<リプレイ>
●夜の校舎は危険が一杯 夜の学校。そこには、大人でも恐怖を覚える独特の空気がある。 霊的な物を否定するとしても、無断で侵入した事を誰かに見咎められれば、きつい叱責は免れまい。 今宵……そんな様々な恐怖を凌駕する好奇心、探究心を持つ3人の勇者達が、夜闇に紛れて学校の敷地内へと潜入していた。 それが想像を遥かに絶する危険を伴う行動とは、知る由も無く……。
「夜の学校ってさぁ、何かテンション上がるよねぇ」 毒島・毒子(フリッカースペード・b16226)も、どちらかと言えば好奇心の強いタイプ。3人の子供達の気持ちも、ある程度理解出来る様だ。 「怖い物に興味があるという気持ちは解らなくもありませんが」 同意を示しながらも、自身は怖いものが苦手と言う黒鵡・那儀(少しでもあの人に近づきたい・b43348)。 「……こんな夜遅くに学校に忍び込んで……は、ちょっとやりすぎですね。親御さんも心配されてるでしょうし……」 頷きながら、常識的な意見を唱える西条院・水菜(退魔の姫巫女・b38359)。 「それに……ホントにあるんだよ〜危ないのが!!」 普段は明るく元気な石河・翔霧(高校生符術士・b66185)も、今日は任務用の暗色パーカーに身を包む。 怪談話が、子供達の想像の産物であるうちはまだ良い。今回の場合、彼らの見立てが正しいからこそ危険なのだ。 「学校の七不思議か……学校の怪談の定番で、どこにでもあるものだな。大抵、7つ目は謎で、知ると良くない事が起こるとされていたりするものだが……」 御神楽・霜司(魂葬の刃と舞う孤狼・b01033)が言うとおり、もし7つ目の不思議を知れば、子供達は命を落とす事になる。 「この世には、人が知らなくても良いことが厳然と存在する。特に闇に関わることはな……」 過ぎた好奇心は時に身を滅ぼす。秘密を守る事の重要性を誰よりも心得ているのは、誇り高き巡礼士であるセイバー・ラピュセル(剣の乙女・b77165)。 「結局判らないままなのもロマンがあっていいのかも……ま、まあ今回の作戦で新たな七不思議を作ってしまいそうですけどネ」 鈴木・まりあーじゅ(鮮血のマリア・b03817)が言う様に、能力者達はそれを阻止する為、偽りの「七不思議」をでっち上げる事にした。 それを子供達に信じさせることが出来れば、彼らも満足して帰り、死者も出さずに地縛霊を退治する事が出来る。 「七不思議として伝説に残る……ってすごいことかもだけど何か微妙だな」 強いて問題があるとすれば、緋桜・瑞鳳(太陽の光浴びる大輪の華焔・b00860)が危惧するように、七不思議として語り継がれる可能性があると言う事くらいだろうか……。 さて、そうこうしている間にも能力者達は学校の敷地に到着。早速「誘導班」と「偽七不思議班」に別れ、作戦へと取りかかるのだった。
●ふたつのオカルト研究会 「あー、きみきみ」 「ふえっ!?」 警備員の制服を着た霜司の声に、飛び上がって振り返るフトシ少年。 「こんな時間に何をしてるんだい?」 「えっと、その……忘れ物を取りに! でももう見つかりました! 失礼しますっ!」 恐らく、誰かに見つかったときの言い訳を用意していたのだろう。少年は早口にそう答えると、小太りの体型からは想像出来ないほどの俊敏さで、霜司の前から逃げ去っていった。
「はぁ……はぁ……なんで警備員なんかが居るんだぁ? そうだ、2人にも知らせておかな――」 「あのー」 「ふぇあっ?!」 後ろを振り向き、霜司の姿が見えなくなったのを確認したフトシは、携帯電話を取り出す。が、その直後にまたも声が掛かる。 「もしかして、この学校の生徒さんですか?」 「え、あ……?」 「私達は、誓銀館って高校のオカルト研究部だよ。ここの七不思議の噂ってホントらしいの」 「オ、オカ研?」 まりあーじゅと翔霧の言葉に、暫しぽかんとした様子のフトシだったが……。 「そ、そうなんだ……実は僕らも、7個目を見付けようと思って探索してるんだ。あ、ボクもオカルト研究会で」 「きっとこれも何かの縁。せっかくですし、一緒に探しませんかー? 校舎も案内して欲しいですし♪」 「えっ……でも、もう6個目までは」 「順番に回ると7つ目が見えるんだって!?」 「順番に? そうか……その発想は無かった!」 「もしもの時は巫女さんもいるしね」 「本物の巫女さん?」 