銀誓館襲撃〜天竜頭蓋:友と学舎と俺たちの事情


<オープニング>


 鎌倉の商店街を我が物顔で蹂躙し、その集団はある場所を目指して進行していた。
 その手にはそれぞれ、木刀やらチェーンやら凶悪な武器が握り締められている。
 制止に入った制服警官をひと睨みで尻込みさせ、集団は目的の場所に到着した。
「ここが銀誓館学園か」
 先頭に立つ少年が、正門を睨み据えた。髪を鮮烈な赤色に染め上げ、深紅の鉢巻きをしている。
「そんじゃ、始めるぜ!」
 少年の号令を受けて、彼の配下らしい集団が動き出す。少年と同じように、髪の色が真っ赤な集団だ。
 彼らが行うは「破壊」。
 奇声を発して銀誓館学園の敷地内に駆け込むと、そこらじゅうのものを手にした武器で壊し始める。
 丁寧に手入れをされていた植え込みは無残な姿になり、可愛らしい花壇が踏み荒らされる。
「おらおら、壊せ壊せ!」
「向かってくる奴は、女だろうがガキだろうが構いやしねえぞ。ぶっ殺せ」
「ガキはいらねぇけどよ。女はお持ち帰りしようぜ」
 バイクに跨った大柄な少年が、アクセルを空吹かしする。
「おうよ。銀誓館は可愛い子が多いって話だしな」
 下卑た笑いが辺りに響いた。
「さぁ、祭りだ!」


「みんな、緊急事態よ!!」
 外で何が起こっているのかと、様子を窺おうとしていた数人の能力者たちを、血相を変えて走ってきた幹島・やなせ(高校生運命予報士・bn0249)が呼び止めた。
「銀誓館学園の校門に、不良達が集まって騒ぎを起こしているの」
「この馬鹿騒ぎはそういうことか」
 合点がいったように、長壁・若藻(妖狐・bn0290)が肯いた。
「もう、若ちゃんたら! 落ち着いてる場合じゃないんだってばっ」
「不良が相手なら、警察とかいうところに任せておけばよかろう」
「ただの不良じゃないのよ! この騒ぎを起こしているのは、ナイトメア王(キング)の配下の『バッドヘッド』天竜・頭蓋と、その影響を受けた強化不良達なの!」
「何だって!?」
 若藻だけではない、その場にいた能力者たちの顔色も変わった。
 これまで苦汁を舐めさせられ続けていたナイトメア・ビーストが、ついに能力者たちの本拠地である銀誓館学園に標的を絞って襲撃してきたというのだ。それも、一人や二人ではない。
「正確な数は分からないわ。とにかく、物凄い数なの。何しろ相手は強化不良だから、一般の生徒や先生たちじゃ太刀打ちできないし」
 このままでは、銀誓館学園の生徒や教職員に被害が出てしまうかもしれない。既に一部の施設は被害を受けてしまっているらしいと、やなせは告げた。
「分かった。あたしたちは、どの辺りの連中を蹴散らせばいいんだ?」
「えっとね。正門のちょっと内側に入った辺りにいる集団よ。『レッドヘアー』って名乗ってるわ。メンバー全員が赤い髪をしているから、直ぐに分かるわよ。赤い鉢巻きをしているのが、その集団のリーダーらしいわ。みんなには、その『レッドヘアー』の撃退をお願いしたいの。撃退に成功したら、他の不良集団を撃破した人達と協力して、奥に控えるナイトメアビースト――天竜・頭蓋を倒してもらうことになると思う」
 やなせの物言いに、何か違和感を抱いた若藻が目顔で先を促した。やなせは肯き、言を続ける。
「奥にいる天竜・頭蓋は実体よ。コピーじゃないわ」
 ついに天竜・頭蓋の実体が、直々に出陣してきたというわけだ。
「ただ、天竜・頭蓋は、非常に強力なパワーアップをしているみたいだから、充分に注意しないと返り討ちに遭うわよ。でも、わざわざ向こうから出てきてくれたんだから、逃す手はないわ。天竜・頭蓋との決着を付けるチャンスよ」

