星見峠の夜 〜「神さま、ぼくを助けてください」


<オープニング>


 晴れた日の夜、星見峠でお祈りをすると神様は願いを叶えてくれる。
 多くの人々が星見峠で願い事をし、神様に最後の希望を託して峠を下りていった。
 一体、どれだけの人が願い事を叶えて貰っただろうか。
 どれだけの人がその言い伝えを信じていただろうか。
「神さま……、ぼくを助けてください!」
 彼の祈りは切実だった。
 つらいいじめを受けて、もう心は砕けてしまいそうだった。
 もしかしたら叶わないかもしれない。
 でも彼にはもう他に頼るものも無かった。
 星見峠から見上げる空は雄大で、ちっぽけな自分をすべて包んでくれているかのようだった。
 ひゅう……。
 風が吹いて、彼は祈りの聞き届けられたことを感じた。

『目を覚ませ……、
 そんなの嘘に決まってんだろ。自分の弱さを棚に上げて虚構にすがる馬鹿が』

 背後でやけに低い声が呼び掛け、彼は振り返った。それは自分よりも年下に見える男の子の姿をしながら、声は大人よりも低かった。
「だれ?……」
 まだ何もされていないのに、いじめてくる友達よりも怖いと感じた。
 友達は人の痛みを知らない酷い奴だった。
 今、目の当たりにしているこの不気味な少年は、もっと確信的な凄みを持つ存在に思えた。
「か〜みさまだよぉ♪ ぷぷぷぷっ!」
 誰がいつ『神=願いを叶える存在』だなんて決めたんだ? え? え?
 ずいぶん都合が良すぎやしないか???
 大体なぁ、お前をいじめるようにしてんのは神なんだよ。分かるか?
 神が全てコントロールしてんだろ。おもしれぇんだよいじめられて苦しんでるお前が!
「……」
 胸がキリキリと切り裂かれるように痛む。いじめを受けた時に似てる。

「じゃあ、……ぼくはどうして生まれたの? 本当に死んだほうがいいの?」

 口にした自分の死という言葉があまりにも切なくて、涙が溢れ出した。
 黒い渦が彼を飲み込んだ。
 希望を託した最後の砦は溢れ出る涙と共に脆く崩れ去り、彼の心は奈落の底へと落ちていく。
 母の優しいぬくもりが脳裏をよぎり、帰りたいと心が激しく泣いた――。
 すると奥の方で声が聞こえる。
「あ〜あ、こんな子産むんじゃなかった……!」
 それは紛れも無い母の言葉。友達に脅され、母の財布からお金を盗んだ時に言われた言葉。
 ――そうか。生まれちゃいけなかったんだ……。
 行きついた所は赤黒い靄(もや)に巻かれ、沢山の人々が倒れて呻き声をあげていた。
『ようこそ星見峠へぶははははっ!』
 ついに彼は悟った。
 救いなど無いと。
 すると、自然と頬が引き攣り、皮肉な笑いがこみあげてきた……。

「皆さん、お集まり頂いてありがとうございます」
 藤崎・志穂が依頼の内容を語り始める。
「星見峠(ほしみとうげ)という場所があるのですが、そこでは神様が願いを叶えてくれると言い伝えられているそうです」
 そして近頃、地縛霊がそこに現れて訪れる人を次々と特殊空間へ閉じ込めて殺しているという。
「未来視に小学生の男の子が特殊空間へ飲み込まれていく場面をみました……」
 その子をどうか助けてあげてくださいと志穂は懇願するように能力者達を見渡した。
 地縛霊は夜に言い伝えを信じて祈る人を感知すると、背後に現れる。そして信じる心を挫いて希望を失くさせ、特殊空間の中で地獄を味わわせてから殺す。
「敵は人の心に打撃を与えて弱らせる事を主としていますので、実質的な戦闘力はそれほど高くはありません。でも、男の子を守りながらの戦いになりますし殺された人達の中からリビングデッドとなって襲い掛かってくる者もいますので、決して簡単ではないと思います」

