【銀の魔導師】百鬼夜行サーカス団

<オープニング>


「シェルティラさん、この前はどこに行ってたんです?」
「どこって?」
 燐澪がそう尋ねるのも無理はない。
 目の前で本を読むシェルティラは、大事そうにぬいぐるみを抱えて何やらご満悦の様子。
 どうやら、先日手に入れた兎のぬいぐるみが相当お気に入りのようだ。
「普通にショッピングモールに行っただけだよ。……銀誓館の人達も一緒だったけどね」
 などと説明はしてみるものの、自身に対して溢れんばかりの愛情を持って接する燐澪がそれで納得するはずもなかった。
「良いな、良いなー! 私も行けば良かったと後悔しちゃってます!」
 今度は連れて行けと駄々をこねる辺り、能力者達が一緒に過ごしたのがよほど羨ましかったらしい。
 さらには色々な服装に身を包んだ写真もお土産として見せられたせいか、『一緒に遊びに行きたい』と言う願望はより一層強くなってしまったようだ。
 普段なら、『嫌だよ』とここで返されるのが普段の光景だろう。
「うん……そうだね、じゃあ、今度でも」
 だがシェルティラの返答は燐澪にも予想外過ぎるものだった。
 何か心境の変化があったのだろうか。
 悪いものでも食べたのだろうか。
 様々な憶測(ただし後者は完全に間違っているが)を駆け巡らせ、心配そうに見つめる燐澪。
「わかりました、じゃあその日を全力で楽しみにしてます!」
 と思ったら、心配なんかしてなかった。
 そんな彼女を一瞥し、シェルティラはいそいそと出かける準備を始めていく。
「って、どこかにお出かけです?」
「ちょっと仕事をしてくるよ。間違いなく邪魔されるだろうけど、百鬼夜行の手配をお願い出来るかな?」
 仕事とは、もちろん神将としての仕事である。
 これまでの経験から、確実に銀誓館からの邪魔が入るだろう事も想定しているらしい。
「わかりました。行き先はとりあえず教えてくださいね。後……夕飯までには帰ってきてください。今日の晩御飯はカレーですから!」
「最近ずっとカレーばっかりじゃないか……」
 今日もカレー。昨日もカレー。一昨日もカレー。
 あまりにカレー三昧の毎日に、さすがに辟易しているらしいシェルティラがため息をついた。
「何か食べたいもの、あります?」
 そんなシェルティラの様子に、燐澪も流石にやりすぎたかと献立を尋ねて。
 それに対する返答は――。
「満漢全席――は冗談で、グラタンが食べたいかな。あ、ラザニアでも良いよ」
 一般の子供の大半が好きだと思われる料理を指定する辺り、やはりまだまだ子供だった。
 
「……何か、思うところはあるみたいね」
 訪れた能力者達を迎え入れ、琴崎・結歌(高校生運命予報士・bn0261)は素直な感想を漏らす。
 今回のシェルティラの目的は、休日の森林公園を混乱に陥れる事。
 ではあるのだが、やはり人的被害を出すつもりはないのだろう。百鬼夜行を引き連れて脅かして回るくらいで、一般人には可能な限り危害を加えないようにするつもりのようだ。
 それでも、そんな状況になれば世界結界に僅かでもダメージが蓄積する事は間違いない。
 シェルティラの目的を阻止する事は当然だが、可能な限り人目につかないように対処する必要がある。
 そして襲撃を受ける事となった森林公園は、山の頂上辺りに場所を構えて存分に自然を楽しめる場所だ。
 車道が整備されているため、車で訪れる事も可能だが、別ルートとしてあまり使われない山道が存在する。
 百鬼夜行を引き連れたシェルティラはこの山道ルートを進軍しており、進軍中に攻勢をかければ人目につかない状態での戦闘が可能だろう。
 引き連れる百鬼夜行は16体で、その大半である12体が狼と熊の妖獣で構成されている。突進や噛み付き、爪牙など、単純だが威力のある攻撃を得意としている。
 それ以外では3体のピエロのような姿の地縛霊が混じり、妖獣よりも少しだけ強力であるようだ。ジャグリングボールでの広範囲な攻撃手段を持ち、妖獣達のパワーのある攻撃を援護するような立ち回りをする。
 最後の1体は百鬼夜行を率いる地縛霊で猛獣使いを思わせる姿を持ち、鞭と炎を操って能力者達を苦しめる。
「問題があるとすれば……シェルティラは前回のキャンバス砲撃の時のように、進軍を重視しているところかしら」
 もしも山道で襲撃を受けた場合、百鬼夜行を先行させてシェルティラが足止めに回る可能性が高い。
 かといって今回の戦場となる山は頂上にある森林公園まで直行するバスがあるくらいで、前から抑え込む場合は森林公園近くでの水際作戦となってしまう。その場合は突破される可能性が高くなるため、注意しなければならない。
 百鬼夜行は、自身の攻撃範囲に敵が入り込めば攻撃に転じるように指示が出されている。これを利用すれば、後ろからの攻撃でも足を止める事は不可能ではないはずだ。
「色々と止める方法は考えられるけど、それをどうするかはあなた達に任せるわ」
 これまでの情報を踏まえ、どう動くかは能力者達に委ねられる事となった。
 
