無限の苦しみ


<オープニング>


●富山県某所
 作業中に事故が起こったせいで、閉鎖された工場がある。
 この工場では鉄などを溶かすため、溶鉱炉が設置されていたのだが、作業中のミスが原因で大爆発を起こし、何人もの作業員が命を落としてしまったらしい。
 しかし、工場側は色々と理由を付けて責任を取らず、遺族に対して何の保証もせず、工場を再開するため全力を注いでいたようだ。
 それでも、遺族側は保証を求めて工場側と争い、地元の新聞紙なども巻き込んで、工場側の不正を見つけて追い込んだようである。
 そのため、工場は再開する事なく、そのまま廃墟と化した。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、閉鎖された工場。
 ここの工場は生産第一で従業員達の事を全く考えず、重労働をさせていたから、色々とトラブルが多かったみたい。
 閉鎖された工場内にはリビングデッドと化した従業員達がいて、ドロドロになった顔で助けを求めて襲い掛かってくるわ。
 それと、溶鉱炉があった場所が特殊空間と化していて、地縛霊と化した男性が留まっているようなの。
 地縛霊の顔もドロドロに溶けていて誰だかよく分からないけど、かなり苦しんで亡くなったらしく、悲鳴を上げて火の塊を飛ばしてくるわ。
 しかも、特殊空間の中は溶鉱炉の熱でとっても熱いから、大火傷を負う前に倒しちゃってね。

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参加者
夜久・紀更(ノーチェブエナ・b07881)
浅香・凛(真コロコロコミック・b18933)
菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
国見・繭(薫風の乙女・b32693)
御鑰・陽一郎(オックルタメント・b35995)
犬塚・沙雪(通りすがりの正義の味方・b38003)
シュベルト・オセ(朱ナル混沌・b47155)
マヤ・アステカ(ククルカン・b74564)
水城・月依(湖底に沈む月影・b74740)
山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)
大沢・颯壱(ピンキッシュデジタリズム・b78739)



