輝く宝石を盗み出せ!


<オープニング>


 ここはある人物の夢の中。
 高層ビルの屋上。街の夜景を見下ろしながら、一匹のナイトメアがテンション高めに叫んだ。
「ジャック様ありがとうーっ! 命の危険がないという素敵なコピー能力のおかげで、こんな俺でも夢のカケラが手に入りそうっすー!!」
 言いきりやがった。
 コピーする奴は考た方がいいぞジャック。
「って調子に乗ってたら邪魔が入るんだよなー、きっと。多めに衛兵作っとこう……」
 仲間の数々の失敗談を思い出して素に戻ると、悪夢の衛兵を作り出す。その姿はドラマなどでおなじみのガードマン。だが、手に持っている獲物がスタンロッドにマシンガンと凶悪だ。
「我ながら怖っ。まあこれなら勝てるだろう。負けないさ。負けない……よな?」
 ひとしきり呟くと、ナイトメアは衛兵達に指示を出してビルの中へと消える。
 安全な場所から、悪夢のカケラができるのを待ち望んで。

「……っていうナイトメアに囚われた人を助け出して欲しいの」
 調子に乗ってるんだか臆病なんだかと呆れながら、柏城・彩奈(高校生運命予報士・bn0269)が能力者達へと悪夢の内容を伝える。
「悪夢に囚われた人の名前は宮野さん。彼はあるビルのガードマンなのだけど、今度そのビルで宝石の展示会するらしいの。それで……その宝石の金額聞いて、警備するのが怖くなったみたい」
 こら。いい大人がそんな事でどうする。
 そう思った能力者達は、続く宝石の金額を聞いて息を呑んだ。そりゃ怖い。
「そういう事情で悪夢を見ていたところに、ナイトメアに囚われたという事らしいの。既に周囲の人達もこの悪夢に引き込まれていて、このままでは悪夢の力は際限なく広がるわ。これ以上広がる前に、宮野さんを悪夢から救ってあげて」
 彩奈はそう告げると地図を取り出し、次に詳しい場所を指で示す。
「この宮野さんはアパートに一人暮らしで、辺りは夜、人気の少ないオフィス街。加えて無用心な事に窓の鍵も閉め忘れているわ。他の住人も悪夢に引き込まれて眠ったままだから、中に入るのは簡単な筈よ」
 侵入の手順を伝え、彩奈は次に悪夢の詳細を口にする。
「悪夢の舞台は高層ビルの並ぶオフィス街。悪夢の中に入ると、みんなはあるビルの入り口に出現する形になるわ」
 ここで復習。悪夢の世界ではベースとなる夢に反するような攻撃は『威力を減らされ』る。つまり。
「今回みんなにはこの宝石の展示会場から宝石を盗み出して、追ってくる悪夢の衛兵達を蹴散らして欲しいの」
 ノリはアニメの怪盗ものである。むしろそのノリでやって欲しいと言うのだ。
「逃走用の車やバイクはその辺りにあるわ。夢の中だし、ゲームセンターの感覚で操縦できるわよ」
 操縦が苦手なら誰か他の人に乗せて貰えばいいわと彩奈は告げ、最後に今回の敵について説明する。
「悪夢の衛兵は全部で12体。それぞれスタンロッドとマシンガンで武装しているわ」
 この衛兵達は、逃げたら3人ずつに分かれて4台の車で追ってくるらしい。街の中は無人の車が走り、大きな橋などもあるから上手く使って逃げながら戦って欲しいと彩奈は言うと、最後にこの悪夢を作り出したナイトメアについて口を開く。
「この悪夢を束ねているのは、来訪者ナイトメア。だけど、ここに居るのは実体でなく、ナイトメア王に作り出されたコピーナイトメアよ。コピーを倒してもあっちにしたら痛くも痒くも無いでしょうけど、逃がしてあげる義理も無いわ。宮野さんの分も、思いっきり殴ってあげて」
 正直強くもないしねとにっこり笑顔で言うと、運命予報士の少女は用意していたティンカーベルの粉を取りだした。

「最後に、夢の中へ入る前のお約束。夢の中では普通では考えられない事が起こるけれど、夢の中で重傷を負ったり命を落とせば現実でもそうなる事だけは忘れなようにね」
 勿論分かっているでしょうけど念のためにねと彩奈は笑うと、教室を出て行く能力者達を送り出す。
「それじゃ行ってらっしゃい。気をつけてね」

マスター:月形士狼 紹介ページ
一般技能、騎乗を持っている人カモン!
月形です。
今回は悪夢依頼、怪盗カーチェイス編をお送りします。
宮野氏の家には簡単に忍び込めますので、省略していただいても結構です。
以下補足。

