Road to yin&yang


<オープニング>


「よう、おめーら陰陽師は好きか?」
 久志の挨拶は最初から色々と間違っていた。
「今回は、とある陰陽師の住んでた屋敷へ向かってもらうぜ」
 依頼の舞台となるのは穴場の避暑地としてマニアには良く知られた高原、桜舞い散る地に建てられた年代物の公家屋敷だ。
 木造平屋一戸建て、こう表現すると狭そうだが、実際は地下もあるかなり広い建物だった。
「東京ドームに換算すると半個分くれーかな。五芒星の印章とか、陰陽師っぽい調度品とかも残ってるみてーだぜ、探検気分で屋敷を調査してくれ」
 解り難い説明を交えつつ、依頼の趣旨を説明する久志。
 家屋は手入れもされておらず、人が寄り付かなくなって久しい。
 そんな屋敷に何体かリビングデッドが現れた。
 リビングデッドは全部で5体、男性4人に女性が1人。平安時代の人間かは良くわからないが、着物を羽織っている。
 5体のリビングデッドは屋敷内をばらばらに徘徊している。屋敷内を探索し、各個撃破するのが依頼の一応の目的だ。
「ま、こいつらは対して強くもねーけど、俺のようなか弱い一般人からしたら脅威なわけよ」
 花見とかしつつ、きっちり悪霊を退散させてくれ、久志はそう締めくくった。

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参加者
御影・祐衣(燐光纏いし白き戦神子・b00487)
狐塚・蘇芳(朧狐霧天狗・b00814)
霧生・颯(双子の妖草使い〜兄〜・b01352)
狗神・雛菊(迷子の仔猫ちゃん・b01533)
ライク・ロールズ(陰陽師・b03343)
有栖川・くらら(蒼炎魔弾の覇砕皇女・b05003)
御影・景紫(紫闇の剣舞・b05026)
葛来・遼(泡影に抱かれし宵闇の灯・b06778)
蘆屋・命(夢幻の繰り手・b14537)
泉野・流葉(中学生魔弾術士・b17892)



<リプレイ>


 人が住まなくなった家は寂れるのが速いという。
 ならばこの公家屋敷は人が住んでいるという事だろうか。傍目にはそれほど寂れていないようにも見えた。
 伸び放題の草の緑と、咲き乱れる桜のピンク。そんな色達に塗り潰されているから、小奇麗に見えるのかも知れない。
「かつて陰陽師が住んでいた屋敷……陰陽の力を受け継ぐものとしては、とても興味深いですね」
 丈の伸びた草を折り、入り口への道を作りながら呟く葛来・遼(泡影に抱かれし宵闇の灯・b06778)。
「そう、だな」
 蘆屋・命(夢幻の繰り手・b14537)も屋敷の周囲を確認しつつ同意した。
「俺としても、非常に興味があるな」
 閉められた門をこじ開ける泉野・流葉(中学生魔弾術士・b17892)。狐塚・蘇芳(朧狐霧天狗・b00814)は鼻をヒクつかせ、臭いを嗅ぐ仕草をみせる。
「何か面白い何かと遭遇するやもしれぬと、わしの中の天狗が告げるで御座る……狐はおるかのぉ?」
 陰陽師の館という響きに惹かれたのだろう、符術、陰陽の家系、魔術……今回集まった能力者達はその多くが陰陽道に関わる者だった。
 こじ開けられた門の向こう、屋敷の玄関が覗く。同時に桜もはっきりとその姿を現す。ほぅと、目を奪われる面々。
「暇があったら、一番良いアングルの写真でも撮っときますか」
 御影・景紫(紫闇の剣舞・b05026)の瞳の中、舞い散るいく片もの花弁。しかしそれも束の間、能力者達はその目的を思い出す。すべきはゾンビ退治だ。
「メガリスに関連するものや来訪者に関する資料なりアイテムなりがあるか、徹底的に調査するべきですわね」
 有栖川・くらら(蒼炎魔弾の覇砕皇女・b05003)は希望を口にするが、バニー姿で言われても困る。
 なんというか、くららの希望するものはこの屋敷に存在しないという予兆にも思えた。
「依頼が終わったらお花見するのですよぅ」
 ライク・ロールズ(陰陽師・b03343)の荷物からは巻かれたビニールシートが覗いている。
「そうだな、無粋な輩には早々にご退場願おうか」
 長剣で邪魔な草を薙ぎ払う御影・祐衣(燐光纏いし白き戦神子・b00487)。その後ろをピョコピョコついていく狗神・雛菊(迷子の仔猫ちゃん・b01533)。
「ゴーストさん、ちょっと可哀想だし……うん、早く成仏させてあげよーだよっ!!」
「さ、行こ、楓」
 妹の手を引き、続く霧生・颯(双子の妖草使い〜兄〜・b01352)。屋敷の入り口は施錠もされておらず、なんなく開く。頭を垂れて、九字を切る祐衣。
 陰陽の館は、どこか厳かに能力者達を歓迎する……


