あたちのおかーたん、さがちてくだたい


<オープニング>


 ぐいっ。
 ショールに不自然にかかる重力に、サトミは怪訝そうに振り返る。
「……えぅ」
 ベージュのショールの端を持ち、遠慮がちに見上げてくる幼子にサトミは頬を緩めた。
「どうしたの?」
 しゃがみ込み黄色い帽子の影の潤んだ瞳に視線を合わせ微笑みかければ、強く結ばれていた小さな桜の唇が解け、頼りなげな声音を奏でた。
「おかーたんがいなくなりまちた……」
「迷子?」
「…………あい」
 こくん。
 舌足らずながらも丁寧にしゃべろうとする所に感心しながら、サトミは幼女の姿を改めて観察してみる。
 うす青色のスモックに名札はない。幼稚園児が家にいないと制服など一々覚えていないので、この付近の子かどうかはわからない。
「おかーたん…………」
 考えるサトミが黙った事で不安になったのか、少女は寂しげに俯いた。
「ああ、大丈夫。一緒に探そうね? 名前は?」
「……りみ、でつ」
 帽子から零れるおかっぱ髪を揺らして、少女は辿々しく名乗る。
「じゃあ、りみちゃん。どこでお母さんがいなくなったか、教えてくれる?」
「あっちでち」
 サトミは幼女の手を引き指さす方へと歩き出す――それがまさか、自分の死につながるとは夢にも思わずに。

「おねーたん、おっぱいぺたんこー」
 ぺちゃぺちゃ。
 剥き出しになった胸元に血だらけの掌を這わし、りみは無邪気に嗤う。
 幼女から伸びる白蛇は、水っぽい音をたててサトミだった物を貪り続け、その度にりみはうっとりと瞳を細めた。


「みなたん、リリツが現われまちた……って、絶対わざとだと思う、この口調」
 星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)15才男。舌足らずキャラには無理がある性別とお年頃。
 ええっと……。
 迷子の幼稚園児という人の親切心につけ込む許しがたきリリス、その退治が今回のミッションだ。

 リリスには重要な特徴がある。それを無視すると逃げられてしまうので注意が必要だ。
 1つ、接触するまではできるだけ固まって行動するコト。
「リリスは離れていても能力者の方向がわかるから、包囲網なんて敷くと敵が一杯いるって警戒しちゃうよ。ただし皆が固まっていればわかるのは方向だけで、人数まではわからない」
 1つ、囮役は1人だけ。
「リリスは目視で能力者の素質があるか……美味しいご飯かどうかって見分けてる。で、1人の能力者が間近にいるとリリスの方向を知る能力が働かなくなるんだよね」
 つまり1人が近づいておけば、包囲する事が可能になるわけだ。

「彼女のテリトリーはとある町の川のそば」
 接触は簡単だ。
 人の顔がわかりづらくなる黄昏時、能力者が1人で通りがかれば迷子の振りして話しかけてくる。
 あとは適当に話を合わせ一緒に歩いていれば、頃合いを見て「あ、おかーたん!」と手を引っ張り走り出す……自分の餌場へと。
「こいつが餌場にしてるのは、ここ」
 千鳥が地図で示したのは工場が解体されたあとは放置されている荒れ地。転がる廃材の影に隠れていれば待ち伏せからの奇襲も容易そうだ。
「囲まれたら逃げるために、必死に応戦してくるよ」
 幼女が出来るのは、近くの相手への駄々っ子パンチと蛇での遠距離攻撃だ。蛇はダメージが低いものの毒が少しうっとうしい。
 とはいえ所詮はリリス。よほど油断しない限りは大丈夫だ。
「勝てないって思ったら、情に訴えて命乞いしてくるから……大丈夫とは思うけど、惑わされないようにね?」
 リリスのお約束というヤツだ。
「そんなもんかな……あー……」
 話を締めかけて千鳥はふと付け加える。
「なんかさこの幼女、胸については一家言あるっぽいよ? こんな外見でお姉さんに乳無しとか、どういう了見だろうね」
 ……どうでもいい情報だった。

マスター:一縷野望 紹介ページ
 おうちに帰ると鍵がかかってました、泣いてドアを叩きました、4才の頃です。
 一縷野・望(いちるの・のぞみ)です。よろしくお願いします。

◆備考
「命乞いをする幼女さんに言ってやりたい事」や「胸についての悲哀、こだわり」などPCらしさの演出に重きを置くのがオススメです。
(手順を誤らなければ、戦闘で負ける事は無いです)

