ホッピング怪人の恐怖


<オープニング>


「いやー、いいなぁ。すごいなー。楽しそうだなー!」
 少年は目の前にある、スプリングの付いた一本足の飛び杖のようなものを眺めながら、感動の声を漏らす。
「昔はこれで遊びまわってる子供達がいたんだな……。彼らがうらやましいよ」
 夕焼けの空がさらに哀愁を漂わせている、寂れて人の気配がまったくない広場。
 その敷地内、ボロボロの小さな小屋の影にポツンと放置されていたのは、使い込まれた古臭い一昔前の玩具。
 それは、少年に褒められるたびに脈動し姿を変えていく。
「レッツ! ホッピング!」
 そして、シュールな産声をあげ、ついに人の形をなす。新たなゴーストの誕生だった。
 人の形まで太くなり、一番上には頭らしいものまで付いた一本の杖。きちんと腕も生えてはいるが、足に位置する場所には一本のスプリングしか存在してはいない。
「ホッピン、ホッピング!」
 不安定な体勢だろうに、そのゴーストは事もなげにスプリングを利用してジャンプしながら進んでみせた。
「それじゃあ行こうか、昭和の素晴らしさを説いてまわらないと」
 少年の後を嬉しそうについていく、ゴースト。彼らは殺気をにじませながら人を求めて動き出した。

「というのが今回のお話でした〜」
 朝日川・明日(中学生運命予報士・bn0304)は自作の紙芝居を駆使し、大雑把に事件の説明を終えた。
「なんですか皆さん、別にホッピング怪人のデザインは私の作画の問題ではないですよ。元からこんな感じだったんです」
 ホッピングが人の形になったという奇妙なゴースト。その姿に唖然としていた能力者達に、明日は続けて説明を加えていく。
「えーっと、一応事件の内容をまとめていくと……。ナイトメア王ジャック・マキシマム配下のナイトメアビーストの一人、『リメンバー昭和』百目鬼・面影が動き出したようですね」
 百目鬼・面影は昭和時代のレトロな品物を、『昭和ゴースト』にするという力を持っている。この力を使い、彼は無差別殺人を行おうとしており、見過ごすわけにはいかない。
「彼らは住宅地から離れた広場にいるようですので、この場所が戦場となるでしょう」
 この広場は立地が悪かったせいか、今は寂れて雑草はボーボー、人通りもまるでない。
「昭和ゴースト、ホッピング怪人の移動手段は、スプリングを利用した跳躍です。さすがというか、並外れたバランス感覚で素早い動作を実現しています」
 攻撃手段もこのスプリングの跳躍を利用したもので、上空からの襲撃やシャンプによる衝撃波も予想される。
「面影は戦闘時は昭和ゴーストを前線に押し出し、自分は後方からサイコフィールドやナイトメアランページでの支援を行うようです。彼を先に倒しても昭和ゴーストが弱体化するといったことはなく、そのまま暴れ続けるようですね」
 面影は武器として長杖を所持しており、普通のナイトメアビースト程度の戦闘力を有している。
「無差別殺人だなんて、紙芝居のオチとしては最悪です。皆さんの手で怪人がフルボッコにされるハッピーなお話にしてあげてください」 
 微妙に毒気のある笑顔を浮かべながら、明日は能力者達を送り出すのだった。

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参加者
如月・皐(ファイアフォックス・b00939)
ジャト・オールグッド(拍車・b15477)
朝日奈・護(絶壁の小虎・b24524)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
雲乗・風斗(ヴォームティンクラウド・b51535)
ナギ・ミサキ(大地に荒ぶる獅咬の拳・b55892)
萱森・各務(遊鬼士・b56350)
嘉凪・久臣(竜神の蒼き衛士・b67229)
蒼月・秋奈(月下ニ咲ク花・b72525)
松永・小草(中学生真鋏角衆・b77892)



