迫る日に襲い来る不安


<オープニング>


●迫る日に襲い来る不安
「……はぁ。又……ダメ、かぁ……」
 とある街、とある街角。
 既に暗闇に包まれた空の下、その手に一枚の紙を握りしめた若者が一人……溜息を吐く。
 その紙に書かれていたのは、数週間前に行われた大学入試に向けた模擬試験の結果表。
 志望大学と思しき一番左方の所には、『D』と大きく明記されている。
 まだ不合格が決まった訳ではないが……後二ヶ月と少し。
 その気分は重くのしかかり、暗い気持ちへと誘わせる。
 とぼとぼと歩く彼……そこに。
『……へへ。みーつけたぜぇ♪』
 不敵な笑みと共に、暗闇の中から現れたのは赤髪と、ビジュアル系と思しき服装の男。
 そして、その手に握られたギターを鋭く、激しく掻き鳴らし、激しいビートを刻む。
「う……ぅ?」
 その音に苦痛の表情を浮かべる彼。と……その時。
 彼の前に、次第に現れ始めるのは、辞書がとてつもなく巨大化した様な姿に、手足は消しゴムとボールペンと言う……摩訶不思議な姿。
 そしてその姿が完全に具現化すると共に、メロディを聞いた男はがくり、とその場に倒れたのである。
 
「皆も既に分かってるかもしれへんが……今回も又、ナイトメア王・ジャックマキシマムが配下のナイトメアビーストが動き出してしもうてる。それを退治してきて欲しいのや」
 皆が集まると共に、神丘・崔(運命予報士・bn0103)は開口一番切り出した一言。
 とは言え、ナイトメアビーストの種類は様々な特徴と共に、何種類も居る。
「今回のナイトメアビーストは、『フリーダムファイター』アレックス・ラインや。彼は『抑圧された人の心から、フリーダムモンスターと呼ばれる怪物を作り出す』という能力を持っとる」
「アレックスのコピー達は、今各地でこのフリーダムモンスターを操り、破壊活動を行おうとしている。フリーダムモンスターを心から取り出された人は気を失い、目を醒まさなくなってしまうんや。それを止めるには、アレックスを倒すしか無いのや」
 そして崔は、続けてメモからナイトメアビーストの詳細情報を見て。
「つまり皆が戦うべき相手は、このアレックス・ラインと下僕となるフリーダムモンスターの二種類となる。それぞれの敵能力を説明させて貰うで」
「先ずフリーダムモンスター。その姿は辞書が人のサイズの巨大化した様な物で、更に手は鋭いボールペン、脚は柔軟性のある消しゴムと言う姿や」
「何処かファンシーな姿とは思うが、その実力は中々な物なのは間違い無い。辞書の身体は意外にタフな体力やし、鋭いボールペンの手は剣の如く様々な物を貫く」
「対しアレックス自体は、その手に獣爪を装備し、鋭い切り味で持って切り刻もうとしてくる。ただアレックス自体は他のナイトメアビーストと同じく、実力は一般的なナイトメアビーストと同じや」
「戦闘方法については、基本的にアレックスがフリーダムモンスターに指示を出し、フリーダムモンスターが前線に出て、自ら積極的に攻撃を仕掛けて来る」
「アレックスも機会に応じて積極的に攻撃を仕掛けて来る。ただ、アレックスを倒してもフリーダムモンスターは消えないんで、油断せん様に頼むな」
 そこまで言うと、崔は最後に取りまとめる様に。
「アレックス・ラインの破壊活動。それを止めなければ、奴等は全てを破壊しようとするやろう。今の所はまだ大きな被害やない」
「今の内に、なんとしても止めて欲しい……どうか、宜しく頼むな!」
 そう言って、皆の背中を軽く押すのであった。

マスター:幾夜緋琉 紹介ページ
 皆様こんにちは、幾夜です。
 
 今回相手にするのはナイトメアビーストの一人、アレックス・ラインと彼の呼び出したフリーダムモンスターの二匹になります。
 各能力については、オープニングに明記されている通りですが……特にフリーダムモンスターについては、そのファンシーな外観に対して実力はかなり高めに設定されています。
 ただ……下手な小細工は不要に付き、純粋な戦闘となりますので、参加者の皆様でよく相談し、作戦を組み立ててみて下さい。
 尚、戦闘場所人気の無い裏路地になります。余り大きすぎる音を立てるのは、少々危険かもしれません。
 なので、その点はプレイングを考える際の頭の片隅に入れておいて下さいませ。
 
