俺を殴ってくれ!


<オープニング>


●都内某所
 殴られ屋を専門に派遣している会社の事務所が入っていた場所がある。
 ここで雇われていたのは、元ボクサーや、格闘経験者、M男など。
 お客の要望に応じて派遣する相手を決め、それなりに人気があったようなのだが、怪我をしてから仕事に復帰するまで、かなりの時間を必要としたため経営が成り立たず、廃業してしまったようである。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化した会社の事務所。
 この事務所は殴られ屋を専門に扱っていたようだけど、あんまり上手くいかなかったみたい。
 廃墟と化した室内にはリビングデッドと化した殴られ屋がいて、わざと挑発して自分の顔を殴らせようとしてくるわ。
 ただし、相手によって違った対応を取るから、攻撃する事によって逆に精神的なダメージを受けちゃうかも。
 それと、事務所の一部が特殊空間と化していて、元ボクサー風の地縛霊が留まっているわ。
 地縛霊は素早い身のこないで相手の攻撃をかわし、一気に間合いを詰めて、カミソリパンチを放ってくるから、くれぐれも気をつけてね。
 おそらく殴られ屋の中でも、かなりイレギュラーな存在だったと思うから。

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参加者
緋室・朱莉(静かなる緋・b15509)
武田・克己(梟雄・b22518)
宮草・佳菜(誠情なる魔法士・b26724)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
涼風・ユエル(夜空に煌めく一粒の太陽の欠片・b47845)
マヤ・ザレスカ(トーテンブルーメ・b51324)
城段・絵梨奈(灼熱の戦乙女・b61265)
山科・月子(ディープブラッド・b61466)
ギンヤ・マルディーニ(エクリッシ・b70345)
春崎・樹(ウィンディーソニック・b75584)
トウカ・ツヴァイ(藍燈誓・b76414)
ネイト・スタンッア(黒鎖の葬送者・b77107)



