【銀の魔導師】口だけヒーローが悪を討つ?

<オープニング>


 シェルティラはごろんと寝転がってパソコンを触りながら、『期間限定! 地域限定!』と袋にでかでかと文字の書かれたスナック菓子をぱりんと噛み砕く。
 傍らにあるパックジュースにはストローがささっており、家でごろごろと休んでいる様子だと伺える。
 ――が。
「ちょ、それ私が置いてたお菓子とジュース! 楽しみにしてたのに!」
 どうやらお菓子もジュースも、燐澪が取っておいたお楽しみの一品だったようだ。
「ごめん、美味しそうだったから」
 さらっと言うシェルティラだが、悪びれた様子もない。
 むしろさらにスナック菓子を口に運ぶ辺り、普段の燐澪の暴走っぷりに対するささやかな仕返しだろうか。
「まったく……食べ物の怨みって、恐ろしいんですよ。そういえばシェルティラさんって、買い物とか行かないんですか?」
「んー……今度行こうかなとは思ってるけど」
 しかし当の燐澪はそれを怒る様子も無く、シェルティラの隣に座ってスナック菓子を一緒に食べ始めていた。
 2人とも、そこからはしばしの無言。よほどスナック菓子が美味しいのだろう。
 だが沈黙を破ったのはシェルティラだった。
「買い物に行かなくても、欲しい物っていうかお願いはあるんだけどね」
「え、なんですなんです?」
 お願いという言葉に、耳を大きくしながら聞く姿勢をとる燐澪。
「燐澪を返品して、別の妖狐に来てもらうとか」
「残念ながら、当組織ではナマモノの返品はお受けしておりません♪」
 もちろんシェルティラも冗談で言ったのだが、こう切り返す辺り燐澪も相当イイ性格をしているようだった。

「ていうか、こんな事してる場合じゃないんですよ」
 そんなやり取りに終止符を打ち、燐澪は本題を切り出していく。
 彼女に促され部屋に入ってきたのは、テレビから飛び出してきたようなヒーロー風の格好をした変な人。
『はっはー! 俺は正義の味方、ジャスティーンだ!』
 本人は格好良くキメたつもりだろうが、何かが違う。そして何より、弱っちい雰囲気が漂っている。
「……えーと、夏の暑さにやられたの?」
「いえそうじゃなくて。一応この人、百鬼夜行の地縛霊なんですよ」
 燐澪が言うには、このジャスティーンという変な人は百鬼夜行の地縛霊らしい。
 ただし戦力外通告をされるほど弱く、口だけが達者だと言う。
「――で、こういう事なんですよ」
「なるほど、この変な人を援護して配下を作れと」
 そしてこの弱小ヒーロージャスティーンのために、配下を作る手伝いをしろという話のようだ。
『そこの……おぼっちゃんかお嬢ちゃんか良くわからない子! 俺が来たからにはもう安心だ、泥舟に乗ったつもりでいると良いぞ!』
「沈むよ、泥舟じゃ……しょうがない、行こうか」
 やれやれとため息をつき、いそいそとシェルティラは準備を始めていく。
 どこから持ってきたのか竹刀を取り出す辺り、結構ハードに鍛えるつもりなのかもしれない。
「シェルティラさん、気をつけて行ってきてくださいねっ!」
 そう言うと同時に不意に抱きつく燐澪。
『はっはー! 悪を倒しにいくぞ!』
 一方ではジャスティーンが暑苦しい空気を醸し出している。
「……色々な意味で、暑い……」
 何時も以上に深いため息をついたシェルティラは、何やら色んな事に疲れている様子だった。
 