「私たちが彼の生活環境に直接立ち入る事は出来ません。でもせめて特殊空間で彼と接する間の、皆さんの言葉や行いをとおして彼の心に何かプラスの力を注いであげることが出来たなら……」
 よろしくお願いしますと、志穂は丁寧に頭をさげて話を終えた。

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参加者
芹沢・彼方(銀葬祈鋼・b05664)
早乙女・陽菜(召喚絵師・b32003)
氷川・小雪(白の記憶・b46013)
桜井・琥霧(赤い誘惑・b51066)
緋坂・燐(氷想華・b53619)
夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)
藤原・香恵(白糸の旋律奏でる和琴巫女・b76879)
クェンティーナ・アシェット(レゾンデートル・b78370)



<リプレイ>

 神様……お願いです。どうか、あの子を助けに行かせて下さい。
 少年、助けに来たぜ。
 ゴーストハンターがあなたを助けに来たわよ♪
 どうか、もう一度笑顔を……。
 ……大丈夫、今助けに行くから、だから、死なせはしないよ。絶対にね。
 守れる強さを持てますように……。
 ボーズ……死なねェでくれ……。
 ……男の子は死なせはしません!
 幸せになってほしいから、だから戦う、よ。

「ボーズ!」

●星見峠の夜
『クッヒッヒヒイ……どうだ絶望のお味は? サイコーの気分だろ。何もかもが醜いよなァ?』
 地縛霊は少年の心が怨みに染まり始めていくのを感じて嘲り、嗤った。踏み躙られた信心は殺意に変わり、信じた自分を冷たく切り捨てた。少年は大切な心の宝箱を自ら打ち壊しに懸かった。無慈悲に残酷に。愛……夢……希望……人の善意を信じる心……輝くものは残らず潰す。自らの全てと全世界を否定して。
「ハッ……アハハ……」
 ……モウ何モ信ジナイ……神サマナンカイラナイ。全部ブッ壊ス……一生怨ンデヤル。

「―――!!!」

 ……? 上ノ方カラ声ガ聞コエる。何故カ必死な呼び声――。
「……ダレ?」
 アノ声ハ……、ぼくを呼んでるの?
「助けに来たよ……キミの事はわたしたちゴーストバスターズが絶対守るから」
 ごおすと、パスターズ?
「へへッ」
「悪い幽霊などを退治する者……というところかしら?」
「あれは神様なんかじゃない。悪魔や悪霊の類だ」
 知らない人の声が、ぼくに話しかけてる。……あいつ、神さまじゃないんだ。
「私に従う蟲たちよ、この子のためにも光を放って」
 凛々しい女の人の声で暗い場所に光が浮かんだ。傍には変な格好をした人達が何人も。
「怖がらないで、私たちは君を助けに来たんだ」
 助けに……?
「大丈夫。必ず、あなたの事を守ってみせる」
 ……ぼくを……。
「一人で良く頑張りましたね。私たちは神様ではないですけど助けに来ましたよ」
 少年は自分の胸に今までずっと堰き止められていた何かがどっと流れ込んで来るのを感じた。
「この場は、俺達に任せろ」
 芹沢・彼方(銀葬祈鋼・b05664)の瞳にラジカルフォーミュラの印が現れる。
「でもな、最後はおまえが自分の力で戦わなきゃいけないんだ」
 そして彼は抜き身を放ち、敵の懐へ走った。
「神を騙り命を奪う悪霊め……貴方に掛ける情けは無いと知りなさい」
 静かな語気の内側に怒りを宿し、氷川・小雪(白の記憶・b46013)が彼方に続く。
「死んだ方がいい人なんていないよ。キミが死んだらお母さん、きっと悲しむよ」
 一番歳の近そうな赤い目をした女の子がぼくの瞳を覗き込んだ。寂しそうな顔を残して悪霊に向かって行く。彼女の言葉で母の後ろ姿が思い出され、複雑で切ない感情が胸を刺す。グシャッと自分でもよく分かんない表情に顔が歪んだ。
『あ〜あ、お前が生まれやがったせいでママ〜はお前が死んじまっても嫌な思いをしなきゃあいけない……。ホント迷惑な存在だな……』