●宝石を盗む
時刻は夜。展示会が終わる30分前です。
警備は普通に行っていますので、客に紛れて侵入してもいいですし、夜を待って忍びこんでもいいです。
ちなみに展示会場は地上25階とかなり高め。

●カーチェイス
基本は無茶な運転をして敵を引き離し、少数になったところを降りて迎え撃つという形になります。基本的に騎乗した状態では攻撃は当たりません。
ですが速度を調節して横にわざとつけた場合等は、その限りではありません。
実在するマシン名をプレイングに書かれても、諸々の事情により描写はしないと思われます。

●悪夢の衛兵
ナイトメアが作り出した衛兵です。
展示時間内は要所に立って警備し、夜になると2人組で見回ります。
宝石が盗まれた事を知ると、一目散に追いかけてきます。
攻撃方法は以下の通りです。
スタンロッド 近接攻撃+マヒ
マシンガン 全周攻撃 

●ナイトメア
最初のビルの屋上の最上階に隠れています。
戦いになるとナイトメアのアビリティを使って応戦してきますが、正直弱いです。
全て片付けたらすっきり退治してあげましょう。

以上です。
それでは皆さんのプレイングをお待ちしています。

参加者
草薙・藤次郎(微睡む笑刀・b01852)
霧雨・慊人(夜舞閃星・b04803)
渕埼・寅靖(虎憑きの鬼蜘蛛・b20320)
萩森・水澄花(アクロポリスロマンチカ・b25457)
国見・眞由螺(影武者・b32672)
刀守・梓杜乃(メイドオブオールワーク・b42779)
須々木・理(幸福の輪廻・b53026)
佐々木・乙女(はゲーマー・b74755)



<リプレイ>

●盗みは華麗に、大胆に
『今夜 展示会が終わる30分前に至宝『○○』を奪いに行きます 怪盗しる☆すた』
 展示会場に突然投げ入れられたカードに慌てる警備員達を横目に、3ピースのスーツに眼鏡をかけた霧雨・慊人(夜舞閃星・b04803)がさりげなく一般客に紛れ込む。
(「俺は今、裕福な家の跡取り。そんな振る舞いなら周りから浮かないだろう。……まぁ実際の所、俺の立場そのままだから遣り易いけどな」)
 表情に出さず苦笑すると、先ほど見たビルの避難経路図を思い浮かべ、これから始まる出来事の前に逃走ルートをもう一度確認した。
 同じくスーツを着て一般客に紛れ込んでいた草薙・藤次郎(微睡む笑刀・b01852)が、仲間が宝石に近づいたのを見てさりげなく壁にある火災警報器に近づく。
(「本来は忍び込むほうが得意なんですけど」)
 服の中に忍ばせておいた複数の発炎筒を一気に焚くと素早くプラスチックカバーを叩き割り、楽しげな笑みを浮かべる。
「夢は楽しんでいきましょうか」
 盛大に鳴るベルの中、そんな呟きは誰に聞こえることも無く掻き消された。
(「始まったようですわね」)
 メイド服姿の刀守・梓杜乃(メイドオブオールワーク・b42779)が、警報ベルを合図に用意していた発炎筒を次々とばら撒き、騒動を煽る為に大きな声を出した。
「火事ですわ!」
