最後の悲鳴


<オープニング>


 都内から車で2〜3時間。ここ「ドリームパーク」は、80年代に建てられたテーマパークである。
 現在に至るまで、来客数は減少の一途を辿り、園内は休日であっても閑古鳥が鳴く。
 休止中の大型アトラクション・売店も目立ち、典型的な末期症状と言える。
「私は待ってるから」
「だめだめ、皆で行かなきゃ意味ないって!」
 とある平日の午前中、そんなパークを訪れている物好きな若者の一団が居た。
 彼らが入ろうとしているのは「ファイナルホラーラビリンス」と呼ばれる広大なお化け屋敷。全盛期のパークを支えた人気アトラクションであり、今でも辛うじて営業中である。
「雰囲気あるなぁ……」
「うわあっ!?」
 廃病院を模した建物内は、非常に完成度が高く真に迫る物が有る。
 全盛期と比べてアクター(お化け役の人)は激減しているが、出そうで出ない事がかえって恐怖を誘う面もありそうだ。
「もう無理、もう出る」
「つっても、非常口はついさっき通り過ぎたし、次の所までは行かないとな」
 そのうち女の子の1人が限界に達したようで、リタイアを宣言。
 各所に脱出路が用意されてはいるが、順路の逆走は禁止されている。暫くは進むしかないのだが……
「本当に無理!」
「あ、ちょっと!」
 パニックに陥った女の子は、薄暗い廊下を闇雲に疾走。
 立ち入り禁止を知らせる看板さえ、今の彼女には見えていなかったようだ。
「はぁ……はぁ……」
「調子が悪そうだねお嬢さん」
「ひっ!?」
 逃げ込んだ小さな個室で声を掛けてきたのは、白衣の男。
「あ、あの……もう外に出たいんです!」
「退院したいのかね? だったら……オペだ」
「え? やっ、いやあぁぁぁ!!」
 男が取り出したのは鋭利なメス。
 そして、手術は始められた。

「お化け屋敷……わたしは正直言ってあんまり得意じゃないわ。べ、別に得意じゃないってだけで、怖いとかそう言うんじゃ……」
 柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)はそんなお約束の前置きの後で、早速説明を始めた。
「今回の事件はテーマパーク……遊園地が舞台よ」
「遊園地……」
「の、お化け屋敷ね」
 小さく溜息を零すのは、速坂・めぐる(真烈風少女・bn0197)。こちらも余り得意では無さそうだ。
「廃病院を模して作られた大きな建築物が、まるごとお化け屋敷になっているのね。来客の減少などで、実際に入れるエリアは大分減っていて、今では進入禁止になっている所もかなりあるみたい」
 お化け役のアクターや、仕掛けの整備をする人員の維持も困難なのだろう。廃墟を模して作られた建物だが、実際に廃墟に近づいていっていると言った所か。
 ともかく、そこで生命の危機に瀕している一般人を救い、ゴーストを退治するのが今回の任務だ。

「今回退治して欲しいのは、立ち入り禁止エリアになっている手術室に出没する地縛霊よ」
 メインの地縛霊は、メスを自在に操る白衣の男。近距離での素早いメス捌きに加え、遠距離に対しても手裏剣の様にメスを投げつけてくる。
「加えて、麻酔医地縛霊と看護師地縛霊が合わせて4体。彼に付き従っているわ」
 麻酔医はマヒや眠りと言ったバッドステータスを、看護師は仲間の攻撃力を高めたり治癒する能力を、それぞれ持っている。
「一体一体はそんなに恐ろしいゴーストではないけれど、油断は禁物ね」
 何と言っても、今回は一般人の命が懸かっている。
「あなた達と若者の一団は、殆ど同じくらいのタイミングでこのアトラクション前に到着する筈よ。どんな手段を使うかは任せるけれど、ゴーストの退治が終わるまで、彼らがお化け屋敷に入らない様にしたいわね」
 彼らもまた、この遊園地に来た最大の目的はこのお化け屋敷であろう。
 簡単に入る事を諦めるとは思えないが、上手く口車に乗せるか納得できれば、入るのを後回しにさせる事くらいは出来るかも知れない。

