働いたら負けだっ!


<オープニング>


●都内某所
 夜な夜な不良達が集まっていた場所があった。
 彼らは『働いたら負けだ!』を合言葉にして、窃盗や詐欺行為を働いていたらしい。
 しかも、彼らは犯行がバレた時の事を考えて、盗んだ自転車やバイクの色を塗り替えたり、友達に売り飛ばして証拠隠滅を図っていたが、参加者達の高年齢化が進むにつれて、『そろそろ真面目に働いた方がいいんじゃあ……』感が強くなっていたようである。
 それがキッカケになって裏切り者が出てしまい、就職どころか人生まで棒に振ってしまい、この場所が使われる事はなくなった。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。
 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化した民家。
 ここは不良達がアジト代わりに使っていた場所だったんだけど、色々と問題があって今では廃墟と化しているわ。
 廃墟の中にはリビングデッド達がいて侵入者達を見つけると、『俺がこの金を持っていくから、あいつらの足止めを頼む』、『いや、お前がアレよ』、『いや、俺はアレがアレでアレなんだよ』、『つーか、面倒臭ぃ』といったやり取りをし始めるわ。
 まぁ、相手が揉めているうちに決着をつければ、楽に倒す事が出来るから何の問題もないんだけど……。
 それと、部屋の一部が特殊空間と化していて、女性の地縛霊が留まっているわ。
 地縛霊は『お母さん、パートを3つも掛け持ちしているから、辛いのよ』って言ったり、『もう、うちにはお金がないの』って呟いたり、『産まなきゃ良かった』って愚痴ったりして、何とも言えないどんよりモード。
 しかも、侵入者達を自分の子供と勘違いして呪いの言葉を吐いてくるから、くれぐれも気をつけてね。

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参加者
天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)
玖田・時那(ラディカルハイスピードガール・b16160)
岬・勇護(高校生黒燐蟲使い・b20918)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
白雪・勇姫(赤にして紅翼・b31194)
矢代・真魅(破戒の微笑・b35454)
御剣・蛍(中学生ヤドリギ使い・b37792)
伊弉諾尊・りおん(銀誓館学園の大魔王・b56157)
天宮・沙希(スケバン・b67479)
宮藤・玲(無窮の蒼色・b71517)
国津・緋弾(紅き虎の如く・b73646)
久瀬・悠理(蒼穹の天狼・b73652)
NPC:鬼頭・田吾作(ファイアフォックス・bn0034)