<リプレイ>

●殴られ屋
「へぇ、殴られ屋なんてあるんだ〜。初めて聞いたよっ。一体、どういう人達なんだろう?」
 懐中電灯で辺りを照らしながら、トウカ・ツヴァイ(藍燈誓・b76414)が首を傾げる。
 殴られ屋に雇われていたのは、元ボクサーや、格闘経験者、M男など。
 彼らは殴られる事のプロで、金さえ払えばどんなに強い相手であっても、喜んで殴られていった。
「何だか痛そうな仕事ですね……」
 背筋にゾッと寒気を感じ、涼風・ユエル(夜空に煌めく一粒の太陽の欠片・b47845)がぶるりと震わせる。
 出来る事なら殴りたくはないが、これも仕事なので仕方が無い。
「確かにいくらお金のためとはいえ、殴られるのはちょっとねぇ……」
 乾いた笑いを響かせながら、ギンヤ・マルディーニ(エクリッシ・b70345)が納得した様子で頷いた。
 だが、殴られ屋に登録していた者達にとっては、1円でも多くの金が必要だったらしく、自分の身体が動かなくなるまで、殴られ続けていたようである。
「う〜ん……、何とも微妙な商売だこと。元ボクサーや格闘技経験者、果てはM男とは……。やれやれ……」
 何処か遠くを見つめながら、マヤ・ザレスカ(トーテンブルーメ・b51324)が呆れた様子で溜息をつく。
 どの相手も痛みに強い相手である事は間違いないようだが、選択を謝ってしまうと一生後悔してしまいそうである。
「……つか、それで商売が成り立つのが不思議だな」
 いまいち納得する事が出来ず、武田・克己(梟雄・b22518)が疑問を口にした。
 ……とは言え、相手が殴られる事を望んでいるのであれば、思いっきり殴ってやるのが救いかも知れない。
「まあ、人気があっても商売にはならなかったようですが……。そこはもうちょっと工夫次第で、どうにかなったのかも知れませんね」
 あれこれ考え事をしながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が答えを返す。
 どちらにしても、既に終わってしまった事なので、いまさら何をやっても無駄だろう。
「それに需要があったようだし、怪我を克服できたら成立したのかも知れないわね。私達能力者なら、あるいは……。なんて馬鹿な事を考えても始まらないわね」
 苦笑いを浮かべながら、山科・月子(ディープブラッド・b61466)がボソリと呟いた。
 だが、今回は城段・絵梨奈(灼熱の戦乙女・b61265)と、ユエルが一緒。
 二人とは黙示録を通じて、実力は十分に知っている。
「……時として理解を超えるようなものを商売にする人もいますが。『誰もが思いつくが誰も(失敗が見え透いているから)やらないこと』を、『誰もがまだ注目していないチャンス』と見てしまうんでしょうね。……まったく理解できません」
 冷静に分析をした後、絵梨奈がキッパリと断言した。
 色々な角度から殴られ屋について考えてみたが、怪我を負うというリスクを踏まえて考えると、メリットよりもデメリットの方が多そうである。
「それで世の中が回っていたのだから佳菜は特に何も言わないけど……、後々新しく建て替えたりする時に問題があっては困るのだ」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、宮草・佳菜(誠情なる魔法士・b26724)がゴーストの確認された事務所にむかう。
 事務所の外観は殴られ屋をイメージしているのか、壁には拳型のヘコミがいくつもあった。
「どう考えても、胡散臭いよねぇ……。見るからに真っ当じゃないし……。ひょっとして、ここで働いていた人達って……まさか」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、春崎・樹(ウィンディーソニック・b75584)がゴクリと唾を飲み込んだ。
 よくよく考えてみれば、ここで働いていた者達の共通点がもうひとつあった。
 みんな必要以上に金を必要としていた事……。
 そこから導き出される答えは……、限られている。
「それにしても、自分から殴ってくれなど、可笑しなゴーストも居たものですわね? まぁ、殴って欲しいなら、手加減無用ですわ」
 含みのある笑みを浮かべながら、ネイト・スタンッア(黒鎖の葬送者・b77107)が事務所に足を踏み入れた。
 それと同時にリビングデッド達がネイトに気づき、興奮した様子で『俺を殴ってくれ!』と叫ぶ。
「そんなに殴って欲しいのなら、いくらでも殴ってあげますよ」
 すぐさまイグニッションし、緋室・朱莉(静かなる緋・b15509)がリビングデッド達に迫っていく。
 それに合わせてリビングデッド達も両手を広げ、『おっしゃ、受けてたつぜ!』と答えて迫ってきた。