「で、えっと……目的の手術室は結構奥にあるから、そこまでは皆で一緒にお化け屋敷の中を歩く事になるわ。皆一緒なら大丈夫でしょ?」
「……え、ええ」
 笑顔で念を押す莉緒とは対照的に、顔色の優れないめぐる。
 本物のゴーストと戦う前に、偽物のゴースト相手に消耗しなければ良いが。

「さ、それじゃ行ってらっしゃいっ! 退治した後は、遊園地で遊ぶのも良いかもね」
 メリーゴーラウンドや観覧車、子供も乗れる小さいジェットコースター等、古典的なアトラクションに関してはそれなりに稼働しているようだ。

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参加者
立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)
宮代・月音(岩砕き・b18821)
白神・楓(月光の黒騎士・b46213)
桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)
神楽・真(中学生真符術士・b58483)
小川・創始(フランケンシュタイン見習い・b62164)
裏佐・朱鷺恵(白の拝み屋・b74082)
巌・智速(藍染羽織の呪言使い娘・b77502)
NPC:速坂・めぐる(真烈風少女・bn0197)




<リプレイ>


 冬晴れのこの日。比較的暖かく、遊園地で遊ぶには良い日和となっていた。
 しかし平日の「ドリームパーク」に人の姿は極めてまばらで、従業員以外を殆ど見ない。これでは閉園も時間の問題と言ったところか。
 一行は案内板を頼りに、問題の「ファイナルホラーラビリンス」へと向かう。
「私は待ってるから」
「だめだめ、皆で行かなきゃ意味ないって!」
 能力者たちが巨大お化け屋敷にたどり着くと、それらしい若者の集団が何やら楽しげに騒いでいる。予報士の説明にあった若者達に間違いないだろう。
 仲間の目配せを受けて、巌・智速(藍染羽織の呪言使い娘・b77502)がこくりと頷く。
 ――ヒュッ。
 彼女の放った導眠符は、ラビリンスに入ることを怖がっていた女性の背中にピタリと張り付く。
「お、おい!?」
 崩れ落ちる女性を慌てて支える仲間達。
「む、そこのお嬢さん気絶してしまってるな……休める場所に連れて行ってあげたほうがいいぞ」
 タイミングを見計らい、声を掛けるのは白神・楓(月光の黒騎士・b46213)。
「大丈夫か!? まきちゃん?」
「ううっ……あ、あれ?」
 仲間達に強く揺さ振られて呼びかけられると、間も無く目を覚ます女性。何が起こったか理解出来ていない様子で辺りをきょろきょろと見回す。
「貧血かしら、少し休んだ方が良いのでは?」
「そういえば救護室がありましたね……」
 心配そうな表情で、宮代・月音(岩砕き・b18821)と神楽・真(中学生真符術士・b58483)もそう提案。
「そうだね、ちょっと休もうか」
「う、うん」
「冷たいドリンクで一息いれてからでも余裕で入れるでござるよ♪」
「ですね、これだけ空いてるなら後で来てもすぐ入れるだろうし」
「よし、んじゃ行こう」
 裏佐・朱鷺恵(白の拝み屋・b74082)の言葉に、若者らも頷く。今は仲間の体調の方を優先する事で異存はなさそうだ。
 若者達は、一同に軽く会釈をしながら休憩出来る場所へ向かっていった。
 これで任務を妨害するものはない――いや、強いて言えば、もうひとつ障害があった。
「……身も蓋もない話をしよう。所詮は作り物だし襲っても来ない。なんにせよ俺らもついているから大丈夫だ」
 さすが年長者の立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)は、お化け屋敷を苦手とする仲間を励ますべくそんな言葉を掛ける。
「うん。大丈夫大丈夫、お化け屋敷のお化けなんて作り物なんだから怖くないよー♪」
 桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)も持ち前の明るさで勇気付け。
「うん、いや……別にね、怖いとかそういうんじゃないの。ただね、ああ言ういかにも脅かそう脅かそうみたいなね、そういうのがね……」
 一方速坂・めぐる(真烈風少女・bn0197)は、まるで別人の様な歯切れの悪い言い訳を並べ立てている。
(「お化け屋敷ですか……死ねますね。よりにも寄って中腹ですか……出てきたアクターさんを殴り飛ばさなければいいですが」)
 また、小川・創始(フランケンシュタイン見習い・b62164)は平然とした様子で居るが、意外にもお化け屋敷は大の苦手。
 能力者たちは恐怖心と、ゴーストに打ち勝つべく、恐怖の迷宮へと足を踏み入れるのだった。