 そうして騒動に紛れ、警備が手薄になったところに予め警備の車を見つけておいた国見・眞由螺(影武者・b32672)が誘導する。
「こっちよ。今なら人も居ないわ」
 二人は駐車場に着くと、タイヤを長剣で斬りつけ、次々とパンクさせていった。
「これで残るは4台。警備の人達には無事に動く車を探して貰いましょう」
「本当なら1台だけ残しておきたいところだけど、違う車で追ってこられても判りにくいものね。あとは車で合流を待ちましょうか」
 敵に時間差を作る細工を済ませた二人は、騒ぎの起きている展示会場の階を見上げると、逃走に使う車を準備する為に走り始めた。
「火事だー!」
「落ち着いて! 警備員の指示に従ってください!」
 煙が充満していく展示会会場に慌てた声が飛び交い、混乱は拍車をかけるように大きくなっていく。
「ここも煙が!」
 スーツ姿の眼鏡をかけた紳士が、帽子が乱れるのにも構わず慌てふためき、警備員を見つけると猛烈な勢いで食って掛かっていた。
「警備はどうなってる、娘を危険に晒す気か!」
 その紳士の後ろには三人の姉妹。だが、それは仮の姿。
 三人は警備員の注意が逸れたと見ると滑るように宝石に近づき、長女らしき少女が宝石の入ったガラスケースを指でなぞり、うっとりとした表情で呟いた。
「麗な宝石……こんな小さな箱に閉じ込められて可哀想。ここから逃してあげるのが怪盗のし・ご・と……なのよ」
 次の瞬間、頑丈なはずの強化ガラスのケースが粉々に砕け散り、火災ベルとは違う警報音が鳴り響いた。
 白煙に視界を遮られる中、驚いた警備員達が振り向くと、そこには砕け散ったガラスの欠片と共に浮かび上がる三姉妹の姿。
「ふふ、まんまと騙されたみたいね」
 長女が宝石を手にして笑うと顔を鷲づかみにして特殊メイクの覆面を一気に脱ぎ捨て、本来の姿を取り戻した萩森・水澄花(アクロポリスロマンチカ・b25457)が妖艶に笑う。
「今宵も月が綺麗ね」
 三女こと、佐々木・乙女(はゲーマー・b74755)が仮面で顔を隠し、イグニッションをしてその姿を現す。
「リリカルマジカル、しる☆すたのリリカルサンダー誕生よ☆」
 まるでアニメの魔法少女のような姿に変わり、ビシッとポーズを決めた。
「宝石はこちらですわ」
 同じく覆面を取った次女こと、須々木・理(幸福の輪廻・b53026)が宝石を入れた袋を見せつけ、にっこりと警備員に笑いかけると身を翻す。
「さあ、逃げるわよ!」
 その声を合図に三人の少女が会場を出るのを、我に返った警備員達は慌てて追いかけようとするのを、先ほど警備員に食ってかかった紳士が前に出て遮った。
「それでは私も逃げるとしようか」
 含み笑いをすると変装を脱ぎ捨て、渕埼・寅靖(虎憑きの鬼蜘蛛・b20320)が煌く蜘蛛の糸で警備員達を絡めとる。
「さらばだ諸君!」
 逃げる怪盗達を警備員達は慌てて追い、誰も居なくなった会場には複数の発炎筒、そして。
『お宝は頂いたわ』
 そう書かれたキスマーク付きのカードだけが残されていた。

