≪会話のために存在する部屋≫奴の触手が透かしてうねる、巻き付き絡めと不気味に迫る!〜夏の終わり編


<オープニング>


 今年は9月に入っても暑い日が続き、それならばと言うことで海へ遊びに来た≪会話のために存在する部屋≫有志の一行。
 シーズンも終わりが迫っているおかげで彼ら以外に人気はなく、澄み切った青空と照りつける太陽の下、砂浜の上ではビーチバレーに興じたり海で泳ぐ女子達、そんな彼女達の水着姿を眺める男子達と、思い思いに海を楽しんでいたが──、

「何でこんなことになるんですか?」
 甲・真奈美(甲神社の巫女長・b73464)が不機嫌な表情で尋ねる。
「俺に訊くなよ!」
 心外だとばかりに叫ぶ柊・裕也(ワイバーン・b43469)。そんな彼らの視線の先にいるのは1体の海月(クラゲ)──もっとも、成人男性の平均の2倍くらいの高さで、海から出てきて砂の上10センチほど浮かんでふよふよと漂っているのを海月と呼べればだが。
「せっかく海に来たのに……」
 さっきまでビーチバレーで遊んでいた藤林・清海(高校生呪言士・bn0218)が、恨みがましく呟きながら裕也を横目で見る。
「いやらしそうな触手ですよね」
 うねうねと無数に動く海月の触手を見て、萱森・各務(遊鬼士・b56350)が言うと、またですかと言いたげな目で裕也の方を向く。
「どうしてくれんだよ、せっかく海に来たってのによ!?」
 不満たらたらな様子でクラスター・ホール(クラスター悪夢クラスター・b41102)が叫ぶと、シルヴィア・テスタロッサ(ジャムブウル・b62958)も全くだと言うように頷く。
「だから、何で俺に言うんだよ!!」
 半泣きの表情で叫ぶ裕也だが、
「今までのことを思い出してみたらどうですか?」
 冷めた口調で雅条・ミルラ(赤にして柘榴石・b54088)は言うのだった。
「ああ分かりましたよ、能力者だもんな、ゴーストを見つけたからには倒さなきゃな。倒しゃいいんだろ? 畜生!」
 半ばやけっぱちな口調で言いながら、裕也はイグニッションカードを取り出す。
 既に柊・華蓮(紅月に誘われ夜闇を彷徨う・b42680)とレネシー・フォルオンス(壊れた人形・b54162)もカードを出していて、号令を待つ兵士のように淡々とした表情で裕也の様子を伺っている。それを見て裕也は溜め息を吐くが、すぐに真剣な表情で海月の方に向き直り、カードを掲げて叫んだ。
「イグニッション!」

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参加者
クラスター・ホール(海星・b41102)
柊・華蓮(紅月に誘われ夜闇を彷徨う・b42680)
柊・裕也(ワイバーン・b43469)
雅条・ミルラ(赤にして柘榴石・b54088)
レネシー・フォルオンス(壊れた人形・b54162)
萱森・各務(遊鬼士・b56350)
シルヴィア・テスタロッサ(ジャムブウル・b62958)
甲・真奈美(甲神社の巫女長・b73464)
NPC:藤林・清海(高校生呪言士・bn0218)




