<運動会>得点板裏の伝説 〜攻防〜


<オープニング>


 10月9日体育の日、銀誓館学園の運動会が催される日である。
 手に汗握る競技の裏、まさに勝負の行方をリアルタイムで表示し続ける得点板の裏には、生徒達の間でまことしやかに噂されているある伝説があった。
 ここで好きな相手に告白すると、想いが実るというロマンチックな伝説が……。
 眩しい太陽の光は大きなボードに遮られ、会場の喧騒さえ遠く感じる得点板の裏。
 すぐ側に賑わう場所があるというのに、まるで周囲から切り取られたかのような空間で二人きり。
 囁かれる愛の告白は、きっとお互いの胸を高鳴らせてくれるだろう。
 伝説の通り想いが実っても、例え叶わず花と散っても。
 この日の告白は、清々しく晴れた秋の日の、思い出の一ページに色濃く刻まれる筈。
 今まで勇気がなくて、なかなか言い出せなかったという生徒もいるだろう。
 でも大丈夫。運動会の熱気が、きっと背中を押してくれる。

 今こそ、胸に秘めた熱い想いを開放する時なのだ。
 さぁ、あの人に告白しよう。

 そんな伝説を望む声もあれば、妬む声もあるのが世の常。
 ラブイ世界を繰り広げさせてなるものか。
 告白しに行こうとする生徒を阻止するべく暗躍する生徒達。
 そんな生徒達の動きを察知し、友の恋の成就に一役買って出た友人達。
 ただの冷やかしにきた生徒達。
 告白の裏側で繰り広げられるバトルがここにある。

 さぁ、若人よ集え。
 恋に妬みしその道を塞ぐもの。
 学校内のどこに配置につくのか、それとも得点板を占拠しようとゲリラ戦を挑むのか。
 そんな塞がれた道を友人の為に押し開けるもの。
 友人の為にその身を投げ出して道を切り開くのか、冴え渡る頭脳を使って道を塞ぐものたちをギャフンと言わせるのか。
 そんな大騒ぎを傍観しにきたもの。
 騒ぎ、囃し立てるのか、それとも静かに両者にエールを送るのか。
 全ての結果は参加した生徒達にゆだねられている。
 そうしてここに競技よりも熱く燃える戦いが始まった。

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参加者
風見・玲樹(高校生ファイアフォックス・b00256)
三神・ヤマト(高校生魔剣士・b03463)
御藤・ちはる(中学生白燐蟲使い・b03934)
鎌木・里緒奈(中学生水練忍者・b05438)
メリル・アシハラ(中学生魔弾術士・b05996)
メルキュール・リネット(高校生ゾンビハンター・b08203)
神奈・環奈(高校生魔剣士・b09675)
燈崎・七生(高校生青龍拳士・b10612)



<リプレイ>

●決戦は前日から始まっていた
 運動会前日深夜、静まり返った学校に忍び込む影がある。
 微かな物音は得点板が設置された付近。
 明日の運動会当日にはここで告白すると愛が実るという伝説目当ての生徒が訪れる。それを阻止しなければならない、他人の幸せ目の前で繰り広げられるなんてちょっと許せない。小さな嫉妬心を燃やして三神・ヤマト(高校生魔剣士・b03463) は闇に紛れて得点板の裏、校内に置かれたマットなどの配置、プログラムチェックなど当日の決戦に向けて潜伏ポイントを絞っていく。
 同じく学校に忍び込む影がもうひとつ。ふたつ。ちらほらと見え隠れ。
 さぁ、ガンガン騒いでサボっているやつにはお仕置きだ、と無駄に沢山の罠を仕込んでいるメルキュール・リネット(高校生ゾンビハンター・b08203) の姿もあった。
 静けさの中に妨害に阻止にそれぞれの密やかなる闘志だけは燃え上がっていた。

●決戦の火蓋は切って落とされた
 待ちに待った運動会当日。
 朝日を浴びる校舎。生徒が登校してくるには早い時間に意気揚々と得点板付近に現れるメリル・アシハラ(中学生魔弾術士・b05996)。
 愛は世界を救うんだっ! それを邪魔するなんて不埒な輩めと、なにか罠が仕込んでないか入念にチェックを入れいていたそのときだった。
 ――――――――が、こーん
 かなりいい音が響いた、頭上から金タライが落ち、メリルの頭に命中したのだった。
「う、うぬれ姑息なー」
 痛みで涙を滲ませながら、仕返しに同じ場所に別の罠を仕込みだす。
 
