俺は特別な存在


<オープニング>


「くそっ……バカかっ! どいつもこいつもっ……明白だろ! 俺とそいつのどちらが正論かっ……!」
 ――バシン!
 男はキーボードに両手を叩き付けた。
 モニターには匿名で書き込める掲示板が映し出されており、そこでは男が投稿した政治に対するカキコミが徹底的に批判されていた。
「まぁいい。お前ら掲示板の中で精々いきがってるが良いさっ……俺はお前達みたいなクズとは違う! 特別な人間なんだっ……今に日本を……世界を動かす様な立場になるっ……そうさ、俺は特別なんだ……なのに、どいつもこいつも何故解らないっ!」
「何かお困りの様子ですね?」
「っ!?」
 男の部屋は安アパートの一角。
 友達も居なければ恋人も居ない。たまに宗教の勧誘やセールスが来ることはあっても、部屋の中に他人を上げる機会は限りなく0に近かった。
 にもかかわらず、その女の声は男のすぐ後ろからしたのだ。
 見れば、女の他にもフードを被った取り巻きが数人。
「だ、誰だっ! お前らどうやってっ」
「あなたは大きな力を……その素質を持っています。こんな小さな部屋に籠もってないで、その力を発揮しませんか? そしてあなたを認めなかった人間に、罰を与えたくはありませんか?」
 女が言い終えるより先に、男は椅子から腰を上げていた。
「あぁ、待っていたっ……この時を……そうだ、俺の本当の力を発揮させてくれ! 俺はこんな所に引き籠もっている人間じゃないっ!」
 男の眼は爛々と輝き、狂気とも言うべき危険な光に支配されていた。

「良く来てくれたわっ。皆、聖女アリスの事は知ってるわよね? 彼女が現われたの」
 柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)は挨拶もそこそこに、早口で本題へと入った。
「原初の吸血鬼を生み出すゲームを行う為に、人材集めをしているの。舞台として使われる場所は、多額の金銭を積んで住人を立ち退かせた空き屋みたいね」
 ゲームに参加するのは、アリスによってスカウトされ貴種ヴァンパイアとなった日本人――ヤマダ・ユウイチ(29)――である事。
 そして現在、彼が恨みを抱いていた人々(元担任教師や元バイト先の上司等)が誘拐され、儀式の場である建物に監禁されている事までを莉緒は説明した。

「原初の吸血鬼のゲームは、元々準備にかなり手間暇が掛かるものだったんだけど……聖女アリスは、その手順を効率化して短期間で原初の吸血鬼を生み出す方法を確立したみたい」
 能力者――人間にとっては、ぞっとしない話だ。
「今回のゲームでは、貴種ヴァンパイアが恨みを抱いている人々をなぶり殺しにする事で、彼は原初の吸血鬼に変化すると言う事みたい」
 この貴種ヴァンパイア自体は、決して強い訳ではない。しかも時間を懸けてなぶり殺しにする必要がある為、阻止のチャンスは十分に有る筈。
 囚われた人々を救出する事も可能だと莉緒は言う。
「ただ、ね……彼らもあなた達の事は警戒していて、迎撃の為の戦力を儀式の護衛として配置しているの。吸血鬼株式会社に所属するサキュバスと、妖獣の群れよ」
 このサキュバス達に敗北するか、時間を懸けすぎてしまえば、儀式は完成してしまう。
「そうならない様に、全力を尽くして頂戴っ!」

「このサキュバスキュアは、喋る事は無いわ。当然説得も不可能よ。妖獣は野犬や野良猫と言った小型〜中型の物が計8体程度と、熊タイプの大きな奴が1体ね」
 猫型の妖獣は動きが素早く、近接戦闘に特化したタイプ。犬はバランスに優れ、牙には猛毒がある。
 熊は力が強くかなりタフ。岩を投げつける等、遠距離への攻撃も可能な様だ。
「この護衛達さえ倒しちゃえば、貴種ヴァンパイアは楽勝な筈よ。ちゃっちゃと儀式を中断して、一般人達を助けてあげてね」
 また、戦場となる空き屋はかなり大きな館であり、広さや足場、光量等は特に気にする必要は無いだろう。