 続いてやなせは、『レッドヘアー』の説明を始める。
「メンバーは全部で13人。さっきも言った通り、リーダーは赤い鉢巻きをしているわ。ヌンチャクが武器ね。彼が気合いを入れると、メンバー全員の攻撃力がアップするの。体力も僅かだけど回復するみたい。ヌンチャクの一撃はかなり強力よ。リーダーだけあって、能力的にはみんなより少し上よ」
 配下の不良たちは12人。全員が男だ。木刀を持った者が4人、チェーンを持った者が4人、金属バットを持った者が2人いる。
「木刀持ちは、魔剣士の黒影剣のような攻撃をしてくるわ。チェーン持ちは月のエアライダーのグラインドスピンに似た攻撃法が得意ね。金属バット持ちは吹き飛ばし付きの強力な殴打を持っているから、少し厄介かも」
 残り2人はバイク乗りで、リーダーの親衛隊だという。
「このバイク。使役ゴーストのような存在だと言えば、分かりやすいかしら。ナイトメアランページに似た攻撃法が得意ね。持ち主の方は大した攻撃はしてこないんだけど、使役使いさんならではの、あの能力があるわよ」
 即ち、ゴースト合体である。
「バイクが変形してアーマーのように体を覆うの。戦闘力が一気に倍増されるわ」
 配下の不良たちの個々の戦闘能力は、銀誓館学園の能力者の平均を下回るという。とはいえ連携した攻撃を行ってくるので、こちらもしっかりした布陣で臨んで欲しいとやなせは付け加えた。

「天竜・頭蓋の目的は、恐らく銀誓館学園にあるメガリス『ティンカーベル』よ。『ティンカーベル』をナイトメアビーストに渡すわけにはいかないわ。必ず、撃退してね」
 しかし、銀誓館学園には事情を知らない生徒も大勢いる。世界結界の効果があるとはいえ、あまり派手な立ち回りを行わないような心配りが必要だろう。
 銀誓館学園の勇気ある生徒たちが、因縁をつけてきた不良集団を追い払った……というような演出できれば、より良いかもしれない。
「一般の生徒が見ているからな。ある程度の注意は必要か。血気盛んな一般生徒が、あたしたちの戦いに加わろうするかもしれ……」
「それじゃ、行くわよみんな!」
「待て! そこのピコピコハンマーを持った血気盛んな一般生徒」
「なに?」
「お前は校舎から出てくるな。分かったな」
 不服そうなやなせをその場に残し、能力者たちは校舎の外へと飛び出していった。

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参加者
御劔・学(白龍の天鱗・b01719)
沢渡・沙希(黎明へ至る蒼き闇・b03474)
雪村・光(月明かりの白き獣・b36951)
裏賀・五十鈴(飴色の景色・b45418)
稲荷・空(空狐・b55279)
穂宮・乙樹(桜纏う戦乙女・b62156)
神崎・優(悠久の金狐・b76274)
伊香鎚・敬介(光轟く眩しき轟音・b76328)
NPC:長壁・若藻(妖狐・bn0290)