 シェルティラがどういった考えで動くのか、それも気になるところ。
 だが今は、何よりもその作戦を阻止する事を前提に置かなければならない。
「難しい戦いになると思うわ。でも、あなた達なら出来ると――信じてるわよ」

マスターからのコメントを見る

参加者
武内・恵太(真牙道忍者・b02430)
久郷・景(雲心月性・b02660)
琴月・立花(憧れた月を追う・b13950)
小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)
シーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)
草加・修(紅の青龍・b38861)
八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)
御蛹・真紀(蟲姫・b44782)
シャオ・クロウィン(鴉羽の民・b47283)
知富・迅(破邪の疾風・b49508)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
八握脛・鹿臣(燃え盛る緋色の律動・b67984)



<リプレイ>

●百鬼夜行サーカス団
 総勢12体の熊と狼の妖獣、3体のピエロ、そしてそれを率いる猛獣使い。シェルティラが混ざっている事を除けば、その一団はまさしくサーカス団と形容するべき存在だろう。
 その一団が山道を進むその先には、人々が休日を楽しむ森林公園がある。
 彼女や百鬼夜行を止めるために能力者達が採用できるルートは、大まかに2つ。
 後ろから攻めるか、バスを利用して先回りし、水際で叩くか――。
「阻止される確率は、水際だったら10%……後ろからなら、やり方次第で止められるから50%ってところかな。後ろからでも少数を水際に配置したら、70%くらいか」
 頭の中で、シェルティラは能力者達にどう対応するかを考えているようだ。
 これまでの戦いでは『能力者の実力を知る』事に重点を置いていたせいか、作戦のことごとくが阻止されてしまっている。
 その一方で戦略は違えど、能力者達個人の戦い方はほとんど同じであり、大きな変化は見られなかった。それが甘い攻め方だとシェルティラは感じていたらしい。
 地縛霊や妖獣と違い、彼女は戦略を組み立てる知識を持った人間。
 戦場こそ先日のキャンパス砲撃作戦とほぼ同じであるため、攻撃先である頂上への対策はやはり疎かにならざるをえない。
 それでも彼等が下から攻め立てれば、討ち漏らせば突破を許し。逆に水際で待ち構えれば、全火力を集中する事で突破は容易なものとなる。
 もしも頂上に少しでも兵力を配置していれば、止められる可能性は高くなってしまうだろう。
 だが今回は自身が真っ先に足止めに入る事を考えているため、挟撃されてもある程度の対処は出来ると彼女は考えていた。
「さぁ、キミ達はどう出る……?」 
 様々な状況を踏まえて進むシェルティラに、能力者達はどういった攻め方を見せるのだろうか。

 そして百鬼夜行が進んだ道の後方。
「何故かシェルティラさんがやる気を出していますね……」
 普段なら頼まれてから動いていたはずのシェルティラが、今回は自分から動いた事は運命予報でわかっている。
 これまでとは何か違うと感じている久郷・景(雲心月性・b02660)は、後ろから様子を伺いながら静かに言った。
「山上キャンバスに似た状況ですね……ですが」
「今回も厄介な状況になってるが、絶対に防がせてもらうぜ」
 しかしシェルティラの心境にわずかな変化があったとしても、指を咥えて見過ごすわけにはいかない。
 文月・風華(暁天の巫女・b50869)や知富・迅(破邪の疾風・b49508)はその気持ちを口にしたが、心中では誰もが同じ気持ちなのだ。
「どうせなら普通のサーカスが見たいよ。だけど……思い通りにさせて溜まるか」
「さぁ、行くわよ」
 目の前を進む百鬼夜行サーカス団は絶対に止めると草加・修(紅の青龍・b38861)が言ったところで、隠された森の小道を利用して道を作り上げる役目を担う八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)を先頭に、能力者達は一丸となって百鬼夜行への追撃を開始した。

