銀誓館襲撃〜天竜頭蓋:穢れた乙女の戦士


<オープニング>


 それはある意味、圧巻の光景であった。
 銀誓館学園に押しかけた、数え切れないほどの無頼な輩。
 手には木刀やヌンチャク、果てはナイフなどの刃物まで持ち、悪意を剥き出しにした者達は、道行く生徒や一般人を威嚇しながら、学園へと迫る。
 男女問わず、多くの集団が闊歩する中。その集団は、不気味なほどの沈黙を以て行進をしていた。
 先頭を歩く、弐振りの木刀を携えたポニーテールの少女に先導されるように学園を目指す、白い特攻服の少女の集団。歩く姿にしても相当に統率が取れており、その姿はまるで軍隊の様でもある。
 皆の背には、一様に金の刺繍で『悪仇麗』と刻まれていた。

「そ、そこを通してくださいなのです」
「つれねぇ事言うなよ、お嬢ちゃん。お兄さん達と一緒にバイクでツーリングとしゃれこまねぇか? へっへっへ」
 皆が集まる教室へと急ぐ中。いつも通りにスケッチブックを抱えた鷹取・月乃(中学生運命予報士・bn0058)は運悪く、その道中で下卑た笑いを浮かべる学ランの男に腕を捉まれていた。
「つ、月乃にはそんな趣味は無いのです!」
「ん〜? 月乃ちゃんて言うのかぁ。こんなスケッチブックほっといて、お兄さんと遊ぼうぜぇ?」
「は、離して……あっ!」
 掴まれた腕を振りほどこうとした瞬間、男は月乃の手からスケッチブックを奪い取ると、無造作にゴミでも扱うように放り投げる。
 月乃にしてみれば、スケッチブックは何よりも大事な宝物。それをぞんざいに扱われ、涙目できっと男を睨む。
「お〜、そんな蔑む目もかわいいねぇ。ゆっくりと静かな場所でげふぅ!」
 厭らしい目をしていた男は、背後からの突然の攻撃に悲鳴をあげ昏倒する。その背後に立っていたのは、金森・あかね(天然符術士・bn0003)を始めとした、銀誓館学園が誇る能力者達だ。
「月乃ちゃん、大丈夫!?」
「な、何とか大丈夫なのです……それよりも、皆さんに緊急のお願いがあるのです」
 あかねからスケッチブックを手渡され、大事そうに抱えた月乃が説明を始める。

「ここ銀誓館学園に、俗に言う不良と呼ばれる人達が押し寄せてきたのはご覧の通り、皆さん周知の事実なのです。この騒ぎの元凶は、ナイトメアキングの配下『バッドヘッド』天竜・頭蓋と、その影響を受けた強化不良達なのです」
 相手はただの人間ではない。能力者並の力を与えられた、強化不良なのだ。学生はおろか、教師達でも太刀打ちは出来ないだろう。
「このままでは、この学園に通う一般の生徒さんや先生がたにも、被害が出てしまうかも知れないのです。それだけは、何としても阻止しなければならないのです」
 相手が能力者クラスの力を得ているなら、遠慮する必要は無い。頼りは能力者である皆しかいないのだ。
「皆さんには、ひとつの集団……れでぃーす、と言うものなのですか? 女性のみで結成された、『悪仇麗』と呼ばれるグループを相手にして欲しいのです。そして撃破に成功したら、他の集団を破った仲間達と協力して、かなり後方でのうのうと見物しているナイトメアビースト、天竜・頭蓋を倒して欲しいのです」
 ラスボスとも言うべき天竜・頭蓋は、かなり強力なパワーアップをしているようだが、コピーではなく実体であるらしい。つまり彼を倒す事が、この戦いを終焉へと導く唯一の手段なのだ。
「悪仇麗は総勢9名の精鋭集団で、全員が白い特攻服を纏った女性達なのです。中でもリーダーはブリュンヒルデと呼ばれているポニーテールの綺麗な女性で、二本の木刀を操って戦う、生粋の剣士みたいな人なのです」
 悪仇麗……おそらくワルキューレ、と読むのだろう。遥か彼方北欧神話の世界で、勇敢な戦士の魂を導く任務を負った、戦乙女達。皆はそれぞれ、その戦乙女の冠名を背負う少女達であるらしい。
 その他にも同じように木刀で戦う者が3名、チェーンを操る少女が2名、ナイフを投げる者が2名、メリケンサックで戦う者が1名。皆各々の武器には自信を持っており、かなり統率された集団であると言う。
「レディースかぁ……初めて見るかもだけど、能力者クラスの力があるなら、かなり強敵になりそうね」
 あかねが真摯な面持ちで考え込む。そうしている間にも、学園のあちこちから悲鳴や怒号が響いてくる。
「……天竜・頭蓋の狙いはおそらく、銀誓館学園にあるメガリス『ティンカーベル』なのです。夢の世界へと入るキーアイテムですので、悪夢を操る天竜・頭蓋なんかには、決して渡してはならないアイテムなのです。必ず、速やかな撃退をお願いしたいのです」
 ただし、今回は初めてと言っていい、銀誓館学園を舞台とした防衛戦である。当然のように一般人である学生や教師も、数多く存在している。
 世界結界の効果で、その戦いが記憶に残る事は無いであろうが、出来るだけ世界結界の損害を抑えるためにも、派手な立ち回りは控えるべきだ、と月乃は付け加える。
「無理なお願いかもですが……出来るだけ自然な演出で追い払って貰えれば、それが一番なのです。唐突なお願いではありますが、どうぞよろしくお願いしますのです」
「分ったわ、月乃ちゃん。私達に任せて、ね? 月乃ちゃんは早く、安全な場所に避難してね!」
 そう言うなり、仲間と共に駆け出すあかね。目指すは沈黙の戦乙女集団、『悪仇麗』。
 月乃は皆の背にぺこりと頭を下げると、のびたままの男の背をえいっ、と踏みつける。
「……ケダモノ」
 蔑むように一瞥すると、月乃は学園内へと賭けて行くのだった。