<リプレイ>


 緊急事態発生。
 その一報を耳にした能力者達は、一瞬我が耳を疑った。
 だが、全く予想していなかった事態でもない。他勢力との戦闘が激化すれば、いつかは起こり得る事態でもあった。
 銀誓館学園が襲撃されている。
 その報に、能力者達はそれぞれの判断で自らの動きを決める。
 学園内に留まり、運命予報士、一般生徒や教職員の誘導・保護を行う者。そして、馬鹿正直にも真正面から襲撃してきた、天竜・頭蓋率いる疑似能力者集団の迎撃に向かう者達である。
「…よりによって本丸を狙って来たか…」
 銀誓館学園第1期卒業生である御劔・学(白龍の天鱗・b01719)は、愛車のバイクを校舎の陰に止めてエンジンを切った。このままUターンして不良集団の中に突っ込むのも面白いと思ったが、単身で突撃するほど愚かでもない。
「お互い、とんでもない時に学園に遊びに来ていましたね」
 学に声を掛けてきたのは、所属する結社にたまたま遊びに来ていて敵襲に出会すことになった第3期卒業生の雪村・光(月明かりの白き獣・b36951)だった。
「ここで会ったのも何かの縁。この後、お茶でもどうだい?」
 ついついいつもの癖で誘ってしまったが、正門を睨み据えたままの雪には、残念ながら聞こえなかったようである。
「それじゃ、後輩達の為に一肌脱ぐとしますか」
 ま、後で改めて誘えばいいかと、気を取り直した学は、レザーグローブの感触を確かめながら雪の横に並んだ。
「先輩達、いいところに!」
 そんな2人の元に、校舎から飛び出してきた数人の在校生が駆け寄ってくる。予報士からの指示を受け、不良達の迎撃にきた者達だ。
「先輩達、手ぇ貸してくれ。俺達はこれから、レッドヘアーって連中をぶっ叩きに行くんだ」
 鼻息荒く、早口でそう言ってきたのは伊香鎚・敬介(光轟く眩しき轟音・b76328)だ。
「レッドヘアーならここにいると思うが?」
「いや、そいつは味方だ」
 本気とも冗談とも取れる表情で敬介を指さす学に、長壁・若藻(妖狐・bn0290)が真顔で律儀に言い放った。その若藻の背後から、小さな狐がひょっこりと顔を出す。
「お母さん、あそこ」
 若藻を母親のように慕う神崎・優(悠久の金狐・b76274)だ。彼女の細い指が指し示す先に、赤い髪をした集団がいた。奇声を発しながら、植え込みを破壊している。
「大胆にも向こう側からいらっしゃいましたか、いろいろと迷惑ですね…被害が拡大してしまう前に私達が返り討ちにして早々にお引き取り願いましょう」
 稲荷・空(空狐・b55279)は開いていた扇子をパタリと閉じた。
「…とうとう、来たわね。避けられないと思っていたけれど、やはり許し難い。自分達の日常、大切な場所、守りたい人達。何も、犠牲になどさせはしないわ」
 裏賀・五十鈴(飴色の景色・b45418)は戦意を剥き出しにしながらも、冷静に周囲を見ていた。
「あそこにまだ一般生徒が!」
 破壊活動を行っている『レッドヘアー』の直ぐ近くに、数人の一般生徒の姿を発見した。中等部の制服を着ている。女生徒が3人。あまりの状況に足が竦んでしまっていて、動けないらしい。
『レッドヘアー』のメンバーの1人が、女生徒達に気付いた。
「行くわよ!」
 グズグズしている時間はない。穂宮・乙樹(桜纏う戦乙女・b62156)は仲間達を促すと、そのまま駆け出していく。沢渡・沙希(黎明へ至る蒼き闇・b03474)がその後に続く。
 9人は疾走しながら叫ぶ。
「「「イグニッション!!」」」
「何にせよ色んな意味で博打だが、でけぇ舞台で命を賭けられる。悪かない話だ」
 楽しげに、学は笑みを浮かべた。


