いじめっこ


<オープニング>


 とある道を2人組の高校生が歩いていた。
 ふと彼等は、いつもと違う道を通ろうという事になり、狭い裏道へと足を進めて行く……すると突然彼等の周囲が一瞬暗転し、気付いた時、人が2人並んで通るのがやっとだった道幅がかなり広がっていた。
 更に彼等の前方に学ランのボタンを開け、シャツのボタンをいくつかはずして腰パンという少年が1人立っており、
「ヨコセ……ナニモカモ……ヨコセェ!」
 少年はメリケンサックをはめた手で、片方の少年の顔面を思い切り殴りつけ、更に怯えるもう一人の顔面を思い切り蹴りつけ……辺りは血の海に染まった。

「今回の現場は裏道、不良っぽい格好をした少年の地縛霊が相手となるよっ」
 神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)の説明によれば、とある町中にある細長い路地裏に足を踏み入れると地縛霊の特殊空間へと引きずり込まれ、そこに待ち受ける不良少年のような姿をした地縛霊に襲われるのだという。
 地縛霊は現場近くにある高校の制服を着た者しか襲わないようである。
 性別、年齢は関係ないらしく、小学生であっても恐らくは大丈夫だろうとの事。
「頭の悪い地縛霊なのかもしれないね」
 そんな事を言いつつ優希は更に説明を続ける。
 地縛霊が現れるのは午後4時頃、その制服を着た者が路地裏を通り抜けようとすると、人数に関係なく特殊空間へと引きずり込むという。
 特殊空間内部は道が広がっており、狭くて戦いづらいという事はないだろう。
 路地裏はそれなりに人通りは多いらしいが、故に封鎖は容易であるとの事。
 地縛霊は不良少年のような格好をしており、メリケンサックで殴ったり、蹴ったりする攻撃を行うという。
「そこでは昔、それなりに名の通った悪い男の子が、今まで虐めてた男の子に逆にナイフで刺されて……って事件があったらしいんだけど」
 それが今回の地縛霊と関係があるのかはわからないという。
「なんにしても、地縛霊は地縛霊。ちゃんと退治してあげてねっ」

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参加者
境・鷹男(高校生真魔剣士・b06261)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
達川・薫(全てを射抜く漆黒の瞳・b44475)
マクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361)
ハニー・ライアン(魔性の女・b67281)
神居坂・縫(碧き風炎・b67463)
夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)
水霞・八哉(行雲流水・b75353)
壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)
不知火・杏樹(黒の断頭台・b78444)



<リプレイ>


 とある通学路にある裏道に現れるという不良少年の地縛霊。
 彼を倒すため、銀誓館学園から10人の能力者達が現場へとやってきた。
 今回の地縛霊はその現場近くの高校の制服を着た者のみを狙うとの事であったため、彼等は皆予め用意されていた制服を着用してきていた。
 そして彼等は戦闘中に一般人が近づかぬよう、看板等の設置作業を行い始める。
「ちゃんと制服が支給されて何よりだな」
 もしも自力で入手する必要があった場合は、制服を売っている店を探さねばならないと思っていた不知火・杏樹(黒の断頭台・b78444)であったが、その心配は杞憂に終わった。
 彼女は制服のデザインについても気になっていたようだが、ごくごく普通のセーラー服であった。
「学校の制服なんて、もう着ないものと思っていたんだが」
 懐かしいよう恥ずかしいような複雑な気分となりつつ、現場の封鎖作業を行う達川・薫(全てを射抜く漆黒の瞳・b44475)。
「これで準備は万端ですかね?」
 作業を終えた伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は一息つきつつ、
「うーん……こういう事って現実にあるんですよねぇ。実際問題になってますしね」
 そう言葉を続ける。
「いじめっこ、いじめられっこか……」
 水霞・八哉(行雲流水・b75353)も似たような経験をした事があるらしく、悲しい事件であると感じているようであった。
「いじめをすること自体罪深い行いですのに、さらに地縛霊になってまでも罪を重ねているのですね」
 本当ならば真サキュバス・ドールと2人でひっそりと暮らしていたい……しかし、戦うための力を授かった以上、戦いから目を背けるわけにはいかないとマクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361)は思う。
 彼女は素肌を人に見せるのが恥ずかしいらしく、スカートは足首まであるロングタイプの物をはき、手袋をはめて日傘をさしていた。
「いじめって言えば聞こえは柔らかいけどね」
 彼のやっている事はいじめを通り越し、恐喝であり脅迫であり……と考える神居坂・縫(碧き風炎・b67463)であったが、
「……まあ、難しい事はいいや。気に入らないね。潰す」
 と、メラメラと闘志を燃やしているようであった。
「恨めしや〜ってか?ざけんじゃねェっての」
 予報士が言っていたとおり、地縛霊の正体が元不良の少年であるのだとしたら同情の余地などない、自業自得、因果応報ってやつだろうと、地縛霊に対して嫌悪感を露わにする夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)。
「こういう輩はいつの時代、どこにでもいるものなんだな。というか死んでからも他人に迷惑をかけるな」
 まったく……と怒ったような呆れたような表情の薫。
「ホント、やっていいことと悪いことがあるよな」
 神也達の言葉に同意する壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)であったが、
「……って強気で受けた依頼だったのに、学園はえらいことになるわ、俺自身が別の依頼で重傷になるわ……って痛っ!」
 彼女は先日、廃墟となったとあるビルにおいての戦いで負傷してしまい、時折その傷が痛む様子であった。
「同じ高校生として悲しくなってくるぜ……こんな奴さっさと片付けようぜ」
 時刻を確認し、裏道へと足を踏み入れていく境・鷹男(高校生真魔剣士・b06261)。
 仲間達も彼の後に続き……彼等は次々と特殊空間へと引きずり込まれていく。
 そして気付いた時、彼等は横幅が広がった空間の中、学ランのボタンを開け、シャツのボタンをいくつかはずして腰パンの少年が立っていた。
「ヨコセ……ナニモカモ……ヨコセェ!」
 彼は人間のものとは思えない狂気に満ちた目で能力者達を睨みつけるが、それで気圧されるような能力者達ではなかった。
「何もかも寄こせだなんて女性の身ぐるみを剥ぐ気?そんな悪い子にはお仕置きが必要ね!アンタが最強じゃないってわたしが教えてあげるわ!」
 そう宣言しつつ、制服のサイズがあわないらしいハニー・ライアン(魔性の女・b67281)は胸元を緩めつつカードを取り出し、
『イグニッション』
 それぞれの武器を手に、能力者達は不良少年の地縛霊に敢然と立ち向かっていくのであった。


