【銀の魔導師】引き裂かれた2人

<オープニング>


 数人の武装した男達が、逃げる者を追い、探し回っていた。

「くそ、大丈夫か鈴音。ったく……どうしてこんな事になったんだ!?」
「ご、ごめんなさいっ、甲斐っ。私が、あの人達の密談の場に居合わせちゃって……!」
 追われているのは、商団と共に旅を続けていた男女2人である。
 密談の場に運悪く鉢合わせた鈴音は一気に武器を手に取った男達からなんとか逃げ延び、共に旅をする男、甲斐の元へと辿り着く事が出来ていた。
 そのまま2人は集落のはずれに近い場所に隠れたものの、すでに集落の出入り口は塞がれ、逃げ場はない。
 2人が隠れているこの場所も、いずれは見つかってしまうだろう。
「そう言えば、皆は……無事なのか……?」
 甲斐が心配するのは、他にもこの集落にいた商団の仲間の安否。
 上手く逃げおおせてくれれば良いが――と、自分達の逃走もさることながら、仲間達の無事も気になっている様子だ。

「あぁ、お仲間さんなら……とっくにあの世に逝ったぜ?」
 そんな2人の会話に、1人の男が割り込んだ。
 当然、その男は商団の人間などではない。2人の命を狙う、集落の人間である。
「見つかったか……ちぃっ!」
 刀を抜き構えた甲斐は鈴音を護るように立ち、男を見据えて。
 敵は1人だと判断した彼はそのまま前に突進すると、相対する男と刃を交えていく。
 しかしこの集落は敵が居を構える敵地……それは、敵にかなりの地の利がある事を意味していた。
「か、甲斐っ!?」
 後ろから聞こえた鈴音の悲鳴に振り返れば、別の男が鈴音の首筋に刃を当てている姿が目に映る。
「鈴音っ!」
「おっと、抵抗はするなよ? お前が抵抗すれば、この娘はここで死ぬ。しなければ、助けてやっても良いんだがな」
 もちろん、男には鈴音を生かすつもりもない。
 だがこういった脅しが最も効果的である事を男は知っていた。
「く、くそっ……」
 万事休す。甲斐が刀を捨てようとしたその時――!

「はい……そこまで」
 突如、鈴音を捕らえている男が石に変わる。
 現れた銀髪の子供は、何者なのか。いや、そんな事を考えている暇はない。
「守りたい人がいるなら、最後まで剣を捨てちゃ駄目だよ。諦めなければ、道は開けるんだから」
 銀髪の子供、シェルティラ・シャラザードは、そう言うと同時に甲斐達へと力を貸し始めるのだった。
 
「……また、シェルティラが龍脈の力を狙って動いたわ」
 能力者達が集まったことを確認すると、琴崎・結歌(高校生運命予報士・bn0261)はシェルティラが再び現れた事を告げる。
「知っての通り、龍脈は日本の大地に走る魔法的な力の流れ……妖狐は再び、この力を得ようとしているようね」
 龍脈の力が高まればゴースト事件が活性化し、加えて大きなゴースト災害を引き起こす可能性が高い。
 この龍脈に囚われている地縛霊は、甲斐という男。
 共に旅をしてきた商団はすでに武装した男達によって壊滅させられ、合流できた鈴音と言う女性と2人でなんとか逃げようとしていた。
 だが運悪く見つかってしまい抵抗したものの、鈴音が捕まった事で抵抗をやめるしか彼には選択肢は残されていなかったのである。
 そして抵抗を止めれば助けるかもしれないと示唆したはずの鈴音を目の前で殺害され、彼も無念のうちにその生涯を閉じていく。
 その悲劇の瞬間を、彼は龍脈の中で何度も経験しているのだ。
 本来ならその悲劇を食い止め、地縛霊を救い出す。それが能力者達の役目なのだが――。
「今回は、その悲劇を阻止させないで頂戴。シェルティラに龍脈の力を渡すわけにはいかないわ」
 シェルティラが龍脈の悲劇を阻止してしまえば、妖狐にその力が渡る。
 辛い役回りではあるが、妖狐が龍脈の力を得ることだけはなんとしても阻止しなければならない。
 特殊空間の中は、小さな集落となっている。
 武装した男達とシェルティラが対峙しているのは、集落の外れのある程度開けた場所だ。
 広場へと繋がる道は左右に1本ずつ存在し、このどちらからでも広場に辿り着くことが出来る。
 道の無い奥面には甲斐と鈴音がおり、シェルティラは2人を護るように中央に立っているようだ。
 一度は武装した男が広場の裏道を使って鈴音を捕らえたものの、この裏道は集落に住んでいるからこそ使用できる道。
 集落の地形を知らない能力者では、この道を見つけることは不可能。そのため、広場には自ずと左右の道を利用するしかない。
 そのため正面からシェルティラとぶつかった上で、奥にいる2人を倒す必要がある。
 集落の武装集団でこの戦場に居合わせるのは5人のみで、1人はすでに石と化している。他の者達は逃走を警戒しているのか、集落の入り口を防いでいるらしい。
 能力者達は集落の無人の家の中に降り立ち、この広場を目指していく。
 道中では武装した男達に出会う事はなく、家を出てすぐの道を左右のどちらかに進めばそのまま広場へと辿り着くことが可能だ。
 この際に横道がいくつかあるが、その横道に進めば迷ってしまうため、まっすぐに道を進んだほうが良い。
 なお、甲斐は魔剣士と黒燐蟲使いの力を。鈴音は雪女の力と土蜘蛛の巫女の力を使用する。
 対する武装集団は牙道忍者と青龍拳士の力を用いるが、シェルティラの前では大した戦力にはならない。
 彼等を守り、そして甲斐と鈴音を討つ。
 ただし2人を守っているのがシェルティラである事を考えれば、苦戦は必至。
 加えて武装集団は密談の出来る仲間内だけを信じるため、能力者達の指示には一切従うことは無いだろう。
 そんな状態で甲斐達を倒す事はかなり難しいが、要は武装集団が全滅する前に甲斐達を倒してしまえば阻止は可能である。
 好き勝手に動く武装集団を上手く扱えるかどうかが、カギを握ることは間違いない。
 
