俺はなまけたいんだ、ゴロゴロしたいんだぁ!


<オープニング>


 とある田舎道を、中学の制服を着た男女二人が歩いていた。
「ほら、ケンジ! ぐずぐず言わないっ」
「……やだなあ……学校行きたくないなあ、なんにもしたくないよう、自分の部屋に帰りたいよう」
 学校に行きたがらない男子を、女子が叱りつけながらむりやり歩かせている。
「……だめっ。さぼってばっかりじゃっ、良い大人になれないんだからっ!」
『ダマレェッ! 俺ハ、自由ナンダア! ズット、ゴロゴロスルンダ、口出シスルナァ!』
 女子の声に、突然、大人の声が割り込んだ。声のした方向を見れば、大きな枕を手にした、パジャマ姿の男。
 じゃらり、男の足元から鎖の音。

「お集まり頂き、ありがとう」
 運命予報士の少女が能力者へと頭をさげる。そして説明を開始した。
「地縛霊の存在を確認した。場所はとある田舎道。
 このままでは、一般人のカップルが地縛霊に遭遇し、殺害されてしまう。
 だが、今から行けば、事件の前日の昼に、現場に辿りつける。――君達の手で未来を変えてほしい。どうか、お願いだ」
 皆に頭を下げる予報士に、
「おまかせくださいな〜」
 とのんきな声。ふくよかな体格の女子中学生――辻丘・ほあん(中学生ゾンビハンター・bn0298)が請け負った。

「それで、地縛霊はどうしたら出てこられるのでしょうか〜?」
「地縛霊の出現条件は……『なまけ者が叱られている』という状況で、出現するようだ」
 能力者達で、なまけ者と、それを叱る人物を、演じる必要があるだろう。
 叱る人物や叱られる人物は、一人でなくてもよい。例えば、一人が沢山のなまけ者を叱っていても、あるいは一人のなまけ者が大勢に叱られていても、大丈夫だ。
 出現する地縛霊は20代前半の青年。パジャマ姿。
 枕で殴ってきたり、枕を投げつけてきたりする。
 また、『ハタラキタクナ〜イ』と間延びした声で、20メートル内の全員に眠気をもたらす力を持つ。
 布団をかぶることで、自分を回復させ、強化することもできるようだ。
 援護ゴーストとして、子犬の妖獣が二体現れる。
 噛みつきで襲ってくるほか、近接する味方に身をすりよせ、傷や状態異常を治す力もある。ただ、全般的に地縛霊よりも弱い。
 なお、戦闘中に一般人が来ることはない。

「パジャマ姿で、お布団をかぶる地縛霊……。どうして、そんな格好なのでしょう。?」
 ほあんの問いかけに、予報士が何かを思い出したような顔になる。
「そういえば、その辺りには、ひきこもっていた青年がいたそうだよ。
 でも、親しい人達の励ましのお陰で、外に出ることを決意。求職活動に出かけようとして、家を一歩出たその数分後に――交通事故にあい、お亡くなりになったとか。
 彼は死の間際に何を――失礼。今回の事と関係があるかどうか分からない、ただの噂だ」
 予報士は能力者――貴方達の目を見つめる。
「いずれにしろ、地縛霊は倒すよりほかにない。確実に葬ってくれ、お願いする」
 予報士は、あなた達を激励し、見送るのだった。

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参加者
伊集院・輝(双剣騎士・b00950)
ルリナ・ウェイトリィ(白金の月・b22678)
日向・修一郎(は嫁の戮屠が命・b39150)
凍夜・夢流(夢のひとひら・b45667)
ジンク・ネームレス(ボールライトニング・b46260)
舞岳・貴乃子(白茸姫・b63893)
小鳥遊・陽太(中学生真コミックマスター・b66965)
大沢・美風(トパーズオートメタリックス・b77387)
NPC:辻丘・ほあん(中学生ゾンビハンター・bn0298)