●カーチェイス!
「こっちだよ!」
 乙女が予め書き写していたビルの案内図を手に、スーパーGPSを発動。現在地を確かめて、全員を最短の道へと案内する。
「急げ!」
 先に逃走経路を確保していた藤次郎と慊人が仲間を誘導し、後ろからの銃声に追い立てられるようにしてビルの階段を駆け下りていく。
「皆様、お車はこちらですわ」
「助手席に逃走経路の案と通行可能な道路のマップを置いているわ! 路地裏入るならこれを使って!」
 梓杜乃がビルから出てきた仲間達にお辞儀をして出迎え、眞由螺が現実世界で入手していた地図を用意しておいたことを伝えた。
「憧れのカーチェイス! いくわよ!」
 丸みを帯びた可愛いフォルムが特徴のイタリア車に乗り込んだ水澄花が、わくわくした表情でエンジンをかける。
(「大胆華麗な大怪盗……思わずワクワクしてしまいます」)
 その助手席に乗り込んだ理が、先ほどのスリルを思い返し笑みを浮かべる。勿論目的も忘れていませんと慌てて自分に言い訳しつつ、後部座席に乙女が乗り込んだのを見て合図をする。
「萩森さま、準備オッケーですわ」
「二人共しっかり捕まっててね!」
 全員が車に乗り込んだのを見て水澄花がアクセルを踏み込み、車は猛スピードで走り出した。
「さて、フルスロットルでいきましょうか」
 小型車に乗り込んだ藤次郎が、後部座席に乗り込んだ火狩へとバックミラー越しに話しかける。
「火狩、酔わないようにしてくださいよ」
 頷くケルベロスオメガに笑みを零し、仲間に遅れまいとアクセルを踏み込んだ。
「渕埼、運転は宜しくな」
「こちらこそ、ナビを頼りにさせてもらうよ」
 殿を務めていた寅靖が社交の高い車の運転席に乗り込み、一足先に助手席に乗っていた慊人が声をかけて笑みを交わす。
(「車の運転はよくやるが……」)
 今日の運転は派手になりそうだと、寅靖は笑いながらハンドルを握り締め車をスタートさせた。
「アンタらは、ここまでだ!」
 覆面で顔を隠した眞由螺が出てきた追っ手に透明の糸を飛ばし、梓杜乃の乗ったレーサーバイクの後ろに飛び乗る。
「参りますわよ。舌を噛まれませぬ様」
 水澄花はそう言うとグリップを捻り、前輪を跳ね上げるとメイドスカートが大きく捲くれあがるのも気にせずバイクをスタートさせた。
「追ってきたぞ! 先行して2台、遅れて2台だ!」
「了解。しっかり掴まっていてくれ」
 慊人の言葉に寅靖は頷くとわざと減速し、後続の追っ手のバンパーが軽く当たる程まで引き付けると、突然ハンドルを切り急なカーブを曲がる。
「車高の高いこの車に視界を遮られていた状態で、このカーブ。曲がれるか?」
 すぐ後ろに追従していた車はその運転についていけず、大きくカーブで膨れ上がると、突っ込んできた無人の車とクラッシュした。
「残り3台と。それではこちらもいきましょうか」
 それを見た藤次郎は、小さな車体を武器に狭い路地に入ると予め決めていた逃走ルートに先回りし、路地の出口で待機。仲間の車が猛スピードで前を通り過ぎたのを見て急発進すると、そのまま追跡車の前を掠めるように通り過ぎる。
 追跡する車の運転手が驚きで急ハンドルを切るのを一瞬の交差で見届け、そのまま路地へと入り。
「まさしく、夢ならでは、てね」
 そんな笑みを含んだ言葉を呟き、背後に聞こえる急ブレーキとクラッシュ音を後に仲間と合流するべく車を走らせた。
「残り2台か。刀守殿、先行している車を倒したい。横に付けられるか?」
「お任せ下さい、国見様」
 眞由螺の注文に梓杜乃は頷くと、敵が窓から乗り出してマシンガンを連射するのにも構わず、一定の距離を保ったままスピードを合わせ、真横につける。
「援護しますわ!」
 敵の気を逸らそうと、別の車に乗っていた理が爆弾のように発煙筒を投げ、
「あ! 宝石が!」
 宝石を入れていた袋を誤って落としたように見せる。勿論中身は予め用意していた偽物だが、そんな事も知らずに後続の一台が慌てて止まり、その隙に自分はかの大泥棒の子孫と口にした眞由螺が影をカマイタチに見立て、剣を振るった。
「また……」
 お約束の台詞と共に、大きく斬り裂かれた車は大きく蛇行するとガードレールにぶつかり停止する。
 散らばった宝石が偽物と気付き、怒りと共に追いかけてくる最後の一台の車がマシンガンを掃射。前を走るイタリア車のガラスを突き破り蜘蛛の巣のようなヒビを広げるが、水澄花はスピードを緩めずに自ら窓を叩き破り見晴らしを良くする。
「面白くなってきたわ!」
 アクセルとブレーキを絶妙に踏み、高速のまま後部を滑らせてドリフトで距離を稼ぎ、他の車の脇をギリギリで通り追い抜いていく。
「渕埼、そろそろ橋が上がるぞ!」
「分かった! しかしこんな運転、行動じゃ絶対に出来ないな」
 なかなか爽快だと寅靖が呟き、慊人の指示通り運河へと車体を滑らせ、ゴミ箱を蹴散らしながら車を進める。
「そろそろかな?」
 操作盤を前にした藤次郎が、隣の火狩に話しかける。現実世界ではこの橋はもう動いてないはずだが、どうやら動かすことは可能のようだ。
「まあせっかくの夢だし、派手にいかないとね」
 そう呟くとスイッチを入れ、目の前の橋をゆっくり上げ始めた。
 段々と傾斜が高くなっていく橋を、最初に水澄花のバイクが橋を飛び、次に車体が重い寅靖の車が飛び越える。
「二人とも、しっかり掴まっていてね!」
 最後に水澄花の車がジャンプし、それを追って警備の車も空を飛び。
「魔法少女の腕の見せ所はここからね!」
 後部座席に座っていた乙女がジャンプの頂点を狙って、割れたリアガラス越しに敵の運転手にブラックボックスを掲げる。それを見た警備員達は顔を恐怖に歪め。
「バキューン☆」
 ブラックボックスから放たれた電流が車を貫き、バランスを崩して落下した車が盛大に水柱を上げた。