 玄関は突き当たりになっていて、通路が左右に分かれていた。
「それでは、私達は此方だな。小弥太、頼むぞ」
 サポートに呼んだ小弥太と共に二つの通路、右の方へ進む祐衣。
「いきましょー」
 それにライク、くらら、景紫、遼、流葉が続く。
「俺らはこっちじゃね」
 左の通路を指差す蘇芳と、頷くゆずき、颯、楓、雛菊、命。どうやら能力者達は手分けしてゴーストの掃討に当たるようだ。
 まずは右回り班の面々を追ってみる事にしよう。
 右回り班が最初に辿り着いたのは物置のような一室だった。
 陰陽に使うのだろうか、銅鐸や符といった小物から壁にかけられた巨大な太極図まで、様々なモノが所狭しと置かれている。
 その多くは埃を被り、長年使われていない事を示していた。
 そう、あくまで『多く』は。全てに埃が被っている訳では、ない。戸棚の奥で風も無いのに布がはためくのが見えた。
「危ないですわっ!」
 戸棚の陰に隠れていたリビングデッドが能力者達へ襲い掛かる。振り上げられるリビングデッドの右腕、くららは マジカルロッドで攻撃を受け流すと、そのままハイキックをリビングデッドへお見舞いする。
 リビングデッドは棚に突っ込む。棚には陶磁器も飾られていた。床に落ち、割れて激しい音を立てる。
「ハッ!」
 追い討ちに、流葉と遼の呪殺符がリビングデッドへ叩き込まれる。禍々しい断末魔を上げ、リビングデッドは退治された。
「まずは一人、ですね」
 リビングデッドの退治を確認し、遼は笛を1回吹く。
 空に抜けてしまいそうな高音が館に響いた。これはリビングデッドを退治したという合図だ。左回り班の面子からも、山彦のように笛の音が返ってくる。
「向こうも一人仕留めたようだな……ん」
 部屋の隅、埃の被っていない床を発見する祐衣。板の間の床、その一角だけ他の床の間に隙間があった。
 隙間に指を差し込み、少し力を込めると床板が持ち上がった。床下に広がるのは無限の闇。
「隠し階段、ですわね」
 携帯電話の光で床下を確認するくらら。微かに木の階段が浮かび上がっている。
「行きますか?」
 遼は言いながら、既に懐中電灯に明りを灯している。誰も、異論は無かった。
 急角度の階段、両端の石壁に手を突きそろそろと階段を降りていく一行。
「ワクワクするのですよぅ」
 上機嫌でライクの踏み出した一歩、カチリと嫌な音が鳴った。
「あ、」
 階段が消えた。といっても、忽然と全てが消えた訳ではない。木の階段が畳まれ、斜めの坂になっただけだ。
「う、うわわわ!!!」
 もともとの階段が急角度だ、滑りながら落ちていく面々。必死で壁に手をやり、突っ張ってスピードを抑える。
 着いた先は、書庫だった。光は一切なく、適度な湿度が保たれた地下室は本の保管に最適な環境だ。
 壁際に立てかけられた本棚の中、セーマンドーマンが描かれた背表紙の本なども見られる。
「これは……興味深いですね」
 景紫が本棚から古書を引っ張り出し、読み始めた瞬間。
「あ、ああー!!」
 しりもちをついて到着したライクは見た。
 本棚が回転して、本棚の代わりにリビングデッドが出現するのを。
「何よ……」
 読書時間を邪魔されて不快感を露にする景紫。
 ライクはひたすら景紫を――正確にはその後ろを――指差していた。
「後ろ、後ろー!!」
 景紫へ襲い掛かろうとしたリビングデッドだったが、流葉の雷の魔弾で肩を撃ち抜かれる。
 よろけたところを、景紫の黒影剣がトドメを刺した。二度目の死を迎えるリビングデッド。
「これで二人目か……」
 骸を眼下に呟く景紫。行きに使った階段は急坂に変貌しており、とても昇れそうにない。
「……合図のついでに3回吹いて、助けてもらいますか?」
 笛を手に、遼は苦りきった笑みを浮かべるのだった。