「うぉー、マジだ。銀誓館って、ホントに可愛い子がいるのな」
『レッドヘアー』の数人は、女生徒達の品定めを始めていた。
「怖がっちゃってるとこが萌えるな」
 金属バットを持った『レッドヘアー』が1人、女生徒達の方にゆっくりと歩み寄っていく。女生徒達は恐怖で声も出ない。
「どりゃぁぁぁーーーーー!!」
 気合いと共に飛び込んできた真紅の影が、金属バットの男に跳び蹴りを食らわす。
「ってぇ…。いいじゃんかよ少しくらい。…って、誰だ、お前?」
 自分に跳び蹴りしてきた赤い髪の少年の顔を見て、金属バットの男は首を傾げた。
「殴りこみなんて熱いことしてくれるじゃん!」
 赤い髪の少年は、ニーッと笑う。
「だけどな、容姿が気に食わねぇ赤ってのはいつだって正義の味方の色なんだよ! 不良連中が痴がましいね! その髪地肌見えるまで刈り取ってやる!」
「まさかお前、ぎん…!」
 赤い髪の少年を味方だと油断していた金属バットの男は、昇りゆく太陽の如き頭突きを顔面にモロに食らい、鼻血を吹き出しながら横転した。
「へっ。てんで弱っちいぜ!」
 赤い髪の少年――敬介は、得意そうに鼻の頭を擦った。
「ここは私達にお任せください…安全な校舎へ向かってください」
 女生徒達を安心させる為に、努めて柔らかい笑みを浮かべて空は言った。
「…危ないから、他の人達は下級生達を守って下がっていて」
 五十鈴の声に肯くと、女生徒達は恐る恐るといった風に校舎へと向かう。
「くっそ、いいところを」
 鼻を押さえながらよろよろと立ち上がってきた金属バットの男に、
「可愛い子ってのは大切に愛でるべきであって、好き勝手にしていいわけないだろこの馬鹿!」
 漆黒の影を纏った沙希の二振りの剣が襲いかかる。
「はい。そこで寝ててね」
 トドメは乙樹だ。「穿剣・希鏡」の超音速の一撃を受け、金属バットの男はその場に昏倒した。
 電光石火の攻撃に、仲間が倒されてから初めて『レッドヘアー』達は能力者達の存在に気付いた。
「来やがったな」
 待ちかねたぞとばかりに、リーダーがニタリと笑う。
「そいつらぶっ殺せ!!」
 リーダーの命令を受け、メンバー達は一斉に標的を能力者達に切り替えた。
「あんたが頭か、俺らが相手してやるよ!」
 力強くリーダーを指差し、敬介が挑発気味に叫ぶ。
「それとも女のが多い俺らにビビってるってなら、ちまちま花でも摘んでろ。頭数揃ってないと喧嘩もできないんだろ? こっちは男2人でも下っ端くらいなら軽くのしてやるよ! 雑魚ども片付けたら次はてめーらの番だからな、バイク吹かして逃げんなよ?」
「上等だ、赤毛! 俺達と同じ頭しやがって、ムカツクんだよ。お前から先に殺してやんぜ!」
「それはこっちのセリフだっての!!」
 戦闘開始だ。