●それでは順番に
 空中で飛び降りた三体の悪夢の衛兵がなんとか川を渡りきると、そこには能力者達が万全の態勢で待ち構えていた。
「お疲れ様です。それではこれもどうぞ」
 藤次郎の手から渦巻く水流の刃が飛び、火狩がそれを追うように刃を広げ駆け抜ける。
「リリカルラジカルサンダーボルトー☆」
 乙女が虚空に魔法陣を描き、その中心から放たれた雷弾が衛兵の一人を貫いて電撃を走らせ。
「怪盗魂が熱く燃えるわ!」
 黒燐蟲を長剣に纏わせた水澄花が、燃え盛る太陽の如き炎を拳に纏わせて殴り飛ばすと同時に、炎に包み込んで一体を消し去る。
 慌てる二体が武器を構えるより早く、獣性の象徴たる漆黒のオーラをその身に宿した梓杜乃が走り。
「参ります」
 二振りの漆黒の長剣に更なる影を纏わせると、大きく十字に切り裂いた。
「一度捉えた獲物は、逃がさん」
 敵が体勢を整えるより早く、虎の紋様を肌に浮かばせた寅靖が踏み込むと同時に衝撃を爆発させ吹き飛ばす。
「……怪盗の決め台詞めいたのはどうにも思い出せん」
 慊人が呟き、シルクハットに夜会服のステレオタイプの怪盗を虚空に描いて命吹き込み。
「まぁイメージ勝負……だな」
 そう言って放ち、衛兵の一体を消滅させた。
「私の覇気を、受けてみろ!」
 頭上で武器を旋回させて構えた眞由螺が、最後の一体に裂帛の気合と共に影を走らせて切り裂き、毒へと冒し。
「こんな所で捕まったりするしる☆すたでは御座いません」
 自分たちを追ってきた警備員達へと理は微笑むと、頭上に掲げた手の先に巨大な樹木の槍を生成する。
「素晴らしき怪盗には自然すら味方するのですわ!」
 言葉と共に槍を投げ放ち、爆発に巻き込まれた衛兵は先ほどの毒が止めとなりその姿を消した。
 能力者達はその後、元に戻した橋を一台ずつ渡ってくる衛兵達を各個撃破し、衛兵を全て片付けると最初のビルへと戻ってきた。
「あとは、この上に居るナイトメアだけだな」
 車高の高い車から降りた寅靖が最上階を見上げ、
「絶頂の時にどん底にたたき込む、これぞ悪夢てね」
 藤次郎が残りのアビリティを全部叩き込んでやろうと思いながら、ビルの中へと入る。
(「怪盗か……なかなか面白い話だったが、私のような無骨者に華麗な活躍は難しかったな」)
 バイクの後ろから降りた眞由螺が剣を振り、今回の依頼を振り返る。
(「故に今回は裏方及び用心棒役としてサポートに回ると決めた。私は仲間を守る鉾となろう!」)
 声に出さずもう一度決心すると、ビルの中に踏み込んだ。
「さあ、締めと参りますわ」
 イタリア製の車から降りた理が、自分を奮い立たせる為に口にする。なぜならば。
(「……最上階って遠いですわね……」)
 エレベーターはいざという時動きがとれない為、必然的に最上階まで階段まで上がらなければならない事を予想し、うんざりしていたのだ。
 そんなこんなで最上階。
 乙女は扉を開け放つと、中で怯えていたナイトメアへと、ポーズを取りながら名乗りを上げる。
「華麗なる怪盗にして魔法少女リリカルサンダーは、今度はアナタのハートを盗みに来たわよ☆」
「嘘だろ!? あんなに衛兵作ったのに全部倒してきたのかよ!?」
 コピーとは言え怖いことは怖いのか、ナイトメアはそう叫ぶと幻夢のバリアーで身を包む。
(「幾ら生じるモノとしても、人の隙に付込むなんてのは……愉快じゃない、よな」)
 そんなナイトメアを慊人は冷めた目で一瞥すると、水晶の刃を構えて呟く。容赦はしないと。
 そして最後の戦闘が始まるが、所詮ナイトメア一体で八人の能力者を相手できる筈も無く。ナイトメアコピーは全員にボコられて消滅させられた。
 この世界を作り出していたナイトメアが消え去り、夢の世界から脱出した仲間へと梓杜乃が皆へとお辞儀をする。
「皆様、お疲れ様でした」
 そう言って全員を労うと、正常な眠りへと戻った宮野氏へと近づき、そっと囁く。
「貴方様が守らなければ誰が守るというのです。立派なお仕事、頑張って」
 この夢から覚めた後、もう一度現実へと立ち向かえるように願いながら、皆と共に部屋を出た。
「けど今回は楽しかったわ。怪盗もカーチェイスも憧れてたの」
 帰る道の途中、水澄花が笑ってそんな事を口にし。
「怪盗ってちょっと癖になりそうね」
 何人かが自分もそうだと笑って同意し、楽しげな笑い声が夜道に響き渡った。


マスター:月形士狼 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/10/17
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冒険結果:成功!
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