<リプレイ>

●昭和の薫り
「ホッピング、懐かしいですねぇ…子供の頃よく遊びましたよ。あ、これでも平成生まれですから、自分」
 伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は自分で、自分をフォローしながら、今回問題となっている昭和アイテム、ホッピングについて語り始める。
「昭和レトロですか。最近はやってますよね。でも平成生まれとしては、ケータイの無い世の中はちょっとなぁ……」
 如月・皐(ファイアフォックス・b00939)の言葉に頷く仲間も多い。平成と昭和、そこを隔てる技術や文化も差も大きい。特にケータイ電話なんてアイテムは今の若者の必需品となっている。
「ホッピング…いろいろ調べたけど…ばねのついた道具よね。昔は、流行ったって、聞くわ。ためしに…何本か持ってきたけど」
 蒼月・秋奈(月下ニ咲ク花・b72525)は大きな袋で何本かホッピングを運んでいる。
「使った事はないけど、近所の古い家で見た事はある。にしても、シュールな見た目だろうな」
 使えばただの玩具、されど嘉凪・久臣(竜神の蒼き衛士・b67229)の言うとおり、今回はホッピングが怪人へと変貌しているわけで、その姿はそうとうシュールなものだと予想できる。
「名前からして、『ワンチャンス』百目鬼・戦闘力の家族だろうか。ホッピングはテレビで見たことあるけど、楽しそうな玩具だ」
 雲乗・風斗(ヴォームティンクラウド・b51535)は首謀者である百目鬼・面影について思いを馳せる。
「昭和か…オールドデイズみたいなもんか……? まあとりあえず、止めさせてもらう!」
 ジャト・オールグッド(拍車・b15477)が声を上げる先、戦場となる広場が見えた。
「子供の頃親父が買ってくれたのを思い出す…が、これをモチーフにしたゴーストとはね…。まぁ、こんな企みはさっさと潰すに限るな」
 そして、ナギ・ミサキ(大地に荒ぶる獅咬の拳・b55892)が踏み込み、視線を向ける先にいたのは……シュールな、目を背けたくなるような怪人ゴーストと、ナイトメアビースト百目鬼の姿だった。
「……平成生まれをなめんじゃねえ」
 朝日奈・護(絶壁の小虎・b24524)の叫びと共に仲間達がそれぞれイグニッションを終え戦闘態勢に入る。
「心改めるなら慈悲を悪業を重ねるなら御仏の名の下に調伏いたしますわ!」
「……た、確かに昭和の品にも味があります。でっ、ですがそれをゴースト化させたうえ、無差別殺人に使うのは許せません!」
 萱森・各務(遊鬼士・b56350)と松永・小草(中学生真鋏角衆・b77892)が百目鬼に向かい声をあげる。
 百目鬼は彼らの声に応えはしない。変わりに傍らに立つホッピング怪人が陽気な声をあげた。
「レッツ! ホッピング!」 

●怪人とナイトメア
「何となく近親感持っていたのですけど…百目鬼、やはり貴方は悪い人だ…ここは早めにお帰り願いましょう」
「御仏よ、我に加護を!」
 洋角と各務はそれぞれ黒燐装甲と白燐装甲で自己強化をしながら呟く。
 仲間達の大部分は洋角を始め。百目鬼・面影を囲むような陣形をしくために動き始めた。逆に、怪人を抑える役割として、小草の使役ゴースト、アヤメ、そして久臣と秋奈がそれぞれ残る。
「昭和好きだか知らないが、あんたがあれを扱う資格はないことは間違いなさそうだ」
 クレセントファングを放ち、風斗が叫ぶ。
 開戦早々、能力者達による集中攻撃にあい、百目鬼は一旦引いって体勢を整える。
「あなた達にも昭和のすばらしさ、わかっていただきたかったのですが……」
 百目鬼は呟きながら、接近し攻撃を仕掛けてくる能力者達を迎え撃つためにサイコフィールドにより防御力を高める。
「それでは誰にも理解されませんよ!」
 接近しフェニックスブロウを放ちながら皐が声を上げる。
「攻撃上等。速攻でいく!」
 上手く連携をとりながら、護は続けざまに攻撃を加え百目鬼を追い込んでいく。
 百目鬼も反撃に出ようとするが、こうも能力者からの波状攻撃が続くと中々攻勢には出れないようだ。
「そっ、その力、封じさせてもらいます!」
 武装解除弾で怪人と百目鬼を牽制する小草。使役ゴーストのアヤメは彼の後方でホッピング怪人と戦っている。
「堅い守りが隙になるってな」
 さらにジャトのライトニングストームが怪人と百目鬼を同時に狙い撃つ。
「せっかく出てきたところを悪いが、ここで消えてもらうぜ!」
 杖による百目鬼の攻撃をなんとか防御しながら、ナギは反撃にとばかりに龍顎拳を放つ。
「ホッピング!」
 一方こちらでは叫び、跳躍する怪人。そして着地と同時にずしりと響く衝撃波はダメージとなって能力者達の身体を蝕む。
「こちとらバイトだけど、んな弱々しい衝撃波でやられるかよ!」
 それに対向するように久臣は震脚を打ち返した。
「まるで、妖怪ね。アレは、任せて」
 秋奈は自分達が怪人と対峙している間に、百目鬼に集中攻撃を仕掛けている仲間のことを思いながら呟く。人数の関係もあり楽な戦いではないがなんとか仲間と協力して凌ぐ。
 いずれ百目鬼を倒し駆けつけてくれるだろう仲間のことを思いながら。