●俺を殴ってくれ!
「ふふふ……、取りあえず覚悟は出来ているという事ですわね? 殴って差し上げますわよっ! この鉄球でよろしければねッ!! ほらほらッ! これが欲しいんでしょ、遠慮せずに喰らいなさいな!」
 高笑いを響かせながら、ネイトが棘つき鉄球を振り下ろす。
 その一撃を食らってリビングデッドの首が変な方向に曲がったが、それでも怯む事なく『早く殴ってくれ!』と叫んで迫ってきた。
「えーっと、そう言われると気後れするんだけど……、それじゃ……遠慮なく……」
 魔弾の射手を発動させながら、樹が少しずつ間合いを取っていく。
 だが、リビングデッド達は待ちきれないらしく、『早くボコボコにしてくれぇ』と叫び声を響かせた。
「殴るのは私の手が痛いから御免被るわ」
 リビングデッド達を引きつけ、マヤがスラッシュロンドを放つ。
 しかし、リビングデッド達は納得しておらず、『どうして殴らないんだ。その拳で!』と叫んでまわりを囲む。
「ごめん、僕は人を殴って喜ぶ趣味は無いんだ。その代わり黒い逆十字をあげるよ。……追撃つきの十字架だけどね」
 ワラワラと迫ってきたリビングデッド達を睨み、ギンヤがヴァンパイアクロスを撃ち込んだ。
 それでも、リビングデッド達は納得する事が出来ず、『殴ってくれなきゃ、金にならないんだよっ!』と叫んで距離を縮めていく。
「細かい事を気にしては駄目ですよ。全力で黒燐蟲をお届けしますね」
 リビングデッド達に答えを返し、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 それと同時にリビングデッド達の身体に黒燐蟲が纏わりつき、『違うんだああああ』と叫び声を響かせる。
「何だか直視したくありませんわ。雰囲気が生理的に嫌な感じですもの」
 嫌悪感をあらわにしながら、ネイトが後ろに下がっていく。
 リビングデッド達をいくら攻撃してもいやな顔ひとつせず、逆に張りついた笑顔を浮かべて迫ってくるため、攻撃するたび気持ちが悪くなってきた。
 だが、リビングデッド達は早く殴って欲しくてウズウズしており、『何故だ、何故、殴ってくれない』と叫んで上着を脱ぎ捨てる。
「ええい、暑苦しいのに騒ぐなー!! ……ともあれ、夏は暑くてだるいので、反論する気力は失せているのだ」
 げんなりとした表情を浮かべ、佳菜が幻影兵団を使う。
 次の瞬間、霧のような幻影が出現し、リビングデッドの眼前まで飛んでいった。
「我が指先から放たれるは裁きの矢!」
 リビングデッドに狙いを定め、ギンヤが破魔矢を撃ち込んだ。
 それに合わせて佳菜がセイクリッドバッシュを放ち、リビングデッドを吹っ飛ばす。
「なんか、明らかに喜んでいる敵もいるなぁ……。あれが噂のM男かぁ。と、とにかく、魔弾よ! 敵を貫け!」
 なるべくリビングデッド達と目を合わせないようにしながら、樹が弱っている敵を狙って雷の魔弾を撃ち込んだ。
 その途端、リビングデッドが身体をゾクゾクとさせ、恍惚とした表情を浮かべてマヒ状態に陥った。
「あはは! もう御終いですの。他人のストレスを発散させていらしたのなら、もう少し耐えていただけませんと……、私には少々役不足というものですわよ?」
 リビングデッド達に語りかけ、ネイトがフロストファングを放つ。
 その一撃を食らってリビングデッドがガクガクと身体を震わせ、『こ、これだ。この痛みだぁ』と呟いて崩れ落ちた。
「う〜ん……、M男の相手って疲れるわね。喜ばれるばかりじゃ、攻めるのも楽しくないし……」
 生暖かい視線を送り、マヤが苦笑いを浮かべる。
 ゆっくりと目を閉じれば、今でもリビングデッド達の姿が思い浮かぶ。
 その記憶を消そうにも脳裏にこびりつき、なかなか引き剥がす事が出来ない。
「まあ、あれですね。望み通り殴られたわけですから、彼らも悔いは無いでしょうね。そういう事にしておきましょう。後から色々でてくるのも面倒ですし……」
 苦笑いを浮かべながら、洋角がリビングデッド達の記憶を消し去った。
「それにしても、暑いのだ。早く帰ってお風呂に入らなきゃなのだ。汗でべとべとして気持ちが悪いしなのだ」
 ビッショリと汗を流しながら、佳菜が疲れた様子で溜息を漏らす。
 イグニッションを解除すれば服は元通りになるが、この不快感を取り払う事は難しそうだ。