◆幼女戦闘能力
・のいてくだたい! 駄々っ子パンチ
 近接単体 ダメージ
・へびたんびよーんでち!
 20m単体 ダメージ+毒

◆幼女性格
 舌足らずながら丁寧にしゃべろうとする健気系。子供なりに礼儀正しい、そこを誉めると喜ぶ。
 窮地に陥ると幼さを武器に情に訴え逃げようとする。
 女の人の胸にはケチをつけずにいれないのは、コンプレックスの現われか。

 以上。
 皆様のプレイングをお待ちしています。

参加者
長谷部・未緒(朝霞の胡蝶・b14152)
風雅・月媛(月の光は黒猫となりて戯れる・b55607)
雪乃城・あやめ(風孕む灰花・b56494)
舞城・笑弥(運命に抗う娘・b59830)
山科・月子(ディープブラッド・b61466)
刀桐・霧華(ニャーちゃんと只今忍者修行中・b65497)
アリオール・ミラーシ(蜃気楼に潜みし鷲・b65943)
霧島・縁(夜空を巡る風・b70139)
桃宮・紫戟(五線譜の綺術師・b76106)




<リプレイ>

●待ち伏せ
 閑散とした廃工場跡地を初冬の冷たい風が吹き抜ける。
 ここは今や幼きゴーストの遊び場である、死者が出る不謹慎な遊びの。
「幼き姿のリリス……恐らくはその姿で死した少女」
 桃宮・紫戟(五線譜の綺術師・b76106)は海を思わせる愛器【Mr.Sea Horse】の弦を撫で、リリスと成り果ててしまった少女の生前を愁う。
「お母さんとはぐれたなら甘えさせてあげたいと思うけどね……通じてる?」
「OKよ、途切れたらよろしくね」
 風雅・月媛(月の光は黒猫となりて戯れる・b55607)と携帯電話でやりとりをするのは囮役の山科・月子(ディープブラッド・b61466)。
 りみが現われる場所から普通に歩いて15分程度。ただ相手任せの道中では時間は読めない、だから接触を伝えられるのは心強い。
「ちゃっちゃくで死んじゃったこと考えるとすごくかわいそうだけど……」
 まっすぐな黒髪が、憂い顔で俯く長谷部・未緒(朝霞の胡蝶・b14152)にあわせてさらり素直な音をたてる。
「未緒ちゃん」
「あ、はい」
 頷き蒼天を瞼に隠せば未緒の体が黒燐の光に変じ月子へと吸われていく。
「行ってくるわね」
 ……一人じゃない心強さ。
 余裕ある婉美な笑みで手を振り背を向けた。
「悪意の塊のウソはほうっては置けませんね」
 子供姿をするのはやり難いかもしれないが……。
 腕組み嘆息、雪乃城・あやめ(風孕む灰花・b56494)は更に気になっていた事を口にした。
「さて、地の喋りとかあるんでしょうか?」
「あたちはわざとはなちてないよー!」
 しゅぴ!
 舌足らずで元気よく挙手したのは、刀桐・霧華(ニャーちゃんと只今忍者修行中・b65497)。ちなみに予報後千鳥からは「天然は正しい」と言われたらしい。真ケットシー・ガンナーのニャルと共に忍者ルックでびしっと決め!
「ぺたんこ、ですか」
 レースをあしらったコットンワンピースの胸に手をあて、舞城・笑弥(運命に抗う娘・b59830)はむむっと唸る。
「……ん、あるにはあるんです。あるんです」
 言い聞かせるように2度言いました。
 足元の真ケルベロスのヤツフサに動物好きの霧華が興味津々。撫でたそうな眼差しに笑弥は頬を緩める。
「迷子のフリをするリリスか……たとえ子供の姿でも、倒さねばな」
 中性的なアルトヴォイス。
 静逸な佇まいの彼女はアリオール・ミラーシ(蜃気楼に潜みし鷲・b65943)。研ぎ澄ました刃も思わせる冷静沈着さだが、驚くほど小……言うと殺されるらしいのでやめておく。
「罪の無い人をたくさんその手にかけたリリス、赦すわけにはいかないね」
 気遣わしげなアリオールの瞳に片手をあげて応え、霧島・縁(夜空を巡る風・b70139)は柔らかだがきっぱりと言い切り、あやめも頷いた。
「舞城さん、依頼で一緒になるのは初めてだね。よろしくね」
 結社『天の岩戸』仲間の縁と笑弥はお辞儀した後で、今更さ感に吹き出した。
「子どものなりして、女性の胸に一家言あるなんて……」
 携帯から伸びたイヤホンで囮の動向を伺いつつ月媛は憤然。
「全くもって腹が立つわね」
 もちろんマイク部分は握り声は通さない。
「人の悪口は許せませんよね〜えぇ、全然こちらに関係ないですけどね〜?」
 関係ない関係ない、そう繰り返すあやめの目は笑ってない。
 和服着ると胸って中々目立たないし、その……なんだ、ね?
「胸が無いのは、あまり気にしたことはないのだが」
「やはり大きいほうが良いんでしょうか」
 向かい合ってアリオールと笑弥はむぅと唇をへの字に下げる。そして目が向くのはこの場の男子2人。
「胸のサイズかー。ん〜ボクはサイズじゃなくて……」
 均整の取れたプロポーションの誰かさんを思い浮かべようとして「そんな事は後々」とかき消す縁。
「ええ、そうですね」
 鎮魂歌。
 少女を送る旋律を思い描いていた紫戟はゆうるり微笑み顔をあげた。
「……ッ! リリスに接触したみたい」
 探るように目を細めた月媛は携帯を切断すると、その身を黒猫に変えた。
 喫驚に目を開く霧華の前、一気に踏み切り黒猫は素早く木の上へ。身を潜め少しでも遠くをと目を懲らす。
「にんじゃたるもの『隠密行動』はだいじだよ! ニャーちゃん」
「にゃ!」
 霧華もニャルを連れ崩れた廃材の影に。
 戦場に慣れたアリオールもお手の物、入り口付近に既に隠密済みだ。
「これからどんなに早くても15分、ですか」
 時計を確認したあやめは、後衛の縁と笑弥には立てば布陣を完了する木陰を勧め、自分は前後衛にスイッチしやすい中間点の壁裏を選ぶ。
「貴女の行く先は、私が切り拓きます」
 相まみえたその時は。我が相棒の刃にて、貴女の敗北という結果へと。
 イグニッション。
 囁きと共に背を向けた紫戟を若紫のコートが包み、やがて彼の姿も廃墟へ沈み、消えた。