 最初から居なかった事にしようぜ。……お前なんてさ。

「彼の事を、何一つ知らない人が勝手な事を言わないで下さい……!」
 緋坂・燐(氷想華・b53619)の叫ぶ声を地縛霊は無視した。しかし少年の耳は聞いた。
『今楽にしてやっからよぉ』
 累々と倒れている屍が次々と何かに吊り上げられるように動き出し、少年を狙って襲い掛かる。
「危ねェ!」
 夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)が身を挺してリビングデッドの凶器から少年を庇った。
「ボーズ、死なねェでくれ。自分を死んでいい存在なんて思うな……俺達はお前を護りてェからここに居んだよ!」
 ――こんな言葉をかけてくれる人が今まであったろうか。心に流れ込む暖かな激流は、無意識の内に閉じようと働き掛ける自らの固い扉をみるみる溶かしていく……。

「無理しないで下さいね」
 藤原・香恵(白糸の旋律奏でる和琴巫女・b76879)が癒し、吹き荒れる桜井・琥霧(赤い誘惑・b51066)のブラックヒストリーが死屍を巻き込んで切り裂く。
「萌えないゴミは、燃えちゃいなさい!」
 早乙女・陽菜(召喚絵師・b32003)は少年を楽しませるために戦闘をコミカルに演出した。
「SDヒーローのみんな、頑張って!」
 彼女がロッドで宙をなぞれば、具現化したイラストが暫しの間動き出して屍共をやっつける。その様はまさしく魔法でも見ているかのよう……。
 幾度と無く空想し、憧れた光景がそこには再現されていた。
「ハァ、すごい……!!」

「神様を名乗るなんて……とんでもない、の」
 クェンティーナ・アシェット(レゾンデートル・b78370)の赤い目が地縛霊を見詰める。
『かぁ〜みなんかクソ喰らえだァ! 何の役にも立ちゃしねぇ……』
 信じる奴は足下掬われるってなぁ!! ぶへへへっ。
『死ねぇ……!!!』
 クェンティーナの手先でペンが走る――。
「……キミ達はこうなる運命、だよ」
 大量のマンガ原稿が舞い上がり、ゴースト達の末路を描く。
「嘘ばかり、酷い事ばかり、そんな事言うの、許せない……消えて」
『そうそう。そうだよなぁ……邪魔な奴、都合の悪い奴は消えたらいいよナァ? お互いそう思ってんだよ。それで自分は正義ヅラしちゃって。立派だね〜!』
 オレもお前らが許せない。だから消す。……正義だよなぁ?
「俺は悪で構わん。この手で大切な者を葬った男だ……今さら正義など名乗る気は無い」
 彼方の拳に迷いは無い。渾身の一撃は狙い違わず地縛霊の頬にヒットした。
『……いるいる、そういう人生悟っちゃいました系の奴。そう言いながら自分は正しいと思ってる偽善者共。カッコイイネ〜』
「悪意しか吐けないのなら口を閉じなさい。私はそんな言葉に惑わされません」
 執拗な地縛霊の悪口雑言に小雪は語気を強める。彼女の一撃が地縛霊の鳩尾を穿ち、敵の喉笛が擦れた音を鳴らした。

(「がんばって、お姉さんたち! こんなヤツらに負けるな!」)

 少年の心に再び小さな火が灯ったとき、彼の記憶がある日の父の言葉を思い起こさせた。
「偉いぞ! もうお前なら何でも一人で出来るな?」
 誇らしげに「ウン!」と返事をする自分だったと記憶している。
 何でそんな事を思い出したのかはよく分からなかったが、その時彼の頭の中にはその言葉が何度も繰り返された。