●ホッピング怪人!
「ただやられるわけにはいきませんからね……」
 百目鬼も相当のダメージを受けてはいたが、最後の力を振り絞るようにナイトメアランページを放つ。
 能力者達は敵の悪夢爆弾によるバットステータスから完全に抜け出せてはいなかったこともあり、大きなダメージを受けた。
「さて、あと一息ですね」
 しかし、百目鬼は洋角の反撃を受けそのまま姿を消滅させていった。
 百目鬼を囲んでいた能力者達はダメージを癒しながらも、動けるものは残る怪人へと向かっていく。
「ア、アヤメ、上を抜けられないように注意して。たっ、頼むよ!」
 小草は使役ゴーストのアヤメに指示を与えながら体勢を整える。百目鬼を倒すべく戦っていた仲間の傷も深く、すぐさま増援に駆けつけられるほど元気な能力者は少ない。
「癒しの力を…」
 秋奈は仲間達が援護にやってきてくれたことを確認すると一歩下がり、黒燐奏甲で傷を癒す。
「ちょこまかちょこまかと跳ねやがって、いい加減さびついてろ!」
 サンダージャベリンで怪人を狙い撃ちながらジャトが戦列に加わる。
「バネ足ジャックは日本にはいらねえんだよ」
 怪人の衝撃を腕で防御しながら護が接近し、攻撃を仕掛けた。
「あとはそいつだけだ!」
 飛び上がった怪人への警戒を仲間に即しながら風斗が声をあげた。怪人を取り囲むように体勢を立て直した仲間達が陣形をしいていく。
「…やっぱりお前、シュールすぎるわ…」
 ナギが呟く先、怪人は陽気にジャンプで移動する。スプリングをきしませ、楽しそうに腕をふり、能力者へと襲いかかる。その姿は確かにシュールであった。
「薬師如来よ、衆生を苦しみより救いたまえ…」
 各務は無事でいてくれたことに安堵しながら怪人との戦いで受けた仲間の傷を癒していく。状況はこちらに有利、百目鬼を倒しきることができればあとは単純な怪人をどう仕留めるか。
「あなたを生み出した元凶は倒しましたよ!」
 フレイムキャノンを怪人に放ちながら皐が接近する。
「アンタもそろそろ観念したらどうだ!」
 戦闘の始まりからずっと怪人の相手をしていた久臣は、上手く跳躍時の隙を狙いながら攻撃を叩き込んでいく。
 怪人の跳躍は確かに厄介ではあったが、人間と同じ二足歩行ほどの自由度はない。よく相手の動きを見れば対処しきれない敵ではなかった。
 抜群のバランス感覚を誇っていた怪人。しかし、ふいに態勢を崩し倒れこむ。ダメージが足ならぬバネにきていたのだろう。
「……なんだ、観念……してくれたみたいだな」
 久臣の言うとおり、一瞬身体のバランスを崩しただけでも怪人にとっては致命傷。腕に力を入れ必死に立ち上がろうとしたホッピングの成れの果ては、そのまま起き上がることもできず能力者達によって滅せられたのだった。

●昭和の玩具は……
「お疲れ様でした」
 洋角は仲間達を気遣い声をかける。戦闘に疲れた仲間達は、みなリラックスした表情で思い思いに小休憩をとっていた。
「お疲れさん…ふぅ、やれやれだ…。昭和のレトロな物を…ということは、そのうち黒電話怪人とか白黒テレビ怪人とか出てくるのか? まさかな…」
「こ、今回は昭和ゴーストは1体でしたけど、今後、骨董品店や博物館が狙われると厄介な事になりそうですね」
 ナギと小草は今回の事件から、今後の被害を想像し、表情を引きつらせる。
「何だか色んな意味で疲れた気が……昭和を馬鹿にする気は全くもってないけど、あのセンスはどうなんだと問い詰めたいところだよな」
 怪人の姿を思い出しながら久臣が呟いた。確かにホッピングという玩具を元にしているとはいえ、もう少しまともなビジュアルで登場してほしいと思ってしまう。
「お前も災難だったな……」
「まあ…昭和が良いものか悪いものかは別として、こんな怪人にされちゃたまったもんじゃねェよな。安らかに眠れ、ホッピングよ。…ところでこれ、どうやって遊ぶんだ…跳ねるのか……? 」
 今回の被害者である、怪人へと変貌させられてしまったホッピングに祈りをささげ、風斗とジャトが小さく呟く。
「……これ、中々面白いですね」
 秋奈が持ってきたホッピングで遊びながら皐が楽しそうに声をあげた。
 依頼を終え、今は自由な時間、興味は昔流行った玩具へと自然に向かっていく。敵を倒しきり、残ったのは広場でホッピングに興じる学生の姿だけ。
「これ、昭和の頃にはやったんだってな」
「びよーん、びよーん、びよーん、びよーん…」
 護が興味深げに眺める中、秋奈は一定のテンポでバランスを取りながら、跳ねて見せる。
「中々おもしろいのですね、昔の遊びも」
 各務の呟きに頷く仲間達も多い。昭和の素晴らしさ、確かにそういうものはあるのかもしれない。しかし、百目鬼のやり方を許すわけにはいかない。故に、能力者達の戦いはまだまだ続いていくのだろう。


マスター:坂本こうき 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2010/11/04
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