みんなに幸せのお裾分け!


<オープニング>


●都内某所
 『みんなに幸せをお裾分け』を合言葉にして、活動を続けていた団体があった。
 彼らはバスや空き地などに主婦達を集め、奇跡の水と呼ばれるものを販売していたらしい。
 この水は常飲する事によって病気にならず、長生きする事が出来るという謳い文句で販売されていたらしく、一本なんと1万円!
 ただし、この商品を一人に売れば、千円のマージンが入り、10人に売れば元手が取れるという仕組み。
 しかも、その相手が他の人に紹介する事で、親会員には更なるマージンが入るというシステム。
 そのため、欲に目がくらんだ主婦達が次々とこの水を進め、順調に会員を増やしていったようである。
 しかし、この水が単なる水道水である事が判明し、この団体は逃げるようにして姿を消した。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、怪しげな団体が事務所として使っていた場所。
 この団体は単なる水を奇跡の水と称して売り捌いていたらしく、それが原因で色々とトラブルがあったみたいなの。
 結局、この団体が途中でトンズラしちゃったから、残っていたのは親会員達だけ。
 そのせいで、親会員達が責任を取る形になって、家族や親戚、友達を失っちゃったようなの。
 もちろん、彼女達もそれまでオイシイ思いをしていたから、あまり同情する事も出来ないけど……。
 リビングデッドと化したのは、親会員だった彼女達。
 彼女達は未だに水が本物であると思い込み、必要以上に水を売り込んでくるわ。
 まぁ、ここが廃墟と化してから、しばらく経っているから、水としても飲めなくなっているけど……。
 それと、奇跡の水を保管していた倉庫が特殊空間と化していて、白衣姿の男が地縛霊と化して留まっているわ。
 彼は奇跡の水に砂糖や塩を混ぜて、いかに水道水と気づかせないようにするか、調合を繰り返しているようなの。
 だから実験を邪魔されただけでもブチ切れて、『お前達のせいで調合に失敗したじゃないか』と叫んで、奇跡の水を放り投げてくるから、くれぐれも気をつけてね。

マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
 今回の依頼にも選択肢があります。
 どちらか選んで参加してください。

・リビングデッド達を退治する。
 リビングデッド達は水を買わせようとします。
 また、何故か田吾作がブチ切れています。

・地縛霊を退治する。
 地縛霊は八つ当たりをしてきます。

参加者
御剣・光(傍若無人な牌の音初代皇帝・b02940)
氷狩・蒼哉(氷鏡・b10543)
紫月・蓮(瞬きの闇・b23296)
綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
白雪・勇姫(赤にして紅翼・b31194)
ブラスカ・レッドレオンハルト(ダークネスナイツの正体は魔狼・b37062)
鏡・月白(シルバースター・b37472)
裏方・黒衣(イエツィラーワイアード・b57463)
醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)
エヴァ・アナスタシア(闇の福音・b59839)
ギンヤ・マルディーニ(アルディラ・b70345)
NPC:鬼頭・田吾作(ファイアフォックス・bn0034)