●百鬼夜行、追撃
「前もそうだけど……森を戦場に選んでくれるからやり易いわぁ」
 紫織の目の前に生い茂る木々がひとりでに曲がって道を作り、百鬼夜行へと追いつくのに最短のルートを作り上げていく。
 例え少しの距離であっても全員が森の中を素早く移動した事で、ほんの少しだけ早くシェルティラに追いつく事が出来た能力者達。
「もう追いつかれたのか……流石だね」
 自身が後ろからの追撃を抑えようと考えていたためか、シェルティラの位置は百鬼夜行の集団の一番後ろに見えた。
 前を進む百鬼夜行の歩みは運命予報で聞いていた通りに遅く、例え隠された森の小道が無かったとしても十分に追いつける速度である。
「悪い。此処は任せた。こっちは任された」
「わかりました、今回も必ず止めて見せましょう」
 シーリウス・ユリアン(キャットシー・b33413)の言葉に琴月・立花(憧れた月を追う・b13950)が頷いたところで、彼等は二手に別れて進軍を開始した。
 正面からぶつかってもシェルティラの攻撃を受ければ、足を止められる可能性が高い。
 ならば迂回して横を攻めようと言うのが、彼等の立てた作戦だった。もちろん迂回ルートの先導役を果たすのは、隠された森の小道を扱う事が出来る紫織だ。
 そしてシェルティラに正面からぶつかって注意を引く役割は、迅と立花、そして小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)が担当する。
「なるほど、前に3人、横に9人……本命は横から、か」
 しかしあまりに極端に人数を分けすぎた事が、シェルティラには『横が本命』と判断させる材料になってしまったらしい。
 前から迫る3人のみならず、横を進もうとする9人がその先へ移動しても攻撃が出来そうな位置へと移動すると、魔弾の射手を発動して彼女は待ち構える体制を取った。
 可能ならばシェルティラの攻撃の範囲から外れて進むルートを取りたい紫織ではあったものの、そうなったからとそれ以上迂回すれば追いつけなくなってしまう。
「仕方ないわね、強引に行くわよ」
 紫織の選定した道は、移動を阻害されず、かつ短く。足を止めるために敵の射程範囲に入る事を優先した道。
 ここでシェルティラの攻撃を受けなければより良い展開が望めたが、この3つを満たすルートが取れただけでも狙い通りの結果と言えよう。
 そして能力者達の目的はあくまで百鬼夜行の森林公園への侵入を阻止する事であり、シェルティラに構っている暇が無いのも事実。
「追いつく事が重要だからな」
「被害が出ないように、全力を尽くそう」
 そんな事は百も承知と、武内・恵太(真牙道忍者・b02430)とシャオ・クロウィン(鴉羽の民・b47283)が頷いた。
 追いつくべき百鬼夜行は妖獣部隊4体にピエロが1体混じった5体構成の3隊に別れ、先頭を進む猛獣使いだけが単体で上を目指している。
 紫織の先導に続いて、一気にその内の1部隊の射程圏内に入る能力者達。
「そう来たんだね……おっと」
「さあ、ここで凍りついてくださいね?」
 一方では追撃班に視線を移したシェルティラに立花が氷の吐息を放ち、その意識を逸らさないようにと仕掛けていた。
 不意をついたはずの彼の攻撃は避けられてしまったが、彼女を抑えにかかるのは彼だけではない。
「今日のデートは、ちょっとハードですねっ」
 奈々も手にしたホームランバットを振り回して立花に続き、足を止めにかかる。
 可能ならば百鬼夜行と分断出来るような位置を取りたかったものの、そこはシェルティラが追撃を行う側への攻撃も考えて近付いていたために叶わず。
「デートじゃないと思うんだけどなぁ……ところで、3人でボクを抑えるつもり? いや……2人かな?」
 不意に、迫った2人に尋ねるシェルティラ。
 見れば迅は彼女の行動の後に動こうとしているためか、未だに動く気配を見せてはいない。
 だがそれは、蘇芳争奪戦、撃墜王攻防戦の時にも見せた行動である。
(「なるほど、八卦迷宮陣への対策って事か。そして、あの木々が動いている状況は……」)
 張り巡らされる考えの中、紫織が隠された森の小道を利用していた事も、蘇芳争奪戦の時にしっかりと目に焼き付けていた。
 能力者達がシェルティラの戦い方を知った上で戦略を立てているのと同様に、シェルティラとて能力者達の戦い方は把握しているのだ。
「狙い通りにはやらせないよ」
「……何っ!?」
 八卦迷宮陣を放てば迅の思う壺――そう判断したシェルティラは、驚く迅を尻目に紫織目掛けて雷の魔弾を放つ。
 いかに魔弾の射手で威力を増加した雷の魔弾であっても、彼女を一撃で倒すには直撃させなければならない。しかし百鬼夜行の射程に入り込む事は、百鬼夜行からの攻撃を受ける事も意味している。
 まして彼女は隠された森の小道で仲間を先導している役目を担っているため、一番先頭を進んでいた事が災いした。
「紫織さんっ!?」
 思わず声をあげた八握脛・鹿臣(燃え盛る緋色の律動・b67984)の視線の先には、狼と熊で構成される4体の妖獣部隊の攻撃を受けて倒れる紫織の姿。
 同時にピエロのジャグリングボールに鹿臣や恵太、御蛹・真紀(蟲姫・b44782)の足が止められたが、足の止まった部隊を討つ事に集中すればそれほど問題ではない。
