母を呼ぶ声


<オープニング>


 深夜、いかにも不良という感じの格好をした少年達が3人、ギャーギャーと騒ぎながら町中を歩いていた。
 すると突然、彼等の目の前に幼い少女が現れ彼等をジッと睨みつける。
 少年達も鋭い眼光で少女を睨みつけながら彼女へと近づくが……、
「ママ……ママ……」
 彼女はただそう呟くのみ。
 少年達はそれを馬鹿にしたように笑いだすが……突如として、少女の瞳が怪しく光ったかと思うと、それと同時に巻き起こった突風が少年達をあっという間に切り裂いてしまった。

「今回の現場は町中、少女の地縛霊が相手となるよっ」
 神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)の説明によれば、とある町のとある道を通りかかると、地縛霊の特殊空間へと引きずり込まれ、そこに待ち受ける少女の地縛霊に襲われるのだという。
 地縛霊が現れるのは深夜、午後11時頃。
 その時間に人通りの少ないその道を通りかかると、特殊空間へと引きずり込まれるという。
 時間的にも場所的にも人が来る可能性は低いが、一応警戒しておいたほうがいいだろう。
 特殊空間内部は特に通常空間と変わりないようである。
 地縛霊は5歳前後の少女の姿をしており、突風を巻き起こし、相手を切り裂く攻撃を行うという。
「その子はきっと、ママを探しているんだと思うんだけど……でも、ゴーストになっちゃった以上は倒さないといけないんだよね」
 少し悲しげに、優希はそう呟いた。
「辛い戦いになるかもしれないけど……頑張ってきてね、みんなっ」

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参加者
毒島・毒子(フリッカースペード・b16226)
マリア・シンクレア(洗礼の処女・b24391)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
稲峰・渓(青にして清流・b35649)
マヤ・ザレスカ(トーテンブルーメ・b51324)
風雅・晶(陰陽交叉・b54764)
渡月・トワヤ(碧く薫る風・b63279)
イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)
水城・月依(アーネンエルベの語り部・b74740)
比良坂・夜魅(高校生処刑人・b78427)