 注意事項やリタイヤしたくなった場合の事等、簡単な説明を受けた後で一行が通されたのは、待合室。
 スクリーンに映し出されるのは、かつてこの場所が病院として使われて居た頃に起きた(もちろん設定)、凄惨な出来事や痛ましい悲劇等を題材にしたイメージ映像の様だ。
「ううっ……これから病院に入るってのに……」
「それが狙いでござるな」
 それは所詮導入に過ぎないのだが、怖いものが苦手なメンツにとっては、じっと見ているのも耐え難い。これからその現場に行かねばならないと考えれば尚更だ。
 その後、問診室で問診票を記入したり、レントゲン室で撮影を行ったりと言うくだりが有るのだが、ひとまず割愛。
 恐怖耐性が限りなく低くなった所で、いよいよ実際に院内へと入ることになる。
「手術室だけでなく、お化け屋敷全体を依頼だと思えばいいんです。まあ、本物と違って退治するわけには行きませんが……。いつも通りに行きましょう」
「大丈夫。おばけはどうせ偽者だし、命までは取らないでしょ」
「え、えぇ……そうね」
「ですね」
 真と楓の言葉も、完全に恐怖心をぬぐい去るまでの効果は期待出来そうにない。何しろ、入場者を怖がらせる為に作られたアトラクションなのだ。
 各自手渡されたのは一本のペンライトのみ。暗闇の中では、いかにも心許ない。
(「大丈夫大丈夫、目をつぶっていれば音だけならっ……」)
 智速に至っては、目を閉じて怖い物は見なくて済むと言う発想。お化けに追いかけられた時にどうやって逃げるかが課題ではあるが。
「ゴーストはこっちも反撃出来るから良いのよ。でもこう言うお化けって、どうする事も出来ないじゃない? だから……」
「こっちは殴ったりしたら大変だもんね」
 不安感を打ち消す為か、口数が多くなる一同(のうちの数人)。必死に恐怖心を抑えながら暗く長い廊下を歩むが……
 ――がたんっ!
「う、うわぁぁー! やっぱり怖いぃー!?」「ぎゃああぁぁ!!」
 僅かな物音や風にも、悲鳴を上げて飛び上がる一行(のうちの数人)。
 ――ばんっ!
「あ゛あ゛あ゛ぁぁ!」
 挙げ句の果てには、勢いよく開いたドアから血まみれの男が襲いかかってくる。
「こう来ますのね!」
 見事なタイミングで登場するお化けに感心しつつ、楽しげな月音。
「たんまたんまー! 殴っちゃだめー!?」
 右ストレートを繰り出しかけた創始の腕を、真夏がしがみついて止める。
 その後も人体模型が動き出したり、霊安室の死体が起き上がったりする古典的な物から、一行が通過するのを感知して効果音が鳴ったり、物が動いたりと言った機械仕掛けの物まで、様々なギミックが絶え間なく能力者達に襲いかかる。
 静寂が訪れても、いつ物陰から何が出て来るか解らない恐怖心と戦わねばならず、全く気が休まる暇が無い。
「ねぇ、ここってさっきの所だよね」
「どうやら戻されたようだな」
 その上、分岐を間違えたせいか先ほど通った道に戻されてしまった。
「も、もうリタイアしたい」
「もうちょっとだよきっと。さっきのナースステーションを左に行けば……」
「二度目だから、もうそんなに怖くないでござるよ」
 折れそうになる、と言うか折れかけた心を必死で奮い起こしながら、再び廊下を歩む一行。
 通常、お化け屋敷を運営する際にネックとなる要素の一つに、アクター側のマンネリが挙げられる。一日に数え切れない程同じ演技を繰り返すわけだから、どうしても作業的になるのは避けられないのだと言う。
 しかしこの遊園地は訪れる人間が極端に少ない為、限られた出番に集中できる。
 加えてアクターもベテランのみが選抜して残されたと言う経緯もあって、他の遊園地のお化け屋敷とは比較にならないくらい高い「脅かし」を期待出来るのだとか。(「ドリームパーク」ファンのブログより)
「ここか……」
 先頭を歩く治秋のペンライトが、「立入禁止」の看板を照らす。すぐ横には「順路→」と書かれているが、能力者たちは敢えてその場所へと立ち入る。