<リプレイ>


 田舎道。陽光が地面に降り注いでいた。
「ほら、こんなに素敵なお日さま。だらだらしてたら一日がもったいないです! しっかりしてください! もう学校にいく時間なのですよ」
 小鳥遊・陽太(中学生真コミックマスター・b66965)は、空を指差していた。
「学校ってたのしいですよ。友達がいます。笑顔があります。ひな銀誓館だいすきです! 一緒に学校にいきますよ!」
 指差していた手を腰に当て、仲間の二人を叱りつける。
 叱られているのは、凍夜・夢流(夢のひとひら・b45667)と大沢・美風(トパーズオートメタリックス・b77387)。二人とも、地面に座り込んでいる。
「……学校の机よりおふとんがいいの、です。おねむなの……です。……おふとんから出たくないの、です。お部屋に帰るの……です」
 夢流は、アヒル型の枕を抱きしめつつ、いやいや、と首を振る。『もっと寝たいの、です。一日中寝るの、です〜』と、とろんとした目で訴える。

 怠ける二人、それを叱る四人。六人は、地縛霊を誘いだすため演技しているのだ。
 能力者九人のうち残り三人は、近くの電信柱の陰から、仲間を見守っていた。
 日向・修一郎(は嫁の戮屠が命・b39150)は、横にいる辻丘・ほあん(中学生ゾンビハンター・bn0298)に声をかける。
「ほあん。地縛霊が出たら作戦開始だ。手筈通り戦えば、難しい戦いじゃねぇ。リラックスしていこうぜ」
 今回が初依頼という仲間を気遣っての言葉。ほあんは顔をほころばせた。
「お気づかい、ありがとうございますぅ〜」
 ルリナ・ウェイトリィ(白金の月・b22678)は、無表情。周囲に鋭い視線を走らせ続けている。地縛霊の出現に、即座に対応できるように。ふと、紫の瞳をある一点で止め、
「……叱られ役のお二人は、本当に演技ですよね?」
 と首を傾げる。視線の先には、美風。

 美風は夢流の隣で、座りながら読書の最中。大量の本を傍らに積み上げている
「学校に行かなくても、勉強なら家でもできるじゃない。学校行く時間がもったいないわ。外に出るなんて面倒なことしたくない〜」
 美風は、叱る仲間に、反論する。本のページから目を離さずに。
 彼女の前に、ジンク・ネームレス(ボールライトニング・b46260)が立った。
「勉強だけが学校じゃないだろ! 本を読んでるだけじゃ、友達と遊べないし、散歩もできないよ!」
 膝を曲げ、座り込む二人と視線の高さを合わせながら、ジンクは力説。
「凍夜に大沢。ニートになりたいのか……」
 ぼそり、伊集院・輝(双剣騎士・b00950)が呟いた。
「昼起きてサイトチェック……家族の留守を見計らい台所で食料調達……夜の団欒の時間帯にはいたたまれずに本屋やゲーセンをうろつく……皆が寝た頃、家へ戻り風呂を暖め……そんなニートになりたいというのか……?」
 輝は淡々とした口調で、ニートの恐ろしさ、切なさを語り続ける。
 わなわなと震えたのは、舞岳・貴乃子(白茸姫・b63893)。手を上にあげる。
「そんな生活などさせるものか! 腑抜けどもがっ、我が愛の鞭で目を覚ませ!」
 彼女の手には自称『愛の鞭』。ハリセン。座り込む二人へ振り落とす。
 すぱぱぁん!
 青空の下、実にいい音が響いた。
 音の直後、
「ウルサイッ! 俺ハ、ごろごろ、スルンダ。無理ヤリ連レ出スナァ!」
 青いパジャマ姿の男が能力者の前方に姿を現す。
 男の足首には鎖。地縛霊だ。
 能力者は視線をかわしあう。演技していた者も、隠れていた者も、
「「イグニッションッ!」」
 声をそろえ、起動する。