<リプレイ>

●奇跡を起こす水
「奇跡の水……か。何だかどこかで聞くような安直な名前だな。こういうのって昔、教科書で見たな、何とか商法。マルチ商法? ねずみ何とかも聞いたような……う〜ん」
 険しい表情を浮かべながら、紫月・蓮(瞬きの闇・b23296)が記憶の糸を辿っていく。
 何となく頭にモヤモヤとした物が浮かんでいるのだが、ハッキリと見ようとするたびボヤけていった。
「ええと、こういうのって、確かねずみ講……、正式には無限連鎖講。まあ、人の数というものは有限ですので、これで得するのって上の人だけなんですよねぇ」
 しみじみとした表情を浮かべ、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が溜息をつく。
 その後ろで鬼頭・田吾作(ファイアフォックス・bn0034)が何やら起こっており、『それじゃ、社会の仕組みと同じじゃねうか』と愚痴をこぼす。
「なんか典型的なマルチ商法だったみたいですね。うまい話には裏がある。こういうのって何で引っかかってしまうんだろうって、いつもテレビを見ながら思いますが、人間の欲の前では冷静な判断力を失ってしまっているんでしょうね」
 奇跡の水が紹介されているパンフレットを読みながら、鏡・月白(シルバースター・b37472)が疑問を口にする。
 パンフレットには奇跡の水について書かれていたのだが、そこに登場する教授や研究機関は架空の物で、実際には存在していなかった。
「『幸せのお裾分け』って響きはちょっと可愛らしい感じがしますけど、それ以外の所では素敵な部分はなさそうなのですね。千鞠も以前、駅前でおまけいっぱい配りながら、お年寄りを集めている方々をお見かけした事がありますが、妙にテンション高くてちょっと怖い感じでした。わーって周りが盛り上がると自分も気分が高揚して、うっかりお買い物してしまう感じでしょうか?」
 自分の体験談を語りながら、綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)が首を傾げる。
 その時、通りすがっただけの千鞠に黒豆茶をくれたのだが、これも『幸せのお裾分け』だったのだろうか?
「……ええと……早い話、これって詐欺だよね? なんだかんだ言っている人もいるようだけど、この人達はお金に狂って多くの人に多大な迷惑をかけたって事でしょ?」
 仲間達に確認をした後、ギンヤ・マルディーニ(アルディラ・b70345)が汗を流す。
「失礼だけど馬鹿みたいな話だね。本当にあるんだ、こういう事。……う〜ん、何か純粋に騙された人はともかく、それを利用した人とかほんとどうしようもないね」
 当時の騒動が書かれている記事を読み、氷狩・蒼哉(氷鏡・b10543)が苦笑いを浮かべた。
 奇跡の水の販売員はとても話が上手く、まるで催眠術に掛けられてしまったかの如く、契約をしてしまったようである。
「なんで未だにそんなモノに引っかかる人がいるんでしょうね。正直……、リビングデッドになった人達にも同情できません。甘い汁を吸ってしまったがために、理性を失ってしまったのかもしれませんが……」
 どこか遠くを見つめながら、醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)が口を開く。
 どうやら、奇跡の水は親会員の親戚や友達、会社の同僚に販売されていたらしく、そう言った関係もあってなかなか表面化しなかったようだ。
「良く考えれば小学生でも判るのに、大人が引っかかってしまうのですから、ネズミ講って怖いですね」
 奇跡の水に関係した資料を読み、裏方・黒衣(イエツィラーワイアード・b57463)がネズミ講を実感した。
 しかし、下位会員になればなるほど販売方法が強引だったため、次第に問題が浮き彫りになってきたようだ。
「……ふん。世の中、騙される者が悪いのだ。特にこの国の人間はお人よりばかりだからな。鴨にされるのも当然だろう。騙されたくなくば用心して当然なのだ!」
 不機嫌な表情を浮かべ、エヴァ・アナスタシア(闇の福音・b59839)がキッパリと言い放つ。
「もし、あたしがこの団体から声をかけられたら、こう言ってやるわ。『お裾分けはいらない。全部よこせ!』ってね。1000円のマージンだの、親会員には更なるマージンだの、そんなせこい事、言ってないで、有り金全部あたしに貢げばいいのよ! ……という訳で、オラァ! マイダーリン田吾作! さっさと有り金全部出せや、ゴルァ!」
 田吾作の胸倉をガシィッと掴み、御剣・光(傍若無人な牌の音初代皇帝・b02940)が激しく揺らす。
 しかし、田吾作はその場でジャンプしても小銭程度しか持っておらず、自動販売機でジュースが買える程度であった。
「あー、うん……。正直に言うッすよ、田吾作先輩? 買ったんやね。この水……」
 何かを確信した様子で田吾作を見つめ、白雪・勇姫(赤にして紅翼・b31194)が途中で笑い出す。
 その途端、田吾作が顔を真っ赤にして、『お、俺がそんなモンに、だ、騙されるわけがないだろ』と反論した。
「まっ、こんなモンに騙されるほど、コイツだって馬鹿じゃないだろ。なっ! ……って、どうしてそんなに泣いているんだ? まさか……、いや、そのまさかか?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、ブラスカ・レッドレオンハルト(ダークネスナイツの正体は魔狼・b37062)が田吾作と目を合わせる。
 次の瞬間、田吾作が素早く視線を逸らし、『……俺は貝だ』と呟いて身体を丸めた。