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参加者
鈴鷹・彩翔(リィンホーク・b22676)
アリーセ・エルンスト(ソライロノカゼ・b33163)
秋扇・紫苑(夜の雫・b45670)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
美袋・侑香(あどけない瞳・b56259)
舞城・弓矢(鬼門封殺の破壊者・b57728)
フルラージュ・エグランティエ(月白蝶・b64014)
伏管・煉(時計仕掛け・b71013)
NPC:金森・あかね(天然符術士・bn0003)




<リプレイ>

●来訪は突然に
 突如訪れた不良達の来襲に、逃げ惑う一般生徒、おろおろと右往左往する教師達。
 冷静に逃走や避難の指示を出し、不良達の前に立ち塞がっているのは、能力者だろうか。
「わ、わわ。大変なことになってますっ」
 横を擦り抜けて走る生徒達を避けながら、美袋・侑香(あどけない瞳・b56259)が慌てた口調で、きょろきょろと周囲を見回す。
「この光景、昨日までの日々が嘘のようです……」
 フルラージュ・エグランティエ(月白蝶・b64014)は走り回る者達を見つめ、悲しそうに呟く。
 彼女が言うように、そこに今まで何気なく過ごしていた、平穏な学園は無い。失って初めて、今までこの学園が外の世界と比べ、平和だったか分る事だろう。
「ですが、いつまでも悲しむ訳にはいきません。今度は私達が、学園を守る番、ですね」
 フルラージュのその一言に、皆も無言で力強く頷き、早速行動を開始する。
「振り返らずに走るんだ、そうすれば逃げ切れる」
「わ、分った!」
 慌てふためき、途方にくれていた男子生徒を発見した伏管・煉(時計仕掛け・b71013)は、凄みを効かせて正気を取り戻させる。彼が持つ剣呑なオーラは、慌てふためく頭を一周回ってリセットするには、丁度良かったようだ。次々と声をかけては、避難を促す煉。
 また一方で、違うアプローチをかけた者がいる。文月・風華(暁天の巫女・b50869)がその一人だ。
「危ないですからここから離れてくださいね。教室に戻ったら、カーテンを閉めて外から見えないようにしてください」
「え、あ、わ、分りましたっ!」
 動転していたものの、その言葉に二度三度頷き、慌てて教室へと駆け出す女子生徒。
「はぁはぁ……に、2階の教室にはとりあえず、全部声かけてきたわよ!」
 そこに息を切らして駆け寄ってきたのは金森・あかね(天然符術士・bn0003)だ。不良達に顔を見られれば、後日再び襲われるという可能性もある。顔を見せないため、更に避難した生徒達に外が見えないと言うことで安心感を与え、なおかつ能力者の戦いを見せないようにする、正に一石三鳥の作戦である。
「3階はさっきの方に任せて……とりあえず私達は戻りましょう」
「そうね、行きましょ!」
 風華とあかねは互いに頷くと、皆の元へと急ぐのだった。