「待っていたわ、またシェルティラが現れたわよ」
 開口一番、琴崎・結歌(高校生運命予報士・bn0261)はシェルティラの出現を口にする。
 今回のシェルティラは例のジャスティーンに配下を作らせるため、ゴーストが現れるであろう場所に向かっているらしい。
 だがジャスティーンはあまりに弱すぎるため、シェルティラはその援護のために同行しているようだ。
 集まった能力者達はこの現場に急行し、百鬼夜行に配下を作らせる事を阻止しなくてはならない。
 戦闘場所となるのは活劇の舞台とでもなりそうな、山を切り崩した岩場だ。
 崖を背に、大きな岩がところどころに転がっているが、戦闘にはなんら支障をきたすことは無い。
 これで爆薬でもセットして爆発の演出でもすれば、特撮のワンシーンのような戦いを演じる現場の雰囲気を持つかもしれない場所である。
「口だけヒーローって言うのが正解かしら、このジャスティーンっていうのはとても弱いわ」
 結歌によれば、カッターナイフのような剣『ジャストブレード』は攻撃と同時に折れてしまう。
 替え刃は大量にあるために問題は無いようだが、すぐに折れる辺りから攻撃力は低いと判断して良い。
 そしてもう1つの武器『ジャストガン』は威力は低いものの、見える範囲の攻撃目標を強い麻痺に陥らせることが出来る。
 強さとしては能力者1人と同等か、下手をするとそれ以下。
 そんなジャスティーンに対するのは、ヒーローに倒される怪人のような地縛霊だ。
「この地縛霊は……ミサイルだとかをぶっ放すから、弾幕王(仮名)とでも名付けておきましょうか」
 弾幕王は言葉の通り、やたらとミサイルをぶっ放すのを得意としているようである。
 小型ミサイルは広範囲に多く降り注ぎ、大型ミサイルは着弾点の周囲をも巻き込み大爆発する。
 しかし攻撃を受けても融爆などをする事はない。
「今から行けば、シェルティラ達とこの弾幕王が戦いを始めた直後くらいに駆けつける事が出来るわ」
 能力者達は弾幕王を挟んだ格好でシェルティラ達と対峙する事となる。
 シェルティラはジャスティーンの守護を優先するものの、その必要が無ければ攻撃に転じてもおかしくはない。
「かなり弱ったところで、後ろに伏せていたジャスティーンに攻撃を仕掛けさせるつもりのようね」
 強引になんとか足を止める事で攻撃をさせない手もあるが、それはシェルティラの攻撃を受ける可能性が一層高くなるという事も示す。
 この辺りの対処は能力者達に委ねられるものの、無理に狙えば痛手を被るかもしれない。
 ちなみにジャスティーンは口だけヒーローなので、弾幕王にはえらくびびっている。
 大きな岩の陰にこそこそ隠れ、攻撃の指示が出る機を伺っているのだ。
 どうやらシェルティラが竹刀を持ち出したのは、このびびったヒーローを叩いて気合を入れる意味もあるらしい。
「ジャスティーンがトドメを刺す前に弾幕王を倒せば、シェルティラは撤退するから、そこを頭に入れておいてね」
 要は弾幕王に火線を集中して一気に倒すか、ジャスティーンを抑えてから確実に弾幕王を仕留めるかの2択である。
 
「弾幕王も決して弱い相手じゃないわ。甘く見ると痛い目を見るだけじゃなくて、ジャスティーンがトドメを刺せる状況を生むから注意して頂戴」
 半端な作戦で臨めば、削りきれなかったところをジャスティーンが漁夫の利を得る可能性もある。
 決して気を緩めないように――と言葉を残し、結歌は能力者達を見送っていく。

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参加者
久郷・景(雲心月性・b02660)
琴月・立花(憧れた月を追う・b13950)
小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)
五十海・刹那(地獄の無鉄砲・b23743)
シーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)
四月朔日・悠夏(闇を纏いし光を手にせし者・b38230)
草加・修(紅の青龍・b38861)
八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)
御蛹・真紀(蟲姫・b44782)
知富・迅(破邪の疾風・b49508)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
八握脛・鹿臣(燃え盛る緋色の律動・b67984)