「ええ、除霊師としてこの学校の七不思議の元凶となっている霊を退治しに来ました」 「す、凄い……これなら凶悪な奴が出て来ても安心だね! ボクのお守りは2年前に買った奴でちょっと不安だったんだ」 最初は同行を渋ったフトシ少年だったが、翔霧の出任せと巫女装束の水菜の存在が功を奏した様子。 結局、仲間達と合流してから一緒に七不思議を探求しようと言う話になった。 「何? 別のオカ研との合同戦線だと? ……良いだろう、年齢や通う学校は違えど、同じオカルティズムの探求者として共に手を取り合うことはどーたらこーたら」 タダシは、3人の美少女と同行出来ると言う事で、あっさりと承諾。 「はぁ? なんで高校生と一緒に探さなきゃいけないのよ、この七不思議は私達の学校の不思議なんだから!」 ナツミは同行にかなり否定的だったが、仲間2人の熱心な説得もあって、結局は折れたのだった。 「7つめを見付けた時は、私達の功績だからね!」 ――と言う条件付きで。
●怪奇!? 憑依する蟲女 「さぁ、これで残るは最後の1つよ。順番通り回ったし、先輩達の情報が確かなら、7つめの不思議は目と鼻の先って事よね」 一行は6つめまでの不思議を回り直し、再び校舎の外へとやってきた。 知らず知らずのうちに、中庭へと誘導されている事を気づきもせず、意気揚々と言った様子のナツミ。 「ところで先輩方は、普段からこうして実地へ出かけてらっしゃるのですか? いや素晴らしい、やはり書籍だけでなく実際にどーたらこーたら」 タダシは相変らず、年上の美女達と一緒に活動出来てかなり嬉しそうだ。 「中庭かぁ……ここには特に――あっ!? あれ!」 そしてついに、周囲をきょろきょろと見回していたフトシが、闇の中に動く人影を見付け声を上げる。 「ううっ……苦しい……」 それは、金髪に碧眼の少女。何か苦しげな様子で、よろよろとこちらへ近づいてくる。 思わず身構える一行。 「蟲が、蟲がー!」 「「ひっ?!」」 セイバーの迫真の演技に、3人はさすがに怯えた様子で水菜の背後へ隠れる。 ――どさっ。 やがてセイバーは、倒れ伏して動かなくなる。 「だ、大丈夫かな……?」 子供達は皆安否を気遣いはするが、さすがに近づく勇気は無いらしく、遠巻きに様子を伺う。 「あっ!?」 「な、何?」 少しすると、セイバーの身体から黒いもやの様な物が沸き立つように生じ始める。3人は目を見開き、何が起きているのか把握すべく状況を見守る。 黒いもやは、闇の中でありながら次第に、人の形を為し始める。セイバーの身体に取り憑いていた何かが、姿を現わすかのように。 「ひ、人……?」 やがて人影は、それが完全に赤毛の女性であると断言出来るまでに明確な姿となった。 黒ずくめの服装に、乱れた髪。そして長い髪の間から覗くのは、大きな瞳。 「……次はお前がいいかな……」 そして子供達をぎろりと睨み付けるや、ぼそりと……しかし確かにそう呟く。 「!?」 「なんて凶悪な霊……皆さんは逃げて下さい。私が食い止めます」 銀嶺を構え、こちらも迫真の演技で言う水菜。 「これマジやばいよ!!」 「きゃー! ここにいると取り付かれますっ! 早く逃げましょう」 翔霧、まりあーじゅが切羽詰まった様子で更に言えば、フトシとタダシは青ざめた顔のまま、コクコクと頷く。 「だ、だめよっ! 見届けなきゃ……七つ目の不思議が目の前にあるんだから!」 しかしながら、ナツミだけは逃げるどころか気丈にそう言い放つと、デジカメを取り出し、ジリジリと足を引きずるようにして接近してくる瑞鳳へファインダーを向ける。 「お前たちも……喰ってやろうかぁぁぁ!!」 しかしそんなナツミの勇気の火も、一息に吹き消さんばかりの大音声が響き渡った。単に大きな声というだけでなく、それはまるで、頭の中に直接意志を送り込まれたかの様に感じられる。 「う、うわああぁぁーっ!!」 男子2人はもちろん、ナツミでさえも全力でその場から逃げ出さざるを得ない迫力。 瞬く間に3人は中庭から逃げて行ってしまった。 「ふっへっへ、大成功」 「……ちょっと怖がらせ過ぎじゃないですか?」 コトダマヴォイスを利用した脅し付けがばっちり成功し、上機嫌の毒子。一方那儀は、一目散に逃げていった彼らの恐がり様を見て、少し気の毒そうに言う。 「……あいつには絶対見せられねーなー……この姿」 髪を手櫛で整え、結い上げながら深い溜息をつく瑞鳳。 「どうやら、帰ったようだな」 念のため子供達が学校の外へ出て行ったのを確認して、霜司も帰ってくる。 「さて、夏の亡霊を追い払うとしますか!」 これで任務遂行の障害は取り除かれた。 七不思議の最後の1つを、永遠に謎のままにしておくため、能力者達はプールへと移動する。
