鍛え方が足りんのじゃあ!


<オープニング>


●青森県某所
 選ばれた者だけが担ぐ事を許された神輿があった。
 この神輿はボディビルダーのために作られた物らしく、両脇にはバーベルが取り付けられシャレにならないほど重かったようである。
 そのため、神輿の担ぎ手に選ばれた者達は、普段から身体に重りを身に着け、身体を鍛え上げていたらしい。
 だが、炎天下の中で神輿を担いでいる最中に担ぎ手が倒れ、そのまま下敷きになってしまったため、祭りで神輿を担ぐ事が注意されてしまったようである。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、神輿が保管されている神社。
 この神社の神主はボディビルと引き締まった尻が好きだったらしく、それに因んだ神輿を作って祭りで担がせていたようなの。
 まぁ、その祭りの途中で事故があったらしく、今では使われていないようだけど……。
 リビングデッドと化した人達は、この神輿を担ぐため、鍛えていた人達みたい。
 神社の中には彼らのためのトレーニングルームがあるんだけど、いつか神輿を担ぐ事を夢見て身体を鍛えていたようなの。
 リビングデッドと化した人達は男女関係なく、みんな褌姿。
 その中には神主さんも含まれているようだけど、気にせず倒しちゃって。
 それと、神輿の周辺が特殊空間と化していて、両腕を組んだまま仁王立ちした筋骨隆々のオッサンが地縛霊と化して留まっているわ。
 しかも、特殊空間の中ではみんな褌姿になってしまうらしく、まるで重りがついているように身体が重くなってしまうようなの。
 その上、地縛霊が『鍛え方が足りんっ!』とか言って殴りかかってくるから、くれぐれも気をつけてね。

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参加者
天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
瀬良・柚希(熾天の旋律・b49411)
八枷・捺希(エグゼクター・b51967)
伊弉諾尊・りおん(銀誓館学園の大魔王・b56157)
ヴィラン・アークソード(昇竜魂絆・b70542)
神谷・恭一(蒼の風に舞う羽・b73549)
アンカー・ノヴァ(術式レールキャノン・b76082)
神楽・美沙(光輪の金剛石・b76178)
コロナ・サンライト(超光戦士・b77156)
セイバー・ラピュセル(剣の乙女・b77165)
釈迦戸・天空(奔放不羈・b77518)