『レッドヘアー』のメンバーは、ご丁寧に真っ直ぐに突っ込んできた。ただしリーダーは後方で待機。バイク乗りの親衛隊2人も、リーダーの横で様子を見ている。下っ端を先に嗾け、消耗したところに参戦しようという腹づもりらしい。
 能力者達は乱れていた陣形を素早く整える。相手が何の小細工も無しに突っ込んでくるだけなら、予定通りの陣形で臨めば問題はないという判断だ。
 不良達を迎え撃つべく、学、沙希、五十鈴、乙樹、敬介の5人が前へ出た。その中で、五十鈴だけは若干下がり目に位置を取る。
 五十鈴より更に後ろに、光と若藻が並ぶ。優は若藻の真ん前に陣取って、小さな体をより大きく見せるべく、両手を左右に広げていた。
「お母さんは私が守るんだから!」
 真剣な表情で仁王立ちだ。
 最後方には空が位置し、冷静に戦況を見ながら仲間達の動きをフォローする。
「貴方達の動き封じさせて頂きます!」
「そこから先には行かせないわ!」
 密集しているのならこちらの思う壺。空と優の幻楼七星光が立て続けに襲い掛かると、5人の不良達の足を止めた。
「…ちゃんと当たれよギロチン!」
 沙希の気合いが虚空を揺るがし、現出されたオーラが巨大なギロチンの形を形成する。
「いっけぇ!!」
 撃ち出された巨大なギロチンは、唸りを上げて一直線に突き進み、突進してきた4人を巻き込んで彼方へと消えていく。
 ギロチンが消えた向こうでは、銀誓館学園の仲間達が他の不良集団と激闘を演じている様子が見えた。
 五十鈴と光の起こした吹雪が猛威を振るい、若藻の放った小妖怪の群れが不良達に噛み付いた。
 無傷で攻撃をかいくぐってきたのはたった1名。しかし、それは彼にとって幸運でも何でもなく、前線で待ち構えていた学と乙樹、敬介の集中攻撃を浴びる不幸の前触れでしかなかった。ガードの為に突き出した木刀は無残にも粉砕され、血反吐を吐きながら地面に倒れ伏した。
「後ろにいるやつらを狙え! お前ぇらの根性見せろや、おら!!」
 リーダーが怒鳴る。2人を倒したとはいえ、相手はまだ11人。更には、まるで使役ゴーストのように動く2台のバイクもいる。
 リーダーの一声で気合いが入った集団が、最前線にいる4人に襲い掛かった。それを援護するかのように、2台のバイクが疾走してくる。いや、バイクの本体は後方に留まったままだ。バイクの形をした漆黒の影だけが突っ込んできたのだ。
 チェーン持ちの3人が壁を作っていた前衛陣に次々と飛び込み、チェーンを振り回してスピンする。強引に壁をこじ開けようとする作戦のようだ。
「させない!」
 万が一前線が突破された時のことを考慮し、やや下がり目に位置取りをしていた五十鈴が、木刀を持った2人の不良達の更なる突破を阻止する。1人の攻撃はガードしたものの、逆にもう1人からの攻撃はまともに食らってしまった。すかさず若藻が前に出て、白き蟲の力を使い、裂けてしまった五十鈴のライダースーツを修復する。
「中央にいる着物の女を集中して狙え! そいつが回復手だ」
 直情タイプかと思いきや、なかなかどうしてリーダーは冷静な判断力の持ち主だった。若藻が治療した姿を見逃さず、配下へ集中攻撃を命じた。
「そう簡単に突破されたんじゃ、後輩に恥ずかしいだろ!」
 連携からの龍尾脚を叩き込みながら学が応戦するも、如何せん相手の方が数が多い。
「貫け! 光の槍!」
 相手を拘束するよりも、ひとまず数を減らすべきと考えた空は、学の龍尾脚によって怯んだ木刀持ちに光の槍を撃ち込んだ。早々にバイクを撃破したかったが、彼女の位置からでは攻撃が届かない。バイクやそれを操る者達への攻撃は、後に回さざるを得なかった。
「もらったぜ、死ぬや!!」
 若藻に4人の不良が群がろうとしていた。五十鈴の治療の為に前に出てきていたことも災いした。
「お母さんは私が絶対に…守ります!!」
「優!?」
 横合いから飛び込んできた小さな影が、3人の攻撃をその体で受け止めた。
「小さい子に何すんだ!!」
 沙希の怒りのギロチンが風を切り裂く。まともに食らった2人が、その場に倒れ込む。
「…先生達が来るまで、そこで正座よ」
 五十鈴の氷雪地獄が唸る。
「この!」
 反転して地を蹴った乙樹は、無防備な背中に瞬断撃を撃ち込み、その動きを止めた。直後に左肩に激痛が走った。黒い影を纏った木刀に打たれたらしかった。だが、乙樹を攻撃したその木刀持ちは、敬介の頭突きによって轟沈した。
「優は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
 自身の負傷は顧みず、仲間の心配をする乙樹。優は流石に深手は負ったものの、戦闘継続には問題なさそうだ。
「相手の数も減ってきている。このまま一気にいくぞ」
 乙樹の左肩に白燐蟲を這わせながら、若藻が言った。