●おねーたんといっちょ
 ――携帯電話が途切れる少し前の夕暮れ川沿い。
 川からの冷たい風で弄ばれた海老茶の絹糸を指でまとめ、月子は帰途を急ぐように歩く。
 ぐっ。
 そんな彼女のジャケットが後ろから引っ張られた。
 罠に掛った! そんな素振りはおくびにも出さず振り返りしゃがむ。
「どうしたの?」
 鼻の頭を赤くして目をゴシゴシ擦る幼女を安心させるように、優しい微笑み。
「おかーたんがいなくなりまちた……」
(「……りみちゃん、ですね」)
 唯一残った聴覚が拾うあどけない声に、憑依する未緒は集中して心を傾ける。
 万が一勘づかれた時の符丁『遅くなるって……』が響かないのを祈りながら。
 小さな胸を不安でぱんぱんに膨らませて、幼女はじっと言葉を待っている……ように見える。
「大丈夫。一緒に探してあげるわ」
「ほんとでちか?!」
 えくぼが浮かぶ無邪気な笑みに、月子は頭を撫でながら手をさしだした。
「私は月子。アナタのお名前は?」
「りみ、でち」
 華奢な指がからみ「つちこおねーたん、ありがとー」と頭をさげる。
「ふふ、礼儀正しいのね。偉いわ」
「えへへー」
「どの辺りでお母さんとはぐれたの?」
 問い掛けながら、自然な流れを装いしっかりつなぎ直すのは、りみの逃亡を防ぐため。
「あっちでち、たぶん……」
 てこてこと歩きながらきょろきょろ……。
 立ち止まったり早足になったりと巧みに迷うりみ。黄昏から闇へ移りゆく中、黄色い園児帽だけが妙に目立つ――人が加速度的に減っているから。

「にゃぁ!」
 戸惑うように左右を見回す月子の姿を捕らえ月媛が短く鋭く鳴いた。待ち始めてから約1時間、いよいよかと能力者達は息を詰める。

「こんなところにお母さんがいるの……?」
 不安を滲ませ月子は一端立ち止まる。工場跡が見えたので仲間に姿を確認させるためと、もう1つは……。
「あー、おかーたぁあん!」
 りみの気持ちを逸らせて自ら罠の中に飛び込ませるためである。
「待って、りみちゃん」
 突然駆け出すりみ、しかし月子の手は離さない。
 当然だ。
 おいしいおいしいご馳走なんだから!