●奇跡のパワー
「どうやら、リビングデッドは親会員だった人達の様ね。ねずみ講って初期の参加者は多額の配当を貰えるから、リビングデッド達は生前美味しい思いをいっぱいしたんでしょう? ……って、どうしたの田吾作? 急に怖い顔して……。もしかして、これを飲めば就職先が見つかるとか言われて、奇跡の水を買っちゃった?」
 怪しげな団体が事務所として使っていた場所でリビングデッド達と遭遇し、光がギンギンパワーZを口に含んで田吾作を睨む。
 その言葉を聞いて田吾作がダラダラと汗を流し、『い、いや、それは……ない』と自信なさげに答えを返す。
 それと同時にリビングデッド達が奇跡の水を握り締め、『あなたにも幸せを分けてあげるわ』と迫っていく。
「……奇跡の水か。ごめん、俺そんなに信心深くないから要らないよ」
 リビングデッド達の誘いを断り、ブラスカがライカンスロープを発動させる。
 しかし、リビングデッド達は両目を血走らせ、『この水は本物よ』と迷う事なく断言した。
「ギャーギャー喚いて無様をさらすな! 奇跡の水など無くとも、私はすでに不死身の吸血鬼よ! まして、そんな物に頼ってまで奇跡を得ようとは思わん! 運命とは自らの手で切り開くものだ。その道がどれほど困難であろうと、苦労するからこそ価値がある。私が真祖と呼ばれる者の力を見せてやろう!」
 黒い笑みを浮かべながら、エヴァが牙を剥き出して虎紋覚醒を使う。
 それでも、リビングデッド達は売る事を諦めておらず、『ちょっと試してみればいいから。ね、ちょっと一口』と迫っていく。
「例え、その水が本物だったとしても、ボクは奇跡の水なんて要らないのですよ〜」
 リビングデッド達にさらっと答えを返し、黒衣がブラックヒストリーを放つ。
 それと同時に田吾作が仲間達を飛び越え、『俺にも一発殴らせろ!』と言って返り討ちに遭った。
「なんてものに手を出したかねぇ……、自業自得ッすよ?」
 田吾作に軽くツッコミを入れ、勇姫がホッケーマスクを被り、チェーンソーをギュイーンと起動する。
 だが、田吾作はまったく納得しておらず、リビングデッド達にボコボコにされても、『金を返せ!』としつこく文句を言った。
「……と言うか、田吾作さんを騙したのは、別の人じゃあ……」
 大粒の汗を浮かべながら、蒼哉が氷雪地獄を発動させる。
 実際にリビングデッド達は田吾作の事を知らないらしく、『どうやら、類似品に引っかかったようね』と切り捨てた。
「……責任を放棄したな。まぁ、本当に無関係なのかも知れないが……」
 リビングデッドにしたたかさに呆れつつ、ブラスカがダークハンドを炸裂させる。
 それに合わせて黒衣がスピードスケッチを放ち、動きが鈍くなっていたリビングデッドを倒す。
「三下は、そこで踊れ!」
 リビングデッド達に突っ込み、エヴァがスラッシュロンドを放つ。
 その瞬間を狙って田吾作がリビングデッドに蹴りを入れ、『この一撃は俺達、被害者の痛みだ!』と言い放つ。
「頑張るのです田略さん。負けるな田略さん、打ち勝てゴースト」
 田吾作を応援しながら、黒衣がスピードスケッチを発動させた。
 その途端、田吾作が黒衣を睨み、『俺の名前を略すんじゃねー!』と怒り出す。
「……何だか元気になってきたね」
 光の槍でリビングデッドをちまちま倒し、蒼哉が田吾作に視線を送る。
 リビングデッド達を倒すたび、田吾作がだんだん元気になっておき、少し鬱陶しくなってきた。
「そこのおバカさんの事は横に置いといてッす。キリキリ舞うッす♪」
 仲間達と連携を取りながら、勇姫が虚空ギロチンを叩き込む。
 次の瞬間、リビングデッド達が一斉に切られ、大量の血を撒き散らして次々と倒れていく。
「よく突き刺さるでしょ? 五臓六腑に染み渡るでしょおおおっ!」
 リビングデッドに語りかけ、光が包丁を引き抜いた。
 その途端、リビングデッドが血反吐を吐き、糸の切れた人形のようにして崩れ落ちる。
「やっぱり、軌跡の力じゃ、どうにもならなかったようだな」
 肉塊と化したリビングデッド達を眺め、ブラスカが皮肉混じりに呟いた。
 この様子では意地でも水の力が偽りであった事を認めたくなかったのかも知れない。