 誰もいなくなった中庭を、整然と歩く一団があった。
 全員が女性で皆一様に白い特攻服を着用し、その背には金の刺繍で燦然と『悪仇麗』の文字が躍っている。その雰囲気からして、かなり場数を踏んだレディース集団であろう事が見て取れる。
「……先手を取られてしまいましたね。ですが……ここより先には通しません」
 そんな一団の前に、凛として立ち塞がったのは秋扇・紫苑(夜の雫・b45670)だ。その言葉を合図にするかの様に、ばらばらと他の仲間も駆け寄ってくる。
「随分と大胆な行動に出ましたね……余裕がなくなってきた証拠でしょうか?」
 柔らかい笑みを浮かべつつ、鈴鷹・彩翔(リィンホーク・b22676)が呟く。その傍らには、彼の相棒であるケルベロスベビーの『サイ』も従っている。
「……君達が相手なのか? 面白い。我々『悪仇麗』を相手に、その人数で戦おうと――」
「黙れ」
 先頭を歩いていた、リーダーと思しきポニーテールで切れ長の鋭い目を持つ女性……このような道に入らなければモデルとしても活躍出来るのでは、と思えるほどの美女、ブリュンヒルデが薄く笑った直後、その口上を遮った者がいる。アリーセ・エルンスト(ソライロノカゼ・b33163)だ。
「機嫌が悪い故、容赦も情けも手加減もせん……ただ我々に断罪されろ!」
「……面白い。実に面白い」
 鋭く言い放ったアリーセが巨大な朱槍『ロードブレイザー』を構えると、ブリュンヒルデは再び薄く笑い、手にした弐振りの木刀を構える。その動きに習うように、後方の面々もそれぞれ素早く得物を構える。
「よくも俺の居場所を壊そうとしたな。よくも皆を怖がらせたな……絶対、許さない!」
 舞城・弓矢(鬼門封殺の破壊者・b57728)の想いを籠めた叫び。その声が合図となり、戦端は華々しく開かれたのだった。