<リプレイ>

●夏に触手と言えば……ええ予想通りです
「やっと海で遊べたと思ったらクラゲ退治になったわけですが、どう思いますか清海さん?」
 雅条・ミルラ(赤にして柘榴石・b54088)が投げかけてきた質問に、
「そうですね、やっぱりあの触手がいかにもという感じですね。色々な意味で夏の終わりにというやつでしょうか?」
 視線の先に、砂の上を漂い半透明の触手をくねらせる巨大海月を捉えながら、藤林・清海(高校生呪言士・bn0218)はそう答える。
「……さっさと片付けて続きをしよう」
 ぼそりと言いながら柊・華蓮(紅月に誘われ夜闇を彷徨う・b42680)がプロトフォーミュラを発動させると、
「賛成です! エッチなことをしてくる前に倒しましょう!」
 この結社で出かける度に被害を被っているからか、海月から距離を取りつつ萱森・各務(遊鬼士・b56350)が呪詛呪言を当てると、海月の触手が如意棒のように伸びて各務に向かってくる。
「ちょっとどこまで伸びるの? この触手ーっ!?」
 各務は必死で避けようとするが、触手特有のトリッキーな動きで迫ってきて、瞬く間に各務の体に巻き付いてくる。
「いやーっ、私はこんな趣味は無いのにーっ!」
 過去の経験を踏まえ、各務は詠唱兵器のエプロンドレスの下に外れにくいよう白のモノキニ水着を着用していた。目論み通り確かに水着は外れなかったが、触手がちょうど彼女の胸の下に巻き付いて体のラインに食い込むおかげで胸の膨らみが強調され、各務の苦しむ表情と相まって男達の視線を嫌でも集めてしまう。
「良し、任せろ!」
 クラスター・ホール(海星・b41102)が叫び、助けに行くかと思いきや、頭上に上げた両手を打ち鳴らして踊り出す。すると彼のダンシングワールドにつられて海月も踊っているのか、体や触手を激しく振り回す。そうなれば当然触手に捕まっている各務も無事では済まず、上へ下へ、右へ左へとシェイクされる。
「ちょっと、何、やってるん、ですか!?」
 絶叫マシーンのような状態に、舌を噛まないよう途切れ途切れで各務が叫ぶと、
「いや、だってよ、ここで敵の攻撃を封じておかないと!」
 クラスターの答えは理屈としては正しかったが、表情からは触手に更なる動きを求めているのが見え見えで、
「確かに、彼の言う通りですね」
 白々しいほど真剣な口調で、シルヴィア・テスタロッサ(ジャムブウル・b62958)が続けて言う。
「存分に吼えろ……Caladbolg!!」
 それでも倒す気はあるようで、シルヴィアの電光剣『Caladbolg-α-』からプロトヴァイパーがほとばしり、海月の本体に命中すると、中の水分が蒸発しているらしく白い煙が立ち上る。
 一方、華蓮への操を立ててか、それとも後の仕返しを怖れてか、男性陣で唯一各務の惨状を見なかった柊・裕也(ワイバーン・b43469)は「狩らせてもらうぜ」とハンティングモードに移行しながら海月との距離を詰め、レネシー・フォルオンス(壊れた人形・b54162)もラジカルフォーミュラを発動させて海月に接近する。
「刺されて腫れる前に倒しましょうか」
「そうね、痺れるのも嫌だし」
 ミルラのギターマシンガンによる射撃と清海の呪詛呪言を海月に浴びせている隙に、甲・真奈美(甲神社の巫女長・b73464)が赦しの舞で各務を触手から脱出させると、各務は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にして体を震わせる。
「行きなさいカタクチ! 楽しみを満喫する為に!」
 ミルラの命令に応えてスカルロードのカタクチが大鎌を振り上げて飛びかかると、草刈りのように触手を斬り飛ばしていくが、すぐにまた新しい触手が生えてくる。
「この水分と願望の塊め……」
 そう呟いて、ミルラはギリッと歯噛みした。

●タコ殴り? いいえ、海月殴りです
「華蓮、行くぜ!」
 裕也の呼びかけに華蓮は頷くと、
「フルチャージ……! 1、2、3」
 海月に向かって砂の上をダッシュし、数歩手前で跳躍、
「ストランダムキック!!」
 エアシューズにプロトストランダム用の詠唱停止プログラムを纏わせて跳び蹴りを仕掛けるが、未だダンスの最中だった海月にヒョイと避けられてしまう。
「えぇぇぇっ!?」
 勢い余って叫びながら砂浜に顔面着地する華蓮。それでもすぐに立ち上がって体勢を立て直す所は流石だが、プログラムの影響でエアシューズの回転動力炉が止まっていた。
「畜生、これでも喰らいやがれ!」
 ミルラから援護射撃を受けながら、裕也が黒影剣で海月に斬りつけると、切り口から血の代わりに水が流れ出す。その直後、踊りを止めた触手の一群が裕也に向かって伸び、必死で防ぐが、1本が防御を抜けて先端の針で裕也を刺す。
「くそっ……しぶといな……」
 そう言葉を漏らすと、裕也の体は砂の上に倒れて激しく痙攣し出す。
「清海さん!」
 各務が声を掛けると、それで意を察した清海は「分かった!」と返し、2人同時に呪詛呪言を浴びせる。海月の体がビクンと大きく跳ねた所をレネシーがスライディングで肉薄、グラインドスピンで触手を刈り取る。するとまた触手が生え替わるが、前回より明らかに再生のスピードは遅い。
「クラ、スターぁ!」
 クラスター・ホール(海星・b41102)が叫びながら悪夢のクラスター爆弾をそこら中にバラ撒く。
「何叫んでるのよ?」
 爆弾がことごとくクラゲから外れるのを見ながら訝しげに言ってくる清海に、
「いや、だってよ、『海月』と書いてクラゲなら、『海星』でクラスターだろ?」
 そうクラスターは同意を求めるが、
「あのね、『海星』って書いてヒトデと読むのよ」
「え……!?」
 清海の指摘に愕然と立ち尽くす。
 そんな遣り取りをしている間に、シルヴィア2度目のプロトヴァイパーは海月の体を掠めるに留まり、真奈美の赦しの舞で華蓮のエアシューズの回転動力炉が再び動き出すが、裕也は未だに起き上がれずにいた。
 そこへカタクチが、今度は本体に連続して斬りつけ、幾筋も水が零れ出す。
「今度こそ!」
 裕也の仇討ちとばかりに華蓮の跳び蹴りが今度は命中し、詠唱停止プログラムで苦しみ出す海月に、
「花火代わりだ……せめて華々しく散りやがれ!!」
 シルヴィアのプロトヴァイパーが命中すると、ようやく限界に達したらしく、浮き上がることもできなくなって砂上に触手を引きずりながら、それでも各務の元へやって来ると、そこで力尽きる。
「何て往生際の悪い奴だ……」
 苦々しい口調で、シルヴィアはもはや動かなくなった海月を見る。正確にはその下の──、
「ちょっと、見てないで早く助けて下さいよ!」
 巨体にのしかかられて動けない各務が叫ぶ。
「いや、そう言われても、何と言うか目の遣り場が、な──?」
 困ったと言わんばかりの口調でシルヴィアが言うと、クラスターも「だな」と返す。そんな2人の視線は、海月の巨体と砂浜に挟まれて潰れている、各務の胸に向けられているのだった……。