 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。

参加者
毒島・毒子(フリッカースペード・b16226)
舞園・彩音(戦場の歌姫・b24404)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
真神・智尋(此花佐久夜姫・b41226)
風雅・晶(陰陽交叉・b54764)
黄金崎・燐(向日葵の花・b55478)
菱木・なな(牙は折れず・b57880)
アリアン・シンクレア(妖精姫・b58068)
シルヴィア・テスタロッサ(ブラムストーカー・b62958)
壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)



<リプレイ>

●不安定な日々
 平和の文字が似合いそうなとある町。
 そんな町に現れたナイトメアビーストが一人、アレックス・ラインを倒す為に集結した、10人の能力者達。
「アレックス……ですか。確か、ナイトメアビーストたちの中でも、武闘派な方でしたっけ?」
「ええ。フリーダムファイターのアレックス・ライン。とは言え……なんといいますか、当人もそうですが、出てくるモンスターも正しくフリーダムですねぇ」
 舞園・彩音(戦場の歌姫・b24404)に、肩を竦めて伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が苦笑。
 アレックス・ラインの召喚するモンスターは、モンスターにはならなさそうな物。
 今回の辞書+文房具が巨大化した様な外見も然りだが、有象の姿は生物だけに限らず、無生物が巨大化した様な姿。
 正しくそれは、今回狙われた青年が、辞書……引いては試験に対し、陰鬱たる想いを抱いている事に他ならない。言わば今回のゴーストの原因は……青年の心。
「こういう心の闇、不安が悪夢として具現化する訳ですか……」
「人の心から怪物が産み出される。フリーダムモンスターが強力なのは、それだけ強い想いから産まれたからかも、と……そう考えると、本当に怖いのは、人の心なのかもしれませんわね?」
 真神・智尋(此花佐久夜姫・b41226)に、黄金崎・燐(向日葵の花・b55478)が己のモーラット、章姫をぎゅっと抱きしめて呟く。
 対し壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)は。
「とは言え大学受験……それで四年はおろか、未来も決まりかねない大事な時だもんな。そりゃ上手くいかなきゃ、荒れる事もあるよな」
 溜息を吐く彼女に、正しく同じ立場の高校三年生、シルヴィア・テスタロッサ(ブラムストーカー・b62958)と、風雅・晶(陰陽交叉・b54764)は。
「本当いけ好かない奴だよな……というか、受験生な俺の所に来られても困るぜ」
「はは……そうですね。私達も考えてみれば同じ立場……私たちがターゲットにされていたかもしれない訳ですからね」
 むしろその方が好都合……とも思う。受験と言う物は……ある意味一番陰鬱たる気持ちが溜まりやすいのもある。
「受験勉強が大変なのは、私も判りますよ。今、大学一年の姉の受験勉強を見てたから判ります。一生懸命頑張って、夢を掴もうとしているんです。だからこそ、只でさえストレスが溜まりやすいんですから……世界中の学生の敵、徹底的に叩き潰さなければ!!」
 一層智尋が熱く語る。
「えっと……まあまあ、智尋先輩落ち着いて?」
「そうですね……落ち着いて下さい」
 菱木・なな(牙は折れず・b57880)と、晶二人に肩を叩かれ、息を吐いて気持ちを整える。
「あはは……すみません、ちょっと熱くなってしまいました」
「いえいえ。まあ……私も確かに、物事が上手く成功しない人達の弱みに付け込む、アレックスの様な卑劣で姑息な手段……到底赦せる物では無いと思いますし。手加減の必要はありませんよね?」
「そうですね……まぁ」
 一端瞑目し、同級生である、ターゲットの写真をポケットにしまう晶。
「無差別に破壊を撒き散らすナイトメアビースト……決して許せる行為ではありません。必ず夜、叩き潰しましょう」
「そうね……人々の抑圧された心から悪夢を取り出すナイトメアビースト……その力で人々を苦しめるなんて、絶対に赦されないわ! 必ずや、打ち倒しましょう!」
 アリアン・シンクレア(妖精姫・b58068)が声を上げると、彩音、洋角も。
「確かに青年にとっては危険な存在ですし、さっさと倒すとしましょうか。皆様、宜しくお願いしますね」
「ええ……彼が出て来たという事は、つまりナイトメアビースト達も追い詰められている証拠だと思います。この調子で企みを潰し、もっと追い込みましょう! 彼らの野望を阻止する為にも!」
 そして他の仲間全員も頷いて、能力者達は町を歩き続けるのである。