「危険な任務ではあるけど、あなた達なら大丈夫よ。……ただ、原初の吸血鬼が生まれてしまった場合だけは、速やかに撤退して頂戴。くれぐれも、自分達だけで倒そうとしないで……良いわね?」
 莉緒はそう念を押してから、能力者達を送り出すのだった。

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参加者
北脇・千里(ゆめのまもりて・b41171)
池田・勇人(デッドマン・b44604)
アルスセリア・カーライル(雨夜月・b45933)
冴樹・戒璃(真貴種ヴァンパイア・b50973)
不破乃・里桜(中学生呪言士・b53851)
日照・戮屠(ラブシュウイチローエターナル・b55057)
御門・真綾(高校生土蜘蛛・b55143)
黒淵・祢子(高校生真魔弾術士・b57911)



<リプレイ>


 かつて地元の名家と呼ばれていた人々の屋敷か、大富豪がバブル期に建てた別荘か、ともかくその洋館は今、原初の吸血鬼を生み出す為の「ゲーム」の舞台となっていた。
「ま、待てっ……ヤマダくん! 私は決してそんな……ぐわあっ!!」
 大ホールでは、初老の男性が容赦の無い暴力に曝されて苦悶の声を響かせる。
 彼はヤマダ・ユウイチの高校時代の担任。
「黙れっ……! お前が正当な評価をしなかったせいで……俺がどれほど苦しんだと思ってるっ!」
 アリスの手によって貴種ヴァンパイアとなったヤマダだが、彼が人間であった頃の不遇・苦悩は他者が自分を正当に評価しなかった事に原因があると信じて疑わなかった。
「お、おいヤマダ……落ち着けよ……ぐうっ!!」
「うるせぇっ! 偉そうにっ……! たかだかバイトリーダーの分際で俺に命令しやがって! 俺は元々人に使われる人間じゃねぇんだよっ! それにお前ら、俺のことを色々言ってくれたよな……たっぷり後悔させてやるっ!」
「ひぃっ!」
 自分に厳しく当たったバイト先の先輩、自分を蔑んだクラスメート、匿名掲示板の住人等々。彼に味方はおらず、接する人々のほぼ全てが敵であった。
 そして今、そんな「敵」に対する復讐の機会を得た彼は、存分に恨みを果たそうとしていた。
「……っと、いけねぇ……お前らを楽に死なせちゃ、ゲームが成立しないんだった。俺は更なる力を手に入れて、いずれは……クククッ……ハハハハッ!!」
 ――ドンッ! ドカッ!
 有頂天になって高笑いする彼だったが、ホールに繋がる唯一の扉が唐突に砕け散った。
「うおりゃああっ!」
 雄叫びを上げながら、先陣を切るのは日照・戮屠(ラブシュウイチローエターナル・b55057)。
 すぐさま高邁な精神に裏打ちされた覚悟により、最高の一撃を繰り出せる構えを取る。
「……お前らか、俺が生まれ変わるのを妨害しようとする馬鹿共と言うのは……」
 ヤマダはさほど驚く様子も見せずに、自分を苛めていた元クラスメートを足蹴にし続ける。
 アリスは能力者たちが「ゲーム」を妨害する事を見越しており、ヤマダに伝えると共に彼を援護する為の兵力を配していた。
「そこでそいつらと遊びながら、見ていると良い。この俺が特別な存在になる瞬間を……!」
「貰い物の力を得てるくせに特別? ばっかじゃないの?」
 得意げに言い放った彼に対し、すかさずそう言い返すのは不破乃・里桜(中学生呪言士・b53851)。
「黙れっ! お前らも1人残らず皆殺しにしてやる! さぁ行けっ!」
 これに激昂したヤマダは、サキュバスキュア擁する護衛部隊に命じ、能力者たちへの迎撃に当たらせる。
「こうなった以上は力づくで、とめます。政治とかは僕にはまだ判りませんが、今の貴方が間違っているって事だけは判ります」
「生意気なっ……お前らに何が解る! 俺は正しいっ! 間違ってるのは世界の方だっ!」
 しかし北脇・千里(ゆめのまもりて・b41171)ら、能力者たちも護衛の存在は既知のこと。慌てる事無く戦闘態勢を整えてゆく。
「悪趣味なゲームに染まり切る前に、先輩貴種として手厳しく引導渡してやるよ、覚悟しやがれ」
 誇り高き貴種ヴァンパイアの血より、魔力を開放する冴樹・戒璃(真貴種ヴァンパイア・b50973)。
「馬鹿に刃物を持たせるなんざ、趣味悪ぃなぁ……さて、時間もない事だしさっさと蹴散らすとしましょ」
 時間を掛ければゲームが完了し、手がつけられなくなってしまう。アルスセリア・カーライル(雨夜月・b45933)は仲間の攻撃が効率的にゴーストを捉えることが出来るよう、前衛に位置取る。
「時間はないにゃ、手短に行くにゃよ! シロ、祢子ちゃんに力を!」
 黒淵・祢子(高校生真魔弾術士・b57911)の脳裏には、これまでに吸血鬼との戦いで払った大きな犠牲がよぎる。
 これ以上の犠牲を出さない為、ケットシーのシロとコンビネーションを取りながら魔法陣を展開する。
「アリスは高台から、のんびりお茶しているのかね?」
 標的と定めた熊妖獣との距離を詰めつつ、ふと考える池田・勇人(デッドマン・b44604)。
 最悪、貴種ヴァンパイアが原初化してしまうとしても、ゴーストチェイスでその足取りを追うことは怠らないつもりだ。
「『ゲーム』か。だがそれを仕掛けたアリスも操られている被害者だからな。彼女に罪を重ねさせない為にも、全力でゲームを阻止してみせる」
 白燐蟲達を鳳凰水晶に纏わせ、戦意を高める御門・真綾(高校生土蜘蛛・b55143)。
 狂気の「ゲーム」を阻止する為の、そして更なる脅威を広げない為の、善と悪の戦いが幕を開けた。


