける。ガ、ゴン! と鈍い打撃音と共に瑞麗の龍顎拳の一撃に槍兵の膝が揺れた。
「ライカン、スロープ……!」
「呪われろ――!」
 フェンリルが静かな呟きと共にその身に魔狼のオーラをまとい、陸都がその赤い瞳に禍々しい輝きを宿し、槍兵を呪う。
 内側から鎧に亀裂を走らせる槍兵に対して、志摩がリボルバーガントレットを頭上に掲げた。
「戦場を望むなら私達が相手になりましょう、いざ参る!」
「魔弾の射手よ!」
 志摩が旋剣の構えで自己強化するその後衛で來那が魔弾の射手の魔法陣を空中へと描く。
「雪の守りよ」
「夢幻の障壁よ」
 ディアナが槍兵へと間合いを詰め雪をその身にまとい、芽亜のサイコフィールドが中間達を包んでいった。
 ――そこで、銃兵が動く。その背後の火縄銃が瑞麗や彼方達の方へと一斉に銃口を向け、火を噴いた。
「ぐ、く……!?」
 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ! と文字通り鉛玉の雨が能力者達を撃ち抜いていく。そこへ、右側の槍兵と後方の槍兵が辰房とディアナをその槍で貫き、大きく傷付いた槍兵がその覚悟を決め、傷を負っているもう一体の槍兵と己を回復させ強化させた。
「確かに、厄介な相手だね」
 來那がそう小さくこぼす。だが、退く訳にはいかない――次の一手を打つために、能力者達は止まらずに動き続けた。