●檻
(「――さて」)
 廃材置き場で腹ばいになり潜むアリオールの翡翠が眇められた。
 視線の先には満面の笑みでこちらに走り込んでくるピンクのスモッグ。
 刻印。
 もう逃さない、絶対に。
(「ミッション開始だな」)
 刻印が過ぎた刹那、音たてず転がり出てアリオールは入り口を塞ぐ。
 ぺきん、ぺきぺき……ぱきり。
 檻に蓋をされたと気づかずに、弾むように割れたガラスを踏みしめりみは往く。月子を引くその力は既に一介の幼女とは思えぬ強さとなっていた。
 だが。
 くすり。
 それより更に強い力で立ち止まり、月子は唇を薄い三日月の形に曲げる。
 足元には、黒猫。
 ざわり。
 淡いシャンプーの香りの髪は――血を吸いし鉄の色。
「触るくらいなら良いけれど、それ以上は遠慮しておくわ」
「…………なにを、でちか」
「胸、よ」
「!?」
 喉がひゅるり。
 彼らの本性に勘づいた時には――遅い!
「ヤツフサ! お願い!」
「ガウッ」
 カードより再び招聘した獣に笑弥は、切れない赤の糸を結ぶ。ヤツフサは小指の爪の糸で流線型を描き、小さな体に襲いかかった。
「ふぁ?!」
「見た目はまったく子供ですね……」
 涼しさを越えた零下の声と共に、獣に絡まれた小さな体は苦の煉獄に飛ばされる。
「ひ……ひぃぃ……いっ」
 耳を塞いでしゃがみ込み震える肩に頬に刻まれるは、あやめが手繰った絶陣よりの苛み。
「ゴースト相手に、手加減なんてしないよ!」
 縁は眦に指をあて毅然と叫ぶ。淡く穏やか紅眼が何処までも深く鮮やかな紅に染まる――そう、躰巡る貴種の血の如く。
 黒猫のいた場所には、優しげな瞳を称えた女性が立ってた。
「ぬくもりをプレゼントしてあげる」
「え……やぁあでつぅう!」
 ぬくもりとは言うにはあまりに強い炎獄を、月媛は至近距離から少女に叩きつける。
「ままぁ、熱いでつぅうう……」
 しゃん……!
 そんな音が耳元で鳴った気が、した。
「ここからお前を逃がすつもりはないぞ」
 少女の腕に纏い付く、こちらは赤い糸などというロマンティックなものではなく闘気の鎖。どこまでもどこまでも、追う者としての矜持と共にアリオールは鎖を引いた。
「ひどいのでつよぉ! おとながいぢわるでつかぁ?!」
 だんだん。
 体全体で地団駄を踏みながらりみは怒りに目を剥きわめく。だが彼女が動ける時は……まだ。
 月子の肩口が輝きを放ち像がぶれた刹那、蒼のリボンがふわり。
「ご、ごめんね……」
 憑依をといた未緒は、既にボロボロの小さな胸にあおのしるべで炎を送り込む。
「つちこおね……」
「アナタの鳴き声、聞かせて頂戴」
 ――奪われる快楽を与えてあげる。
「やんやぁぁ!」
 奪うだけだった幼女は今、髪に絡みとられ蹂躙される恐怖をその身に叩き込まれる。
 地面を転げ顔をあげた先にはギター携えた紫戟の藤の眼差し。
「おにーたん……たつけてくだたい……」
「神が仰せる! 魂が叫ぶ! 『そなたを逃がす勿れ』と!!」
 その穏やかなや面からは想像もつかない紫戟のジョグはりみを痺れさせた……体の動きを奪う程に。
 大きく息を吸い、懸命にもがくりみに水手裏剣と銃弾の雨あられ。
「あた、いたたた、いたいでちっ」
「人をだまちてたべちゃうような子にはおちおきだよ!」
「にゃ!」
 鋼糸を握り込みキリリと凛々しい霧華とニャルだ。

●口は災いの元
「もうわるいことはちまちぇん」
 更に攻撃を受けつつも冷静さを取り戻したりみは、さっそく命乞いを開始する。
「だからゆるちてくだたい……」
 ぺたんこ座りですりむいた膝小僧を見せつけ鼻啜り。
「貴女は本当に、ある日お母さんとはぐれて……探してる途中に亡くなったのかもしれない」
 それはもうわからないことだけれど。
 慈愛をのせた眼差しで紫戟は純粋な思いと共にりみを殴打。
「君にかける慈悲なんて無いよ。罪無き人の命をいくつ奪ったのかな?」
 紅に凍えるような冷淡をのせて、縁は言い切った。
「ひゃっ……ふぇえん!」
 号泣するりみの前に立つのは、近い年頃の霧華だ。
「つらくてないたりちてもつよくなれないよ!」
 厳しい修行に耐える自身を浮かべ攻撃を緩める気は無いと言い切る霧華に、りみはむーっと下唇を出して膨れた。
「あんたみたいなナイチチにいわれたくないでち」

 びきっ!