<リプレイ>

●働かざる者、食うべからず
「……働いたら負けか。近頃、そういう言葉を良く耳にするな……」
 険しい表情を浮かべながら、国津・緋弾(紅き虎の如く・b73646)がボソリと呟いた。
 ゴーストが確認された民家は数年ほど前から廃墟と化しており、辺りにはまったく人の気配がない。
「昔、そんな事を言って話題になった人がいましたね。当時は『この人は何を言っているのか』と思いましたが、最近では本当に働いたら負けとしか思えない世の中になってきました……。だからといって、『働かなくていいんだ! 俺は勝ち組だ!』とか思ったらダメですよ、田吾作先輩。それは人としてどうかと思いますし、いい年して無職だと世間の目は厳しいですからね」
 やけに真剣な表情を浮かべながら、御剣・蛍(中学生ヤドリギ使い・b37792)が鬼頭・田吾作(ファイアフォックス・bn0034)の肩を叩く。
 その途端、田吾作が顔を真っ赤にして、『俺は無職じゃねぇ! 日々、世界の秩序を守っているんだ』と言い放つ。
「でも、田吾作先輩の守っている世界って、ネットですよねー。不良達はある意味、働いていますけど、四六時中ネトゲ三昧の田吾作先輩は……。あっ、そう言えばバイトしているんですよね? 今度、働いている姿を見に行くですから、さっさと教えやがれですよ」
 満面の笑みを浮かべながら、伊弉諾尊・りおん(銀誓館学園の大魔王・b56157)がツッコミを入れる。
 その言葉を聞いて田吾作が胸をドキッとさせ、『バ、バイトじゃねぇよ。フ、フリーダムファイターだ』と答えを返す。
「にー……、就職って大事だよね。まー、とにかく不良のたまり場とか鬱陶しいし、それが30近いおっさんになったら救いがたいよね。乙女としては、やや不安な場所かもー」
 懐中電灯を照らしながら、玖田・時那(ラディカルハイスピードガール・b16160)が警戒した様子で室内に入っていく。
 室内は蜘蛛の巣まみれになっており、カビの臭いが充満していた。
「人間は人生の大半を働く為に生きている様なもんだからなあ。お金がないと生きて行けない世の中だし、俺はまだ学生だから説得力のある事は言えないけど、犯罪に精を出すくらいなら、他に使いどころがありそうだけどな」
 しみじみとした表情を浮かべ、岬・勇護(高校生黒燐蟲使い・b20918)が溜息を漏らす。
 だが、不良達は自分の時間を何よりも大切にしており、その時間を削ってまで仕事をするなど選択肢が存在しなかった。
「確かに罪を犯すのは流石によろしくないですねぇ。そんなんでしたら、負け組でいいので働く方を選びます……」
 当時の新聞記事を読みながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が答えを返す。
 不良達にとって犯罪をする事は生活の一部であり、楽にお金を稼げる手段の一つになっていた。
「は〜、もうなんて言ったら……、情け無いの一言ッす。高齢化で働いた方が良いとは……、遅すぎるッす!」
 呆れた様子で溜息をつきながら、白雪・勇姫(赤にして紅翼・b31194)がツッコミを入れた。
 だが、不良達がいくら真面目に働こうとしても、『その歳で経験も、資格もないんじゃねぇ』と言われたり、『他にも面接を受けているんでしょ? だったら、履歴書を返すから、そっちに行きな』と言われて散々だったらしい。
「しかも、母親には疎まれ、挙句の果てに産まなきゃ良かった、か。こりゃ、家庭にも問題があったようだな」
 不機嫌な表情を浮かべながら、天宮・沙希(スケバン・b67479)が口を開く。
「俺には母親がいないから何とも思わんが、その一言が何らかの引き金になった事は間違いないな。だからと言って不良のした事が帳消しになるわけではないが……」
 リビングデッド達の存在に気づき、宮藤・玲(無窮の蒼色・b71517)が仲間達に行く手を右手で阻む。
 しかし、リビングデッド達は戦ったら負けだと思い込んでいるらしく、『俺がこの金を持っていくから、あいつらの足止めを頼む』、『いや、お前がアレよ』、『いや、俺はアレがアレでアレなんだよ』、『つーか、面倒臭ぃ』といったやり取りをし始めた。
「なんかこのリビングデッド達、凄い小物臭がするんだけど……」
 生暖かい視線を送りながら、久瀬・悠理(蒼穹の天狼・b73652)が流す。
 次の瞬間、リビングデッド達が睨みを利かせ、『俺達の逆鱗に触れた奴が、どんな末路を辿ったのか、てめえらに教えてやるっ!』と啖呵を切った。
「あらあらあら、なかなか勇ましい男の子達がいっぱいねー。いいわ、おねぇさんが可愛がってあ・げ・る♪」
 妖艶な笑みを浮かべながら、矢代・真魅(破戒の微笑・b35454)がウインクする。
 その言葉を聞いてリビングデッド達が興奮し、『やっぱ、隠していてもバレちまうなぁ。俺達がいかに魅力的な存在なのか!』と調子に乗った。
「もはやリビングデッドとなった身ではあるけれども……、今からでも、お灸をすえて差し上げなくては……いけませんね……」
 仲間達にアイコンタクトを送り、天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)がイグニッションをする。
 それと同時にリビングデッド達がカンフーの構えを取り、『……やめておけ。俺達には勝てねぇ』と警告した。