「シェルティラの能力は以前のままよ。その点にだけ注意して、頑張って頂戴」
 無理だけは決してしないように。最後にそう言うと、結歌は教室を後にした。

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参加者
望月・香介(閑日月・b08176)
小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)
五十海・刹那(地獄の無鉄砲・b23743)
シーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)
スバル・ミストレス(自由を求める魔導師・b40526)
八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)
御蛹・真紀(蟲姫・b44782)
シャオ・クロウィン(鴉羽の民・b47283)
ミュレア・レント(宵を告げしラケシス・b47728)
知富・迅(破邪の疾風・b49508)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
白眉・吹雪丸(空谷の徒・b69180)



<リプレイ>

●悲劇を繰り返すために
 見渡せば、時代を感じさせる古い家の中。
 そう、ここは龍脈の特殊空間である。降り立った能力者達はこの家から続く道を走り、まずは龍脈の地縛霊達が争っている場所へと辿り着かなければならない。
 悲劇を食い止めるためではなく、悲劇を起こすために。
 誰も気乗りしている者などいない。だがシェルティラに龍脈の力を渡さないためには、そうするしか方法は無いのだ。
 目の前に広がるのは左右に分かれた、2つの道。このどちらの道を進んでも戦場に辿り着く事が出来るため、彼等の戦略はこの場所からすでに始まっているとも言えよう。
「……本当に救うべきが倒す相手、というのは皮肉だね」
「龍脈の力を妖狐に渡さなければ、喜んで力を貸すのに……」
 右の道を進みながら、シーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)は救いたい相手を倒さなければならないと言う状況にため息を漏らす。
 シェルティラが妖狐に属してさえいなければ、敵でなかったならば――。
 共闘する事で悲劇を食い止める側に回る事が出来るのにと、シャオ・クロウィン(鴉羽の民・b47283)も歯痒さを感じているようだった。
「シェルティラの目的ってなんだ? シェルティラの目的の為には、妖狐の為に動くことが必要なのか? それ以外の方法ってないのか?」
 先日のシェルティラとの会話を思い返し、どうにかその目的を共有出来ないかと考えるのは五十海・刹那(地獄の無鉄砲・b23743)だ。
 しかし目的を共有するためには、どうにかその内容を知る必要がある。
 黙して語らずのシェルティラを前にすれば、この戦いの中でそれを聞ける可能性はゼロに近い。
「考えたらキリがねーけど、やっぱり龍脈の力を渡すわけにはいかない!」
「何も語らないおすましちゃん相手じゃあんまり燃えないけど、潰し合いは楽しまなくちゃ、ね」
 最終的には本来の目標を達成する事に集中した刹那に、八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)はその戦いを楽しもうと言った。
 相手の目的を知るよりも、今は妖狐の目論見を阻止する事。
(「今回は本気で行きます。この世界に生きる人達を守りたいという、私の戦う信念に掛けて!」)
 過去の戦いで2回、シェルティラに打ちのめされた御蛹・真紀(蟲姫・b44782)も、今日はその目的の達成に集中するつもりらしい。
 様々な思いを胸に秘め、彼等はひたすらに走っていく。