(「誰がどんな素質を持ってたって、それは自分で努力して発揮できるようにするべきであって、誰かにありもしないものを与えられるのはなんか違うよね」)
 狂信的と言える程に自らの才能を疑わず、うさん臭いとしか思えないアリスの誘いに二つ返事で乗ったヤマダ。里桜には、まるでカルトに嵌った狂信者の様に感じられた。
 ともかく彼を止めるためにも、まずは目の前の敵に対する必要がある。紡がれる声なき歌声は、押し寄せる妖獣達の精神を強制的に沈静化し、その動きを止める。
「3体、止まります」
 千里は皆に状況を伝えつつ、リフレクトコアを展開。
「早急にくたばって貰おうか」
 戒璃は指先に生体電流を集束させ、やがて膨大な電力を篭めたビーム砲を放つ。
 ――バシィィッ!!
「さて、時間もない事だしさっさと蹴散らすとしましょ」
 アルスセリアの意志に従い黒燐蟲達が乱舞。ライトニングヴァイパーに呼応した立体的な広範囲攻撃を展開する。
「雑魚は任せるにゃよ!」
 更には、祢子の頭上に浮かぶ巨大な火球が燃え盛りながら敵中に落下。押し寄せるゴーストらの周囲は、瞬く間に灼熱の地獄と化した。
「くっ……一方的だろうっ! 何のための護衛だっ!」
 圧倒的とも言える火力に押されるばかりの護衛妖獣達。ヤマダもさすがに「ゲーム」に集中する余裕をなくし、焦燥と怒りの声を上げる。
 ――グルルォォッ!
 そんなヤマダに焚き付けられたのか、或いは傷を負った事で一層憎悪の力が強くなったのか、一斉に飛び掛かってくる妖獣犬と猫達。
 素早い動きと鋭い牙、爪による波状攻撃が容赦無く前衛の能力者達を襲う。
「私の分も任せるよ、リクト!」
 真綾は矢面に立って敵の攻撃を防ぐ相棒、戮屠へ白燐蟲を舞わせる。
「――あとは任せろ、マーヤ!」
 この白燐奏甲により手傷を完治させ、力を強めた戮屠は、更なる犬の牙を紙一重で見切り、そのまま流れるような動きで龍尾脚をたたき込む。
「だらしねぇな」
 同じく前衛に立つ勇人は、一際大きく狂暴な熊妖獣と対峙。闘気を具現化した鎖により、怒り狂う熊の注意を自らに向けさせる。