<リプレイ>

●憎しみの連鎖
「話を聞く限り、とても酷い事件だったようですね。会社側が遺族に何もしないというのも……これでは潰れて当然だと思いますが……。しかし、あの廃墟には、思念が渦巻き蠢いている。これでは被害者が救われません。倒す事でせめてこの地から解放できると良いですが……」
 ゴーストが確認された廃工場を睨み、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)が険しい表情を浮かべた。
 工場ではサービス残業が当たり前になっていたらしく、タイムカードに退社記録をさせてから、過酷な労働を強いていたようである。
 それでも、ほかの会社と比べて給料が高かったため、従業員達も我慢していたようだが、睡眠不足が祟って事故を引き起こしてしまったようだ。
「従業員の事を考えず、好き勝手やってた工場なんて、潰れてあたりまえだよっ。キキ管理とかだっけ? それをちゃんと考えてれば、大爆発も怒らなかっただろうし……」
 不機嫌な表情を浮かべ、山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)が口を開く。
「やれやれ、工場の事故が原因でこの体たらく。欲望とは恐ろしいものだが、発展のためには必要なのかね」
 複雑な気持ちになりながら、シュベルト・オセ(朱ナル混沌・b47155)がどこか遠くを見つめる。
 実際に無理をして生産数をあげず、きちんとした労働時間で従業員達を働かせていれば、このような事故が起こる事もなかっただろう。
「でも、安全を第一に考えない企業ってのは、なんなんだろうな。今さらそれについて考えても仕方ないが……」
 少し寂しそうな表情を浮かべ、犬塚・沙雪(通りすがりの正義の味方・b38003)が溜息をもらす。
 しかも、工場側は無理な受注でも必ず引き受けていたらしく、その負担がすべて従業員達に圧し掛かっていたようだ。
「……とは言え、こういう事をするとこには勤めたくないよな。……ホント、どうすっかなぁ、進路」
 困った様子で、夜久・紀更(ノーチェブエナ・b07881)が呟いた。
「かつて日本では労働者に対して辛い作業を敷いていた事があると聞きましたが……きついですね」
 噂話を思い出しながら、浅香・凛(真コロコロコミック・b18933)が従業員達の気持ちを考える。
「確かに、昔は生産性優先で作っとったけど、安全性優先にしたら生産性上がったとか言う事になったんやったっけ? まぁ、何より危ない所より安全な方がエエんやけど、工場側は生産数の事しか頭になかったようやな」
 当時の新聞記事に目を通し、菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)が答えを返す。
 記事には従業員達が口裏を合わせ、亡くなった人達にすべての罪をきせ、工場を再開しようとした事も書かれていた。
「我が故郷の宗教には人身御供の風習があった事もあった。その風習は我が神によって止められたが、少なくとも自ら進んでニエとなった者達で、残された者は神とその者に敬意を表したものだった……。しかし、ここで死んだ者は、自ら望んだわけでもなく、また敬意を受けるどころか切り捨てられていたとは…。金を儲けるとは本当に魔性の行いにも等しいのかも知れませんね」
 亡くなった従業員達の無念を痛いほど感じ、マヤ・アステカ(ククルカン・b74564)が悲しげな表情を浮かべる。
「これはどう考えても会社の方が悪いよ。責任も取らないで利益だけほしがるなんて。人間だって生身だもの、ロボットじゃないんだから! ここにいるリビングデッドたちは被害者だよね。早く救ってあげよう」
 仲間達に声をかけながら、大沢・颯壱(ピンキッシュデジタリズム・b78739)が廃墟と化した工場に入っていく。
 工場の中は未だに焦げた臭いが漂っており、空気が汚れているせいで何度も咳き込んでしまうほどだった。
「そう言えば、リビングデッドの人達は、溶鉱炉の爆発に巻き込まれた人達でしょうか? だとしたら、辛かったでしょうね。そんな目に合って」
 事故にあった従業員達の事を考えながら、御鑰・陽一郎(オックルタメント・b35995)が同情する。
「でも、それだと熱いとか感じるヒマも無いぐらいに全身を焼かれてしまうでしょうから、逆にどこかに閉じ込めらたまま蒸し焼きにされてしまった人なのかも……」
 思わず想像してしまい、国見・繭(薫風の乙女・b32693)が南無南無と両手を逢す。
「事故とはいえ悲惨な死、そして怨み辛みはありましょう。苦しいのなら、手を貸すつもりです。その手は閻魔様かも知れませんが……」
 覚悟を決めた様子で、水城・月依(湖底に沈む月影・b74740)がゴーストの確認された場所を目指す。
 例え、相手が誰であれ、倒す事には変わりがないのであれば、その相手を知らない方が、同情する事がない分、戦いやすいかも知れない。