「知ってる? 得点板の伝説って実は続きがあって……」
 と、伝説に追加の伝説の噂を流しに奔走してるのは鎌木・里緒奈(中学生水練忍者・b05438)。
 少し前からの数日間流している噂は『得点板には相手と一緒に一定の道を通っていかなければならない』と言うものだった。短い時間との戦いで終盤あたりでは、その道でなければその告白は失敗に終わるなどという大きなものに変わっていた。
 だが時間は短すぎた、巨大な学校にその噂が全て浸透するには時間が足りなかった。
 
 妨害する側とそれを阻止しようとする側。そうしてメインの告白組。
 そんな三方のものの成り行きを楽しみに傍観することに決めたものもいた。
 御藤・ちはる(中学生白燐蟲使い・b03934)は本当に伝説を使って告白しようという生徒がいるのかどうか興味があった。それに人の色恋沙汰を目の前で見れるチャンス。妨害する者達がいるということは知っている。が、特別それに手を貸すつもりもないらしく、得点板の裏で告白タイムの観察場所を選ぶ。

 それぞれがそれぞれの動きを見せる中、運動会の開会式の挨拶が始まった。

 開会式の挨拶は校内にも流れ込んでくる。
「イグニッションできれば闇纏いで、気づかれずに潜入できたのに………」
 ブツブツ言いながら得点板を少し離れた場所で物陰に隠れ、妨害班の動きを監視する神奈・環奈(高校生魔剣士・b09675) 。
 人の恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られて死んでしまえ。なんていう格言もあるくらいだ、愛の邪魔をするなんて言語道断。
 きりきりと打倒妨害班の闘志が燃え上がってくる。
 そんな環奈のすぐ近くに燈崎・七生(高校生青龍拳士・b10612)もいた。
 秘めた思いを語るには良い日柄かもしれんな。などと思いながら、早く誰か告白しに来ないものかとメモ帳片手に待ちわびていた。

●サバイバルダンス
 体操服から態々水着に着替え、カップル撲滅と書かれた鉢巻、髑髏の首飾りをつけた風見・玲樹(高校生ファイアフォックス・b00256)がまるでゲリラ戦に挑むように水着に葉っぱや草を体につけて得点板へと通ずる場所に潜伏していた。
「素敵なBGMを奏でてあげよう」
 ゲリラ戦をひとり頑張っている玲樹はひっそりと身を潜めながら手に持ったガラスを爪を立て思いっきり引っかく。
 そこら一帯になんとも言えない背筋がゾクゾクする音が響いた。
 通りかかった生徒数名が耳を抑えて猛ダッシュでその場を走り逃げたと同時に聞こえた声。
「アウチッ!!」
 叫んだのは玲樹。耳栓をつめておくのを忘れていたのだ。近い場所で大きなダメージを自ら追ってしまった。 
「ち、なかなかやるな」
 そんな一言を残せば次の現場へと向かっていく。  

「かかった!こっちっ!」
 前もって触れ込んでいた噂ルート以外の通り道に罠を仕掛けておいた里緒奈の声が響いた。
 罠の元に駆け寄るとピンと貼ったロープにひっかかったのは、運動会の競技の準備をしていた生徒数人。ぶちまけられたカラーコーンと一緒に派手に転がっていた。
 ――――――――素敵な恋を守り抜く!
 と、心に決めた想いは少々違ったベクトルにも加算されていた。
 それにも懲りずに里緒奈は次の作戦にでる。
「ここを通りたければ俺を倒していけー!!」
 大きく響いた里緒奈の声。
 ぎょっとする得点板に向かっていこうとする生徒。
「ここは俺に任せて、先を急ぐんだ。彼女が待ってるぜ」
 妨害班がしかけたのか、それとも阻止班がしかけたのかもう分からない罠から身体を持って庇いドラマティックな展開にしていく。
「………は、はい」
 その迫真の演技と、黒板消しなどが落ちてくる様を見れば生徒は何事が分からないまま頷いて走って逃げた。
 その様子に里緒奈はなんとなく満たされていた。

