身も心も患者のために!


<オープニング>


●秋田県某所
 かつて秋田県の山奥に小さな村に病院があった。
 この病院は医者が一人しかおらず、朝から晩まで休む事無く働いていたらしい。
 だが、働き過ぎで体調を壊してしまい、しばらく休むにしていたようだ。
 そのため、村人達が怒り狂い、『医者が倒れてどうする! 気合が足りん』と病院まで押しかけ、ベッドで眠っている医者に対して延々と説教をした事があった。
 他にも『わしがこの村の村長だから、偉いんじゃあ! だから優先的に治療せぇ!』と言われたり、『医者は儲かるから今日はツケでいいだろ』と言われたりしていたため、ストレスがハンパではなかったらしく、夜逃げするようにしていなくなってしまったらしい。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、山奥にある廃村。
 この村には病院がなかったから、病気になったら最後。
 一番、近くの病院でも車で3時間ほど掛かっちゃうから、だいたい気合で乗り越えようとするんだけど、本当に酷い時は病院に行くことさえ出来ず、ポックリ逝っちゃったようなの。
 だから、この村の人達はみんな医者を恨んでいたわ。
 リビングデッドと化したのは、そういった人達。
 その大半がおじいちゃんか、おばあちゃんなんだけど、物凄く自己中心的な性格だから、とても付き合いづらかったみたい。
 リビングデッド達はみんな調子が悪そうにしていて、『わしらは病気じゃ。肩を揉めぃ!』って叫んだり、『あ〜、腰が痛い。ちょっと薬を買うてきてくれんかのぅ』って言ってきたりするようなの。
 それと、病院があった場所が特殊空間と化していて、地縛霊と化した女性が留まっているわ。
 特殊空間の中では身体のあちこちが痛くなったような錯覚を受けるらしく、地縛霊が耳障りな悲鳴をあげて攻撃を仕掛けてくるから、くれぐれも気をつけてね。

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参加者
メイガス・モルガーナ(トータルの魔人そして魔女・b04105)
夜久・紀更(ノーチェブエナ・b07881)
天乃宮・頻(兎の小道・b30003)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
金須・昭憲(赤い紅い赫い黒・b45986)
萱森・各務(遊鬼士・b56350)
アリアン・シンクレア(妖精姫・b58068)
布瑠部・由良(蟲姫様のお通りだっ・b59279)
ギンヤ・マルディーニ(エクリッシ・b70345)
七尾・やこ(珠玉の仔狐・b73876)
織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)
冬城・ちか子(疾風旋律駆け巡る空色娘・b76885)