<リプレイ>

●筋肉の祭典
「いやぁ、参りましたね……。これはやり過ぎ通り越して、何をやりたかったのか。ひょっとして、己の肉体を誇示したかっただけかも知れませんが、理解できませんね」
 呆れた様子で頭を抱え、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が溜息を漏らす。
 正直、理解したくはないのだが、どうしてこんな祭りが例え少しの間でも、続いていたのか分からなかった。
「それにしても、随分と煩悩を前面に出した神主さんですね〜♪ そんな理由でお神輿を作るなんて 神様を冒涜する行為です〜♪ そんな思惑に乗る方も乗る方ですが〜♪」
 のほほんとした表情を浮かべ、瀬良・柚希(熾天の旋律・b49411)が答えを返す。
 この祭りには地元の人間だけでなく、肉体自慢の男女も頻繁に参加していたらしく、担ぎ手になるため住民票を移した者までいたようだ。
「確かに……、お神輿……担ぐの……大変だと、思いますが……、限定しちゃ、いけませんよね……。お神輿は……、皆が盛り上がれる、ものです、から……」
 祭りが行われていた当時を思い浮かべ、天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)が寂しそうな表情を浮かべた。
 実際に神輿の担ぎ手になれたのは筋骨隆々な人達だけで、それ以外の人達が『神輿を担ぎたい』と言っても、『そんな身体で生意気言うな!』と断られ、触れる事さえ許されなかったようである。
「しかも、『ボディビルと引き締まった尻が好き』というのは、まったく別の話だと思いますが……。とは言え、この神輿を担ぐために鍛錬していた人達がいたのですから、日本という国は不思議なところがまだまだありますね」
 感心した様子で、アンカー・ノヴァ(術式レールキャノン・b76082)が口を開く。
「……何と申すか、ガチムチの尻が好きなぞという気色悪い趣味の結果のバーベル神輿とは、どう考えてもマトモとは思えぬ……。じゃが、その神輿を担ぐ事を夢見て、肉体を練磨する者どもがいるとは……。女の身である妾にはまったく理解出来ぬ心理じゃな。ガチムチなぞ、妾が弟で見慣れておるとはいっても、慣れると平気は同義ではない。ただでさえ暑いこの時期に、この暑苦しい集団は見るに耐えぬ」
 不機嫌な表情を浮かべ、神楽・美沙(光輪の金剛石・b76178)がゴーストの確認された場所にむかう。
 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化した神社。
 ここには神輿が保管されており、担ぎ手専用のトレーニングジムがあった。
「まぁ、肉体を鍛えること自体が悪い事だとは思わんが、心が伴っていなければ意味がないと思うんだが……」
 険しい表情を浮かべながら、ヴィラン・アークソード(昇竜魂絆・b70542)が疑問を口にする。
 担ぎ手の大半は自己中心的な性格だったらしく、筋肉質なほど偉いと勘違いしていたようだ。
「やれやれ、世の中には色んな奴がいると、この学園に来て改めて考えさせられたな。ケツが好きだろうがボディビルが好きだろうが、そういった趣向は人それぞれだ、一々文句をつける気は無いが、俺の持っている常識とやらが全く通じない連中が多すぎる」
 複雑な気持ちになりながら、八枷・捺希(エグゼクター・b51967)が呟いた。
 この祭りには色々な思惑を持った人間が参加していたようだが、いまさらそんな事はどうでもいい。
「その上、神輿の両脇にバーベルを取り付けるなんて、何を考えてやがるんですかね。単に重い物を持ち上げたいなら、普通にバーベルを担いでろってんですよ」
 不機嫌な表情を浮かべながら、伊弉諾尊・りおん(銀誓館学園の大魔王・b56157)が口をこぼす。
 次の瞬間、リビングデッド達が『わしらを愚弄する奴は誰だ!』と叫び、無駄にハイテンションでポージングを決める。
 リビングデッド達はみんな筋骨隆々で、褌姿。
 必要以上に筋肉がついているせいで、男女の区別すらつき辛くなっている。
「うわっ……、なんや暑苦しいなぁ。てめぇらのせいで無駄に温度があがったわ」
 全身に汗をビッショリと掻きながら、釈迦戸・天空(奔放不羈・b77518)がリビングデッド達を睨む。
 しかし、リビングデッド達は浅黒く焼けた肌を強調し、『夏だから暑いのは当然だっ!』と反論する。
「さすがは詠唱銀の豊富な国。ゴーストの数も種類も半端がないですね。しかし、日本という国はおかしなゴーストばかりだ。だが、私は巡礼士。世界結界を汚すゴーストは、何者であろうと滅するまで!」
 感心した様子でリビングデッド達を眺め、セイバー・ラピュセル(剣の乙女・b77165)が言い放つ。
 それと同時にリビングデッド達が何かに気づき、『アレは何だ!』と叫んで木の上を指差した。
「またまた参上、超光戦士サンライト! 今度の相手はムキムキ褌怪人でーす! 世界の平和を守るため、今日もヒーローは戦うのでーす!」
 物陰でイグニッションして木の上まで移動し、コロナ・サンライト(超光戦士・b77156)がビシィッとポーズを決める。
「楽しみにしてきたものによって死んでしまったなんて、不条理で皮肉な話だけど、それが死してもなお、この世に存在し、人に害を及ぼしていい理由にはならない。悪いけど、消えてもらうよ」
 少しずつ間合いを取りながら、神谷・恭一(蒼の風に舞う羽・b73549)がイグニッションをする。
 だが、リビングデッド達もどうして自分達が倒されなければいけないのか分からないため、『ゴロツキがっ! ならば、こちらも全力を出して戦うだけだ!』と叫んで陣形を組むのであった。