●怪我をするからやめておけ
「……勝てねぇか。その言葉が本当なら、仲間割れしているうちに倒せばよかったか」
 軽く冗談を言いながら、悠理がクルセイドモードを使う。
 先程からリビングデッド達は強がっているだけで、なかなか攻撃を仕掛けてこない。
「だったら、纏めて掛かって来い。どうせ、誰が俺達の相手をするかで揉めていたんだろうからな」
 リビングデッド達と対峙しながら、緋弾が虎紋覚醒で攻撃力を底上げする。
 しかし、リビングデッド達は悔しそうに唇を噛み締め、『いや、今日は……都合が悪い』と弱気になった。
「……いまさら何を……。それなら、こちらから参ります……!」
 『犯罪は許せない!』という乙女の怒りを拳に込め、翼がいつでも先陣を切れるように陣取って雪だるまアーマーを発動させる。
 それに合わせて時那がびしっと武器を構え、プロトフォーミュラを発動させてリビングデッド達を威嚇した。
「さあキミ達、おねぇさんのお相手をしてくれるのは誰かなぁ?」
 蠱惑的な雰囲気を漂わせながら、真魅が雪だるまアーマーを使って、リビングデッド達を誘う。
 その途端、リビングデッド達が鼻の下を伸ばし、自分達の顔をさして『俺だ、俺!』とアピールした。
「こういう時だけは必死になるんですねぇ。これだけの力を仕事に向ければ、こんな事にはならなかったと思うのですが……。働いたら負けとか、そんなの認められないんですよね。……残念ながら」
 リビングデッド達を射程に捉え、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、リビングデッド達が黒燐蟲に襲われ、『た、助けて、お姉さん!』と悲鳴をあげる。
「そんなに焦らなくても、全員お相手してあげるわ♪ だから順番に並んでくれる? おねぇさん、順番も待てない子は嫌いなの!」
 天使のような笑みを浮かべ、真魅がリビングデッド達を誘導した。
 その言葉を聞いてリビングデッド達がホイホイと並び、少年のように澄んだ瞳で真魅に視線を送る。
「これはスゴイ行列ねぇー。おねぇさんワクワクしてきたわ♪ おねぇさん、かなり激しいけどあなた達は耐えられるかしら? それじゃ、スゴイ事をして、あ・げ・る♪」
 ハートマークを浮かべながら、真魅がナイトメアランページを放つ。
 そのため、リビングテッド達が『だ、騙したなー!』と悲鳴をあげたが、後の祭り。
「逃げても無駄だよ!」
 リビングデッド達に警告しながら、時那が翼と連携を取って隕石の魔弾を放つ。
 それに合わせて翼がリビングデッド達の行く手を阻み、より多くの敵を巻き込むような立ち位置を移動して封神十絶陣を発動させた。
「ちょっと刺激が強過ぎたようだね」
 苦笑いを浮かべながら、悠理がプロミネンスパンチを叩き込む。
 その一撃を食らってリビングデッドが崩れ落ち、『戦ったら……、負けなんだ』と呟いた。
「それなら、さっさと消えてくださいな」
 すぐさま暴走黒燐弾を放ち、洋角がリビングデッド達を倒していく。
 そのため、リビングデッドがダラダラと汗を流し、『に、逃げろー!』と叫んで走り出す。
「行くよ、合わせて! 必殺のときにゃんパンチ☆」
 翼と連携を取ってリビングデッド達の行動範囲を狭め、時那が間合いを詰めてプロトストランダムを叩き込む。
 他のリビングデッド達も翼や緋弾の攻撃を食らい、次々と肉塊と化して動かなくなった。
「……無事、終わりました……ね。働かざるもの、食うべからず……です、よ」
 肉塊と化したリビングデッド達を眺め、翼が彼らに語りかけるようにして呟く。
「……働きたくないと言う人は……きっと多いのだろう。しかし、皆働いて行くんだ。……そう、人の為……転じては自分の為に、人は働く」
 そう言って緋弾は肉塊と化したリビングデッド達に背を向けた。