<リプレイ>


 母を求め、夜な夜な町中に現れる少女の地縛霊。
 その少女に近づく者は皆、彼女が巻き起こす突風によって身を切り裂かれ、命を奪われるのだという。
 彼女を倒すためにやってきた10人の能力者達は、一般人が近寄らないようにと人払いの準備を開始した。
「やっぱりこういうのの設営ってさ、安全第一ヘルメットとかつけた方がいいのかしらね〜」
 そう言いながら、安全ロープの設営作業を進める毒島・毒子(フリッカースペード・b16226)。
 心なしか作業中、彼女はとても楽しげであった。
「どうして命を奪うのでしょうか」
 作業中、ふとそんな事を考える水城・月依(アーネンエルベの語り部・b74740)。
 地縛霊が母親を探し求める気持ちは分からなくもない。
 が、終わりの見えない悲しみが続くのは酷く、辛い事であると彼は感じていた。
「母を求めるその声は本当にそれを求めているのだろうか……?」
 その想いに銀の雨が加わり、捻じ曲げられて構成されたその少女は、ただ目の前のものを切り裂く事のみを考えているのではないか……。
 そんな事を考えつつ、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は全力を尽くそうと心に決める。
「なんにしても、罪を重ねて堕ちてしまうまえに、還るべき場所へ還してやりてぇな」
 母親が恋しい気持ちはわかるが、だからといってそれが人を傷つけていい理由にはならないと渡月・トワヤ(碧く薫る風・b63279)は思う。
 そしていくら幼いとはいえ、風を使う者、シルフィードとして、それを人を傷つけるために使うのは許せないと憤りを感じていた。
「悔やむのは後でも出来ますし、ここは心を鬼にして参りましょう」
 母を呼ぶ幼き少女を傷つけるのは気が引ける。
 が、その見た目に反して彼女は強大な力を持っているらしいため、風雅・晶(陰陽交叉・b54764)は気を引き締めて事に当たろうとしているようであった。
「僕達の手で送るしかないでしょうね」
 晶の言葉に頷くイクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)。
 心が痛まないと言えば嘘になる……が、付近の住民の為にも、そして地縛霊の少女自身のためにもこのまま放っておくわけにはいかない。
「数だけ見るならこっちが有利……なんだけれど。かなり手ごわいようだし、気をつけないとね」
 イクスと同じように、心の中では少しばかりやりづらい相手であると感じつつも、放っておけば被害が出てしまうのは目に見えてわかっているため、気を抜かずに頑張ろうと稲峰・渓(青にして清流・b35649)は決意する。
 そうして会話を交わしている間に作業が終わり、地縛霊が現れる時間帯となり……能力者達は問題の道へと足を踏み入れていく。
 やがて彼等は不思議な感覚に包まれ……気づいた時、その正面には1人の少女がぽつんと立っていた。
「ママ……ママ……」
 彼女はただひたすらそう呟き続ける。
「お嬢ちゃん、ママを探しているの?おねぇちゃんならきっと会わせてあげられるわ。だから落ち着いて目をつぶってママの事を思い浮かべてごらんなさい」
 少女が天国で待っていれば、彼女はきっとママに会える。
 神の教えに従う者……シスターであるマリア・シンクレア(洗礼の処女・b24391)は、この世に迷いし魂を救う事が自分の務めだと感じていた。
「暴れないでお姉さんたちに任せてくれる?きっとあなたを天国に送ってあげるから……」
 マリアに続き、優しくそう言葉をかける比良坂・夜魅(高校生処刑人・b78427)。
 地縛霊がママに会える方法は一つだけ……彼女が良い子になって天国でママを待っている事であると、夜魅はそう思う。
「残念だけどここに貴女の母はいないわ」
 2人とは正反対に厳しく少女にそう言い放つマヤ・ザレスカ(トーテンブルーメ・b51324)であったが、
「次の世の母に、会いに行きなさい……」
 そう言葉を続ける。
 少女を解放するために彼女はカードを取り出し……能力者達は一斉にそれを起動させる。
 そうしてそれぞれの武器を手にした能力者達は、敢然と地縛霊に立ち向かっていくのであった。


 戦闘開始早々、マヤは中衛へと移動していき、
「四大の天使たちよ、敬虔なる神の使徒に守護を!」
 マリアは天に祈りを捧げるようにして、キラキラと神々しく光り輝く4つのリフレクトコアを召喚し、自らの周囲を旋回させる。
「あお、ボクに力を!」
 同情心は一切不要、そういった心が仲間を窮地へと追い込む事があるとトワヤは思いながらケットシー・ガンナーにそう呼びかけ、自身へと魔力を供給させる。
 そして彼女自身も地縛霊の足元に凄まじい突風を巻き起こし、地縛霊は螺旋状に体を巻き上げられ、風がやんだ一瞬だけ空中で停止し……やがて地面へと落下した。
「見た目は少女ながら、強力な地縛霊のようで」
 日本刀、【陰刀】肉喰と【陽刀】魂結とを漆黒のオーラによって染め上げながら一気に地縛霊へと距離を詰める。
 そしてその剣閃を交差させ、地縛霊の体へと十文字の斬撃を刻み込んだ。
「ママ……」
 少女はギロリとトワヤを睨みつけ……その瞬間、少女の周囲に突風が巻き起こってかまいたちとなり、トワヤの体を切り裂いていった。
「兄様、参りましょう」
 月依はスカルロードを前衛へと進ませて地縛霊をその鎌によって攻撃させ、彼自身も禍々しい呪いの力が込められた呪符、呪殺符を投げつけ、それが地縛霊へと張り付いた瞬間、彼女の体へと負の力が与えられた。
「キミのお母さんはここには居ないんだ。だから、もう終わりにしよう」
 両手の長剣、ザルバとソル・クレイモアを頭上へと掲げ、それらを高速回転させる事により、攻撃力を高める構えを取るイクス。
「こうすると決めた以上は……できるだけ早く片付けたいですね」
 洋角は戦う意思が鈍らないうちに決着をつけるつもりでいるようであり、右手の宝剣、湊洋江と左手の長剣【黒鞘】に黒燐蟲を纏わせ、黒くぼんやりとした光を放たせる。
「初っ端から仕掛けるよ!」
 続く渓は触れた者の罪を断ち切るオーラ、断罪オーラを拳へと纏わせながら一気に地縛霊へと距離を詰める。
 そしてその勢いにのせ、地縛霊の顔面目がけて断罪ナックルを炸裂させた。
「刀剣解放……冥鎖紅月ッ!」
 夜魅もまたイクスと同様、やや両足を広げてバランスを取りながら両手の長剣を頭上へと持ち上げ、ぶんぶんと音をたてながら回転させていき、毒子は涼やかで優しい歌声で歌いだし、その歌声を聴いた直後、トワヤの体力が回復していくのであった。