<リプレイ>

●シェルティラを追って
 特撮のワンシーンの撮影を行うのに丁度良さそうな岩場。
 山を切り崩しているせいか、走る能力者達の右側には絶壁ともいえる崖が広がっている。
 この先へ進めば、シェルティラとジャスティーン、そして倒すべき目標である撃墜王が戦いを繰り広げる現場に辿り着くだろう。
 だが、ただ撃墜王を倒せば良いわけではない。
 ジャスティーンが撃墜王を倒せば撃墜王は百鬼夜行の配下となり、妖狐の戦力が増強する事になるのだ。
「ヒーローといえば勇気があると相場が決まっているものですが、倒すべき相手を前に弱気になって陰でこそこそ隠れているとは……」
 事前に得た情報を反芻し、久郷・景(雲心月性・b02660)が言う。
 戦力外通告を受けて処分される直前だったジャスティーンは、口だけが達者で実力を持たないらしい。
「つうか、死んでもヒーローに固執する奴って生前どんな奴だったんだろう」
 そんなヘタレヒーローは、生前はどのような存在だったのだろうと草加・修(紅の青龍・b38861)は考える。
 もちろん答が出るはずもないが、そこはやはり気になってしまうようだ。
「どんなに変で弱いヤツでも、百鬼夜行の部下を揃えられたら厄介なのは変わり無いからな……。俺達の手で防げるならば、確実に防ぎたい所だぜ」
「百鬼夜行さんに力をつけさせるっていうことは、妖弧さんが強力になることですから、阻止しないとですね」
 しかし気にはなっても、知富・迅(破邪の疾風・b49508)や小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)の言うように、妖狐の戦力を増強させるわけにはいかないのも事実。
 問題はそのジャスティーンにトドメを刺させないためには、どうするか。

『はっはっはー! 悪人め、このジャスティーンが成敗してくれるわ!』
「……やれやれ」
 一方、そのジャスティーンとシェルティラは撃墜王と遭遇し、攻撃を開始する直前だった。
 だが撃墜王を倒さなければならないはずのジャスティーンは大きな口を叩いているものの、物陰に隠れてびびってしまっている。
 その様子にため息をつきながらも魔弾の射手を発動したシェルティラは、手にした書物の表紙をぱらりとめくって。
「鬼コーチになるための方法その2……ヘタレは竹刀で殴るべし――か」
 妙な事を呟きながらめくったその書物のタイトルは、『初心者でも簡単! お手軽鬼コーチ入門書』と書かれたどこか怪しい本。
 どうやら用意していた竹刀は、この本に書かれているからと持ってきたようだ。
「なるほど、攻撃を躊躇したらこの竹刀で叩けば良いんだね……と言っても、そんな悠長な事をしている暇はなくなったみたいだけど」
 何事も無ければ、じっくり仕留めれば良い戦い。
 そう考えていたシェルティラだったが、撃墜王の背後に迫る影が目に映るとその表情が僅かに硬くなった。

