春の大道芸〜笑顔、燦燦


<オープニング>


 大きな時計にもなっている観覧車が目印の港町。
 普段、観光客やカップルなどで賑わっているメインの海側とは反対側の山側。
 毎年この季節恒例の大道芸が今年も開催される。

 大道芸の幅は広く、ジャグリン、パントマイム、子どもに人気の風船芸、中国雑技、BMXアクロバット、マジックに紙芝居。
 角を曲がり裏のとおりでは、駐車場でシャンソンやジャズバンドが演奏していたり、焼き鳥屋の屋台の隣では、様々なダンスや舞踏が繰り広げられていたりする。
 本当に色んなものが、大道芸として所狭しとあちこちで行われている。

 もちろん食べ物だって充実、この辺りは有名な洋食屋や老舗の店など、隠れた名店も多いし、メインストリートにも裏通りにも沢山の屋台が所狭し出ている。
 普段は店舗でしか味わえない味も、この日ばかりは即席の屋台を出し、気軽に楽しむことができる。
 それから当日のボランティアも募集している。
 主な仕事は清掃や、迷子案内など、簡単な仕事を頼みたいということらしい。

 海側でも同じイベントが行われていますが、今回案内できるのは、山側だけ。
 一般のお客さんも多いから、もちろんイグニッションは禁止。
 それから今回は、飛び入り参加の募集はしてないので、大道芸は見物するだけ。でももしかしたら、芸人さんから何かしらお手伝いを申し込まれる事があるかもしれない。
 食べたものはきっちりゴミ箱へ。
 皆が気持ちよく過ごすためにも、最低限のマナーは守ろう。
 
 少しバタバタしたりもしたけれども。
 やっぱり、遊べる時には遊びたい。
 だって僕たちはまだまだ遊び盛りだから。

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<リプレイ>

●春の陽射しに映える笑顔
 少し前に比べて陽射しが随分高くなったような気がする。
 澄み切った青い空に、心地よい暖かな風。
 風に乗って聞こえてくるのは、人々の笑い声。
「和おねーちゃん、手繋ごうよ」
「あぁ…。はぐれては、大変…だ」
 和智に手を差し出す勝子。
「凄い人だね。転ばないように気を付けて…ねっ、わわっ?!」
「…危ない…。気をつけねば…な」
 転びそうになる勝子の体を支える和智。それでも二人は顔を見合わせて笑いあう。

 十三と千鶴子が手を繋ぎ人ごみを歩いていく。
「十三先輩、マジックをやってるですよ〜」
 千鶴子が目当てのマジックを見つけて、十三の手を引っ張る。十三は大道芸よりも、彼女のクルクル変わる笑顔を見ている時間の方が長かった。
 マジックでは尚也がアシスタントとして呼ばれ、大きな箱の中に入った。すると次の瞬間彼の姿は消えてしまい、一緒にきていた心葉が半べそになる。マジシャンが彼女を嗜めながらもう一度箱を開けると、そこには尚也の姿があり、心葉は安心したのと同時に頬を大きく膨らませて怒った。
 大きな通りではあちらこちらで、沢山の芸が繰り広げられていた。
 これは参加するしかないと思っていたフィーアだが、飛び入り参加は認められていなかったので、見つかったとたん歌いながらも慌ててカラオケセットを担いで逃げる。

 マジックの他に大きな人だかりが出来ているのは、ピエロのパントマイム。
 邪魔にはならないがみやすい位置で大きく笑っているのは羽織。クラウンの手の動きにつられて自分の手も自然と動きだす。
「え? え? なんであの鞄宙に浮いて動かなくなっちゃったのさ」
 動かなくなった鞄を一生懸命動かそうとしているクラウンの動きを見て、ナイアーラトテップが目を丸くしていた。
 すると今度はボールのマイムを初め、クラウンはぽーんとボールを花影の方へと投げると、花影もボールを受け取るマイムをした後、隣に居る京斗の方に投げてみた。すると京斗はポップコーン投げ喰いの要領でパックんと食べてしまった。ソレを見たクラウンも花影もびっくりし、花影は慌てて吐き出させ様と京斗の背中を叩くと、ポンと京斗の口の中から再びボールが出てきた。この二人かなりノリノリでクラウンと張り合っていた。
 そんなクラウンの楽しいパントマイムも終わり、次の場所へと向かっていた京斗と花影の前から玲紋とココがやってきた。それぞれ軽く挨拶をし、通り過ぎていく。
「ひゃわわっ?!」
 突然叫び玲紋に抱きつくココ。通りに立っていた人にそっくりの人形を見つけて、感心して触ろうとしたとたん、それは大道芸の人で突然動き出したから。色気のない叫びと行動に玲紋に呆れられしまったかもと落ち込むココの頭を撫でる玲紋。玲紋は玲紋でそんなところが可愛いと思うが、…正直、大道芸も楽しいけど、ココの反応も負けないくらい見てて楽しいと思ってしまう。