「嫌ダッ! ゴロゴロォ、スルゥッ!」
 喚く地縛霊の隣には、援護ゴーストたる白い子犬の妖獣、二体。地縛霊の声に応じ、跳びかかる。標的は――前衛のルリナ。
 ルリナは表情を微塵も動かさない。
 一体の攻撃をサイドステップで回避。もう一体の体を黒と銀、二振りのアームブレイドではたき落とす。
 ルリナは止まらない。姿勢を低くし――落下した子犬をグラインドスピンで、蹴る。
「俺もいくぜ。加減はしねぇ。――とっと終わらせるっ!」
 苦しむ犬を迂回して突き進むは、修一郎。両端に棘鉄球のついた『ルキフェル』に、魂の熱を乗せ、地縛霊の顔面を殴打。敵を炎で焦がす。
 だが、修一郎も姿勢を崩す。彼の攻撃とほぼ同時に地縛霊の枕――石のように硬いそれも、彼の顔を打っていたのだ。
 後衛の貴乃子は、深く息を吸い込んだ。
「白き友よ……、汝の活力を彼の者にも分け与えたまえ!」
 盟友たるファンガスの力を借りて、修一郎から痛みを取り払う。
 貴乃子の隣には、夢流。真モーラットピュアのクランへ指示を飛ばす。
「クランファイヤーなの、です。がんばるの、ですよ〜」
 クランは指示に従い、子犬へ近づいた。牽制の火花を放つ。
 夢流も力を解放。夢幻の力を持つバリアで、皆を包んで守る。

 他の者も己や仲間を強化し、あるいは子犬や地縛霊を攻撃していく。
 今もまた美風が、
「……ウイルス、『不浄泥濁陣』展開!」
 足元にどす黒い沼を出現させた。不浄の気で、敵の体を蝕む。
「モウ嫌ダァ……」
 地縛霊は膝をつく。痛がっている? 否。地縛霊はふぁ……とあくびした
「モウ働キタクナァ〜イ」
 間延びした声。その声は、力を秘めていた。
 輝とジンクが眠りに落ちる。
 陽太もまた、うとうとしかけたが……かろうじて堪えた。
「負けないのですよ! ひなの描いたわんこさん、お願いしますのです!」
 スピードスケッチを行使し、白わんこを呼び出す。白わんこは妖獣の子犬に体当たり!
 陽太は後方を振り返る。そこにいるのは、ほあん。陽太の合図に、ほあんは、首を縦に振る。
「かしこまりましたわ〜。お二人とも、おきてくださ〜いっ! 粉塵爆発〜っ」
 ほあんの爆風。眠っていた者たちが目を覚ます。
 輝は無言で一礼。敵へ向き直った。
 オーラをまとわせた拳を振るう。犬の頭へ、胴へ、拳を叩きこむ!
 子犬は、きゃいん、と鳴く。後ろに下がろうとする。
「……ジンク、頼む」
「任せろ! ――ゴースト達、何があったか知らないけど、生きている人に迷惑をかけるなっ!」
 ジンクは地縛霊の前にいたが、体の向きを変える。跳んだ。空中を移動。下がろうとしていた子犬へ、三日月の軌道を描く蹴りを、振り落とす。
 子犬は身を震わせた。既に満身創痍だ。


 傷ついた子犬を、もう一体の子犬が回復しようとしていた。
 が、その子犬にクランが飛びかかる。回復の邪魔をする。
「おねむするといいの……ですよ」
 さらに、夢流が暗黒の塊を爆発させた。回復を行おうとしていた子犬を、眠りの世界へ。
「……敵一体の睡眠を確認。……重症の別個体へ、攻撃プログラム『ライトニングヴァイパー』発射!」
 機械的な声を紡いだのは、美風。片腕の掌を敵に向け、電撃を正確な狙いで打ち放つ。子犬の意識と偽りの命を刈り取った。