「どうやらこの辺りみたいねぇ……」
 地図を見比べ、立ち止まった毒島・毒子(フリッカースペード・b16226)。
 表通りからは数段入った、市街地から抜け出る、殆ど人通りも少ない抜け道の一つ。
 昼から夕方になり始めた今でも、その道は少し薄暗い。
 見渡す限りでは、街灯の類も殆ど見受けられず、夜とも鳴ればかなりの暗闇に包まれる事だろう。
「これは……襲撃には正しく持ってこいの場所ですわね……」
「そうだな……それに抜け道という事は、知ってる人なら通り掛かる事も十分にあり得る訳か……面倒だな」
 アリアンに溜息で答えるシルヴィア。
 とは言え……まだ青年が現れる迄に時間はある。
「では、早速始めるとしましょうか。カラーコーンに工事看板……一通りの物は用意して貰いましたから」
 ななの言う通り……用意してきた道具は、結構壮観。
 先ず出口側に対し、工事中に付き立ち入り禁止の看板を掲示。
 そして一緒に迂回路を示す矢印看板を少し前方に立てる。
『……もきゅ〜?』
「……あ、章姫。そっちに行ったらダメですよ?」
『きゅ?』
 気ままに浮かぶ章姫。燐の言葉にきょとんとした顔で答えると……ほんわかした空気を感じる。
「ふふ……ほら。今日も一緒に頑張りましょうね?」
『もきゅ!』
 胸に抱きしめられ、ほっこり笑顔。そんな仲の良い二人に毒子と真麻が。
「本当二人共、姉妹みたいよねぇ」
「そうだなぁ……本当、仲良しだよな」
「ふふ……ありがとうございます」『もきゅん♪』
 笑顔で答える両者。
 それはさておきとして、出口を封鎖した後、続けて入口側も一部準備。
「最初から立ち入り禁止にしといてしまうと、入って来れなくなっちゃうし……後、これも準備してきたわ」
 と、アリアンが手にしたのはラジカセ。
 再生を押すと、聞こえてくるのは騒がしい工事音。
「これ、近場の工事現場で録音してきたんですよ♪」
 微笑みながら言う彼女に頷きつつ、洋角が。
「これ位で大丈夫でしょう。これで何とかなると良いですねぇ」
 来るか来ないかは、後は時間を待つばかり。
「では、警戒しつつ姿を隠すとしましょう。ああそうです、皆さん。灯りは忘れない様にして下さいね?」
「了解」
 頷き合うと共に、一端その場を離れる能力者達。
 分散し、人目に付かない様に身を潜め……青年が迷い込む深夜の時まで、静かに待ち構えるのであった。