「迷子ですか? 大丈夫、一緒にお父さんお母さんに見付けて貰いに行きましょうね」
 沢山の人手で迷子も少なくなく、ボランティアに参加している縁樹が泣きじゃくっている少女と遭遇した。ポケットに忍ばせておいた飴玉をひとつ少女に手渡し、優しく声をかけ親の名前や少女の名前を聞きながら、迷子センターの方へと歩いていく。
「ママー。パパー」
 迷子センターでは既に少女の両親が来ていて、それを見つけた少女の顔が泣き顔から一瞬に笑顔に戻った。少女が笑顔で縁樹に手を振る。縁樹もそれに笑顔で手を振り替えした。
 迷子センターの中で迷子のお世話をしているのは健と紗那。
「ニャ〜、僕は男の子だ〜、む、胸なんかないぞ」
 男の子だけれどもメイド服に付け耳、付け尻尾の健は見事にお姉さんと間違われて、子供たちに纏わりつかれいている。そんな健の横の紗那はメイド服ながら、サングラスに特殊部隊のベレー帽を装着した姿で、会場見取図を広げ無線機で他のボランティアの人たちと連絡を取り合っている。

 裏通りでは陽気なジャズが流れていた。
「うわ〜っ。これが大道芸か…、すっごいな〜」
「此からも宜しくお願いします」
 友梨の案内に目を輝かせる龍麻。そんな龍麻に改めて挨拶する友梨の手には風船で出来たお約束のプードル。進級してキャンパスが違ったけど逢おうと思えばいつでも逢えるのだから。そんな二人が足を止めたのは、妖艶なダンスで有名なベリーダンス。エキゾチックな衣装に腰の動きに夢中になる。
「あ〜、楽しそう。早くこの人達みたいに沢山のお客さんの前で踊れる様になりたいなぁ」
 アイドル志望のさきの身体が動き出す。

「大丈夫、大丈夫よ……?」
 賑やかでとても良い雰囲気だけれども、それだけで終わらないのが実情。雫翠は泣きじゃくる迷子の男の子を慰めながら迷子センターへと向かっていく。
 丁度中国雑技の前を通りかかったとき、男の子はその芸に夢中になり泣くことを忘れ居ていた。
 華麗な中国雑技の技を見ている天。
「わぁ、すごいー!」
「すごいぞよ!」
 小さな子どものようにはしゃぐノアとディレイン。七月はただ目を丸くしている。演技が終われば興奮と感動で胸がドキドキしたままの3人。
「にゃ〜、とっても楽しかったれす」
 笑顔でノアとディレインを見る七月。そうして今まで演技していたのが能力者ではなく一般人だということを知り、更に目を丸くする七月。
「また3人で来ようね」
「また3人で来るぞよ」
「うん!」
 3人は楽しげに、次の約束をする。

「アタイたちもなんかやろうぜぃ」
 軽やかな大道芸を見ていれば、自分達も何かしたいとウズウズしてきた結社、くノ一『症候群』の面々。五右衛門が声を掛ければ、アクロバットを決めていく。
「ちょっ、ちょっと。お姉ちゃんたち何してはるん?」
「あ、でも大丈夫なの? 許可なくやっちゃっても」
 瑞菜と斑鳩の心配は的中。係員が注意に走ってくる。
「え!? 何かやるには、許可がいるの? ごめんなさぁ〜い」
 泉水を先頭に逃げるように去っていく。

「篝先輩、しっかり見ていてくださいね」
「久遠ちゃん、行ってらっしゃいな」
 ジャグリングのお手伝いに呼ばれた久遠が嬉しそうに絶佳に手を振る。それに絶佳も笑って手を振り見送る。
 別の場所で行われているジャグリングは佳境を迎えていた。ジャグラーが持ち出してきたのは大きなチェーンソー。切れ味抜群のソレを器用にジャグリングしていく。
「うわぁぁ! 失敗しないように失敗しないようにッッ!!」
 ハラハラドキドキしながら事の成り行きを見守る吉太郎。