 その場所――手術室は(もちろんアトラクションとして)使われていた当時のままらしく、やや埃が積もっている他は十分現役で通用する様に思えた。立ち入り禁止と表示するだけで、厳密に封鎖されていなかったのもそのせいだろうか。
「巌さん、到着しましたよ」
「もう目開けても大丈夫?」
「なんだか体中が痛いんだけど……」
 早くも疲労困憊の様相を呈する能力者たちだが、赤い手術中の明かりが点る。
「調子が悪そうだねお嬢さん」
 姿を現したのは、返り血に汚れた白衣を纏った男。
「悪いわよ、アンタのせいで……落とし前はつけさせて貰うわよ!」
 本物のゴーストより偽者の方が怖いと言うのは奇妙だが、ともかくイグニッションをした能力者たちに恐れは無い。
 一方、ゴースト側も血まみれの看護士や麻酔医が姿を現し、役者が揃う。
 作り物の廃病院で、ゴーストと能力者の戦いは幕を開けた。
「闇はわたしの呪いで祓わせてもらうよっ」
 智速の手のひらに、小さな光の塊が浮かぶ。
 そこから広がった光は手術室を包み、戦うに最適な光量を確保した。
「事前に正体が分かっているゴーストなら、あまり怖くないですわね」
 やや前に出ながら、漆黒の闘気を纏う月音。
「イグニッションしてしまえば怖くないですからね」
「てぇーい、胡散臭い手術なんて御免なのデスっ!」
 創始は両手のグローブに白燐蟲を纏わせ、ファイティングポーズ。その後方では、魔方陣を展開する真夏。
 整然と陣形を整えてゆく能力者達。
「オペならあの世でどうぞ。お呼びでないんでな!」
「……これより偽医者地縛霊除去の術式を開始する……と」
 次いで先手必勝とばかりに、黒炎を纏った明星夜朱を振るう楓。同時に治秋も断罪オーラの力を宿した拳を繰り出す。
 差し当たりの標的は、何かと厄介な看護師達だ。
 ――ザシュッ! ドゴォッ!
「ぎゃうぁっ!」
 断末魔の悲鳴をあげながら、もんどり打って倒れる看護師達。
「何をしている、メスだ!」
 その間にも、医師達は残りの看護師からエンチャントを受け戦闘力を高めてゆく。
「麻酔を開始します」
 ボンベの栓を開く麻酔医。
 ――シュァァァ。
「そんなものっ」
 めぐるの呼び起こした浄化の風は螺旋状にうねり、能力者達を襲う強烈な眠気をすぐさま吹き飛ばす。
「よーこおーぎ、七星☆活殺! でござる♪」
「爆ぜろ、調伏の茨よ」
 目には目を。朱鷺恵の七星がゴーストらの身体を石化させてゆくと同時に、茨の領域を展開する真。みるみるうちに戦いの主導権を奪う。