<リプレイ>

●医者の苦しみ
「医者不足ってのはニュースでもよく聞くよね。まあ、この村もそうだったのかも知れないけど〜……。お医者さんだって人の子だよ? 働き過ぎたら具合が悪くなるに決まってるじゃん」
 当時の新聞記事を読みながら、冬城・ちか子(疾風旋律駆け巡る空色娘・b76885)が口を開く。
 この村にやってきた医者は、人生を捧げるつもりで志を持って治療を続けていたが、あまりにも村人達が我侭ばかり言っていたため、とうとう嫌気が差してしまったらしい。
「この村で働き続けたというお医者様は偉大な方ですね。寝る間を惜しみ村人に為に尽くしして体調まで崩されるとは……。それに対して村人達は、お医者様の事も理解せず、自分勝手な言い分だけを押しつけ続けたわけですから、この村から医者がいなくなったのも無理からぬ事です」
 医者の気持ちを考えながら、萱森・各務(遊鬼士・b56350)が答えを返す。
 しかし、村人達は医者の気持ちをまったく理解しておらず、『根性がなかったから逃げた』と思い込み、居なくなった後も口汚く罵っていたようである。
「病院まで3時間なんて確かに深刻かも……。そうなっちゃったのも自業自得なのか、しょーがないことなのかー……。近くに病院があってお医者さんがいるってすっごくありがたみのある事かもー」
 しみじみとした表情を浮かべ、織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)が病院の有り難味を実感した。
「でも、お医者さんを大事にしなかったから、居なくなっちゃったんだよね? 大事にして欲しいのなら、まず相手を大事にしないといけないのに……」
 どこか寂しそうな表情を浮かべ、天乃宮・頻(兎の小道・b30003)が呟いた。
 だが、村人達は『医者が病人の治療をするのは当然の義務』だと思っていたため、どんなに医者が熱心に治療をしていても、それが当たり前だと感じていたらしい。
「寒村部の医療事情はかなり最悪だと聞いていましたが、まさかここまでだったとは……。若い働き手は都市部に行って残ったのは老人のみ。しかも、いくら治療をしても感謝されず、悪態をつかれていたようですから、かなりきつかったんでしょうね」
 医者に対して同情しながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が溜息をもらす。
 そのため、医者がどんなに疲れた顔を見せても、『他人の病気を治す医者がそんな事でどうする! 自己管理が出来ていないせいじゃ』と言われ、ゆっくり休む事が出来なかったようである。
「なんと身勝手な村人達でしょう。それで命を落としたとしても自業自得。お医者さんを恨むなどお門違いも甚だしいですね。しかも、死んでもなお横柄な態度とは……。そのような者達には天に変わって罰を与えてやりますわ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、アリアン・シンクレア(妖精姫・b58068)が廃村を睨む。
 おそらく、村人達は自分達を見捨てた医者を逆恨みして、その命が尽きるまで呪い続けていたのだろう。
「医療従事者や医療機関に対して自己中心かつ理不尽な要求、果ては暴言・暴力を繰り返す困った患者の事を日本では、『モンスターペイシェント』という言葉で表すそうだね。今回の依頼のご老人達は、まさにその『モンスターペイシェント』。生きている人だったら、対処に頭を抱えるところだけど、リビングデッドになっているのなら、躊躇う必要はないね」
 納得した様子で頷きながら、ギンヤ・マルディーニ(エクリッシ・b70345)が廃村に入っていく。
 廃村はすっかり寂れ果てており、リビングデッドと化した老人達が『足が痛い』、『腰が痛い』と愚痴をこぼして彷徨っていた。
「あの人達が文句ばかり言っていた村人達のなれの果てですか……」
 リビングデッド達に冷たい視線を送り、各務が近くにあった茂みの中に身を隠す。
 その途端、リビングデッドが『あひゃあ!』と声をあげ、バランスを崩して倒れ込む。
「お年寄りは大切にしなくてはいけませんけど……」
 複雑な気持ちになりながら、金須・昭憲(赤い紅い赫い黒・b45986)が拳をぶるりと震わせる。
 本来ならばここで老人達に肩を貸し、座る事の出来る場所まで連れて行くべきだが、相手が既にリビングデッドと化している以上、情けをかける必要はない。
 しかし、リビングデッド達は昭憲達の存在に気づくと、物凄く調子が悪そうにヨタヨタと杖をつき、『最近の若いモンは、年寄りが困っていても、そのままか!』と愚痴をこぼす。
「それだけ、元気があれば、だいじょうぶ」
 リビングデッド達に視線を送り、七尾・やこ(珠玉の仔狐・b73876)がさらりと言う。
 その言葉を聞いてリビングデッドが怒り狂い、『医者が居ないから、無理をしておるだけじゃ! 本当は歩くのだって辛いんじゃ!』と言い放つ。
「いや、それだけ文句を言うだけの元気があるのなら十分だろ。それにキレている時は、杖だっていらないみたいだし……」
 鬱陶しそうに耳栓をしながら、夜久・紀更(ノーチェブエナ・b07881)がツッコミを入れた。
 ケルベロスオメガのレッドも紀更に耳栓をしてもらい、リビングデッド達に生暖かい視線を送っている。
 それが火種となってリビングデッド達がブチ切れ、『わしらの話を聞けぃ!』と叫んで懇々と説教を始めた。
「それ以上、わめくな。終わらせてやる」
 リビングデッド達に警告しながら、メイガス・モルガーナ(トータルの魔人そして魔女・b04105)がイグニッションをする。
 だが、リビングデッド達はまったく怯む事なく、『自分達の立場が悪くなったら暴力か!』と悪態をつく。
「さて……、ちと気は進まんがこれも仕事ゆえにきっちりやらせてもらうかの」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、布瑠部・由良(蟲姫様のお通りだっ・b59279)がリビングデッド達を睨む。
 その間もリビングデッド達は好き勝手な事を言い、由良達をさらにイライラさせた。