●研究の邪魔をするな!
「これは……、凄い量の水だな」
 特殊空間の中に置かれたフラスコに驚き、蓮が警戒した様子で辺りを見回した。
 フラスコの中には水道水が入っており、白衣姿の地縛霊が『お前のせいで調合が失敗したじゃないか!』といきなりブチ切れる。
「あなたがただの水道水に細工して、奇跡の水としていた犯人のひとりですね! 奇跡の水なんてものは、人の力で作る物のじゃありません。実験だかなんだか知りませんが、多くの人々を騙した報いは受けてもらいますよ!」
 地縛霊に対して反論し、夕華が虎紋覚醒を発動させた。
 だが、地縛霊は『お前達が悪い!』と言い返し、怒りに身を任せて奇跡の水を放り投げる。
「そういうのって混ぜれば良いって物ではないんですがねぇ。やっぱり、こうズンと来る物が欲しいんじゃないですか?」
 地縛霊の攻撃を避けながら、洋角が呪いの魔眼を放つ。
 その拍子に足元のフラスコを蹴ってしまい、地縛霊が『せっかく調合したのに台無しだ!』とさらにブチ切れた。
「……というか、お水にお砂糖いれたくらいで健康にはならないと思うのですよー」
 一気に間合いを詰めながら、千鞠がクレセントファングを炸裂させる。
 その一撃を喰らって地縛霊が吹っ飛び、音を立てて水の入ったフラスコが割れていく。
「これを買わされた人達は、もっと怒っていたはずですよ!」
 あらかじめノーブルブラッドで強化し、ギンヤがクレセントファングを叩き込む。
 地縛霊はちょうど立ち上がったところだったため、ギンヤが放ったクレセントファングを避ける事が出来ず、再び吹っ飛んでフラスコを木っ端微塵に破壊した。
「素直に反省しろ!」
 再び立ち上がろうとしていた地縛霊に狙いを定め、月白がプロトフォーミュラで強化したクレセントファングを放つ。
 続けざまに同じ攻撃を喰らった事で地縛霊は立ち上がる事さえ出来ず、悔しそうな表情を浮かべて近くにあったフラスコを掴む。
「そんな事をいつまで続けているつもりだ? もう元凶の団体でさえ逃げてしまっているというのに……」
 クールな表情を浮かべ、蓮が地縛霊に問いかける。
 だが、地縛霊は蓮の言葉を信じておらず、『嘘だ! 私を見捨てて逃げるわけがない』と反論した。
「こういう状況をトカゲの尻尾きりって言うんだろうね」
 地縛霊の死角に回り込み、ギンヤが哀れみの視線を送る。
 その途端、地縛霊が顔を真っ赤にして怒り出し、『そんなはずがない! 私がいなければ、奇跡の水を調合する事さえ出来ないんだぞ』と言い放つ。
「たくさん人を騙した事、あの世でたっぷりしっぽりどっきり反省するといいと思うのですっ!」
 仲間達と連携を取りながら、千鞠が再びクレセントファングを炸裂させた。
 そのため、地縛霊の頭をクラクラさせ、『こんなはずでは……』と呪文のように繰り返す。
「この一撃でその腐った根性を粉砕します!」
 地縛霊の懐に潜り込み、夕華が白虎絶命拳を叩き込む。
 その一撃を喰らって地縛霊が持っていたフラスコを落とし、『私は間違っていない』と呟いて特殊空間もろとも消滅した。
「これでとりあえず事件は解決ですね。でも、元凶の団体は逃げてしまったみたいですし、マルチ商法が絶えることはないんでしょうね」
 特殊空間が消滅した事を確認し、月白が辺りに転がっている奇跡の水を眺める。
 おそらく、元凶の団体は手を変え品を変え、人を騙しているのだろう。
「やれやれ終わったみたいだね。辛い事があると意図は何にでも縋ってしまう。……例え、こんなインチキな水にでも……、世知辛いね」
 しんみりとした表情を浮かべ、ギンヤがボソリと呟いた。
 地縛霊も他の被害者と同じように、もしかすると後戻り出来ないところまで来ていたのかも知れない。
「田吾作先輩もこれに気を落とさず、前向きになってくれるといいんですが……」
 心配そうな表情を浮かべ、洋角が田吾作に視線を送る。
 そんな心配をよそに田吾作は幸せになれる箱を仲間達に勧めており、まったく懲りていない様子であった。


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いまいち
参加者:12人
作成日:2010/09/30
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冒険結果:成功!
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