「人を惑わし、死をもたらす外道……お前の運命、今ここで断ち切ってやる……!」
 彼方の容赦ない強烈な拳が幼な子の姿をとった悪魔に加えられる。
「私の手に掛れば、どんな絵も一瞬で描き上げられるわ!」
「……自分に攻撃されて、みる?」
 クェンティーナも陽菜と同じ魔法の絵を操り、リビングデッド共を退けた。
「おまえの呪いは、巫女の名にかけて砕いてみせますわ!」
 優美なる香恵の舞が能力者達の士気を支え、神也は常に少年の傍で身を挺してまでも彼を必死に守った。
 恐ろしい表情をした地縛霊やリビングデッドへ果敢に立ち向かい、リアルに負傷しながらも打ち負かしていく人達。これがTVやショーのような見世物の類でない事は明らかだった。
「存在を否定される事が、どれだけ心を抉られるものか……痛いぐらい、よく分かる。だから、あなたは絶対に許さない」
『ヘッ……「あなたはゼッタイゆるさな〜い♪」バカが死ね!!』
 地縛霊の攻撃は激しさを増した。

「君はこうして敵に背を向けずに戦ったことはある?」
 能力者達の戦いぶりに見入る少年へ琥霧が問い掛けた。少年はきょとんとした顔を向けて黙っていた。
「あなたは自分の生きる理由を他人に預け過ぎてるわ」
 そんな彼へ陽菜が言葉を継いだ。
「あなたの人生はあなた自身のもの。他人の言葉ばかり気にして生きて後悔するようなことがあったら他人を恨むつもりなの?」
 その声は妥協や言い逃れを許さない迫力があった。
「あなたが自分の生きている価値や理由に悩むように私だって日々悩んでいるのよ。あなただけのことじゃない! だからこそ自分の生きる理由や価値を求めて努力し生き続けるのよ。私は漫画やアニメが好き……ひとはヲタクと馬鹿にするわ。でも子ども達に夢を与える仕事にもなる。そして作られた作品は自分の生きた証明にもなる。あなたも探してみたら」
「……」
「ちょっと厳しいこと言っちゃったかもしれないけど、これが現実なのよ」
 少年は項垂れた。
「孤独が痛いのはわかる……それもただの孤独じゃなくて、言葉の刃が心を突き刺すのね。でも、戦わなくちゃいけないんだよ。傷ついたことのない人なんて、きっとこの世にはいないから」
 琥霧がそっと少年の肩に触れて陽菜の思いを代弁した。涙がつと、少年の頬を流れ落ちる。
「じゃあ、ぼくにも強くなる方法、おしえてよ……そのナイフ、いっこ貸してよ……」
「ううん、強いっていうのはケンカをする事じゃないの。辛いことに負けない心の強さだよ?」
「じゃあ、どうやったら心は強くなれるの?」
 少年は少し混沌とし始めている様子だった。

 能力者達の力によって襲い掛かるリビングデッドの群れは間もなく掃討された。残るは尚も激しく攻撃を加えて来る地縛霊一体のみ。
『クソクソクソクソッ……卑怯者め、弱いものイジメだ! 結局他人を力で捻じ伏せる奴が正義ヅラかよ!! 最高だぜクソバカ野郎共、全員滅べ!!』
 喚き散らしながら呪いの弾丸を吐き出し、周囲の能力者達に被害を及ぼす。しかしこの小さな地縛霊に八人を一挙に相手取って返り討ちにするほどの力はそもそも無く、終焉の時は遠からず訪れる。
「一番弱くて卑怯なのは、もちろん君だよ」
 許せないのは、君、神を名乗って人の弱みに付け込む悪魔だ。
 ――琥霧のナイフが地縛霊の懐へ滑り込む。
『ォゴ…………グギギギギッ……!!!』
 幼な子は憎しみに満ちた形相で琥霧を睨み付け、最後は地縛霊自ら琥霧のナイフを掴んで体の奥底まで突き刺した。敗北を認めるくらいなら自ら果てる事を選んだのだろうか――。