●最近の若いモンは!
「そうやって、誰にも相手にされない寂しさを晴らしたくて、お医者さんに無理難題を言っていたというのもあるのかも知れませんが、あなた方の行為は行き過ぎです! まして死んだ以上は、大人しく冥府へと落ちなさい!」
 リビングデッド達を叱りつけ、アリアンが雪だるまアーマーを使う。
 その言葉を聞いてリビングデッドが鼻を鳴らし、『そんな事はどうでもいいから肩を揉め!』と言い放つ。
「ちょっと待っていてくださいね。いま行きますから」
 ハンティングモードを発動させ、昭憲が少しずつ間合いを詰めていく。
 しかし、リビングデッド達はまったく疑う事なく、『早く揉め!』と言って上着を脱いだ。
「ハイ、黒い湿布を貼りますねー♪ 追撃付きなんで、ちょっと染みるかも?」
 白衣の天使の様な慈悲深い笑みを浮かべつつ、ギンヤがヴァンパイアクロスを撃ち込んだ。
 その途端、リビングデッドが『ギャー!』と悲鳴をあげ、顔を真っ赤にしてギンヤを説教し始めた。
「そういう時は、痛い患部を冷やして麻痺させちゃえば大丈夫ー。病気で辛いなら起き上がらずに、ちゃんと寝て身体を休めようねー」
 心配した様子でリビングデッド達に駆け寄り、頻がニコッと笑って氷雪地獄を発動させる。
 そのため、リビングデッド達はブルブルと体を震わせ、『こりゃ、たまらん!』と言って鼻水を垂らす。
「……おや? 随分と体が凝っているようですね。筋肉のコリにはアイシングがいいんですよー!」
 仲間達と連携を取りながら、昭憲がフロストファングを叩き込む。
 それに合わせてギンヤが破魔矢を放ち、ラジェリが幻楼七星光で攻撃を仕掛けていく。
「それと、最近の医療では蟲も治療に使うようなんですよー。まあ、この蟲はゴーストを貪りますがね」
 ゆっくりと気持ちを落ち着かせながら、洋角がリビングデッド達めがけて暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 そのため、リビングデッド達が悲鳴をあげて黒燐蟲を払い、『と、年寄りを大事にしろと、親に教わらなかったのか!』と言って逃げ惑う。
「それ以前にゴーストですから! お年寄りじゃありません」
 リビングデッド達の文句を聞きながら、ラジェリが再び幻楼七星光を放つ。
 だが、リビングデッド達は納得しておらず、『どこからどう見たって、無害な年寄りじゃろうが!』と断言をした。
「本気でそう思っているのなら、やはり倒さなければいけませんね。植物の精霊王よ、いにしえの盟約に従い、我が敵を討て!」
 リビングデッド達を射程範囲以内に捉え、アリアンが森王の槍を撃ち込んだ。
 次の瞬間、リビングデッド達が断末魔を響かせ、『本当はわしらを大事にしてほしかったんじゃ』と言って崩れ落ちた。
「やれやれ、今回はリビングデッドゆえ、戦って済ませる事が出来たけど、こんな我が侭な患者達を日々相手にするのなんて、僕にはとても出来ないよ。お医者さんは偉いなぁ……」
 改めて医者の大変さを知り、ギンヤが小さく首を振る。
「確かに、ここまで我儘な患者ばかりだと、何となく日本の医療が少々心配になりますねぇ」
 苦笑いを浮かべながら、洋角がギンヤの言葉に納得した。
 おそらく、例え別の医師が来ていたとしても、村人達に嫌気が差して決して長続きはしなかっただろう。
「こういう老人にはなりたくないものですね。反面教師……肝に銘じましょう」
 今日の出来事を教訓にしつつ、昭憲がゆっくりと辺りを見回した。
 かつて病院だった場所には『藪医者!』、『人殺し!』、『すべてお前のせいだ!』と書かれた張り紙が重なり合うようにして貼られている。
「情けは人の為成らず……自分の為にも、人に優しくしてれば、こうならなかったのかもね」
 寂しそうに張り紙を眺め、頻が深い溜息を漏らす。
 村人達がもう少し医者の立場になって物事を考える事が出来れば、このような悲しい結末は迎えなかったかも知れない。