●戦乙女、舞う
 先手を奪ったのは、『悪仇麗』であった。ブリュンヒルデが左手を上げると、直後に最後方から何かが放たれる。オルトリンデとグリムゲルデが幾本ものナイフを矢継ぎ早に放ってきたのだ。
「きゃっ!」
「うわっ! 飛び道具っ!?」
 あかねと煉が叫ぶ中、皆は矢のように放たれたナイフを慌てて回避するが、更に追い討ちをかけるかのように、後列から横へと飛び出た2人……ヴァルトラウテとロスヴァイセが、手にしていたチェーンを能力者目掛けて放つ。間が悪い事に、ナイフで体勢を崩していたため、僅かに侑香の反応が遅れてしまう。
「あうっ!」
 チェーンは彼女の胸と腕、そして足に命中。更に瞬間的に巻き付いたため、かなりの痺れが侑香を襲う。しかも今度は前列からゲルヒルデとシュベルトラウテ、ジークルーネの3人が、木刀を手に襲い掛かってきたのだ。
「調子に……乗るなよ……!」
「いつまでもやられてると思わないでくださいっ!」
「これ以上やらせねぇっ!」
 能力者達もこのままむざむざと攻撃を食らうばかりでは無い。これ以上の後衛への攻撃を防ぐため、アリーセと風華、そして弓矢が最前列に立ち、3人の木刀による突進を押し止めたのだ。
 しかし。『悪仇麗』の攻撃は、まだ終わりでは無かった。
 ブリュンヒルデの背後から飛び出したヘルムヴィーゲが、最も手近にいた者……アリーセへと襲い掛かり、その拳を叩き込んできたのだ。木刀を受け止めた真横からの攻撃に、思わず吹き飛んだアリーセの口から、鮮血が滴る。
「ぐっ……貴様……!」
 ナイフによる後方からの撹乱、チェーンによる足止め、木刀による攻撃、そして拳による止め。その想像以上の速度と連携に、思わず息を呑む能力者達。
 ここで諦めるのは簡単である。恥も外聞もなく逃げ出せば、怪我を負う事も無く逃げ切ることは出来るだろう。だが。
「ざけんなよ……ブリュンヒルデだ? ワルキューレだ……?」
 俯いたまま、ゆらりと身体を振る弓矢。その漆黒の髪が、瞬く間に伸びていく。己の弱さを呪う『呪詛檻髪』が、その力を解放するかのようにざわめく。
「……チンピラ風情が英雄の名を騙るな!!」
 まるで研ぎ澄まされた槍のような、弓矢の鋭い視線。その魔眼をまともに見てしまったオルトリンデが、苦しみ出すと同時に膝をつく。
 それが反撃の合図であった。
「先手必勝! やられる前に攻撃ですっ!」
 彩翔が右手を振るう。まるでナイフを投げるような体勢だが、放たれたのは更なる威力を秘めた、光で作られた槍。彩翔のその一撃は、苦しんでいたオルトリンデの身体を、違う事なく貫く。短い悲鳴をあげ、そのまま地に伏せるオルトリンデ。
 これが戦乙女達の一角が崩れた瞬間であった。しかも怒りに燃えた能力者達の反撃が終わった訳では無い。
「頂いた攻撃の分は……ちゃんとお返しさせて頂きます」
 その呟きと共に、フルラージュの手にしていた術扇がふっと消える。そして次の瞬間。
「あうぁっ!?」
「な、何っ?」
 グリムゲルデが途端に悲鳴を上げ、その場に倒れる。突然の事態に、驚きの声を上げる『悪仇麗』の面々。射程を延ばした上での透過攻撃……強化されたフルラージュの神霊剣が、まともに直撃したのだ。
「清浄なる風よ」
「アリーセさん、大丈夫!?」
 その間にも皆は、崩された戦線の修復を目論む。紫苑の言葉に応えるように、手にした詠唱銃『Al Nasl 』の回転動力炉が回り始め、侑香の身体から痺れを取り払い。アリーセに対してはあかねが即座に治癒符を使い、その傷付いた身体を即座に癒していく。
 さながら不死鳥のように立ち上がるアリーセ。その姿を見て僅かに動揺した『悪仇麗』の隙を、逃す筈は無かった。
「受けた痛み、万倍にして返すぞっ!」
 正に牙を剥く猟犬の如し。アリーセは咆哮すると手にした突撃槍を振るう。と同時に生み出された虚空の刃が、ヘルムヴィーゲへと襲い掛かる。
「なっ――!」
 その気迫に気圧されたか、動く事も避ける事も叶わず、虚空ギロチンはその身でまともに受けたヘルムヴィーゲと、運悪く直線上にいたシュベルトラウテを巻き込み、ものの一撃で2人を地へと倒れ伏す。
 一気に形勢は逆転する。が、なおも戦況は余談を許さない状況である。