 一方、こちらはスバル・ミストレス(自由を求める魔導師・b40526)を先頭として右側の道を走る者達。
「本来なら甲斐達を解放してシェルティラを退ければイイんだが……時間制限がある状態では流石に無理だな」
 知富・迅(破邪の疾風・b49508)が口にしたのは、実現がほぼ不可能と言える理想的な結末。
 武装集団が全滅する前にシェルティラを倒し、その後で龍脈の地縛霊である甲斐を解放する事が出来れば、確かに最高の終わり方だと言えるだろう。
 だが、現実はそこまで甘くないモノだ。
「普段ならば救う対象の甲斐と鈴音を倒さないといけないとは……。とても辛いですが、気持ちを切り替えて行動したいと思います」
 気持ちは進まないが、文月・風華(暁天の巫女・b50869)の言うように気持ちを切り替えて冷徹にならねば、この作戦事態が失敗してしまう事は間違いない。
「シェルティラの行為そのものが悪いのではない。問題はそのあと、妖狐が力を悪用すること。彼らを救えんのは残念だが、将来の被害を防ぐためだ」
 そう言った白眉・吹雪丸(空谷の徒・b69180)の言葉にミュレア・レント(宵を告げしラケシス・b47728)を始めとした誰もが頷き、ただひたすらにこの道の先を目指す。
 この道の先に待つのは、シェルティラが割り込んだ直後の戦場。
 すでに接触が済んでいる事は間違いないが、武装集団は何人が残っているだろうか。
「見えましたっ!」
 道の先の戦場の様子を真っ先に発見した小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)が、注意を促した。
 残っている武装集団は4人。シェルティラの隣にいる石化した状態の者も含めれば、5人全員が残っている状態である。
「……なぜだ、減っていない」
 すでに1人か2人は倒されているだろうと推測していたスバルにとっては、全員が健在な状況は考えられない事だった。
 そして武装集団が攻撃を仕掛けた様子も、見当たらない。
 右からスバル達が来ると同時に、左の道からはほぼ同時にシャオ達も広場へと到達し、整う戦いの舞台。

「やっぱり来たね……2人とも、耐える事を一番に考えて。攻撃は余裕がある時にね」
 予想通りの能力者の来訪に、シェルティラは念を押すように甲斐達へと『耐える』ように指示を出す。
 彼等がここに辿り着く間、武装集団や甲斐達、そしてシェルティラは何もしていなかったわけではない。
 相手の出方を伺う武装集団も、『耐えろ』と指示された甲斐達も、それぞれが態勢を整えていたのだ。
 ソレは当然シェルティラも同じであり、自身は魔弾の射手を発動する事で待ち構える態勢を取っている。
 戦場に到達したばかりの能力者達にとっては、不利と言わざるしかない状況。
 それでも彼等は、戦いに身を投じていく。妖狐の目論見を、止めるために。