 もしも迅がシェルティラよりも後に動こうとせずに、攻めと回復を柔軟に考えるようにしていれば、紫織がシェルティラの攻撃をも受ける状況は生まれなかった可能性も高かった。
 今までにも見せた行動が、彼女に八卦迷宮陣以外の選択をさせてしまったのである。
「ジャスティーンは今も鍛えているのか?」
 ならばと脱力しそうな質問を投げかけ、迅はシェルティラに迫っていく。
「いや、してないよ」
 どうやらあれっきりだったらしく、顔も合わせてはいないらしい。
 そうやって彼がシェルティラの注意を引き付けた一方で、紫織を倒された追撃班の本格的な攻撃が百鬼夜行へと向けられていた。
「みなさん、まずはアイツから狙いますよ!」
 侵攻を重視しているためか妖獣部隊は固まっており、真紀の放った暴走黒燐弾は目標を能力者に変更した百鬼夜行の1部隊の全てに打撃を与えて。
「猫上さん、お願いしますね」
 集中攻撃で討ち取れなかった場合を考え、ケットシー・ワンダラーの『猫上さん』に踊りに誘わせつつ、景はピエロ目掛けて炎の魔弾を撃ち込んだ。
 彼の狙い通りに5体の百鬼夜行の全てが踊り始めれば、最初の追撃は成功したと言っても間違いではない。
「戦い方が甘い……そう言われましたが、仲間を信じて傷を癒す。その道をもう1度、見て頂く!」
 そしてピエロによって止められた足を鹿臣の赦しの舞がしっかりと癒せば、恵太の牙道大手裏剣が一気に狼や熊に深い傷痕を残す。
 激しい攻撃を受け崩壊しかけている妖獣部隊は、そのまま風華の震脚やシーリウスのヴァンパイアクロスによって倒され、残ったピエロには修のインパクトが叩き込まれていく。
「――疾走れ、影刃」
 だがシャオのダークハンドが1体目のピエロにトドメを刺した時、残る2つの部隊はさらに上へと進んでしまっていた。
 侵攻が遅いせいか、決して追いつけない距離ではない。加えて追撃班の能力者は火力も十分に有しており、ひとたび追いつく事さえ出来れば撃破は容易だと言えよう。
 それでも、接近戦を仕掛けた者、遠距離戦を仕掛けた者とに別れた能力者達は、シェルティラと妖獣部隊に挟まれる形のまま、分断されている状態である。
「進軍の要は――あの人か」
 さらに運の悪い事に、奈々や立花が必死に意識を向けようとする最中、シェルティラの目は追撃班の第二の要である鹿臣へと向いていた。
 果敢に接近して道を塞いだ3人に囲まれ、移動は難しくなっている。
「後は百鬼夜行次第……でも、援護はさせてもらうよ」
 しかし彼女は自身に攻撃を加えられる事を気にせず、鹿臣を雷の魔弾で狙い撃ったのだ。
 シェルティラは知性の低いゴーストとは違う。
 この点を見落とし、単純に接近戦を仕掛ければ注意を引けると思った事が、能力者達の誤算か。直撃した雷の魔弾は鹿臣を麻痺させ、彼をその場に釘付けにしてしまっている。
「やっぱり色々読んでたか。……例の賭けはどうする? 賭けじゃなくても1度位は学園に来て欲しい。もうすぐ運動会やハロウィンパーティとかあるよ?」
「面白い提案だけど、今はここに集中した方が良くない?」
 上方から声をかけるシーリウスに、目の前に集中しろと言うシェルティラ。
 彼女の言葉の通り、現状の能力者達の戦況はあまり芳しくはなかった。強引に追いついて目を向けさせる方法も考えられるが、分断された現状では各個撃破される可能性もある。
 まして迅がシェルティラの抑えに回っているのだから、足止めは強引に振り解くか、鹿臣の赦しの舞に期待するしかない。
「前にも言ったよね、甘すぎるって」
 その鹿臣が麻痺してしまっている今、能力者達は強引に突っ込む以外に百鬼夜行の足を止める作戦を持ちえてはいなかった。
 山上に2人ほど配置していれば、少なくとももう少しは時間の余裕もあっただろう。
 これまでの戦いでも見せた方法を利用した、ワンパターンな戦術。
 追撃戦を行う側に鹿臣だけを配置した、足止めに対しての対策の問題。
 火力、体力、共に能力者達は百鬼夜行を圧倒した構成ではあった。だがこの2つの問題が発生した以上、水際で抑える者がいなかったのは大きな失敗に他ならない。
「くそっ。サーカスするなら、外じゃなくて室内やテントでやれってんだっ!」
「吹き飛べ!」
 なんとか森林公園への侵入を阻止しようと、果敢に攻める修と風華。
 百鬼夜行の火力は低く、倒されたのはシェルティラの攻撃をまともに受けた直後に百鬼夜行に集中攻撃された紫織のみ。
 彼女の隠された森の小道を過信して一点突破を狙うのではなく、4人なり5人なりが左右から追撃すれば、下から追撃するだけでも止められた可能性は十分にあった。
 左右から同時に攻め、動ける能力者が残りの百鬼夜行を狙う。
 シェルティラの体は1つしかなく――左右同時に攻められたその時にこそ、迅が警戒していた八卦迷宮陣を使わなければならない状況になるのだから。
 すでに残る妖獣は4体、それにピエロと猛獣使いが付随し、先を目指している。
「最後まで気は抜かない――あの時とほとんど同じだから、ね」
 もしもこのタイミングで山上から能力者が現れたなら。その可能性を考慮し、念には念をと鹿臣を雷の魔弾で倒すシェルティラ。
 しかし最後まで、山上から伏兵が現れる事は無かった。