 一応デートのつもりの紫郎。無邪気に楽しむ亜弥音。手を繋ぎ人ごみの中を歩いていた。すると突然亜弥音が躓くと、紫郎が背後から彼女の体を抱きとめた。この瞬間が止まればいいと紫郎が思った時だった。
「きゃー!」
 甲高い少女の声。振り返るとれいあの口を塞ぐ彩華と、口を塞がれてもがくれいあの姿が見えた。途中から二人に気がつき後をつけてきていたのだ。しっかり今の瞬間を見られていた紫郎は大きく肩を落とし、最終的には4人で屋台を回ることとなった。

 楽しい芸に笑うソフィア。そんな彼女の姿をちらりと見るのが精一杯の鳴海。
「すまない…つい癖でな」
 可愛いものは撫でたくなる鳴海は、笑顔のソフィアの頭を撫でていた。それに気がつき見上げるソフィア。少し戸惑いながら彼女の頭から手をどかす。
 真剣にジャグリングを見入る紗々の片手には、食べられることを忘れられているおにぎりひとつ。
「凄い…町中が、サーカスみたいだ」
 人も多いが、目まぐるしく目の前で行われるジャグリングに釘付けになっている和。生で見るのは初めてで、どれもこれもが新鮮。
「…自分でもやれるだろうか?とか考えてただろう?お前、今」
 自分の手とジャグラーの手つきとを見比べている紗々に、気がついた友環が突っ込む。
「周囲に迷惑を掛けてないと良いんだが」
 ふっと友環が屋台の方を見て、同じ結社で来ている仲間のことを思い出し心配そうに呟く。

●春の陽射しに食欲増進
 そんな心配されている結社、『光の庭』の食べ歩き班のきとりと妃織。
 好物のモツ煮を3人前ぺろりと平らげるきとりはさらに、お好み焼き二人前を食べ幸せに浸っている。妃織もおいしいー。と絶賛しながら屋台を片っ端から食べつくしていく。
「うう〜ん、流石に食べ過ぎかも……」
「ああ、お腹空いたね。もう一回りしようか」
 屋台を一通り回った後、食べ過ぎたとお腹をさする妃織を引っ張り、またはじめから屋台を回りだすきとり。
 屋台があれば自然とゴミが出てくる。
 それを手際よく掃除していくのは成章。綺麗な場所にゴミを捨てようとする人は少ないだろうかと、目に付くゴミを片付けていく、するとどこからともなく聞こえてきたジャズの音色に目を細めた。
 
 自分から誘ったのだが、相手が楽しんでいてくれてるか心配で、さっきからことあるごとに茜華の顔を見ているリエン。茜華も凄くドキワクしているのだが、それは顔には出さずに冷静に装っているものの、彼女もリエンにばれていないか心配でチラチラと彼の方の様子を伺う。そんな事を二人でしていればがっちり目が合うのも事実。すると二人とも照れてわざとらしく視線を反らしていた。
「んー……ほんといろいろ居ますねー……」
 インラインスケートで清掃活動をしている玉緒は、目に付く大道芸を仕事の合間に垣間見たりしている。その姿は颯爽と格好良く、一般客の目に留まっていた。
「あは〜。ゴミの分別に協力をお願いします〜」
 同じ様に清掃活動を担当しているラテルは、カソックの上から割烹着、三角巾をほっかむりして、完璧なお掃除ルック。両手には軍手をはめ、片手にゴミ袋を持ち、ポイ捨てされたゴミを拾い集めていく。もちろん仕事の合間に、大道芸をチラリチラリと見ていた。

「んーっやっぱり老舗の味は違うねぇー」
 老舗名店のお弁当を食べて茉那が感動の声を上げる。楽しみににしていただけあるわと思っていれば、ポイ捨てされた空き缶が目に付き「もーしょうがないなー」と、いいながらもゴミ箱へとぽいっと捨てる。
「カキ氷1つ! 汁だくレインボーでお願いします」
 小柄ながらに屋台を食べつくしてきているかなた。レインボーなカキ氷を頼むと、ひとりでお弁当を食べている茉那を見つけ、一人同士一緒にどう?などを声をかけてみた。
「おっ! 第一村人発見。そこのおねーさん、一緒にお弁当食べませんか?」
 同じ様に声を掛ける喪作。他意はないが軽い口調で駆け寄っていくとオネーサンさんは口も利いてくれなかった。