●その戦いは三つ巴
「おい、後ろから知らない連中が!」
「退路が塞がったか……!」
 能力者達の乱入に、武装集団達の意識が後ろに向けられる。
 前にはシェルティラや甲斐達、後ろには左右に分かれた道を塞ぐように立つ能力者達。
 甲斐達と共にいた商団は全滅させたはずだ。そして集落の入り口は自分達以外の者が守っている。
 ならば、彼等は――?
「やぁ……来ると思っていたよ」
「守りたい人がいるなら、諦めなければ、道は開ける。……誰に向けての台詞かな?」
 ふいに能力者達にかけられる、シェルティラの挨拶。そこにさらにシーリウスが挨拶代わりに聞いていないはずのシェルティラの台詞を反芻すると、武装集団に能力者達が『倒すべき敵だ』と判断させるには十分な材料となる。
 加えて左右からの挟撃を行うため両面から攻める布陣を敷いた事も、武装集団が敵対意思を強固にする結果をもたらしていた。
「私達はあの人に用があるのです、邪魔しないでください」
「数が少ない方を狙うのが、基本だと思いますが」
 なんとか意識を逸らそうとする風華と望月・香介(閑日月・b08176)だが、肝心のシェルティラ達は裏道しか存在しない奥面にいる。
 邪魔をするなと言われても、能力者達は侵入者であり――そして退路を確保するつもりならば、当然武装集団にとってそんな提案は受け入れる事は出来ない。
「相手の狙いはアンタ達よ、死にたく無かったらアタシ達に力を貸しなさい!」
「戯言を! 侵入者の話などに耳を貸す必要はない!」
 武装集団との間に出来た亀裂を決定的にしたのは、真紀のこの一言だった。
 最終的に考えれば、武装集団をシェルティラから自分達に意識を向けることで離れさせるという結果は、狙いの通りではある。
 しかし攻撃を受ける可能性も色濃く残してしまった点において、能力者達が倒れる危険性が高まった事は言うまでもない。
「狙いはあの2人とシェルティラ! それ以外には構わない!」
 武器を構えて退路を確保しようとする武装集団を放置し、紫織は仲間達へと突撃の指示を下す。
 シェルティラを阻止するという事は、早い話が『武装集団が倒れるまでに、甲斐と鈴音を倒す事』なのだ。
 そうなれば後は体力勝負。
 ほぼ完全に武装集団が敵対した事で痛手は大きくなるだろうが、数で勝る能力者達にとっては有利な戦況になったとも言えよう。
「行きますよ皆さん、固まっていたらやられるだけだっ!」
 スバルの号令を受け、迅以外の能力者達が一斉に動き始める。
 まずはほとんど全員が道から離れ、広場の左右からシェルティラ達を挟むように位置を取り、強化の施せる面々は強化を自身に施して。
「あなた方は、好きになさると良いですわ」
 その場から動かなかったミュレアは、石と化した武装集団の1人を浄化の風で解放していく。
 連携を重視した事が功を奏し、わざと遅れて動くことを意識した迅を除く全員が、シェルティラ達や武装集団の先を取って動ける状況を作り上げていた。
「なるほど、それだけ本気って事なんだね」
 先日のキャンバス砲撃作戦を阻止しにかかった時と同じような緊張感を持って戦いに臨む能力者達の姿に、軽い笑みを浮かべるシェルティラ。
 開かれた魔導書を掲げ放たれた炎の魔弾は、迷う事無くシャオや吹雪丸、真紀へと飛び、3人を炎に包み深い傷を負わせるも、この一撃で落ちるような彼等ではない。
 3人も巻き込まれてしまったのは、奥面にいる甲斐達に攻撃可能な位置を取った事に起因しただけに過ぎないのだ。
 これまでの戦いにおいて、シェルティラがわざと最善の作戦を取らずに動いていることはわかっている。
 そして、妖狐に協力はしていても目的は同じではない事も。
「妖狐の目的はシェルティラにとっても好ましくないのかと思うんだが、もしそうなら、妖狐の目的を阻止することで協力出来ないか?」
 それを考慮したのか、迅は戦いが始まってすぐの今だからこそとシェルティラに言葉を投げかけていく。
 しかし彼は、ある事を忘れてしまっていた。
「前にも言ったよね。ボクの望みは妖狐についていなければ、叶わない――って」
 妖狐に組しなければ叶わない願い。それは恐らく、『能力者達の力量を知る』事に関係しているのだろう。
 そんなシェルティラに対し、迅の言葉はほとんど無意味に近かったと言える。
「シェルティラ。1つ賭けをしよう。俺達が勝てば、キミはお客様として一度学園に来る。俺達が負ければ、俺を好きにして良い」
「興味はあるけど……ごめん」
 ならばこれならどうだと、賭けを持ちかけるシーリウス。
 だがその言葉も、シェルティラにはすぐに拒絶されてしまった。興味があると言う言葉には嘘はないらしく、その表情には僅かな笑みも含まれてはいたが。
「おい、俺達を無視して勝手にやりあい始めたが……どうする?」
 一方では、武装集団が完全に無視された状況に戸惑いを感じ始めていた。
 自分達以外の者は、攻撃を仕掛けるべき敵である。そう判断して構えた彼等ではあったが、能力者達の無視具合に戦闘に入るかどうかで迷っているらしい。
「退路は出来たが……先程のあの炎、引けば狙い撃ちされるかもしれないな」
 加えて先程の炎の魔弾の威力を見たせいか、背中を見せれば狙い撃ちされる可能性も高いとも考えているようだ。
「どちらにしろ、この集落以外の者を生かして帰すわけにはいかん。二手に別れて退路を確保した後、様子を見よう」
 最終的に下した判断は、退路を確保した上での高みの見物だった。互いに潰し合ってくれれば、殲滅も容易だと判断したのである。
 そんな彼等にとって、退路上にいるミュレアはいかに仲間を石化から解き放った存在であっても、障害でしかない。
「仲間を助けてもらった事は感謝するが、この状況だからな」
 森羅呼吸法を行う事で威力が高まった彼等の獣撃拳は、体力の低いミュレアに耐え切れるような攻撃ではなかった。
 それ以外は特に攻撃を仕掛けてくる気配は無かったものの、このままでは下手をすれば牙道砲で後方から撃ち抜かれる危険性も高いと言える。
「こっちが倒れるのが先か、逆に倒すのが先か――か」
 体力とスピードが戦況を左右する状況に、武装集団と甲斐達を交互に見る刹那。
 一方で倒さなければならない相手である甲斐は鈴音へと黒燐奏甲を施し、そして鈴音の放った破魔矢によって吹雪丸が膝を突き、倒れた。
「シェルティラはお願いします! 僕達は彼等を!」
「あなた達に恨みはありませんが……、悪く思わないでくださいね……」
 スバルの声をかけ、風華や香介、奈々を加えた4人で一気に鈴音に近付くと、一斉に叩き込まれる4連続の苛烈な近接攻撃が彼女に襲い掛かる。
 さらに紫織のジャンクプレスまでもが追い討ちをかければ、雪だるまアーマーを纏って耐える態勢を取っていた鈴音をその防御の上から倒すのには十分過ぎる攻撃となった。
「か、甲斐っ!」
「鈴音っ、鈴音っ! 何故だ、何故なんだ!」
 繰り返される悲劇の通り、再び甲斐の目の前で命を奪われる鈴音。涙を流し叫ぶ甲斐に、能力者達の胸がずきりと痛む。
 しかし妖狐に龍脈の力を渡さないためには、この辛い気持ちを抑えなければならない。
「流石に数が多いと、難しいなぁ……おっと」
「……僕達の相手も、お願いするよ」
 その様子を一瞥したに対してはシャオが鋏角齧りで注意を引き、シーリウスの雷の魔弾と刹那の光の槍が同時にその身に撃ち込まれて行く。
 龍脈の力を得るために倒さなければならない武装集団は二手に別れてしまい、守るべき2人の内、鈴音は既に倒されている。
 いかなシェルティラでも、ここまでの不利を覆すだけの策は持ち合わせていなかった。
「賭けてたら負けてたね。悪あがきだけは、させてもらうけど」
 鈴音へ近接攻撃を仕掛けた4人に対して炎の魔弾を放ち傷を負わせるものの、既に敗北を悟ったようだ。
 後方の武装集団は、全員が未だ健在。
 そんな状況の中、シェルティラがどうあがいたとしても、甲斐を倒すと言う結果は必然的に訪れる事となる。
「お二人のことは絶対忘れません……今は、ごめんなさいっ」
 奈々の獣撃拳を受け、その場に倒れこむ甲斐。
「くぅ……鈴音、すまない……」
 散り際まで先に倒れた鈴音を案じ、彼の目は静かに閉じていく。