「シェルティラ……お久し振りですわね。また、お逢い出来るとは……よほどの奇縁があるのでしょうか……」
 戦場に辿り着いた能力者達の中から、まず最初に声をかけたのは四月朔日・悠夏(闇を纏いし光を手にせし者・b38230)だ。
 間に挟まれる格好になった撃墜王が放ったミサイルを軽く流すと、シェルティラが静かに口を開く。
「よく言うよ……この出会いは偶然じゃなく必然だと思うけど」
 悠夏が指しているのは『死んだはずの相手に再び出会えた事』なのだが、シェルティラはそう受け取ったようである。
 これまでの戦いで、能力者達は何時も絶妙なタイミングで現れていた。さらに後ろを見れば、八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)やシーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)を始めとして一度は見た事のある顔ぶればかり。
 その事を踏まえれば、シェルティラが悠夏の言葉をそう受け取ったのも頷けない話ではない。
「シェルティラも、意外とお茶目なのかなぁ……竹刀とか……」
「何やら凄い気苦労と言うか、受難の相を感じ取れるのですが……」
 そして会話を交わす面々の後ろでは、琴月・立花(憧れた月を追う・b13950)と八握脛・鹿臣(燃え盛る緋色の律動・b67984)が竹刀を手にしたシェルティラの姿に苦笑いを浮かべていた。
 手にした微妙な本のタイトルを見ると、意外と形から入る性格だとも感じられよう。
『おお、知らない間に人が増えてるじゃないか! 良いだろう、このジャスティーンがサインを……!』
「……だから隠れててってば、まったく」
 そんなやり取りの最中、能力者達の来訪に気付いて姿を見せたジャスティーンを再び隠れさせたシェルティラが改めて戦闘態勢を取った。
 が。
「シェルティラー、何それ? 新しい彼氏? ……シェルティラも大変だな、そんなヤツの御守まで妖狐に頼まれるのか」
「面倒すぎるけどね……というより、頭痛いけどね。それとこの変な人はそんなのじゃない、絶対」
 五十海・刹那(地獄の無鉄砲・b23743)の言葉に、一瞬で崩れ去る戦闘態勢。
 どうやら本当に頭痛の種であるらしく、軽く頭を抱えたその姿に能力者達も苦笑いを浮かべる。
「さて……はじめましょうか!」
 ほんの少しだけ緩んだ空気は、文月・風華(暁天の巫女・b50869)が改めて締め直して。
(「私達の強い意志を示し実力を高めていくことが出来れば、いつかきっと仲間になれるって信じてる。だから今は私の信念を示す為に、全力で挑むだけよ!」)
 いつか共に肩を並べて戦える日が来ると信じる御蛹・真紀(蟲姫・b44782)が構えたところで、撃墜王争奪戦が始まる。

●ヘタレヒーロー、その名はジャスティーン
「毎度毎度ご苦労様ねぇ。いい加減、長期休暇でも取れば?」
 まっさきに動いた紫織が、ジャンクプレスを放つと同時にシェルティラに声をかける。
 彼女だけではない。
 後ろから立花や風華といった面々が撃墜王を無視して突っ込んでくる姿を、シェルティラは見逃さなかった。
「そっくり言葉を返すよ、夏休みって言うのがあったんだよね? キミ達の方こそ、休んでたら良かったのに……っと」
 彼女の挑発を軽く受け流すと同時にジャンクプレスをも難なく避け、逆に言い返したところへ飛んできた牙道砲が直撃する。
「武器、変えられたんですか……?」
「いや……これはただの竹刀だよ。通販で5000円だったかな……」
 その牙道砲を放った奈々は気になっていたのだろう、シェルティラの手にした竹刀の事を尋ねて。
 だが当の竹刀は牙道砲の直撃を受けたせいかポッキリと折れ、もはや使い物になりそうな様子ではない。
「今回は賭けに応じてくれるのか? どっちにしても勝負はするが」
 そんな竹刀をぽいっと捨てたシェルティラに対し、再び賭けを申し入れたのはノーブルブラッドを発動したシーリウスだ。
 シェルティラが勝てばシーリウスを自由に。逆にシーリウスが勝てばシェルティラを銀誓館へとご招待。それが賭けの内容である。
「今日は無理かなぁ……オマケがいるからね」
 オマケがいる。その言葉と同時に視線を流した先には、ジャスティーンが隠れていた。
『はっはっはー、オマケではない、このジャスティーンが主役なの……だっ!?』
「さあ、全部凍ってしまえ!」
 視線を感じたのか、ひょっこりと顔を出すジャスティーン。
 しかしそれを待っていたと言わんばかりに、立花の氷結地獄がその顔を凍りつかせていく。さらには景の使役するケットシー・ワンダラーの『猫上さん』の射撃まで食らう始末。
「はぁ……わかったから黙ってて」
 あまりにお馬鹿な行動を目の当たりにし、手にした『鬼コーチ入門書』をジャスティーンの隠れる岩場に向けて投げると、シェルティラは雷の魔弾を紫織に向けて放つ。
 直撃こそしなかったものの、強烈過ぎる一撃は紫織を倒れる直前にまで追い込むには十分な威力を持っていた。
「苛む苦痛を吹き払え……破邪風迅・清風召来!」
 慌てて迅が浄化サイクロンを巻き起こして傷を癒しにかかるも、僅かな傷を癒すだけでは焼け石に水でしかない。
 確実に撃墜王を倒すため、ジャスティーンの足止めに半数を割いた能力者達。
 このまま彼等がジャスティーンを追い立てれば、撃墜王への攻撃は容易になるだろう。
 だがシェルティラの攻撃力の高さの前に、彼等が総崩れを起こす可能性も決して無いとは言えない。
『はっはっはー、我がジャストガンの威力をその目に焼き付けろ!』
 それをリアルに体感させたのは、ジャスティーンの撃ったジャストガンがシーリウスや虎紋覚醒で態勢を整えた風華を麻痺させる光景だった。