「シェッツヒェン、頼みますよ」
 真サキュバス・ドールに高校の制服へとコスチュームを変えるように指示を出しつつ、少し寂しそうにしながら、彼女はマスターの指示に従い中衛へと移動していき、
「何としても足止めしなくてはなりません」
 怪我をしている真麻のため、マクシミリアーネは地縛霊の動きを封じてしまおうと、狐の耳としっぽを生やして妖力を制御し、妖狐の守護星とされる7つの星の輝きを光臨させるが……残念ながら地縛霊に変化は見られない。
 そして……他の者達が地縛霊を取り囲もうとするが、彼等に先んじて地縛霊の方から能力者達の方に接近してきてしまい、
「オラァァ!」
 その勢いにのせ、マクシミリアーネの腹部へと強烈な蹴りを叩き込む。
「うっ……っ」
 げほっと彼女は真っ赤な血を吐きだし……やがて意識を失い、バタリとその場に倒れ込んでしまった。
「マクシミリアーネ!」
 慌てて声をかける鷹男であったが、彼女はうつぶせになったまま反応しない。
 すぐにでも駆け寄りたいところだがまずは地縛霊を倒す事が先決であり、彼は両手の長剣を頭上に掲げて振り回し始める。
「よくも……」
 そして八哉は地縛霊へと距離を詰めながら、気を極限まで練り込んで指先へと集中させ、彼の体にぴとっと素早く触れる。
 その瞬間地縛霊の体内へと気が流し込まれ、彼の体内で暴れ狂って体を破壊していく。
「ねぇ、わたしと一緒に踊りましょう♪」
 可愛くセクシーにウィンクしつつ、宇宙と一体化したような壮大なるダンスパフォーマンスを行い、地縛霊を自分の虜にしようとするハニーであったが……地縛霊に変化は見られない。
 そして洋角は中衛へと移動し、
「砕けな!」
 そんな洋角を物凄い勢いで追い越していく縫。
 彼女はパイルバンカーの後ろ部分からロケットを噴射させていたのである。
 その勢いを利用し、彼女は地縛霊の腹部へと碧炎灯爲を叩き込み、その一撃で地縛霊は思わず吹っ飛びそうになるものの、地面をしっかりと踏みしめてそれに耐えきった。
 が、その間に後続の能力者達も各々配置につきながら次々と強化を完了させ、攻撃の準備を整えていくのであった。