 そんな頃のメルキュールはエアガン片手に徘徊中。
 運動会をサボっているものにも容赦ない制裁が加えられていく。
「獲物…見つけたぜ」
 手に持ったのはまるで手榴弾に見立てた水風船。
 ていやーと、ターゲットめがけて投げつけた。
「うわッ!」
 そんな攻撃がやってくるとは思っていなかった運動会をサボっていた生徒が大声を上げる。水風船はべしゃりとその生徒に届くことなくその前で床に落ち大きな水溜りを作っていた。
 そんなメルキュールの近くで先ほどの作戦に失敗した玲樹が伝説の告白に関係なくいちゃついているカップルに近づく
「これは永遠の愛を実らせる不思議な壷。二人で中を覗けば愛は君達だけのもの」
 なんていえば半ば強引にカップルに持っていた壷を渡してませば自分はその場を走り去る。何事かと思ったカップルが言われたとおりに壷を覗き込む。
『カップル撲滅!』
 と、思いっきり書かれていた。
 壷を覗いたカップル場呆然と二人顔を見合わせていた。
 メルキュールはサボっている生徒を見かければ誰彼構わずに水風船などを投げてつけて校内を走り回っている。
「ち。しくじったか………そこかっ」
 背後に感じた気配に振り返りまた水風船を投げつけた。
 ベシャリ…………。
 今度は対象にぶつかり中に入れておいた水がはじけた音がした。
「コラーッ!!」
 響いた声はドス低く大地を揺るがすほど大きかった。
 見境なく投げていた水風船が巡廻に来ていた教師だった。大地が響くような声を聞いたメルキュールはその場を脱兎の勢いで逃げ去った。
 途中自分が仕掛けた罠に自分がひっかかった。
 カタン。と、いう小さな音とピンポン球がゆっくりレールの上を走って、最後にはぴこんと小さな旗を上げる。と、いう地味なもので回りもメルキュール本人も気がつかなかった。
 その後彼女が目撃されたのは運動会が大盛り上がりを見せている応援席で自分のクラスを応援してる姿だった。
 
●決戦は得点板裏
 運動会の競技が盛り上がりを見せている頃、得点板裏でも愛の劇場がクライマックスを迎えていた。
「さりげない所も、優しい所も…好きだよ」
 罠をかいくぐり、妨害をかいくぐり、やってきたコレからカップルになろうとしてる生徒たちの甘い愛の囁きが始まっていた。
 それを少しうっとりとした視線で見ていたのは七生。
 けれどもそんな彼女の脳内で繰り広げられていたのは、告白される側の者を被告白者と見立てた裁判ショートコントのようなもの。
 最終的には何故か裁判官がちょっと待ったコールをしていた。
 そんな七生を他所に、カップル達の告白大会は佳境を迎える。
 はっと、我を取り戻した七生は今後の参考になりそうなことがあれば思わずメモをとったりしていた。
 そうしてまた別のカップルがやってきた。
「あの………ちょっといいかな?……えーっと」
 呼び出したもののなかなか想いを伝えきれない生徒を見てはひとりやきもきして、思わずその場で地団駄踏んだり、シチュエーションの詳細をメモっていたメモ帳の端っこをびりびり破いてみたりしてしまう。
「あぁッ!!もう、じれったい!」
 叫びたいところを小さく呟く。くぅぅぅ、となりながらも二人の行く末を見守った。
  
 妨害組みで得点板近くに潜伏していたのはヤマト。
 彼の傍らには、前日に仕込んだパイ投げのパイを詰めこんだクーラーボックスが置かれていた。
 パイと言ってもバラエティショップで売られている、紙皿の上にクリームに見立てたムースを盛り付けていく人畜無害なもの。その作業は簡単なものだったのに、潜入場所の探索に時間がかかり、徹夜になってしまった。
「大変だったんですよ? 昨日は徹夜で潜伏ポイントとこれの仕込をしてたんですから…」
 そんな彼は今後の学校生活を考えると今日顔が割れてしまってはヤバイだろうと、体操服に目だし帽を装着。
 そうして告白を始める生徒たちが見えた。
「こちら嫉妬マスク1号。2号聞えますか?」
 ヤマトがツバメに呼びかける。聞えますか?なんていわなくてもツバメはほぼ隣にいるのだから、聞えないわけではない。
「こちら嫉妬マスク2号。感度良好、大変現場は盛り上がってきています。1号どうぞ」
「よし、ミッションスタート」
 ヤマトがツバメに合図を送った。
 二人一緒に物陰からでてきた、その手には仕込んでおいたクリーム増量1.5倍のパイ。
「他人の幸せなんてーッ!」
 小さい嫉妬の炎を燃えあがらした、ツバメが手に持ったパイをカップルのほうに投げつけ牽制する。そうしてその後ろからヤマトが女子生徒ではなく男子生徒に向かってパイを投げる。
「愛の邪魔はさせなーい!!」
 待ってましたとばかりにメリルが二人の前に飛び出してくる。
 メリルの手にもしかりと、同じようなパイがもたれていた。
「なにをー」
 ヤマトは男子生徒からメリルへと目標を変える。
 ぱしゅ。
 ちょっと間抜けな音がなる。パイが飛び交う音。カップルそっちのけで、メリル対ヤマト、ツバメの攻防が繰り広げられていた。
 その様子をカップルを観察してたちはるは被害被る前にその場から別の場所へと移動していく。
 『伝説』なんていいトリックだよねー。なんて思いながら。