「あんたのせいで、ここごと呪いで潰れちゃうよ、良いの?」
「ふはははっ、心配は要らない。私のオペに不可能はない」
 智速の問い掛けにも、まともな答えが返ってくる事はなかった。
「娯楽の場を穢す者は、わたしの言葉で呪うよっ」
「纏めて吹き飛びなさい!」
 問答を諦めた智速が紡ぐのは、呪の力を籠めた呪文。これに呼応して、闘気により形勢された巨大な手裏剣が月音の手から放たれる。
「先生、このままではっ」
「落ち着け、冷静に対処するのだ」
 まともに行動する事も出来ずに崩れ落ちる看護師達。麻酔医は再び麻酔ガスを噴霧するが……
「今ならロハでござる♪ 存分に見惚れなされー、でござるよ」
「……支えます。どうぞ存分に」
 朱鷺恵の舞と、真の病魔根絶符によって殆ど意味を為さない物となる。
「次は麻酔医だ。行くぞ」
「さぁ、暴れますよ!」
 再び黒炎を振るう楓と、時間差を置いて麻酔医の死角に飛び込む創始。
「なっ……ぐはぁぁっ!!」
 鋭い斬撃に加え、脇腹に炸裂したフックに、思わず膝から崩れ落ちる麻酔医。
「ええい不甲斐ない。しかしオペは続行するっ!」
 ――ババッ!!
 投げナイフの様に正確に放たれるメス。その刃は能力者達を傷つけるが、それも所詮は虚しい抵抗。
「真夏さんの雷撃で倒れるがいいのだー!」
 真夏が放つ蒼き雷弾と、治秋の拳が最後の地縛霊を強かに打ち据える。
「ぐうっ……まだだ、まだ……」
「アトラクションに相応しくないものには、退場して貰います!」
「グアァァァッ!!」
 苛烈な集中砲火を耐えるだけの体力はもはや残されておらず、執刀医ゴーストもついには倒れた。
「……術式終了」
 赤いランプは消え、手術は終了したのだった。


「これからが本当の戦闘ですね……か、帰る時もアクターさんを殴らないように気をつけないと」
 一切の危険は取り除かれたはずのお化け屋敷だが、再び恐怖との戦いを始める創始。
 実際、恐怖心にかられた客に反撃を受けたりする事も有り、お化け屋敷のアクターは大変な仕事の様だ。
「仕事は終わりましたし、ここはリタイヤして他の所で遊びましょうか?」
「い、いえ……ここまで来たらやり遂げましょう。大丈夫……きっとここからは大したことない筈よ」
 月音は、怖がる仲間を思い遣ってそう尋ねるが結局リタイヤする事無く、全員でゴールへ向かう事になった。

「「あっ」」
 一行がどうにか外に出ると、丁度戻って来た若者達とばったり出くわした。
「どうでした? やっぱり恐かった?」
「べべべつに全然恐くなんか……」
「次はあれ行こうよ、遊園地といえばやっぱりジェットコースターだよね!」
「え゛っ」
 真夏が指さす先には、子供でも乗れる小さめのジェットコースター。ただ、お化け屋敷でフラフラになっためぐるを追い打ちするには十分すぎる程だろう。
「いやはや、なかなかの臨場感でござった♪」
 朱鷺恵は導眠符で眠らせた女性も元気そうにしているのを確認し、そう答える。
「よし、じゃ俺達も行ってきます」
「いってらっしゃい!」
 彼らもお化け屋敷の中でさぞかし怖い思いをする事になるだろうけれど、生命が脅かされる心配は無い。
「んー……目ぼしい物は休止ばかりか。全盛期に来れればよかったのだろうけど」
 改めて案内板を眺める楓。
「……では、私は観覧車に。護る事の出来た日常を眺めておきたいです」
「わ、私も観覧車行く! いやジェットコースターが怖いとかじゃなくて、まずは観覧車で一休みっていうか」
 真に便乗するめぐる。
「……柳瀬達へのお土産も見てみるか。速坂、何が良いと思う?」
「そうね……じゃあ観覧車の後でお土産を見に行きましょう!」
 治秋の問いかけに対し、渡りに船とばかりに応えるめぐる。
「はい、めぐるちゃんの分もチケット買っておいたよ」
「あ、ありがと」
 しかし真夏は、どうあっても絶叫マシーンで締める気満々。逃れられそうにはない。
「……今度、彼を遊園地に誘ってみようかな……」
 賑やかな一行から視線を周囲に移し、ぽつりと呟く智速。
 これから風の冷たい季節にはなるが、冬の遊園地と言うのもカップルには良いシチュエーションだろう。

「ドリームパーク」が今後、閉園に向かってしまうか、復活を遂げるのかは解らない。
 いずれにしても、少しでも楽しい記憶が増える事を祈りながら、能力者たちは束の間のひと時を楽しむのだった。


マスター:小茄 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2010/12/05
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