●砕け、古の魂
「悪いけど、女の子だからって手加減はしないから」
 そう言うなり煉は、その身軽さを活かし一気に距離を詰める。狙いは後列……ヴァルトラウテ。その手に装着した発勁手袋『棺纜車』の甲に備わった回転動力炉が、唸りを上げる。と同時にその指先に集まる、極限まで練り込まれた気。
「ガード、できな――!」
 何かを言いかけたヴァルトラウテだが、全てを口に出す事は叶わなかった。メンバー中1、2を争うスピードを持つ煉の攻撃に対しガードする事も出来ず、一撃の下に吹き飛び倒れ伏すヴァルトラウテ。
「……よくも!」
 その隣にいたロスヴァイセが、再びチェーンを振るう。至近距離の煉を狙った、強力な一撃。
 されど、その攻撃も届かなくば意味は無い。2人の間に割って入るように、立ち塞がった影。
「私がいる事も、忘れないでくださいね?」
 風華だ。その両手にあるのは、2つの布槍――霊装『天手力』と呪装『業封』。自らの体内の気を覚醒させた風華が、激しく回転しながら連続の蹴りを放つ。青龍と白虎の力を最大限に活かした、龍尾脚による一撃。最早ロスヴァイセに耐える術は無かった。
 残る敵は3人。だが、再び『悪仇麗』は攻撃へと転ずる。残る木刀使いの3人が、横一列に並び突進してきたのだ。
 味方は攻撃へと転じた事から、数人単位で分断されている。このままでは各個撃破される可能性があるのだ。
 されど、そこで運は能力者達に味方する。
「私に出来ることをやるだけですっ」
 侑香の持つ詠唱輪『Cold mint』が高速回転を始める。その直後、その身体から生えてくる狐の尻尾と耳。その回転が最高点まで達した時、数多の星の輝きが降り注ぐ。
「なっ? か、身体が……」
 動きを止める石化の効果。ゲルヒルデが呻き声を上げ、その場にて動きを止めてしまう。後に残るは、リーダーのブリュンヒルデとジークルーネのみ。
「そろそろ年貢の納め時だね?」
「く……黙れっ!」
 煉の挑発の言葉に、ブリュンヒルデは弐振りの木刀で斬りかかる。リーダーと言うだけありその太刀筋は鋭く、煉は慌てて後方へと飛び避ける。
「さすがリーダー、ですね……でも、僕達も負けられませんっ!」
 ケリをつけるべく、彩翔が再び右腕を振るう。同時に高速で回り始める、念動剣『彩鷹』『翔鷹』の回転動力炉。
「自らの愚かさを知りなさい」
 それだけでは無い。紫苑が両手に詠唱銃を構え、攻撃の態勢に入る。
「「……当れぇ!」」
 同時に放たれる、彩翔と紫苑のダブル攻撃。まるで光の如く放たれた2人の攻撃を避ける術は無く。全てをその身に受けたブリュンヒルデは、ばたりと差の場に倒れ伏す。
 残るはただ一人、ジークルーネ。最後の一人になっても、その目から闘争心が消える事はなさそうだ。
「その闘争心、素晴らしいと思います……立場と出会い方が違えば、もっと良い関係が築けたでしょうね」
 フルラージュが静かに語りながら、術扇を構える。と同時にジークルーネがフルラージュ目掛けて突進する――!
「……ですが、ごめんなさい。私達は絶対に、ここで引けないんです」
 静かに告げる、終幕の訪れ。再び消えた術扇が、ジークルーネの残る体力を内部から全て奪い去り。
 今この場に、能力者達の勝利が確定したのだった。

●休息、そして決戦へ
「とりあえず……お疲れ様でした」
 ようやく終戦を向かえ、ほっとしたように彩翔がねぎらいの言葉をかける。こちらの被害もそれなりに出ているため、完勝とは行かないのだが。
「皆さんご無事ですか? お怪我などされてる方はいませんか?」
「かなり激しい戦いだったからね……それに、まだ終わった訳じゃないわ」
 フルラージュが皆に白燐の力を用いて癒していく中、あかねはまだ緊張を解かぬ顔で周囲を見回す。
 今だ学園内では、戦闘が続いている場所もあるのだ。この場に限らず、息をつけるのはもう少し先になりそうである。
「とりあえず……こいつらには聞きたい事がある」
「そうですね。天竜頭蓋の所在……吐いてもらいませんと」
 弓矢と紫苑が、倒れている『悪仇麗』のメンバーを見下ろす。まずは意識が回復しても問題ないよう、縛り上げるべきだろうか。
 そんな時、何処からか大きな声が響く。
「まさか……頭蓋か?」
 声を聞きつけアリーセが周囲を見回すが、それらしき者は見当たらないようだ。
「むむむ……ちょっと不安ですね。学園内を見てきます!」
 そう言うなり、風華は脇目も振らずに駆け出していく。彼女自身が配した、目隠しのカーテンなどの心配もあるのだろう。
「やれやれ……流石に、お弁当食べる時間は無さそうだよね」
「そんな時間と余裕は無さそうね……」
 のんびりとした煉の言葉に、あかねが苦笑いしながら答える。
「とりあえず、縛り上げましょうか。話はそれからです」
 紫苑の言葉に、弓矢や彩翔が頷くと、それぞれロープを手に『悪仇麗』の捕縛作業へと移る。

 学園を護ると言う彼らの想いが、勝利を呼び込んだ激しい戦い。
 ここにひとつの尊き戦いは、勝利と言う形で終結を迎えたのだった。


マスター:嵩科 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/11/30
得票数:カッコいい15 
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