●繰り返される悲劇
 ――悲劇の瞬間は、そこで終わったはず……だった。
「これは……」
 周囲を見渡した香介が驚くのも、無理はない。
 彼等は、先ほど悲劇を起こしたはずの現場に立ち――そして、甲斐や鈴音、そして武装集団の全員が、そこにいたのだから。
 いや、彼等だけではない。
 先ほどまでと同じ場所に、シェルティラの姿もあった。

 再び起こされた悲劇。それはもう1度、同じ悲劇を巻き起こすトリガーでしかなかったのである。
 だが、先ほどまでと違っている部分があった。
「シェルティラさーん、お姉さんが応援に来ましたよー!」
「……燐澪?」
 それはシェルティラお付の妖狐、燐澪が現れた事。
 後ろを見れば彼女に案内されてきたのだろう妖狐の軍勢が、戦闘態勢を取っている姿も見える。
「完全な負けだったのに、妖狐も抜け目が無いね……。キミ達が命をかける戦場は、ここじゃないはずだ。だから――」
 さっきまでとは違い完全にパワーバランスの崩れた戦況に、撤退を促すシェルティラ。
 妖狐の増援がシェルティラに手を貸せば、現時点で傷ついている彼等に勝機がないのは明らかである。
「ここは、引きましょう……」
 奈々の言葉に頷き、再び始まった悲劇に背を向けた能力者達は、やむなく撤退していくのだった……。


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参加者:12人
作成日:2010/08/22
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