●夏の日の過ち
 海月が消滅すると、能力者達はイグニッションを解除して水着姿に戻る。
 清海、ミルラ、レネシー、各務、真奈美はビーチバレーを再開し、華蓮は海で泳いでいる……と言うより海面に仰向けになって浮かびながら無表情で空を眺めている。傍目からは楽しいのか分からないが、荷物の所でシルヴィアと一緒に写真を撮っている裕也がデジカメのズームを最大にして彼女を見ると、長い付き合いで彼女なりに楽しんでいると分かったので、ビーチバレーの方にレンズの向きを変える。

「あっ!」
 見当違いの方向にボールを弾いてしまい、ミルラが拾いに行くと、ボールが転がっているすぐ側で、モグラが地中を進んでいるように砂を盛り上げながら──モグラのそれよりもずっと大きかったが──シュノーケルがゆっくりと進んでいた。
「…………」
 ミルラは左手で他の女子達を手招きしつつ、右手でシュノーケルの先端を塞ぐ。すると間もなく──、
「ブハァッ!」
 黒いブーメランの海水パンツを履いたクラスターが、砂を撒き散らしながら飛び出してくる。
「何故バレたぁ!? この日のために修行した土遁の術が!」
 自分を取り囲む女子達を見て、狼狽するクラスター。
「クラスターさんがここで訊くべきなのは、別のことだと思いますが?」
 不自然なほどの笑顔で各務が言うと、同様の笑顔を浮かべた他の女子達と一緒にゆっくりと彼に迫った。

●夏の罰ゲーム
「スイカを持ってきたのですが、スイカ割りなんてどうですか?」
 ミルラの提案に、他の女子達も反対する理由はなく、スイカ割りの準備を始める。そう、女子達が──。
「何だよこれは!?」
 首まで砂に埋まった状態のクラスターが叫ぶ。ちなみに砂の下に隠れて見えないが、念のため手足も縛っておいてある。そんな彼の頭の横にはスイカが置いてあって、
「本当に分からない?」
 清海が聞き返すと、クラスターの額からダラダラと汗が流れ出す。
「「何で俺達まで埋めるんだよ!?」」
 スイカを挟んでクラスターの反対側には、シルヴィアと裕也がこれまた砂の上に頭だけ出した状態で埋められていた。
「見たでしょう? あの時」
 心の底に怒りを押し殺した口調で各務が答えると、
「俺は見てないぞ!」
 裕也は言い返すが、各務は裕也の側まで行くと、
「この結社でお出かけすると、いつもエッチな輩と遭遇しますよね。もう仕組んでいるとしか思えないくらいに……団長か誰かの自作自演じゃないんですか? 正直に謝るなら許してあげますよ」
 そう笑顔で尋ねるが、清海が横からその笑顔を見た途端、(「怖っ!」)と思わず引いてしまう。
「ンなわけないだろ! 偶然だ偶然! 華蓮からも何か言ってくれ!」
 必死の表情で裕也は助けを求めるが、華蓮はビシッと親指を立てて一言。
「頑張れ」

 そうして絶叫する男達の前で、女子達は目隠しと金属バットを見せつけるように出し、誰が最初に挑戦するかジャンケンを始める。
 その後の詳しい展開は割愛するが、この時の海水浴は男女双方にとって忘れられない思い出になった、とだけ書いておこう──。


マスター:たかいわ勇樹 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/09/25
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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