「急がなきゃやばそうだな……てっうわっ! ミサイルっ?!」
 そんなシェルティラとの戦いの最中、撃墜王への攻撃を担当する能力者達も戦いを繰り広げていた。
 撃墜王を少しでも早く倒してしまわなければ、シェルティラと対峙している仲間達の被害が甚大になる。
 それを考えて修はインパクトの一撃を叩き込んだのだが、逆に飛んできたミサイルに面食らってしまったようだ。
「聞いていた通りの攻撃ですね……一気に攻め立てますよ!」
 飛び交うミサイルにはホーミング機能などはついていないらしく、避けるのは難しくはない。
 それは猫上さんを使役しているために体力の低い景にとっては、ある意味で幸運だったと言えよう。喰らえばかなり危ないが、避けやすいのならばどうという事もない攻撃なのだから。
 ひょいひょいとその火線を潜り抜けた彼が炎の魔弾を放つと、刹那が光の十字架でそれに続いていく。
「弾幕王はヒーローらしく俺が倒す!」
 果たして刹那が弾幕王にトドメを刺せるかは運次第だが、火力の高い面々を撃墜王にぶつけた能力者達の判断は決して間違ってはいない。
 既にジャスティーンはジャストガンを放っているため、次の攻撃が飛ぶまでにまだ時間はある。
 ここで鹿臣や真紀、悠夏が攻撃に転じていれば、シェルティラの抑えに回っている仲間達次第では一気に倒しきることも可能だっただろう。
 しかし。
「いっくわよーっ!」
「月清……今日もわたくしに力を貸して下さいませ」
 真紀も悠夏も態勢を整えてしまい、それ以上の攻撃は望めなくなってしまった。
 さらには鹿臣は回復だけを考えていたせいか、彼の攻撃手段は榊と宝剣による近接攻撃のみ。撃墜王の攻撃をほぼ全員が避けきった事を考えれば、もったいない部分であると言えよう。
 こんな状態では、撃墜王を一気に攻め立てて倒すと言う作戦は機能していないも同然だ。