●絶えぬ苦しみの中で
「焼け爛れてドロドロ、か。一時的に更なる苦しみを与えるが、すぐ楽にしてやる」
 工場にウロつくリビングデッド達を発見し、シュベルトがシャーマンズゴースト・ファラオのくっくるーにゴーストガントレットを付与する。
「あなた達は被害者です、よくがんばりました……って言いたかったけど、うわこれ夢に出そう……」
 リビングデッド達に視線を送り、颯壱が冷や汗をダラリと流す。
 まわりに集まってきたリビングデッド達の身体は焼けただれ、顔が崩れて男女の区別すら出来なくなっていた。
(「……隕石の魔弾使用を一瞬考えたが、この人達が溶鉱炉の爆発に巻き込まれたなら、きっと熱い想いをしたんだろう。多分、これは甘い考えだろうけど……、亡くなった時に近い事をするのは気が引ける。結局の所攻撃するんだから……、それも微妙なんだけれど」)
 魔弾の射手を発動させながら、陽一郎がリビングデッド達に視線を送る。
 リビングデッド達はうわ言のように『熱い、熱い』と言っているが、もはや救う術は……ない。
「せめてここからだけでも、解き放ってあげないと……」
 自分自身に言い聞かせながら、凛がギンギンカイザーXを口に含む。
 その間にリビングデッド達が距離を縮め、『た、助けてくれ……』と言って涙を流す。
「とても辛かったでしょう……ですがこれで終わりになります」
 リビングデッド達に語り掛けながら、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、着弾点で黒燐蟲が弾け飛び、リビングデッド達に食らいつく。
 そのため、リビングデッド達は『熱い、苦しい、痛い』と悲鳴をあげたが、その言葉に耳を傾けるわけにはいかなかった。
「……常世の門を見つけれぬ迷い人達よ。我れが信仰する神の慈悲により、そなた達の魂を黄泉へと導かん……。恐れず神の裁定を受け入れるがいい……」
 魔弾の射手を発動させながら、マヤがリビングデッド達の死角に回り込む。
 リビングデッド達は全身焼けただれているせいか小回りする事が出来ないらしく、視界内から急にマヤが消えた事で攻撃対象を失っていた。
「そんな姿のままだと、同情できなくなるじゃないですか! だいたいなんでドロドロなんですかっ!」
 リビングデッド達にツッコミをいれながら、颯壱がライトニングストームを放つ。
 しかし、リビングデッド達だって、好きでこんな姿になったわけではない。
「あまり無理せずに……、これ以上は崩れてしまいますよ、顔が……」
 相手の行動パターンを読みながら、洋角が最小限の動きで避けていく。
「せめて、これ以上の痛みを知らず逝くがいい」
 リビングデッドの頭を狙い、シュベルトが穢れの弾丸を放つ。
 それに合わせて、くっくるーがファラオファイアを放ち、リビングデッドの体を魔炎に包む。
 その苦しみは爆発に巻き込まれた時と比べれば可愛いものであったが、それでも永遠の苦しみから逃れるには十分な一撃であった。
「こんな日本の黒歴史は、ここで終了です!」
 少しずつ間合いを取りながら、凛がブラックヒストリーを放つ。
「これで『かいほう』してあげます……、ゆっくりとお休みください」
 リビングデッドが弱り始めた瞬間を狙い、洋角が呪いの魔眼を炸裂させる。
 それでも、リビングデッド達は唸り声を響かせ、『た、助けてくれ』と迫ってきた。
「風よ、我が名を称えよ……。自らの身体を火の神に捧げ、我が前の虚空をその慈悲と共に焼き尽くせ!」
 仲間達と連携を取りながら、マヤが炎の魔弾を撃ち込んだ。
 それに合わせて、仲間達が一斉に攻撃を仕掛け、リビングデッド達を次々と倒していった。
「せめて安らかに眠ってほしい。もう苦しい想いはせずに眠って下さい」
 リビングデッド達を全滅させ、陽一郎が彼らに別れを告げる。
「普段と変わらない依頼をこなしただけ……の筈ですけど、なぜだか今回は虚しい感じですね。この地に今なお残る哀しさがそう思わせるのでしょうか。こんな物では慰みにならないとは思いますが……」
 季節に合わせた柊の花と冷たいお茶を供え、凛が彼らの冥福を祈って両手を合わす。
「うわわ……、服までドロドロ……。イグニッションを解除すれば、元通りになるとはいえ……、辛いなぁ、この状況……」
 魂の抜けた表情を浮かべ、颯壱がその場に崩れ落ちる。
「それにしても、今までのコペルニクス、バスカウィルと違い、反抗的でないお前は良い子だよ、ハッハッハ」
 思いっきりくつろいだ様子で高笑いを響かせ、シュベルトがくっくるーの頭を撫でる。
 しかし、くっくるーはアンクを振り下ろし、『お嫁さんに脅されて、人の名前を妥協してクックルー・ファラ雄にしたくせに!』と書かれたスケッチブックを掲げるのであった。