●過ぎゆく夏 ――ぱしゃ……ぱしゃ……。 上がる水音に、ざわめく水面。 能力者達がプールサイドにやってくると、青白い燐光が水の中で揺らめき始めた。 「寒いよぉ……寂しいよぉ……」 やがてそれらは、中学生くらいと思しき少年少女の姿へ変わる。 「いにしえの英霊たちよ、ここに集え!」 すかさず、霧の幻影兵を召喚するセイバー。 「瑞鳳ちゃん!」 「あぁ、鬼さんこちらってなモンだな!」 メインの地縛霊をおびき寄せるべく、まりあーじゅは牽制攻撃を開始。頷いてプールサイドを走る瑞鳳の「Keil der Schmerz」にも、黒燐蟲達が宿る。 「どざえ○んッポイのはイヤー」 翔霧は言いながらも、霜司の水刃手裏剣に合わせて呪殺符を放つ。 「私の手の届く範囲で、命は奪わせません」 「さぁ、手早く片付けちゃいましょ」 那儀が森羅摩天陣を展開して地縛霊らの動きを封じれば、毒子の意志に従った黒燐蟲達が乱舞する。 「ねぇ……ボク達と……一緒に遊ぼうよ」 能力者達の容赦無い攻撃を受けながら、しかし地縛霊らもひるみはしない。 ただひたすらに、自らの仲間を増やさんが為に向かってくる。 ――バシュッ! 彼らの手から放たれるのは、凄まじい水圧により撃ち出された水鉄砲。 「っ……この程度!」 「いいぞ、プールサイドに誘い出すんだ」 地縛霊の攻撃は決して生やさしい物ではなかったが、凄腕能力者達を浮き足立たせる程では無かった。 レンジギリギリの位置から遠距離攻撃を繰り返す能力者らに対し、地縛霊はジリジリと誘引されてゆく。 「さぁ、今のうちに!」 作戦通り、瑞鳳とまりあーじゅがメインの地縛霊を他の3体から引き離す。 「我が二つ名は剣の乙女。力で劣ろうと魔力の猛りで劣る事はない」 虎紋覚醒により、更に戦闘力を増すセイバー。 「確実にいくぞ」 「援護します」「成仏なさいなっ!」 水菜の出現させた「始まりの刻印」が、眩い光を放ちながら炸裂する。と同時に、練り上げた気を地縛霊にたたき込む霜司。更には翔霧の【Carol of Aqua】が、目にも留まらぬ速度で振るわれる。 「まだまだ、お姉さん頑張っちゃうわよ」 「痺れ――は、しないでしょうけれど」 見る見るうちに体力を削られた地縛霊に対し、毒子の黒燐弾と那儀のジャッジメントサンダーが引導を渡す。 「よし。こっちも行こうぜ、まりあーじゅ!」 「はい!」 援護ゴーストらが殲滅されたのを確認すると、瑞鳳とまりあーじゅは全力で反撃を開始。 「挟撃だ、終わらせよう」 「我が一撃は破城の鉄槌。立ち塞がるならその守りごと両断する」 集中的な波状攻撃が、最後の地縛霊目掛けて打ち寄せた。 セイバーのセイクリッドバッシュに直撃された地縛霊は、プールに向けて吹き飛ぶ。 「寒い……寒い――」 彼の身体が水に落ちるよりも早く、その思念は跡形もなく霧散した。
●そして秋 「今日も頑張れました」 「まあ、これで一つの夏が終わった……って感じかな?」 「そうですね、あの子達にはとんだ思い出が出来てしまったかもですが……」 「ええ、夜眠れないとかなってないといいですけど」 戦いを終え、学校を後にする能力者達。恐らくだが、オカ研の3人も無事に帰宅した筈だ。 「でも、最後の1つは見ちゃダメって言うけどね……銀誓館は7つじゃ足りないよ、きっと……あはは」 「確かに……」 「……願わくば、その魂に安らぎがあらん事を」 談笑する皆から少し遅れて歩む水菜は、最後にもう一度校舎を振り返って静かに祈りを捧げる。 「月が綺麗だな……」 「ほんとだな、風も気持ちいいし! 月の光を浴びつつ、ちょっと遠回りして帰ろうか?」 かくて能力者達は、過ぎゆく夏を懐かしみながら、凱旋の途につくのだった。
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参加者:8人
作成日:2010/10/06
得票数:楽しい11
カッコいい1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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