「色々アラが目立ってるね……甘く見られているのかな」
 撃墜王と対峙する能力者達の光景に目をやりつつ、シェルティラは何やら考え込む仕草をとった。
 半数を割いてジャスティーンを追い立てるという作戦は良い。
 下手にジャスティーンに攻撃を仕掛けさせてしまえば、倒しきれなかった時にジャスティーンが倒されてしまうため、その攻め方も申し分無し。
 だがその一方で撃墜王に対して集中しきれていない攻撃は、シェルティラにとっては能力者達がどこか戦いに大して甘く見ている部分があるとも考えられたようだ。
 実際は違うのだが、意思の疎通という面での穴がある事を否めないのも事実。
「特訓中申し訳ないですけど、失礼しますね」
 そんな事を考えている矢先に、麻痺を自力で振り解いた風華がジャスティーンへと攻撃を仕掛けるべく横を素通りしていく。
 と同時にシェルティラ自身に対しても集中する紫織達の火線は、能力者達が妖狐の戦力増強を阻止するという確固たる意思の表れ。
「あぁごめん、一応……止めておくよ」
『これは撤退ではない、後ろに向かって前進するだけだ!』
 加えてジャスティーンがその攻撃から逃げ惑う姿を見れば、いかに能力者達が甘く見ていると感じてはいても、どうにかできる状態でもなかった。
 ひとまず雷の魔弾で風華を狙い撃ちにはしたが、肝心のジャスティーンは後ろに下がったせいで撃墜王に攻撃できる位置にはいない。
「……甘く見られたのは、ボク自身のせいか」
 軽い自嘲の笑みを浮かべ、能力者達に背を向けるシェルティラ。
 その後ろでは、修のインパクトを皮切りとした集中攻撃によって炎上した撃墜王が、静かに消えていくのだった。

●去り行くシェルティラへ
 戦いの終わりを悟り、踵を返すシェルティラ。
 しかし能力者達が、シェルティラをそう簡単に帰らせるわけもなかった。
「質問。キミ等神将は倒したら……死んだりすると白い霧となって消えるが、アレは何だ? 本体が別に居るのか?」
「一応本体なんだけどね……ちょっとした裏技、かな。死んでも再構成すれば元通りだし」
 シーリウスが投げかけた質問に、返って来る返答。
 その様子に、今なら色々聞けるかもしれないと質問攻めの時間が始まる。
「この時代には望んで留まっているのですか? 留まる為に、何か必要な事があるのですか?」
「望んで留まっているよ。ボクのいた時代とは違って豊かで、凄く発展してるしね。見ていて飽きないよ」
 続けざまに投げかけられた景の質問にも、シェルティラはすぐに答えてみせた。
 楽しそうに喋っている様子を見る限り、現代の生活を楽しんではいるらしい。
「シェルティラの目的と妖狐達の目的、どちらが先に達成されそうなんだ?」
「質問ばかりで済まない。俺達を試してる様な素振りして居るが、何か期待してるのか? それと……甲斐と鈴音は成仏させてくれた?」
 さらに質問攻めに加わったのは迅だ。彼に続いて、再びシーリウスも問う。
「確実にボクの目的だとは思うかな……それは間違いないね。期待については、半々かな。あの龍脈の人達なら、ちゃんと逝ったよ」
 妖狐の目的よりも早く達成出来て、能力者達にも期待を半分ほど寄せているらしいシェルティラの目的は何なのか?
 ここで質問が終わったらしいと感じたシェルティラは、静かにジャスティーンの方へと近付いていく。
「ほら、帰るよ。帰ったらまずは特訓からだね?」
 どこに隠してあったのか2本目の竹刀でジャスティーンを突付き、帰還を促して。
「シェルティラさん、この本をあげる。最近人気の小説なの、面白かったからあげる♪」
 そんなシェルティラに真紀が小説を、鹿臣が『銘菓百選』を書き綴ったメモを手渡した。
「もらっておくよ、ありがとう。ほら、きりきり歩く」
『叩くな、コラ!』
 軽くお礼の言葉を述べてそれを受け取ると、ジャスティーンをぺしぺしと叩きながら2人は戦場を後にする。
「……何でだろう。シェルティラにお疲れ様と言いたくなるのは何でだろう。言わないけど」
 去り行くその後姿がなんとなく疲れているようにも見えた修の言葉に、仲間達に浮かぶ苦笑い。
 次に出会う日も、また近いだろう。
「シェルティラさんに応えられるくらい、強くなりますからねっ」
 最後に奈々が大きな声で伝えた言葉が届いたのだろうか、後ろを振り向かないままシェルティラは手を振るのだった。


マスター:真神流星 紹介ページ
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いまいち
参加者:12人
作成日:2010/09/06
得票数:楽しい26  カッコいい22  知的1 
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