「わしの邪魔はしないでもらうで御座る」
 蘇芳の忍者刀が銀の煌きを残し、黒い影を斬り裂いた。
 胴が別れ、崩れ落ちるリビングデッド。
「……これでコスプレとかだったら、俺は切れるぜ」
 倒れ伏した死体を見下ろし、笛を1回吹く命。
 左回りの班は、廊下で鉢合わせたリビングデッドを難なく撃破していた。
 散らばっているのだから、掃討はやはり難しくない。
 雛菊は張り詰められていた緊張の糸を弛め、近くの襖を思いっきり開けた。
「おおっ、この部屋は凄いよ〜!」
「こんなのもあるんだ……」
 妹と共に興味深げに部屋を覗く颯。その部屋にはさまざまな壷が置かれていた。
 青磁器やら土でつくられた甕など、種類はさまざまだ。壷マニアでもいたのだろうか。
「壷の下に虫、いるかな?」
 雛菊はおもむろに部屋に入ると、自分の背丈ほどもある大きな壷を抱え上げた。
「もうちょっと注意して……うっ!」
 飛び出してくるゴキブリ達。流石に拒否反応を示す蘇芳。白日の下に晒されたゴキブリ達は逃げ場を求めて部屋奥へと消えていった。
「キャーーーー!!!」
 自分でやったくせに、慌てて部屋から逃げ出す雛菊。
「壷の中にはおらんじゃろうね……?」
「そんな訳……あるかも知れねえな」
 蘇芳の言葉を一笑に付そうとして、中国より伝わる蟲毒を思い出す命。
「そうなの?」
「ああ、蟲毒って呪術があってな」
 颯の問いかけに頷き、命が解説を始める。
「でっかい壷の中に、蟲をいっぱい入れるんだよ。餌も無いから、蟲同士は戦いあう。そうやって最後まで生き残った一匹の蟲は、恐ろしい毒を持つという……」
「甲虫王者かー!」
「違わい」
 襖の影に隠れ、顔だけ出す雛菊に速攻でツッコミを入れる蘇芳。
「蟲毒は中国から伝わった呪術で、陰陽師が式神に用いたとも言われておるが……ここらの壷はただの漬物のようじゃの」
 適当な壷の蓋を開け、それから鼻を摘む。
「すごいよ。楓、ほら、みてごらん……」
 颯も適当に大きな壷の蓋を開け、ぎこちなく笑って壷の中を指差す。
 壷の中では体育座りして獲物を待ち構えるリビングデッドの姿が――
 命がすかさず壷の中に炎の魔弾をお見舞いして蓋を閉める。そしてさっさと笛を吹いた。
「陽陰師が、こんなんになっちゃうとはある意味世も末だぜ」
 胡散臭い屋敷とその住人を目の当たりにし、そろそろ命はキレそうだった。

 左回り班の面々は、壷の部屋を後にして廊下に戻る。
 道なりに進むと、中庭に到着する。
「しかし、見事な桜じゃの」
 中庭、乱れ咲きといった風情の桜達。その中、桜の花弁に紛れてしまいそうな、桜色の髪をした女性の姿を発見する。
「きっと、あれが最後の一人だね。よーし、頑張るんだよっ!」
 ぐるぐると腕を回し、気合を表現する雛菊。
 一向は頷き合い、中庭へと降り、そして……
 緩やかな、笛の音が聴こえた。


「静かに眠ってください……」
 桜の木の下で、颯は手を合わせ静かに拝む。
 その桜の下には、二度死んだ者達の骸が埋められていた。
「来年の桜はもっとキレイになったりするのかなぁ」
 桜を見上げる雛菊。背後で、物々しい音がした。
「な、なんとか地上に戻ってこれましてよ」
 縁側の下から生えてくるウサギの耳。土まみれのくららだった。
「回転扉の向こうが脱出路になっていて幸いでしたよ」
 くららに続いて、体中についた土埃を払い落とす遼。
 縁側の下から這い出てきたのは、右回り班の面々だった。
「一体何があったんじゃ?」
「……詳しくは、花見でもしながら話しますよぅ」
 蘇芳の問いに、ライクは若干疲れ気味の笑顔を返した。
「さ、お花見しよう! お弁当から胃腸薬まで、しっかり揃えてるんだよ!」
 死者を埋めた桜とはまた別の桜、颯がビニールシートを広げて花見の準備を始める。
「ふ、そうだな……」
 縁側に腰掛け、桜を眺めていた祐衣も腰を挙げ、皆の輪の中へ加わっていく。
 桜の海に、笑い声はいつまでも木霊するのだった。


マスター:蛇宮幸恵 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2007/04/27
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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