 子犬一体に攻撃を集中する戦術が、功を奏した。敵の数を減らしたことにより、戦況は一気に能力者へ傾く。
 数十秒経過し、残る子犬も能力者の猛攻に、沈む。
「モ、モウ、イヤダアッ……ネテタイヨウ」
 ぐずる地縛霊に言葉を返したのは、
「……お前の、その言葉は、ただの甘えに過ぎない」
「寝ているだけじゃ何も変わらない。お前も本当は分かってんじゃないのか?! お前の嘘を終わらせてやる、俺の全速で!」
 輝とジンク。二人は今まで戦う中で、己を強化していた。
 輝は、蒼の剣に覚悟と凍気を宿し、敵を――斬る! 暴風をまとうジンクが放つは、クレセントファング!
 地縛霊は、うつぶせに倒れた。が、数瞬後、立ち上がる。
「今度こそぉ、とどめですわあ〜……あら〜〜?」
 ほあんがフレイムキャノンを放つが、地縛霊は枕で火を叩き落とす。
 地縛霊は、口を大きく開けた。
「……ファァァ………っ」
 あくびの音が持つ魔力が、貴乃子を襲う。貴乃子は地面に膝をついた。
「いたいのもねむいのも一気に飛んでいきますよ!」
 陽太が貴乃子の体へ、栄養瓶を投げた。
 陽太の声と、栄養剤は仲間に活力を取り戻させる!
「感謝いたします、小鳥遊殿!
 地縛霊、そんなに動きたくなくば、動けなくさせてやる! ――白き友よ。奴に寄生し、その動きを止めてくれ!」
 貴乃子は地に膝をつけた体勢のまま、装着した『ランスイル』の先端を敵に向ける。ファンガスの力を行使。地縛霊に麻痺をもたらす!
 自由を取り戻そうともがく地縛霊の正面に立つのは、修一郎とルリナ。
「いっくぜえええっ! ――地縛霊、ひきこもってんじゃねぇっての!!」
「例の青年には同情はしますが、地縛霊は殲滅するだけ」
 地縛霊のみぞおちに直撃するのは、修一郎の――プロミネンスパンチ!
 ルリナはクレセントファング。サンシャインドライブで威力を増した踵を、首の後ろに!
 地縛霊はしばらく呆然と能力者たちをみつめ
「……外ニ、デナケレバ……オレハ……」
 そして消滅した。


 ルリナは敵の完全消滅を確認したのち、戦闘態勢を解いた。
「しかし、なぜ同伴のゴーストが子犬の妖獣なんでしょうね……何か訳があるのでしょうか? ……いえ、分かっても、何も変わらないですけどね……」
 敵のいた方向を見ながら、小さく呟く。
 貴乃子もまた、同じ場所を見ていた。
「……噂の青年に事故……地縛霊、子犬の妖獣……。……きっと関係があるのであろうな……」
 貴乃子は荷物の中から花を取り出す。道端に添えて、冥福を祈る。
「眠れ、むしろ、安らかに」
 言葉を贈ったのは、ジンク。その顔には、運の悪かった青年への同情。
 輝は目をつぶっていた。やはり、死者の事を思っていたのか。目を開け、顎を片手でさすった。
(「――……それにしても、やれやれ……今日は少し喋りすぎたか……」)
 と、口の中だけで言う。
 
 死者に言葉や想いを向ける仲間の隣で、
 夢流は、アヒルの枕に顔をうずめていた。
「眠いの……です。おうちかえったらお昼寝しようかなぁなの、です」
「おう。帰るとするか。しかし、帰ったら課題とかバイトとかやることが山積みだな……。……サボって寝てぇな」
 おっとりとした口調の夢流に、修一郎が同意する。自分も寝たいと口にしてから、ダメか? と頭をかいてみせた。
「叱られ役のお二人とも、とてもリアルでしたけど……夢流のあれ、演技じゃなかったのですか? ……って修一郎までサボるのですか?!」
 と、陽太は仲間の顔を見、思わず瞬き。
 そんな三人の様子に、能力者の何人かがくすりと笑う。
 美風も微笑していた。
 ふと、捧げられた花に視線を向ける。
「まあ……不運だったわね。でもごろだらは、もうだめよ?」
 事故で亡くなった青年へ、言葉をかける。
 返事はない。ただ、どこか遠くの鳥の鳴き声が、ささやかな風に乗り、聞こえてきた。


マスター:えのそら 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2010/12/15
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