 あ。
 今、何人かの額にあ・お・す・じ・が!!
「……却下です」
 元より命乞いを許すつもりはなかったもののと、あやめは七つ星を呼び寄せ少女の体をまずは石へと。
 ……石に変えてから散々色々叩き込むつもりだよ、この人。
「取り合えず、この先まだまだ成長ある身なので気にしませんが、えぇ、気にしませんが不愉快には変わりないんですよ?」
 左手に吊り下げた灯篭、それで殴られると痛そうですよ?
「……まぁ、言われる事は判ってたけどね」
 月媛さんのプロポーションはバランス良くて素敵だと思います。
「じゃあ、いうでち。ぺたん……」
「だからって、実際に言われて冷静でいられるほど、悟りきっては、いない、のよ」
 これ以上言わせじと月媛は愛器で思いっきりぶん殴り開始! さすが詠唱兵器、壊れません!
「なんだか殺気が溢れてるわよ?」
 月子さんのツッコミも届いてないようです。
「――ブラも要らない小娘に言われる筋合いは無いよ」
 顔にやな感じの影が落ちた笑弥は、リングの光でりみの胸を灼く。
「その口ぶりだと、さぞ将来に自信があるようで」
 ……そんな素敵な将来は、もう来ないけれどね。
 ぼそりと吐かれた毒に、ヤツフサが攻撃するのも忘れてこっちを見ているぞ!
 はっ。
「ヤツフサ! 怖くない、怖くないよー!?」
 うん、釈然とはしないがヤツフサもりみに爪を立てるぞ!
「その。胸のこととか、人の気にしてるとこ言う子は、いけないと思うんです……!」
 ざわっ。
 未緒の得物に纏っていた黒燐蟲が強い輝きを、放った。
「きにちても大きくならないでちよ?」
「み、未緒はこれからだもんっ」
 じんわり。
 あ、泣かせた。
 でも黒燐蟲纏って、未緒さん本気でお仕置きする気だ!
「かわいければなんでもゆるされるなんて大まちがいだち。よの中あまくないよー!」
 許されてない許されてない。
 ふるふる必死に首振るりみに、霧華とニャルのコンビネーションがずびしっと決る。
「胸はあった方がいいと思うけれどバランスよね?」
「そうそう、女性の胸はサイズだけじゃないよ」
 余裕の月子と少年の主張な縁。どっちもこの件については充実してるっぽい。だからこー、周りの荒れ狂う面々には届かない。
 でもまぁ攻撃の手を抜く気は毛頭無いわけで。血の競演、紅飛び散り少女を飾る。
「胸は、関係ないぞ……?」
 皆が荒れ狂う中、胸を撫でつつもアリオールは平静を保っていた。
 逃げようと試みるりみにもう一度、至近よりタイマンチェーンを放とうと伺う、が。
「でもおねーたんのクセに、背がちっちゃいでち」
「……」
「背がちっちゃいから出るとこ……いた、いたいでちぃいい!」
 アリオールさんに身長のお話しをすると、刺されます。
 L24型リボルビング・ブレイカーからの槍が、高速で! 連続で!! 刺す刺す刺す!
「嘘じゃないもん本当だもん、未緒のお姉ちゃんもぼんきゅっぼーんだもんっ!」
 未緒さんは、まだまだ中1、これからですよ!
「その足らない口調も作りでしょ? 人のこと言う前に自分を直しなさい!」
「ちゃんとしゃべれるわ……ぐぎゅ」
 噛んだ。
 やっぱり舌足らずだからか、あやめに灯篭で後頭部を叩かれたからか、もうどっちでもいいよ。
 石と化しもうボロボロの少女を、メロウなロックが包み込む。
「貴女を『還るべき場所』へと送る!」
「!」
 ――見開かれた瞳が最期に見たのは、海の蒼。

「りみどの……うまれかわったらいい子になってほちいな!」
 霧華の純粋な声に、一部の面々は正気に返り同じように祈る。
「あたちのむね、しゅぎょうをつんだら大きくなるかなー?」
 それは近くにいるお姉さんに聞いてみ……ない方がいいよね、うん。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/11/17
得票数:楽しい18  笑える6  カッコいい3 
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