 マクシミリアーネの仇を討とうとする能力者達であったが、
「ウゼェンダヨ!」
 やはり地縛霊の方が早く、彼はメリケンサックをはめた手で縫の顔面を力いっぱい殴りつける。
 が、彼女はペッと血を吐きだして口元を拭うと、すぐにまた地縛霊の方へ向き直る。
「行くぜ!行くぜ!行くぜ!」
 鷹男の気合が具現化したかのように、ぐんぐんと地縛霊へと伸びていく赤い影。
 それは地縛霊に近づくにつれて徐々に腕の形へと変化していき……やがて彼の元へと到達すると、彼の体を深く鋭く抉り取り、彼は大げさに悲鳴をあげてもがき苦しむ。
 その間に八哉は体内に眠っていた気を爆発的に覚醒させ、ハニーは両手の長剣を頭上で振り回し、それぞれを強化を施し、
「一気に決着をつけます」
 洋角は瞳に禍々しい怨念を目を瞑り……カッと見開く。
 その瞬間、地縛霊は体を内側からズタズタに切り裂かれ、がくがくと体を震わせる。
「卑怯者には似合いの最期だよ」
 間髪いれず、そう言葉を放ちながら縫が迫る。
 苛めた相手に返り討ちにあっての逆恨みであったとしても、結局悪いのは他ならぬ地縛霊であると彼女は思い、
「全部よこしな、あんたのニセモノの命」
 碧炎灯爲を地縛霊の顔面へと叩き込み、その際に生じた衝撃が地縛霊の体内を駆け巡っていった。
「あんた、誰かにいじめられたことあんのかよ?こんな風に石とか投げられたりさ!」
 他人の気持ちを理解しろと言わんばかりに真麻は叫びつつ、足元の影を黒い腕の形へと変化させ、地縛霊へと向かわせる。
 彼女が放ったダークハンドは鷹男が放ったカラミティハンドと同じように、文字通り深い爪痕を刻み込み、
 その間に地縛霊へと距離を詰めていた杏樹は、サッカー選手がシュートを撃つように大きく足を振りかぶり……地縛霊の股間を力いっぱい蹴りあげた。
「グゥェッ!」
 地縛霊に人間と同じような痛みがあるのかは不明だが、彼は激しい痛みを訴え、
「ダサいな」
 その様を見て杏樹そうぽつりと呟き、嘲笑う。
「さあ、そろそろ終わりにしよう……!」
 能力者達の攻撃は止まらない。
 薫は蒼き雷弾を地縛霊へと向けて発射し、それは辺りの時空を歪めながら地縛霊へと向かい突き進み、彼の体へと直撃した瞬間、激しい放電を巻き起こしながら蝕み……彼はガクッとその場に片膝をつく。
「ナニモカモヨコセだァ?そんなゼータク、シンちゃん許しませんよっと」
 タタタと足音をたてながら神也は地縛霊に迫り、
「テメーにくれてやれるのは引導だけだ、バカヤロー」
 漆黒のオーラに染め上げた両手の日本刀で、地縛霊の体をバツの字に切り裂いた。
「グオオオオオ……!」
 その瞬間地縛霊はその場に崩れ落ち……やがてその姿を消し去っていったのだった。


 地縛霊が消え去って間もなく、能力者達は通常の空間へと帰還を果たし、狭い裏道に点々としていた。
「状況終了」
 地縛霊がいなくなった事を確認し、イグニッションを解除する杏樹。
 彼女は基本的に戦闘中無駄口を叩かないように訓練されているらしく、今回のように言葉で挑発を行うのは初めてであったようだ。
「お疲れ様でした」
 皆に労いの言葉をかける洋角。
 残念ながら負傷者を出してしまったものの、とりあずこれで腕力に物を言わせていじめを行う地縛霊はいなくなり、一安心だろう。
 そして彼等は一般人が再びその場所を通行できるよう、バリケードを解除した。
「終ったな。あまり道は踏み外してほしくは無いのだが……世の中がもっと良い方向に向かいますように」
 願うようにして鷹男はそう呟く。
 たとえそれが少しずつ、少しずつであったとしても……。
「あたしは正義感が強いわけじゃない。卑怯者が大嫌いなだけ」
 今回の地縛霊は大嫌いであった、それだけは間違いないと縫は思うが、
「でも、追い詰められて返り討ちも違う気がする。難しいね」
 やられたらやり返すのは正しいのかどうか……彼女は悩み、考えているようであった。
「……同情はしないと言ったが、いじめる奴って訳ありの奴が多いらしいな……とりあえず祈っておくか……俺もこりたぜ、もう」
 真麻もまた、もしかしたら彼にも事情があったのかもしれないと思うと少し印象が変わったようである。
 何が正しいのか正しくないのか……それを判断するのは難しい事である。
「でも……拳ってなァよ……護るなにかのために握るモンだ。力の誇示で振るうモンじゃねェんだよ……」
 ただ一つハッキリしている事、それは地縛霊がやっていたのは間違っていたであろうという事。
 神也はギュッと拳を……何かを護るための拳を握りしめ、そうぽつりと呟いた。
「帰るとしましょうか」
 怪我をしたマクシミリアーネをいつまでもこのような場所にいさせられない。
 洋角はそう言い、銀誓館学園へと帰還するべく歩きだす。
「まったく、最近忙しすぎるぞ。ゴーストの出現率、高すぎないか?」
 最後に、ぼやくようにして薫がそんな愚痴をこぼしつつ、能力者達はその場をあとにしていくのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/11/25
得票数:カッコいい11  せつない2 
冒険結果:成功!
重傷者:マクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361) 
死亡者:なし
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