●狂気の如く
 すっかり陽も落ちた夜中。
 待ち伏せている裏路地は、ぽつりぽつりと点在する、小さな街灯の明かりがほんの僅かに下方を照らす。
 ただ、行く先の道程を指し示す以外、殆ど明かりの役割もしていない様な街灯の下を、溜息混じりに歩く青年の姿。
『……はぁ……』
 何かに絶望した様な彼の姿は、何処か……小さくも見える。
「……来ましたね。皆さん、曲がったら速効で……入口を封鎖しますよ」
 ななが確認するが如く告げる。
 いつもの帰り道なのだろう、特に迷う事無く曲がり角を曲がる青年。
 即座に後を追いかけ、入口を用意しておいた看板で封鎖。そして迂回路を指し示し、青年の後を追いかける。
『……へへ、みーつけたぜぇ♪』
 何処か奇妙な服装で以て、青年の前に現れるアレックス。
「……ん?」
 気づき、顔を上げた青年に、即座にギターを激しく掻き鳴らすアレックス。
 心が震え、胸を押さえてその場に跪く彼。それと共に……具現化し始める、辞書の姿に消しゴムの足とボールペンの手という、奇妙な姿のフリーダムモンスター。
「へへ……上手い具合だぜ。それじゃ早速壊すか」
「待ちな!」
 テンション最高潮の彼の元に、声を上げる真麻。
 居並ぶ能力者10人……ぐるり見渡すと、ヒュゥと口笛を吹き鳴らすアレックス。
「ほぅ、良く来れたじゃないか」
「当然です。貴方に何を壊したいのか知りませんが、私達には守りたいものがあるんですから!」
「そうよ。知ってる? どんな悪夢があろうとも醒めない夢は無いのよ! 私達が、この馬鹿げた悪夢から、みんなを起こしてみせるわ!!」
 燐、アリアンの二人の言葉に、くっくっく、と笑いながらアレックスは。
「ほぅ、ならやってみろよ? この爪で八つ裂きにしてやるからよ!」
 闇夜の中に鈍く輝く獣爪。切れ味鋭い事は間違い無い。
『……きゅぴ〜……』
 章姫が燐の後に隠れると、燐は。
「え、えっと。気持ちは分かりますけれど、頑張りましょう?」
 と声を掛けて励ます。
「へっへ、どーした? 俺に怖じけ付いたかぁ? ならこっちから行くぜぇ。行けぇっ!」」
 笑いながら爪を振り翳し、指示を出すアレックス。
 フリーダムモンスターは両手を振り上げ、威勢を見せつけたかと思うと、駆ける。
「……悪夢ですね、学生にとっては」
「そうだな……別に、倒してしまっても構わんかな、アレ?」
 智尋にシルヴィアが頷きつつ、モンスターを指さす。
「そうね……と言うより、どっちも倒さなきゃダメでしょ」
「そうだな……我・紅血ノ契約ヲ以テ・悪意ノ精ヲ・此ノ身ニ宿ス……っと。悪夢なら一人で見ていろ。それに付き合うつもりも暇も無いんでね」
 毒子に頷きつつ、己を魔弾の射手で強化するシルヴィア。
 併せて。
「日頃お世話になっている勉強道具を攻撃するのは心苦しいですが、超電脳モード……起動!」
「氷ノ精霊よ、我が身を守る衣となれ……」
 智尋がラジカルフォーミュラー、アリアンが雪だるまアーマー等、各自強化をしつつ前衛と後衛に別れる。
 モンスターは対し突進……その攻撃を智尋、晶、シルヴィア、ななの四人前列が受け止める。
「奴は頼みます!」
 晶が後衛に叫び、頷く後衛陣は。
「私の歌、聞いて下さい……!」
 先ず彩音がアンチウォーヴォイスを奏でるが……効いた様子は殆ど無い。
「殺る気満々の様だな。音が出せれば思う存分暴れられるが……しかたねぇ。この毒で、少しは大人しくしろよ!」
 真麻がダークハンドで攻撃。
「うぜぇ、行くゼ!」
 ひょいっと回避し、そのまま同じく駆けるアレックス。
「指揮官自ら突っ込んでくるだなんて、感心しないわねー。ま、歓迎するけどね♪」
 微笑む毒子の暴走黒燐弾。
 モンスター含めダメージを受けるが、それに対して怯む事も無く。
『オラオラぁ!』
 獣爪で以て、モンスターと共に近接攻撃。
 確実に体力を削られるが、すぐに。
「大丈夫ですか? 章姫!」
『もきゅー!』
 章姫がぺろぺろ舐めるで体力回復。
 それでも不足する分に対しては、更に燐がヤドリギの祝福を加える。
 続けてのターン。強化を施した仲間達が一斉に攻撃シフト。
「さあ、舞おうか。死出の舞を……!」
 シルヴィアがスラッシュロンドで二人纏めて攻撃。そして。
「私達は先ずアレックスから倒しましょう!」
 彩音の指示に従い、後衛はその攻撃をアレックス一極集中。
 対し前衛は、両者の攻撃を抑え込む事で、後への攻撃を確実に妨害する。
 中々上手く攻撃出来ない状況に、数ターン経過した頃、アレックスが。
『クソッ! 五月蠅い奴等だぜ! 纏めて殺す!』
 ステップで半歩下がり、必殺のナイトメアランページ。だが。
「来るわよ!」
 それより僅かに早くアリアンが叫び通達。射線退避する事で直撃を避ける。
「ナイスアシスト♪」
 毒子の声に手を軽く上げて答えつつ。
「大人しく倒れてくれれば痛い目に逢わずに済む物を……仕方ないですねぇ」
 洋角からの最後通告も、アレックスは。
『へっ、誰が!』
 全く聞く耳非ず。
 臆する事もなく彼は暴れた。
 しかし、状況が圧される様になれば、瓦解は早く、数分のうちに崩れ落ちる。
 そしてアレックス無きモンスターは、ただ無差別に暴れる事しか出来ず、能力者達の連携の前に太刀打ちする事は、流石に難しかった。