「回復は俺に任せろ!」
「ナイトメアランページですわ!」
 朱雀の白燐奏甲によって回復しながら、合わせて動いた芽亜のナイトメアランページが槍兵ごと銃兵まで貫いた。
「これで止めアルよ!」
 度重なる攻撃に片膝をついた槍兵へ、瑞麗のしなやかな右の回し蹴りからの左の後ろ回し蹴り――龍尾脚による連続蹴りが、ついに槍兵を打ち砕いた。
「時空をも歪める蒼の力っ……!」
「ヤ、アアアアアアッ!!」
 來那が後衛からの時空を歪める蒼い雷を撃ち放ち、志摩の大上段から黒影剣が繰り出される。それを槍兵は雷に撃ち抜かれながらも槍で刀を受け止めようとするも――槍ごと、斬り裂かれた。
 だが、槍兵はかろうじてそこで踏み止まる――そこへ、ディアナが滑り込むように身を躍らせる!
「凍りつきください――!」
『――ッ!!』
 ディアナの氷の吐息が槍兵を純白に染めた。カキン、と澄んだ音を立てて槍兵が砕け散る――そこへ、巨大な鉛玉が撃ち込まれた。
「――く、あっ!」
「う……く」
 ディアナはその爆発に地面へと叩きつけられ、志摩は受けようとするも爆風による衝撃に二度、三度とさらされ耐え切れず倒れ込む。
『オ、オオオオオオオオオオオオオ――!!』
 その背後に巨大な火縄銃の銃口を召喚したまま、銃兵が吼えた。
 ――能力者達と地縛霊達の戦いは、地縛霊側が有利に進んでいく。
 銃兵の攻撃力もさることながら、その広い範囲の攻撃が能力者達を苦しめた。特に戦場を統べる雨には『足止め』の効果があり、回復の要である朱雀の白燐奏甲と陸都の黒燐奏甲が上手く機能しない。それを芽亜のサイコフィールドとそれぞれの自己回復で補おうとするが、それは地縛霊への攻撃の手が止まる事を意味していた。その上での銃兵の攻撃に加えた、背後の一体の槍兵の攻撃も重なり能力者側は徐々に追い込まれていく――そして、その致命的な瞬間が訪れようとしていた。
「まだ……戦える!」
 ジリ貧と見て取った來那が、回復を捨て蒼い魔弾を放った。その一撃は銃兵の右肩を貫くが、小揺るぎさえかなわない。
「―――――!!」
 芽亜の歌声が響き渡る――そのアンチウォーヴォイスに、槍兵がその槍の攻撃力を失う。だが、銃兵はその歌声を気合いで振り払うと、統率されし銃の群れによってその背後に整然と並んだ火縄銃の間に、巨大な銃口を召喚する――!
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
「――ッ!!」
 ドンッ! と盛大な砲撃音と共に放たれた命を撃ち抜く砲弾に、來那が巻き込まれ倒れ伏した。
『――ォッ!』
 そこで、
「くそっ!!」
「太極拳の極意は、留まる事無き円の動きアルよ!」
 青龍刀を純白に染め辰房が横一文字に振り払い、合わせて動いた瑞麗がその龍顎拳を叩き込む。ピキ、とその斬り口から魔氷に染まり、胸部を拳で砕かれた銃兵へと彼方が螺旋状の文字列に包まれた右の拳を振りかぶり、合わせて動いたフェンリルが銃を構えた。
「オ――――ッ!!」
「全弾、くれてやる……っ!」
 彼方のデモンストランダムの拳とフェンリルのクロストリガーの銃弾の雨が銃兵を襲う。だが、銃兵はそれを火縄銃を盾に受け止める――!
 バキン、といくつもの火縄銃が砕ける中、朱雀と陸都が動いた。
「頼むぜ、白燐蟲!」
「……全力で援護はする……無茶はするなよ」
 朱雀が瑞麗を、陸都が彼方をそれぞれ回復させる――そこで、芽亜のナイトメアランページが駆け抜けた!
「駆け抜けるのですわ――!」
 そのナイトメアランページに貫かれ、銃兵の体が傾く――だが、強く踏み締め踏み止まった銃兵は背後に巨大な銃口を召喚する!
「――――ッ!!」
 その砲弾は、銃兵と隣接する前衛と共に朱雀と陸都の二人を巻き込んで爆発した。その衝撃に耐え切れずに辰房が倒れる。
「く……っ!?」
 耐え切った、そう思った朱雀が自分を貫く一撃に膝から崩れ落ちた。それは、銃兵の背後――最後まで残していた槍兵の一撃だ。
 それを見た彼方が険しい表情で叫んだ。
「ここまでか――フェンリル!」
「吼えろ、スコル……!」
 彼方の声に答えて銃を構えたフェンリルの雷の魔弾が銃兵へと撃ち放たれた。それを銃兵が受け止める隙に、残る者で倒れた者達を抱え交代する。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
 それを見た銃兵が怒りの声と共に命を撃ち抜く砲弾を放つ。威力こそ恐ろしいが、『足止め』のある戦場を統べる雨で無かった事が幸いした。
『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
 砲撃音と怒りの叫びが既に遠く離れた能力者達の下へと、いつまでも届いた……。


「…………」
 誰もが声もなく、走り続けた。その背中には倒れた仲間を背負い、その傷付きながらも確かに背中に感じる鼓動を安堵しながら。
 彼等の胸に一様に苦味がある。この結果の理由はいくつかある。事前の連携の不備。能力の相性。そして、最後まで残そうとした槍兵の存在――その一つ一つは小さな狂いでも、積み重なってしまったそれ等がこの敗北の要因となったのは間違いない。
 今はまだ必死に走る胸の鼓動に打ち消され、その苦味を自覚する者はいない――だが、時がたてばその苦味の意味を理解するだろう。
 そう――敗北の実感を……。
 


マスター:波多野志郎 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/07/19
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冒険結果:失敗…
重傷者:光明院・朱雀(真白燐蟲使い・b34022)  武神・志摩(連綿たる拳と剣の伝承者・b37465)  ディアナ・レットムーン(月天使・b47834)  八塚・辰房(幻龍舞踏・b59657)  風霧・來那(風と踊る魔法使い・b71827) 
死亡者:なし
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