●もう……、疲れたわ
「何だか、どんよりしているなあ。これもこいつの力なのか……?」
 黒燐奏甲を発動させながら、勇護が地縛霊と化した女性を睨む。
 地縛霊はどんよりとした雰囲気を漂わせており、恨めしそうな表情を浮かべてブツブツと愚痴をこぼしている。
「おそらく、生前はデキの悪い息子に、苦労させられっぱなしだった女性でしょうね。言葉の1つ1つに物凄く実感がこもっています」
 その言動から生前の地縛霊を想像し、蛍が雪だるまアーマーを使う。
 地縛霊が何か呟くたび、田吾作がひどく傷ついており、その場に崩れ落ちて、立ち上がる事が出来ないほど落ち込んでいた。
「凹んでる田吾作先輩は……、放っておくっす。さっさと就職するッすよー」
 明後日の方向を見ながら、勇姫が黒燐奏甲を発動させる。
 田吾作にとって、これは試練。
 獅子は我が子を谷底に突き落とすが如く、勇姫は彼の成長を信じて突き放した。
「……どうしたんですか、田吾作先輩? まさか毎月高額の仕送りを送るよう実家に電話して、お母さんから地縛霊が口にしているような事を言われたんですか? ひ、酷い……。田吾作先輩は確かにヘッポコですけど、そういう事はしない人だと信じていたのに……」
 コッソリと目薬をさした後、蛍が田吾作を見つめて嘘泣きする。
 その言葉を聞いて田吾作がハッとした表情を浮かべ、『いや、あれは借りただけなんだ。……出世払いで』と消え去りそうな声で答えを返す。
「まぁ、これ以上、田吾作先輩をいじめて、ゴーストの仲間入りをされても困りますから、地縛霊のオバちゃんを倒しましょうか」
 夜な夜な化けて枕元に立たれても困るため、りおんが何となく田吾作を励まして魔弾の射手を発動させた。
「よく見ろ、田吾作。あれはお前の母さんなんかじゃないだろ? それにお前は要らない子なんかじゃない。やれば出来る子なんだ。よし、一緒に頑張ろうぜ」
 田吾作を励ましながら、玲が黒燐奏甲を使う。
 その途端、田吾作がムクッと立ち上がり、『おっちゃ、頑張ろうぜ』と自分自身を奮い立たせた。
 だが、地縛霊が恨めしそうな表情を浮かべ、『産まなきゃ良かった』と口をこぼしたため、田吾作は空気の抜けた風船の如くその場にしゃがみこんだ。
「産まなきゃ良かっただと! てめぇがそんな気持ちで子どもに接するから、子どもがグレんだろうがよ! お前みたいな親がアタシは一番頭にくるんだ。子どもの事を理解しようともしねぇで、勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」
 イライラとした表情を浮かべ、沙希が地縛霊に説教をし始めた。
 そのため、地縛霊がムッとした表情を浮かべ、『貴女に何が分かるの! それに誰よ、アンタ!』と反論する。
「……アタシかい? アタシは銀誓館学園3年5組、天宮沙希。アンタに捨てられた子どもたちの無念、スケバンと呼ばれたアタシが晴らしてやるぜ!」
 自ら名乗りを上げながら、沙希がタイマンチェーンを放つ。
 しかし、地縛霊は自分の非を認めず、『貴女だって10年経てば分かるわ!』と断言した。
「そんな所でうじうじしても、何も始まらないぜ? 俺のパンチで目を覚ますんだ!」
 地縛霊の懐に潜り込み、勇護がプロミネンスパンチを叩き込む。
 それに合わせて蛍が氷の吐息を放ち、りおんが炎の魔弾を撃ち込んだ。
 その間も田吾作は世間の風当たりが冷たかった事を思い出し、魂が抜けた様子で項垂れている。
「やれやれ、この程度の事で落ち込むなんて……。世の中、弱肉強食っすよ。そんな事で生き残れると思っているんッすか」
 予想以上に落ち込んでいる田吾作に声をかけた後、勇姫が地縛霊の死角に回り込んで獣撃拳を叩き込む。
 それと同時に勇護が呪いの魔眼を放ち、地縛霊の身体を内側から引き裂く。
「これで終わったと思うなよ。こいつは、親に捨てられた子どもの分! こいつは、てめぇに殺された者達の分! こいつは、アタシの怒りの一撃だ!」
 地縛霊が愚痴をこぼす隙も与えず、沙希が情け容赦なくインパクトを叩き込む。
 次の瞬間、りおんが一気に間合いを詰め、スラッシュロンドを放ってトドメをさした。
「……終わったな」
 地縛霊の断末魔が響く中、玲が疲れた様子で溜息を漏らす。
 だが、田吾作は未だに落ち込んでいるらしく、『頑張っているんだよ、俺なりに……』とうわ言のように呟いている。
「……って、いつまでしょげてんだ。帰りに美味いラーメンでも食うぞ」
 田吾作の胸倉を掴んで起こし、沙希がその足でラーメン屋にむかう。
 嫌な事もラーメンを食べれば、忘れる事が出来ると信じて……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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いまいち
参加者:12人
作成日:2010/08/06
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冒険結果:成功!
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