●溶鉱炉の熱さ
「あっつ〜いっ! こんなところに長い間いたら、干乾びちゃうよ……。早く終えて冷たいものでも食べよ〜!」
 地縛霊が作り出した特殊空間に引きずり込まれ、進が全身にビッショリと掻いた汗を拭う。
 特殊空間の中には巨大な溶鉱炉があり、沢山のデスマスクが壁一面に飾られており、その中で地縛霊は苦しそうな表情を浮かべて立っていた。
「……熱ィな! さっさと終わらせて、脱出しようぜ!」
 仲間達に声をかけながら、紀更が黒燐奏甲を発動させる。
 その間も溶鉱炉の温度が増しており、汗で洋服がベットリと肌にこびりついた。
「冬でもこの熱さはしんどいやろなぁ。……ほな楽にさせたろか」
 溶鉱炉の壁に近づかないようにしながら、蒼十郎が天妖九尾穿を撃ち込んだ。
 それと同時に地縛霊が『俺を傷つけるつもりでいるのなら、お前達も道連れだ!』と叫び、アングリと口を開けて火の塊を飛ばしてきた。
「お、落ち着いてください。地縛霊さん、今から私達があなたを成仏させてあげます」
 仲間達の陰に隠れて火の塊を避けながら、繭が地縛霊めがけて武装解除弾を撃ち込んだ。
 それに合わせて、サキュバス・ドールのサユリがコスチュームプレイで雪女になり、『なるほど、サユリ先生。それで冷ましてあげるんですね!』と繭から声をかけられた。
 次の瞬間、地縛霊が苦しそうに胸を掻きむしり、『く、苦しい』と叫んで火の塊を飛ばす。
「そんなに苦しいの……? 僕達がその苦しみから救ってあげるから、大人しくしててねっ!」
 仲間達と連携を取りながら、進が地縛霊にフロストファングを叩き込む。
 その一撃を食らって地縛霊が血反吐を吐き、『ふざけた真似を……。こんな事をしたら、余計に苦しくなるじゃねえか!』と叫び声を響かせた。
「……なら今その苦しみから解放してやる。……行くぜ」
 一気に間合いを詰めながら、沙雪が地縛霊に黒影剣を叩き込む。
 それと同時に地縛霊が『痛ぇ!』と叫び、近距離から火の塊を吐いて、沙雪の体を吹っ飛ばした。
「随分と苦しそう、だな。さっさと解放してやる。全力で行くぜ!」
 顔も溶けて、苦しそうな様子に、嫌悪感と、幾許かの哀れみを感じながら、紀更が呪いの魔眼を発動させる。
 しかし、地縛霊は『だから痛ぇって言っているだろうが!』と叫び、再び火の塊を飛ばしていく。
「それにしても……、暑いですね」
 何度も汗で足を取られながら、月依がその場に倒れた沙雪が抱き起こす。
 それに合わせてスカルロードの兄様が前に陣取り、月依達が安全な場所に移動するまでの時間を稼ぐ。
「えっ、サユリ先生なんですか? 炎よりもっとスゴイ事で、熱さを忘れさせてあげる?」
 不思議そうに首を傾げながら、繭がサユリを視線で追う。
 サユリは地縛霊の体に纏わりつくと、そっと指を這わせて精気をむさぼった。
「さあ、地獄行きの切符です。お受け取りください」
 仲間達と連携を取りながら、月依が呪殺符を投げつける。
 しかし、地縛霊は『地獄なんて、逝ってたまるか!』と叫び、火の塊を飛ばしていく。
「それじゃあな。安らかに眠れるよう、祈っててやるぜ」
 地縛霊の死角に回り込み、紀更が長剣でバッサリと斬り捨てる。
 次の瞬間、地縛霊が『せめてお前達のひとりでも道連れに出来れば……』と捨て台詞を残して特殊空間もろとも消滅した。
「……寒っ!」
 特殊空間内の温度と季節の外気温の違いに驚き、沙雪がガタガタと身体を震わせる。
「は〜、外は涼し〜ね〜っ♪ もう熱さで溶けちゃうところだったよ……。冷たいアイスでも食べたいな〜っ♪」
 余計にその涼しさで心地よい気持ちになりながら、進がホッとした表情を浮かべた。
「これでよーやく炉も落とせたっちゅー感じやな」
 苦笑いを浮かべながら、蒼十郎がイグニッションを解除する。
 その途端、完全に服が元通りになり、幸せな気持ちを全身に包む。
「彼岸の頃に咲くから『彼岸花』、しかし、曼珠沙華と言われれば『天上の花』の意。不思議ですね……。僕はとても綺麗だと思うので好きなのです。『悲しい思い出』がどうか彼の岸で癒されますよう……」
 犠牲者達の冥福を祈りながら、月依が溶鉱炉の跡地に彼岸花を供える。
 その花に願いを込めるようにして、月依達は犠牲者達の冥福を祈るのだった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/11/28
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冒険結果:成功!
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