「これで、何匹目だっけ」
 重傷を負っていた犬妖獣へ、呪詛の力により引導を渡す里桜。
 敵味方入り乱れての乱戦だが、確実に敵は減りつつあった。
「皆さんに夢の加護を……それで5体目です!」
 その一方で、能力者達も無傷では無い。千里は主に前衛の仲間を癒す為に幻夢のバリアを再度展開しながら、戦況を皆に伝える。
「6体目、だな」
 その直後、青龍の力を帯びた戮屠の拳が手負いの妖獣犬を仕留め、残る妖獣は熊を含め3体にまでその数を減らす。
「もう一押しか、トドメを頼む」
「ん、りょーかい」
 戒璃は幾たび目かのライトニングヴァイパーによって妖獣らを貫き、その体力を大幅に削る。呼びかけに応えたアルスセリアは、瀕死の猫妖獣に狙いを定めると狼牙を一閃。
 その活動を完全に停止させた。
「オレは格闘技ファイターじゃなくて、サッカー選手なん……げふっ」
 残る妖獣の中でも、最大最強の熊妖獣と渡り合う勇人。「Tombstone Piledriver」が熊の身体に杭を打ち込めば、今度は熊の剛腕が唸りを上げるといった一進一退の攻防が繰り広げられる。
「合わせて! 一気に行くにゃよー!」
「援護するよ」
 祢子が隕石の魔弾を熊目掛けて降らし、その間に真綾は勇人の傷を癒す。これまでの所、能力者達の連携にそつは無く、極めて効率的に妖獣達を撃破していた。
「くそっ……役立たずどもめっ! 後で俺が纏めて片付けてやるっ……」
 妖獣らが数を減らして行くのを目の当たりにし、浮き足立つヤマダ。
 しかしその事が逆に「ゲーム」の進行に集中させる結果を生んだ。もはや護衛には頼れない事を悟ったのだろう。


「先に片付けて置くよ」
 振るわれる里桜の声楽杖。最後の猫妖獣が倒れ、残るは大物のみ。
「行きます」
「……さっさと寝てろ、邪魔だ」
 千里の手に生じる、光り輝く槍。
 戒璃はそれが放たれるのと同時にサキュバスへ間合いを詰める。
 ――ザシュッ!
 螺旋状の文字列――詠唱停止プログラムを纏った拳が、光槍の直撃と共にサキュバスを打ち据える。
 無論サキュバスも無抵抗ではなく、戒璃に纏わり付いて精気を貪らんとする。
「はい、ざーんねん。そう簡単にヤらせるわきゃないっしょ」
 だが、アルスセリアの足下より伸びた黒い影が、サキュバスの側背を突いて深手を負わせる。
 数と質、そして連携において優位に立った能力者達に対し、彼らが出来る事はほぼ無くなっていたのだ。
「トドメにゃよ!」
 祢子がにゃんこ☆スタァを振るうと同様に、シロも杖を振り下ろす。
 ――バシイィッ!!
 主従の放ったエネルギー弾は共にサキュバスへと直撃する。
 物言わぬサキュバスは、静かに床へ倒れ込みやがて消滅した。
「援護する」
 ――グウォォォ!!
 戮屠の龍尾脚が、完全に熊妖獣の死角を突く形で打ち込まれ、熊は怒りと痛みに唸りを上げる。
 その太い腕を振り回し、最後の抵抗を試みる巨獣。
「手間取らすな、倒れ損いが」
 しかしそれも束の間、狙い澄ました勇人の一撃が熊の心臓を強かに打ち据えたのだ。
 最後の妖獣はゆっくりと傾き、やがて仰向けに倒れた。
「他に有名になりたい奴いるか?」
 護衛部隊は一体残らず全滅し、残る敵はただ1人。