●絶望の先
「ふぅ……。先ずは皆さん、お疲れ様でした」
 深い息と共に、皆へ労いの言葉を掛ける洋角。
「そうだな……皆、お疲れ」
 真麻がひらりと手を上げて答えつつイグニッションを解除すると共に、他残る仲間達も同様にイグニッションを解いていく。
 そして……既に跡形も無くなったナイトメアビーストと、フリーダムモンスターの亡骸の方へ向いて。
「Amen……今度は良い夢、見れるといいよな?」
 彼による犠牲者へ冥福を祈るシルヴィア。
 残る仲間達も、その冥福に祈りを捧げる。
 そして……一通り祈りを捧げた後、端で転がる受験生の青年を見て。
「……正しく悪夢でしたね。でも、この方が再起不能になるのを防げましたから、良かったとは思いますが」
「そうだな……銀誓館も高校までだし、俺達にとっても他人事じゃねぇよな……」
 智尋に真麻がぼんやりと一言。
「そうですね……姉を見てるんで、本当人ごととは思えません……とはいえ、このアレックス……ちょっとした不安を突いて来るなんて、タチが悪いですね、本当に」
「そうねぇ。ま、それが彼らなりのやり方って言うんなら仕方ないけど。それを私達が一つ一つ潰して行かなきゃならないのよねぇ」
 更に智尋の言葉に毒子が肩を竦める。
 能力者として、困っている人を助けるのは当然の事。
 とは言え、今回の様な人の心の弱い所は世の中に多数存在する訳で……一つ一つ潰す事は難しい。
「まあ……何にしましても、一つ一つしっかり対応するしか無い訳ですね。地味ではありますが……しっかり頑張っていきましょう!」
 ぐっ、と拳を振り上げる彩音に、皆頷きつつ。
「では、後片付けをして帰りましょうか」
「そうだな……余り長居しても怪しいし、早めに退散するとしようか」
 晶、シルヴィアの二人の呼びかけに頷き、コーンやら看板を手分けして撤去していく。
 その間……ずっと眠りについている青年。全て片付け終わっても……まだ目は醒まさない。
「……この方は、無事に目を醒ますのでしょうか……?」
 不安げに燐が呟くと、ななが。
「時間が経てば自然に目覚める……と思います。だからと言って、今何か出来る訳でもありませんしね……」
「……」
 すっ、と燐は青年の元へ接近。
 息はある。呼吸も別に荒いという訳ではない。
 しかし、時折苦しそうに顔を歪め……受験がぁ、試験がぁ……の寝言を呟く。
「……きっと……寝不足なのもあるのでしょうね。後数ヶ月で試験ともなれば、無理をし始める時期ですし」
 晶がぽつりと告げる……燐はそうですか、と瞑目し、青年の頭を軽く撫でて。
「……勉強も大事ですが、余り思い詰めすぎて自分を苦しめないで欲しいですね……」
『もきゅぴ♪』
 そうだよ、と言わんばかりの章姫の笑顔。
 そして更に洋角も。
「まあ……諦めたらそこで試合終了。とは言え不戦敗にならない様、気をつけて頂きたいですね」
 と告げ、上着を彼に掛けてあげる。
「……それでは、行きましょうか」
 と彩音の声に頷き、その場を去りゆく能力者達。
 去り際、胸ポケットに真麻は……すっと潜り込ませた菓子。
『前向きに行けよ!』
 と書かれた願掛けのチョコに、能力者皆の心が表されている様な、そんな気がした。


マスター:幾夜緋琉 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/10/28
得票数:楽しい3  カッコいい14  知的1  せつない1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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