●不治の病
「イタタタタッ……。何だか妙に身体が痛くなってきたのぉ」
 病院に入った途端、体のあちこちが痛くなり、由良が険しい表情を浮かべる。
 どうやら、病院の中が特殊空間と化しているらしく、やつれた表情を浮かべる女性の地縛霊が留まっていた。
「あなたもお医者さんを怨んでいるの? 体を壊すまで身を粉にして働き続けたお医者様を……。それとも、お医者様を怨んではいないけど、病院まで間に合わなかった患者さん?」
 地縛霊に語りかけながら、各務がゆっくりと距離を縮めていく。
 その問いに地縛霊は悲しげな表情を浮かべ、『私は本当に病気だったのに……。村の人達が酷い事を言って、先生を追い出すから……』と答えて瞳を潤ませた。
「何やら色々と事情があるようだが、おめぇをこのまま放っておくわけにはいかねー。さっさと解放させてやっからな、大人しく喰らっとけ!」
 レッドと連携を取りながら、紀更が呪いの魔眼を炸裂させる。
 次の瞬間、地縛霊が悲鳴を響かせ、病院内のガラスを木っ端微塵に破壊した。
「ひょっとして、この病院でお手伝いをしていた看護師さん? お医者さんが逃げちゃって大変な思いをしたらしいね。本当は一緒について行きたかったのに……。置いて行かれた上に村人達から責められて……」
 地縛霊に対して同情しながら、ちか子がプロミネンスパンチを放つ。
 その一撃を喰らって地縛霊が鳩尾を押さえ、『お腹は止めて』と表情を強張らせる。
「その可能性は……、否定するわ」
 キッパリと断言した後、メイガスが青の魔弾を撃ち込んだ。
 可能性はゼロではないが、何かがおかしい。
 おそらく、地縛霊が身を守るためについた虚言。
「うそは、よくない」
 一定の距離を保ちながら、やこが呪詛呪言を発動させた。
 その言葉が事実だったのか、地縛霊の動きがピタリと止まり、『う、嘘じゃない』と言って両目をキョロキョロさせる。
「どちらにしても、死者が現世(うつしょ)を歩む事は許されません。御仏の導きに従い黄泉路へと還りなさい!」
 地縛霊の逃げ道を塞ぎ、各務が白燐奏甲を使う。
 それと同時に紀更がレッドに合図を送り、レッドファイアを吐かせて、地縛霊の体を魔炎に包む。
「抉り取ってあげるわ、ね♪」
 地縛霊の悲鳴が響く中、メイガスがスラッシュロンドを放つ。
 それに合わせて由良が暴走黒燐弾を放ち、地縛霊を壁際まで追い詰めていく。
「しっかし、さっきから体中が痛ぇな。……病は気から、これも多分気持ちの問題! ……って事で踏ん張っていくぜー」
 眉間に皺を寄せながら、紀更がむりやり自分を納得させる。
 次の瞬間、ちか子が地縛霊の死角に回り込み、クレセントファングを叩き込む。
「ナウマク・サマンダボダナン・インダラヤ・ソワカ、帝釈天呪法!」
 仲間達と声を掛け合いながら、各務が地縛霊に呪詛呪言を唱える。
 そのため、地縛霊が全身をガタガタと震わせ、『死にたくない、死にたくない』と呟いた。
「これで、おわり。こっくりさん、こっくりさん」
 地縛霊に語りかけながら、やこが封神十絶陣を発動させる。
 それと同時に地縛霊の絶叫が辺りに響き、特殊空間が跡形もなく崩壊した。
「うむ、これにて一件落着じゃな。医師の不足やら高齢化やら深く考えると難しい事じゃろうが……、今は帰ってゆっくりと湯にでも浸かって休みたいのぉ……」
 全身を駆け巡っていた苦痛から開放され、由良がホッとした表情を浮かべる。
「あたしはお医者さんにはなれないと思うけど……、弱い人達を助けるようにはなりたいな。今は、とりあえずおつかれさま。ゆっくり休んでね」
 先程まで地縛霊がいた場所を眺め、ちか子がゆっくりと両手を合わす。
 だが、これでようやく彼女も苦痛から解放され、生きている間は得る事が出来なかった安らぎに包まれ、永久の眠りにつく事が出来たはずである。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/09/03
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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