「このお仕事が終わったら、ですよ〜?」
 愛犬のポメラニアンの小次郎と清掃活動に励む凛。小次郎が屋台の食べ物を欲しそうな素振りを見せているのに気がつき、お仕事が終われば一緒に食べようと言い聞かせていた。
「ほら、ジュース君もお家に返さないとね」
 空き缶をゴミ箱に捨てながら、手を引く迷子の子どもに優しく声をかけていく優。
 街は少しずつの優しさで笑顔が絶えず、自然と優しい気持ちになってくる。 

●仲間と一緒に笑える歓び
 総勢15名でやってきた、結社『銀誓館学園天文部』
「昔からこういうの大好きなのよね」
 にこにこと笑顔の火蓮。何気なく行われる芸の水面下の努力は白鳥並…。ううん、それ以上なんだから。と、思えば自然と力が入ってくる。
「あれ、あのやつ、わらわもやってみたいのじゃ! あ、でも……」
 簡単な基本的なボールを使ったジャグリングを見て、命が大きく指を指す。その時は無理だったが芸が終わった後、ジャグラーの好意で道具を触らせてもらえることとなった。
「えっと……見て見て」
 普段触れない珍しいものでお手玉をして、喜ぶ命の満面の笑み、そんな命を見て、このはも嬉しそうに両手を叩きおおはしゃぎ。
「やれやれ…ウチの結社のお姫様方は、芸より団子がお好みでいらっしゃるようで…」
 静馬の呟き。一緒に来ていて、大道芸を楽しんだのは自分も含め4人だけ。確かに皆で美味い物食って遊ぶってのが最高に楽しいものな、と屋台の方に視線を向けた。

「うーん…塩を少し多めに…ふむふむ」
「…あとやっぱり、出汁の取り方が違うのかな?」
 老舗弁当を食べては、今後の料理の参考にしていく信彦と菜月。老舗お弁当の他にも普通の屋台のものも食べ比べてみては、二人で意見交換などをしていた。
「妾は始めからクライマックスじゃぞ!?」
 テンション高めで屋台制覇を試みる環奈。
「口の中でシャッキリポンと食材が踊る……これは味の革命やー!!」
 色んなものを食べながら環奈は、終始ハイテンションで、屋台を楽しんでいた。
 マイペースに屋台を楽しむ飛鳥。普段あまり食べれない『ドネルケバブ』の屋台を見つけ、チャレンジしてみることにした。そんなケバブの屋台にはアヤと嶺もいた。
 アヤに頼まれて嶺が屋台について調べておいたのだった。普段は面倒くさがり屋な嶺だが、こういう事には労力を惜しまなかった。そのお陰でアヤはおいしい屋台に無駄なく回ることができた。

 恋人同士で一緒にいるのは弘明と綾。
「はい弘明、あーん♪」
 程よく冷めてきたたこ焼きを弘明の口に運ぶ綾。そんな綾に弘明は、人目もはばからず彼女の頬にそっと口付けを落とした。
「おいおい、他人に見られながらいちゃいちゃしてんなよー」
「こっち見んな!」
 そんな姿をケラケラ笑う智成に目撃されれば、綾が照れながらも追い払うがイチャイチャ歯終わらなかった。
「ちょっとだけ交換しねー?」
 智成はラブいカップルから離れると、玲の持っている美味しそうなカレーと自分の持っている焼き鳥との交換を申し出てみる。

 ある程度食べるもの買ったら大道芸の方へ行って見る寅彦。今回は飛び入り不可ということで残念だった。飛び入りOKなら自分も占いのテーブル出したのにと思うものも、大道芸からは学ぶこと多く、真剣に見て回ることにする。客を飽きさせない話術は自分も見習いたいと思うところ。

 普段なら味気ない大きな通りが、人々の笑顔や笑い声で埋め尽くされた1日。
 知らない誰かと偶然の出会いや、仲の良い仲間、恋人同士、ただ普通に会話し、くだらない事で笑い逢えることが、本当に楽しいと思った。
 ボランティアも喜ばれ、普段よりもゴミも少なく、迷子も最後には笑って手振ってくれた。
 ずっとこの笑顔が続くために、きっと自分達がいるのだろう。
 そんな事を思いながら、夕暮れ空の下、楽しい時間は終わりを告げた。


マスター:櫻正宗 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:70人
作成日:2007/04/26
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