「なぜ邪魔をするっ……なぜ解らん! 俺は神に選ばれた……特別な存在――」
 味方は全滅し「ゲーム」は完了していない、ヤマダにとって絶体絶命の状況だった。
 彼はそれでも、必死で自分の正当性を訴える。
「ふーん。あんたは特別なのかもね、屑の方向でさー」
「き、貴様ぁっ!」
 里桜の罵倒で更に怒りを露わにするが、だからと言って有効な手段は見当たらない。
「まったくだ。政治って正直、批判が飛び交う事で改善していく物だろ? 批判されたからって他者をクズ扱いした時点で、上に立てる器はお前にねーよ。自意識過剰も程々にしろ、悪趣味野郎」
「黙れ黙れぇっ! この世は特別な人間が上に立って、絶対的な支配力で愚民達を導いて行くものなんだよォォッ!! 俺に対する批判は許さないっ! 世界が間違っていようと俺は絶対に正しいんだ!」
 戒璃の正論に対し、もはや狂気としか表現しえない妄言を喚き散らすヤマダ。
「思い込みの激しい馬鹿ってのは始末に負えねぇな」
「うるさい! 愚かなのは俺以外の人間だ!」
「んー? 別に一般論で、お前のコト言った訳じゃねぇよ?」
 自覚があるのか、とばかりに嘲笑うアルスセリア。
「くそっ……殺してやる! どいつもこいつも殺してやるよォォ!」
 怒りが頂点に達したのか、ヤマダは「ゲーム」の為に先ほどまでいたぶっていた一般人達へ目を向ける。まずは簡単に殺せる彼らを皆殺しにしようと言うのだろう。
「『敵』に背を向けて弱者をいたぶるのがお前のやり方か?」
「何ぃ?」
「自分の偉大さを計りたいんでしょ? それなら、メモリの少ない一般人じゃなく私達で計ってみない?」
 戮屠と真綾は、慌てることなくヤマダへ言葉を掛ける。
 任務は原初の吸血の誕生を防ぐ事だが、失われて良い命は無い。
「……良いだろう、後悔させてやるよ……この俺を本気にさせた事をな!!」
 レイピアを抜き放ち、構える男。
 自分は特別な存在であるという矜持だけが、今の彼を動かしていた。

「ば、ばかなっ……こんな事……有って良い筈がっ……!」
 1分と持たず、無様に床をのたうち回るヤマダ。
 腕利き能力者8人に対し、貴種になったばかりの彼が太刀打ち出来る筈も無かったのだ。
「結局少数派は、多数派に吸収される運命なのだよ」
 勇人とアルスセリア、祢子は一般人達を悠々と確保に成功。
「お、お前ら待て! 俺はっ……」
「お前が選ばれているというなら、その力をみせてみるがいいっ!」
 尚も聞き苦しい戯れ言を口にしようとする男に対し、戮屠は茜染を振るう。
「ぐふあっ! 何かの……間違いだ……この俺が……」
 顔面を殴られて倒れた男だが、よろよろと立ち上がってレイピアを振り回す。
 ――キィン!
 真綾は二振りの宝剣で易々とこれを受け流し、必殺の間合いへ滑り込む。
「――ぐっ!!?」
 そして次の瞬間、彼女の背より伸びた蜘蛛の足は、男を貫いたのだった。
「ま、お前が私達の力量を測る物差しだった。それだけの事……物差しに人形。お前もアリスも、犠牲者、か……」
 さしものヤマダも床に倒れ伏したきり、二度と立ち向かってくる事は無かった。

 かくて一般人は全員を無事救出、貴種ヴァンパイアは捕縛された。作戦は完全に成功したのだ。
 狂気の「ゲーム」を阻止した能力者達は誰1人欠くことなく、館を後に――凱旋の途についたのだった。


マスター:小茄 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/08/05
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