●自らの肉体を鍛え上げ
「この国の神が住まう社にゴーストか。だが、すぐに清浄なる地に戻してみせよう。私のこの剣で!」
 リビングデッド達をジロリと睨み、セイバーが虎紋覚醒を発動させる。
 それに合わせてリビングデッドが全身の筋肉を隆起させ、『ならば、倒されるのはお前達だ! 穢れた身体でこの地に足を踏み入れよって!』と反論した。
「自らの欲望のために死してなお、この場所に留まるなんて言語道断です〜♪ 極寒の中その薄着は命取りになります〜♪」
 リビングデッド達に言い返し、柚希が氷雪地獄を使う。
 次の瞬間、リビングデッド達が魔氷に包まれ、『こ、この程度の、さ、さ、寒さで、お、俺達を足止め出来ると、お、思うなよ』と強がった。
「いくら神輿を担ぐ為に鍛えていたからと言って、それが人生の全てでは無いだろうに……。さて、とっとと終わらせてもらうぜ、長く見るには耐えん光景だ」
 呆れた様子でリビングデッドを眺め、捺希が突撃槍を構えてセイクリッドバッシュを炸裂させる。
 その一撃を食らってリビングデッドが血反吐を吐き、『こ、こんな事で倒れるほど、俺達はヤワな鍛え方はしておらん!』と言い放つ。
「……団長。何故奴らはああも体を鍛えたがるのかの?」
 生暖かい視線をリビングデッド達に視線を送り、美沙がリフレクトコアを展開してアンカーに問いかける。
「そういうのは神楽先輩の方が詳しいのでは? 弟さんと気が合いそうな人たちですし……」
 ラジカルフォーミュラを発動させ、アンカーが美沙に答えを返す。
「知るかっ! 全く理解出来ぬ……。と、とにかく、妾が石化で動きを止めるゆえ、悪趣味な石像は粉々にしてしまうがよい!」
 不機嫌な表情を浮かべ、美沙がリビングデッドに天妖九尾穿を放つ。
「もとがゴーストでなければ、この躍動感ある石像はそれなりに美術的価値がありそうだなぁ……」
 石化したリビングデッドを眺め、アンカーが炎の魔弾を撃ち込んだ。
 それでも、リビングデッド達の戦意は衰えず、『この程度の事で散った奴らはクズだ! 捨てておけ!』と叫んで襲いかかってきた。
「――褌姿、では……お寒いでしょう、ね……。です、が……遠慮は、致しません……」
 リビングデッド達に視線を送り、翼が吹雪の竜巻を発動させる。
 その途端、神主と思しきリビングデッドが寒さで凍えつつ、『ひ、怯むな! この程度で屈するのなら、神輿の担ぎ手から外すぞ』と脅しをかけた。
「……どうして、あんな変な神輿を、担がせるのですか……! だから、こんな被害が……!」
 神主らしきリビングデッドに睨みを利かせ、翼がやや怒った声で訴えかける。
 しかし、リビングデッドはまったく悪びれた様子もなく、『すべて神が望んだ事だ』と断言した。
「そんな見え透いた嘘をつく人には、神に成り代わり裁き光槍です〜♪」
 リビングデッドを射程範囲内に捉え、柚希が近距離から光の槍を撃ち込んだ。
 次の瞬間、リビングデッドが崩れ落ち、『私にこんな事をすれば、必ずや神の裁きが……』と呟いて動かなくなった。
「何か勘違いしているようだが、鍛えるとは肉体だけにあらず、身も心も鍛えてこそ意味がある。お前達など所詮、見かけだおしの外見だけだ! 例え、神が存在していたとしても、お前達のような者達を望んでいるわけがないだろ」
 リビングデッド達に言い放ち、セイバーがセイクリッドバッシュを叩き込む。
 それに合わせて仲間達も次々と攻撃を仕掛け、リビングデッドを全滅させた。
「と、こんなもんか」
 ゆっくりと辺りを見回しながら、捺希が疲れた様子で溜息を漏らす。
「それにしても、日本文化は奥が深いですね。神楽先輩の弟さんだけが特別じゃなかったようですし、色々と勉強になりました」
 かなり日本文化を誤解した様子で、アンカーがニコリと微笑んだ。
「いや、アレが日本文化なら、妾はとうに海外へ逃亡しておる……。もうガチムチはしばらく見とうない心境じゃが、結社に帰ればガチムチ弟がおると思うと、気が重いのぅ……」
 軽くツッコミを入れた後、美沙が重い足取りで踵を返す。
 その脳裏に過ぎったのは、抜群の笑顔を浮かべる弟の顔だった。