 こうして、地縛霊の討伐は完了した。

「終わった……ね」
「悪霊は退治しましたよ。さあお母さんが心配しないうちにお家に帰りましょう」
 少年は浮かない顔をして俯いた。きっと母の事でまだ気持ちが晴れないのだろう。
 小雪はそっと近付き、少年の前に膝を折って静かに諭すように話しかけた。
「もしお母さんに怒られてしまったのならまずは謝りましょう。正直に事情を話せばきっと許してくれますし、困っているなら助けになってくれますよ」
 彼は何も答えない。
「全てを話すのは怖いし、恥ずかしいと思うかもしれない。でも、それも勇気の一つだと思う」
 燐には男の子の心の痛みがよく分かる。でもだからと言って同じ傷を舐め合うつもりもないし、本当の意味でどれだけ傷付いたかは彼自身にしか分からない。
 ただ、それでもこれだけは彼にも伝えてあげたい。
 燐は彼の両肩をしっかりと掴んで、まっすぐ瞳を見つめて、一言囁いた。
「あなたは、何一つ悪くない」
 それは彼にとっても衝撃的な一言だった。
 心に何度も響いて、胸に溢れる思いが涙となって流れ出す。少年は激しく泣いた。
 彼の胸に去来するのは、自分が犯した小さな過ちや心に溜め込んでしまった醜い思い……。胸を張って自分は正しいと主張できない自分なのに、自分ですら責めた自分なのに、何の理由も必要とせずに許し、そして受け入れてくれた言葉に少年は心打たれ、苦しくて嬉しくて泣きじゃくった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」
 お母さん。
「まずはお母さんにごめんなさい、しよう? そしたらきっと分かる、よ」
「ウン……ウン……」
 クェンティーナの言うことにも少年は素直に頷いた。
「ボーズ……負けんじゃねェぞ。時に泣いて、時に逃げて、時に泥啜って……それでも生きるんだよ」
 えんもゆかりも無い自分を体を張って守ってくれた神也には感謝の言葉も見付からないほどに。言葉にならない泣き声で「ありがとう」と、彼なりに精一杯伝えた。
「……これで、彼が少しでも変わってくれれば本望ですわね」
 この場は自分が出張って何か言うべきではないと感じていた香恵もひとまず胸を撫で下ろす。
「なぁ少年、神様なんて居ないし、居ても何もしちゃくれないんだぜ? 現実を動かすのはいつも人間で、自分の何かを変えるのはいつだって自分だ。自分を救えるのは、自分だけ。時には立ち向かう勇気も必要だ。いじめられたら……相手を一発、正面からぶん殴れ。でもな、いじめる側にはなるなよ?」
「ウン……」
「次はお前の番だな。頑張れよ、少年」
 彼方も、少年の頭をガシガシと撫でてやる。

 頼らない事ではなく、自らの意志で立ち向かおうとする姿勢――それこそが大切だと示してくれた彼等の思いを、少年も近く気付いてくれると信じよう。

「そろそろゴーストバスターズは次の仕事に向かうよ。じゃあ元気で、ね……」
 赤い目の女の子達は黙祷を捧げ、彼に別れを告げる。

(「神さま、助けてくれてありがとう」)

 ぼくも強くなって困ってる人を助けてあげられる大人になりたい――少年はそう固く決意し、広がり行く光の中に溶け込んでいった。

●壊れない宝箱
「……ト……ヒロト…………ヒロト!! ……ヒロト!!」
 暗闇に温かな感触と母の声。
「お母、さん……」
「ああ、ヒロト気が付いた!! ごめんねごめんね、お母さんヒロトにひどい事言っちゃった……――」
 懐かしい母の胸の柔らかさと洗濯されたセーターの良い匂い……、お母さんがぼくに謝ってくれてる。……ぼくも謝んなくちゃ。
「お母さん、ぼくの方こそお金ぬすんでごめんなさい」
 言った後、無性に泣けてきて母と一緒になって大泣きした。
「ぼく、ずっといじめられたんだ……でも……言えなくって……」
 いっぱいいっぱい泣いたんだ。
 もう、死にたくなって、さいごに星見峠に行ったんだ。
「お母さん、知ってる?」
「なぁにヒロト……?」
「………神さまってねぇ………本当にいるんだよ!」


マスター:楠司志雄 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/11/14
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