●山上から聞こえる悲鳴の中で
「前にも言ったよね……甘いって。さて……ボクは人的被害が出ないようにしてくるよ」
 混乱は巻き起こすが、人的被害は出さない――という事だろうか。
 止められなかった現実に足が止まった能力者達を尻目に、シェルティラはゆっくりと山上へ歩んでいく。
「シェルティラさん、伺いたい事が」
「ごめん、今は答えたくない」
 先へ進もうとする彼女に問い掛ける景に返されたのは、落胆の混ざった明確な拒否の言葉。
「シェルティラ。無茶なお願いだけど、俺を傍に居させてくれないか? キミの真意が見えないので知りたい。それと……これ以上敵対したく無いんだよね」
「今日は駄目だけど、考えてはおくよ。ただ……」
 続いたシーリウスの言葉には、考えておくと返して。
 ほんのわずかな、沈黙。
「キミ達は妖狐を止めたいんだよね。だったら、甘い認識と作戦で臨んじゃ――駄目だよ」
 去り際に残したのは、敗れた能力者達へのエールとも取れる言葉だった。
 彼女の願い、その根底にある真意は未だわからない。
 わかっている事は、シェルティラが能力者達に何かを期待している……ただ、それだけだ。


マスター:真神流星 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/09/30
得票数:笑える2  知的40  せつない4 
冒険結果:失敗…
重傷者:八雲・紫織(彷徨うマリス・b41675)  八握脛・鹿臣(燃え盛る緋色の律動・b67984) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。