●この軟弱者がっ!
「全身傷跡だらけだから、あまり他人に見られたくはないのだが、地縛霊を退治する為にも辛抱するしかないか。……頼んだぞ、ベルンハルト」
 ケルベロスオメガのベルンハルトに声をかけ、ヴィランが警戒した様子で祖霊降臨を発動させる。
 特殊空間の中ではみんな褌姿になってしまうらしく、地縛霊が両腕を組んで仁王立ちしたまま神輿を守るようにして陣取っていた。
 次の瞬間、地縛霊が何者かの存在に気づき、『そこに隠れているのは誰だ!』と叫んでコロナを睨む。
「愛と勇気と友情の戦士、超光戦士サンライト、ここに参上ッ! ……って、あれ? サンライトの変身が解除されたです!!」
 信じられない様子で、コロナが何度も自分の格好を確認した。
 どうやら、見た目だけ変化しているようだが、いきなり格好が変わったせいで訳が分からなくなっている。
「いい迷惑ですし……、さっさと倒せばいいのですよ、倒せば!」
 仲間達に答えを返しながら、洋角が地縛霊に呪いの魔眼を放つ。
 それと同時に地縛霊の身体が内側から裂け、大量の血が噴水のように噴き出した。
 しかし、地縛霊は全身血まみれの状態で、『この程度の攻撃で、俺が屈すると思ったか!』と叫んで全身の筋肉を隆起させる。
「幸い上半身裸というわけでもなさそうですし、精神的にも肉体的にもたっぷりいたぶってやるですよ、くひひ」
 自分の胸元にサラシが巻かれている事に気づき、りおんが何処かホッとした様子で魔弾の射手を発動させた。
 このサラシが地縛霊の優しさか、大人の事情か分からなかったが、どちらにしても地縛霊を倒さなければ、特殊空間の中から脱出する事が出来ない。
「上等やないか! 太陽のエアライダーなめたらあかんわ、やったるで〜!! ……ん? なんや、急に体が重く……、こない重力に縛られたのは生まれて初めてや!」
 地縛霊にクレセントファングを放ち、天空がハッとした表情を浮かべる。
 まるで全身に錘がつけられているかのように……、身体が重い。
「確かに重いね……けど、そんなものに負けるわけには、いかない。本来なら褌姿は恥ずかしいけれど……背に腹は、ってやつだ」
 険しい表情を浮かべながら、恭一が魔弾の射手を発動させた。
 それに合わせてサキュバス・キュアが恭一と連携を取り、コスチュームプレイを使う。
「エアライダーにとってこれはえろう屈辱的……。だが、甘いわ。いくら体が重くなったところでワイは止められへんで」
 サンシャインドライブからプロミネンスパンチを繋げ、天空が地縛霊に対して強烈な一撃を叩き込む。
 それでも、地縛霊が全身の筋肉を隆起させ、『この程度の攻撃……、蚊が刺す程度だ!』と言い放つ。
 しかし、地縛霊の動きは単調なので、相手の攻撃が命中する事はない。
「……どうやら、鍛練を積んだのは肉体だけのようだな」
 地縛霊の死角に回り込み、ヴィランが破魔矢を撃ち込んだ。
 それと同時にベルンハルトがレッドファイアを放ち、一瞬にして地縛霊の身体を魔炎に包んだ。
「サンライトが必殺技のひとつ、光のパワーを集めて敵を撃つ。くらえ、シャインスパーク!」
 予め旋剣の構えで強化させ、コロナがライジングヘッドバットを炸裂させた。
 だが、地縛霊は荒く息を吐きながら、『この程度の攻撃で、俺が倒せるとでも思ったか!』と叫んで強がった。
「さあ、これで終いにしよう。迷える魂に、安楽を……」
 マヤと連携を取りながら、恭一が雷の魔弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、地縛霊が悔しそうな表情を浮かべたまま、身動きが取れずにマヒ状態に陥った。
「くひひ♪ どうやら、体は十分鍛えていても、オツムの鍛え方が足りないようですね! この大魔王りおん様に逆らうなんて100万年早いのじゃあ!」
 一気に地縛霊の懐まで迫り、りおんがスラッシュロンドを放つ。
 その一撃を食らって地縛霊が派手に吹っ飛び、後ろにあった神輿を木っ端微塵に破壊した。
「所詮、奴の肉体はハリボテだったようですねぇ……。しっかし、今日は疲れました。とりあえず、あのバーベル神輿が復活しないよう祈ってますよ。なんとなくですが……」
 ホッとした表情を浮かべ、洋角が地縛霊のいた場所を眺める。
 そこには神輿が安置されていたが、特殊空間の中のものと異なり、すっかり埃を被って痛んでいた。
「俺も、心と肉体……両方の鍛練を積んでいかなければな」
 ベルンハルトを労いながら、ヴィランが自分自身に言い聞かせる。
 心と肉体、その両方が鍛えられていなければ、ゴーストと同じ道を歩んでしまうかも知れないのだから……。
 彼らの失敗を教訓にして鍛錬を続ければ、決して同じ過ちを繰り返す事はないはずだ。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/08/18
得票数:楽しい7  笑える8 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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