「いくぞ、大合身!」
 どこからか格好いいBGMでも聞こえてきそうなノリノリの雰囲気で、バイク乗りが叫ぶ。
 呼び寄せられたバイクは変形し、強化アーマーのような形に変形してバイク乗りの身体に装着された。
「…格好いいかも」
 ちょっと羨ましげな視線を向ける敬介。とはいえ、バイクと合体した不良――アーマード・レッドヘアーと呼ぶことにする――は、めちゃくちゃ強かった。
 ただ、強いとはいえ単にパンチやキックを繰り出すだけでは勢いに乗る能力者達は倒せない。
「簡単にゃ負ける訳にいかんので全力で潰させてもらう。好き勝手に暴れられるのも趣味じゃないんでね」
 アーマード・レッドヘアーのパンチを受けて唇を切りながらも、学は伸び上がるようなアッパーを相手に見舞った。カウンター気味に入ったそのアッパーは、龍の顎をも砕くと言われている強烈なパンチだ。
 もう一方は沙希と乙樹が押さえ込んでいた。五十鈴の先導で怒濤の集中攻撃を叩き込むと、装甲と化していたバイクは大破。破片に埋もれるようにして、装着者も倒れた。
 もう1体も集中攻撃で粉砕すると、残りはリーダーただ1人。
「頭赤くするだけなら誰でもできんだよ。赤への心意気も碌にないくせに、堂々とレッドヘアーとかほざくなっ!」
 敬介は真紅のハチマキを締め直した。正義の象徴とも言える「赤」を汚されたような気がして、敬介は怒り心頭だ。
「やかましい!!」
 仲間を全員失い、たった1人となってもリーダーは逃亡する様子は見せない。玉砕覚悟で突っ込んできた。
 振り下ろされたヌンチャクの一撃を、間に割り込んできた乙樹が、左腕を犠牲にして受け止めた。
 骨が折れる鈍い音が響いたが、乙樹は一歩も引かなかった。
「…譲れないものがある。大切な人達仲間が居るここを守りきるためにも」
 銀誓館学園は我が学舎。そして、大切な友達とのふれあいの場。ここを守る為にも、自分達には退くことが許されない事情がある。
「うぐぁ!?」
 乙樹の渾身の一撃が、リーダーの鳩尾(みぞおち)に食い込んだ。
「…もうやめて、大人しく帰りなさい」
 自分達の日常、大切な場所、守りたい人達。何も、犠牲になどさせはしない。五十鈴の想いが、凍て付く氷雪に乗る。
「破壊行為の何が楽しいか理解しがたいけど、迷惑だ! 帰れ!」
 楽しい日常があってこその非日常。関係ない奴まで巻き込むなら遠慮は無用だと、瀕死の相手でも沙希の「青藍」と「黒藍」は容赦がなかった。
「ぐ、ぐはっ」
 短く呻いて、リーダーはその場に倒れた。


「こんなことをして…洗いざらい、話してもらいましょうか…」
 気を失っているリーダーを見下ろし、空は呟く。
「陽動、捨て駒の様な気がしてなれないけど」
 後方で待機している仲間達に状況報告を行いつつ、五十鈴は再度の襲撃に備える。学や沙希も、同様に周囲の確認を始めた。
「アレなんでしょう?」
 何かに気付いたらしい優が、耳をピンと立てた。
「ん?」
 不良達の頭をバリカンでカットしていた敬介も顔を上げた。
 正門の外、未だに暴れている不良達の奥に、本陣があるらしいとの情報が他の能力者達から伝わってきた。
「なんだか、もう一波乱ありそうな感じですね 」
 敵の首魁は、意外にも直ぐ近くに陣取っていた。光は気を引き締め直す。
「まずは一騒動片付けたけど…まだ終わりじゃないのかもね」
 痛む左腕を押さえながら、乙樹が目を細めた。
 不良達の一団を蹴散らして、本陣に突撃していく数人の仲間達の背中が見えた。


マスター:日向環 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/11/30
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