 「……好きだ…ずっと一緒にいてくれ」
 と、告白しているカップル生徒の間を玲樹が水着姿のまま台車で突っ切る。
「どいたどいたどいた。片付けの邪魔なんだよね!」
 などと大声を上げなら勢い良く邪魔をする。
 その声に先に気がついた告白していた生徒が、彼女を抱きかかえ姫抱っこでその場を離れる。玲樹の渾身の邪魔はかえって二人の愛を育む結果になった。
 得点板裏で台車を使って片付けるものもないのは一目瞭然。
 玲樹の大きな声と、台車のガラガラという煩い音は良く響いてしまった。
「人の恋路を邪魔しようとするその腐った性根……妾が叩き斬ってくれるわ!」
 監視を続けていた環奈が勢い良く飛び出し、玲樹の前に立ちはだかった。
 そんな勢い良く誰かが出てくるなんて思ってなかった玲樹は派手に台車ごとすっころび。派手な音を立てた。 
「たわいない……」
 ふふふ。と勝ち誇った環奈は転んですぐに起き上がれない玲樹に縄をかける。
 これ以上カップルの邪魔をしないように。
「僕はただ、カップル達に素敵な思い出を作ったあげただけなの!」
「………話は後でゆっくり聞こう」
 言い訳絵をする玲樹に環奈はさらりと返答しただけで、捉えた玲樹の身柄を確保した。

 そうして長い攻防は終着を迎える。

●昨日の敵は今日の友 
 大騒ぎをすれば腹も減る。
 妨害班も阻止班も、見物してたものも皆集まってお互いの戦いを称えるように、小さな宴会が行われていた。
 宴会と行っても持っていたお弁当やお菓子、コンビニデザートが並ぶようなものだったけれども。
 その中でちはるがこんなことを言っていた。
「運動会のこの忙しい時に、得点板の裏なんて不審な所に異性に呼び出されて、ノコノコやって来るなんてさ…その時点で相手の事を気にしてるって事じゃない?……つまり『告白してOKされないような人は得点板裏なんかに始めから来ない』得点板の裏で告白できるシチュエーションに持ち込めた時点で答えが決まってるって事なんだよね」
 その言葉を聞いていたものは。あぁー。と、妙に納得して頷いていた。
 運動会の応援をしていたメルキュールもしっかりその輪にはいってた。
 結局妨害班も阻止班もカップルには応援に走りまくっていたから、お腹はすいてしょうがなかった。
 宴会がのんびり行われる中、環奈が確保した玲樹に延々と説教をしていた。
「わかったかぇ?これに懲りたら二度と人の恋路を(中略)よいか、そもそも告白とは(以下略)」
 説教はなかなか終わりそうにもなかった。
 それに玲樹は項垂れて利いてはいるものの。
「僕はカップル達に素敵な思い出を作ったあげただけ……」
 と、まだ反論していた。
 終始パイ投げに勤しんだメリル、ヤマト、ツバメも戦い終われば仲間になる。一緒にお弁当を囲み互いの戦いぶりを称えあう。
 説教をし終えた環奈と七生はちらりと見た先は、告白終えカップルになったばかりの生徒たち。
 中睦まじいその様子にふたりはため息混じりに呟いていた。
「私も何時かは素敵な恋をしたいものだ…」
 と七生が呟けば。
「全く、あの者等も恋人を作ればいいのにのぅ。………あぁ、妾も身を焦がすような恋がしたいものじゃて」
 と、玲樹を見たあと空を見て呟いていた。

 秋の空は高く、カップルにもそうでない人たちにも平等にお日様は暖かかった。
 


マスター:櫻正宗 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2006/10/09
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