●お前ら、みんな殴ってやる!
「何だか物凄く危険な雰囲気が漂っているのですが……。挑まれたからには逃げるわけにはいかないのです! 男は愛嬌、女は度胸なのですよ! ……あれ? なんか違ったかな? と、とりあえず、試合のゴングが鳴ったですよ!」
 特殊空間に引きずり込まれたのと同時に地縛霊から迫られ、朱莉が旋剣の構えを発動させて攻撃力をアップさせる。
 それに合わせて地縛霊が軽やかなステップを踏み、『いますぐ俺を殴ってみろ』と挑発してきた。
「さて、おっぱじめるか」
 旋剣の構えを発動させ、克己が気合を入れる。
 その姿を見て地縛霊がニヤリと笑い、『おうおう、いいねぇ。その方が俺も燃えてくるぜぃ』と興奮した。
「さて、初っ端から行かせてもらうよ。行くよ、スターライト・レイン! リミットリリース、アクセラレーション!」
 地縛霊に語りかけながら、ユエルがアンチェインエアを使う。
 だが、地縛霊は相手が強ければ強いほど燃え上がってしまう性格らしく、『ゾクゾクしてきたぜ。たまんねぇ!』と言って不気味に笑う。
「随分強そうじゃない? 愉しませて貰うわ」
 不敵な笑みを浮かべながら、月子が黒燐奏甲を発動させる。
 それに合わせて絵梨奈が忍獣気身法を発動させ、トウカがゴーストアーマーでケルベロスベビーを強化した。
「蝶のように舞い、蜂のように刺すってね!」
 ギリギリのリスクを楽しみながら、ユエルがクレセントファングを放つ。
 だが、地縛霊に致命傷を与える事が出来ず、返り討ちを食らって吹っ飛んだ。
「呪いを込めた弾丸、避けられる?」
 地縛霊の隙を狙って背後にまわり、トウカが穢れの弾丸を叩き込む。
 次の瞬間、地縛霊が素早い身のこなしで攻撃を避けたが、そこには冷酷に嘲笑している絵梨奈の姿があった。
 そのため、地縛霊はハッとした表情を浮かべるのがやっとで、絵梨奈が放ったフェニックスブロウをモロに食らう。
「月子さん、合わせるよ!」
 トップスピードで突っ込み、フェイントで地縛霊の気を引き、ユエルが月子とタイミングを合わせる。
 それと同時に月子が嫣然と微笑み、呪髪がふわりとなびいて、黒い疾風と化す。
 その一撃を食らって地縛霊が怒り狂い、『もう我慢の限界だっ!』と叫んで、必殺のカミソリパンチを繰り出してきた。
「どんなに早くても、動けなければ意味がないのですよ! 炎の蔦よ、あいつを絡め捕るですよ!」
 地縛霊を射程範囲内に捉え、朱莉がバインディングフィンガーを使う。
 その途端、地縛霊の身体に炎の蔦が絡まり、まったく身動きが取れなくなった。
「その身に毒、受けてみない?」
 地縛霊にジックリと狙いを定め、トウカが穢れの弾丸を撃ち込んだ。
 しかし、地縛霊は……、身動きを取る事が出来ない。
「殺らせてもらう!」
 地縛霊の懐に潜り込み、克己が紅蓮撃を叩き込む。
 その一撃を食らって地縛霊の身体が魔炎に包まれ、特殊空間内にケモノの叫び声にも似た悲鳴が響く。
「これでトドメです! 命刈り獲る、煉獄の黒き炎よ!この地に縛られし霊の鎖を砕け!」
 一気に間合いを詰めながら、朱莉が地縛霊に黒影剣を放つ。
 だが、地縛霊はその攻撃を避ける事が出来ず、身体を真っ二つにされてゴロリと床に転がった。
「ふーっ、なんだかスカッとしたです! ……は!? ひょっとして、社会のストレス解消には、この会社が必須だったんじゃあ……」
 ハッとした表情を浮かべ、朱莉がダラリと汗を流す。
 地縛霊と戦う事で気持ちがスッキリとして、いい汗を掻いたのでダイエット効果もありそうだ。
「まぁ、いまさら何を言っても手遅れよ。もうこんな事を続ける事もないだろうし……。あ、そうそう。近くに美味しいお茶とケーキを出すお店を知っているの。良かったらそこで軽い打ち上げでもどうかしら?」
 爽やかな笑みを浮かべ、月子が仲間達を食事に誘う。
 そして、月子は仲間達を連れ、廃墟と化した事務所を後にした。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/07/25
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冒険結果:成功!
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