「子供相手によってたかってかわいそうかもしれないけれど、躊躇してもいられないわ」
 迷いを振り払い、マヤは地縛霊目がけて蒼き雷弾を発射。
 彼女の手から放たれた蒼の魔弾は周囲の時空を歪めながらまっすぐに地縛霊へと飛来し、直撃し、蒼い電流が蝕んでいく。
「主よ、邪なる者に罰を与えたまえ……メギド!」
 光り輝くエネルギーを槍の形へと集束させ、投げ飛ばすマリア。
 光の槍は白い尾を引きながら地縛霊へと飛んでいき、彼女の体へと深く深く突き刺さり……その身を貫通していった。
「そんなことしても……アンタの母ちゃんは喜んでくれねぇぞ!」
 トワヤはケットシー・ガンナーに射撃攻撃を指示し、自身も再び地縛霊の足元へとジェットウインドを巻き起こし、地縛霊は再度その身を竜巻の如く吹き荒れる風によって空高く巻き上げられ……直後、地面へと落下した。
「これで……終わりです」
 ふらふらと立ちあがった地縛霊へと向かっていく晶。
 少女はなんとかそれから逃れようとするが……体が動かず、晶は地面を強く踏み締めながら黒く染まった【陰刀】肉喰を横に一閃させ、更にもう一歩踏み込んで【陽刀】魂結を反対側へと薙ぎ払う。
「ウウ……」
 黒影剣によって二本の斬撃を刻み込まれ……地縛霊の体力は尽き果てた。
 彼女はがくっとその場に膝をつき、倒れ込み……やがてその姿は消え去っていった。


「お疲れ様でした」
 イグニッションを解除し、仲間達に労いの言葉をかける洋角。
 これでもうこの場所で、一般人がゴーストの手にかかる事はないだろうと思いつつ、彼は人払いのために設置した道具の撤去作業を行いだす。
 無論仲間達もそれに加わり……協力し合った結果、作業はそれほど時間がかかる事無く終了した。
「どうせなら、泣き顔より笑い顔のが見たかったな」
 きっと可愛かっただろうと思いつつ、少女の顔を思いだしながらそう呟くトワヤは、彼女があちらの世界で安らかに笑ってくれるといいなと思う。
「どうか……今度こそ安らかに」
 白菊と霞草の花束を置き、暫し黙祷を捧げる月依。
 何が理由で少女がゴーストになってしまったのかはわからないが、彼女が悲しいまま亡くなってしまったのなら、その苦しみを断てたという事だけがせめてもの救いであったのだろうかと、彼は考えていた。
「母を捜す孤独な魂に、どうか安らぎが訪れますよう……」
「どうか、彼女がゆっくりと休めますように」
 母親を捜し続ける少女の魂へと届くようにと、晶、渓もまた鎮魂の祈りを捧げる。
「これでもう、彼女は母親を探して彷徨う事もなくなるのかな……どうか安らかな眠りを」
 仲間達と同じように少女のために祈りながら、辺りを見渡して、静まり返る深夜の道を少し寂しいものだなとイクスは感じる。
「皆お疲れ様。さ、帰りましょう?」
 道具を全て撤去し終わった事、負傷者がいない事を確認し、仲間達に帰還を促すマヤ。
 すっきりとしない仕事ではあったが、割り切るより仕方ないと彼女は思っていた。
 そうして能力者達は、銀誓館学園へと帰還するべく、元来た道を引き返していくのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/10/10
得票数:笑える1  せつない13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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