<リプレイ>
●悪夢再来 再びナイトメアビーストの侵攻を受けた銀誓館学園。 今回の敵は、「お菓子ハウス」こと誘森菓子子(23)である。幼い子供をいじめるのが大好きと言う悪趣味女。通常ならば23はまだまだ年齢を気にする歳ではないが、ひらひらドレスとぬいぐるみ姿はさすがに違和感がある。 菓子子は給食時の小学生達を標的に定め、お菓子の教室に彼らを閉じ込めてしまったのだ。 小学生達はもとより、そこから大量のはらぺこドラゴンが発生する様な事態になれば、銀誓館が崩壊してしまう。 そんな切羽詰まった状況で、能力者達はスクランブル出撃を余儀なくされていた。
●臨戦! 調理室 (「これ以上、一般人を巻き込む事態を許す訳にいきません!」) 割烹着を身に着けた深海・香澄(悠久の探求歌・b02261)は、どこか古風な良妻風の趣。包丁を握る姿も、堂に入っている。 もちろん見た目だけではない様で、舌平目や鮭、海藻に野菜と多くの食材を前に腕まくり。 緊急事態に料理とは不似合いな気もするが、子供達をお菓子ハウスから救う為には、美味しい手料理は必須。まずは愛情篭めた手料理を用意すべく、8人は調理室へとやって来たのだ。 「よくもチビッコをターゲットにしたな、許さない!」 子供好きの琴之音・琴子(とこしえの旋律・b05004)にとって、菓子子は許しがたい存在。今回の戦いは、その後に控える菓子子との直接対決の前哨戦でもある。 さて、保育士を目指す彼女は、子供が喜びそうな料理も比較的得意な様だ。 合い挽き肉、芋、チーズやレトルトカレーと言った子供の好む食材が並ぶ。 (「料理か、サバイバル時を思い出すな」) 竜桜院・秀樹(回転王・b27613)はくるくる回っているうち、見ず知らずの土地に迷い込む事が度々。その都度サバイバル生活を余儀なくされてきた。 その際には、飲食店や農家等で料理をする機会も多かったようで、自然と腕も鍛えられた。今回は大量の炊飯器を用意し、その頃の経験で培ったノウハウを遺憾なく発揮する構えだ。 「幸いお料理でも戦えるみたいですし、美味しいの作ってドラゴンを倒しますですよっ」 大学生巫女の穂乃村・翠(常磐の符術士・b01094)は、家事全般に心得を持つ正統派。 季節柄、豆腐、ブロッコリー、イチゴ等々、白緑赤のクリスマスカラーをテーマにした料理作りに取り掛かる。 見た目や味は勿論、ヘルシーである事も主題の一つだ。 (「未然に防げなかったのが悔しいよ。でも、今はその事は切り替えて、料理で子供たちを喜ばせないとだね」) 正義感と責任感の強い夜闇・亜利亜(螺旋状のアリア・b62751)は、能力者である自らを責めながらも、まずは子供たちを助ける為の料理に意識を集中させる。 とにかくお腹一杯食べられる事、短時間で大量に用意できるメリットを考えて、パスタを作る事にしたようだ。味もミートソースからたらこ、カルボナーラ等を用意し飽きさせない。 「急いでいるからといって手を抜くのは絶対しませんの。子供達が美味しく一杯食べれるよう愛情込めて作りますの」 数多くの電子レンジ、ラップを用意したファルチェ・ライプニッツ(久遠の雪桜・b46189)。 今回は、限られた時間で多くの料理を用意しなくてはならない。その為には、火を使わず時間を短縮する小技も必要になるだろう。 「30人前の料理ってなると……随分と久しぶりだな。昔の感覚を忘れてなきゃ良いんだが」 鴉羽・凶司(凶事と死を纏いし罪人・b08812)は、子供達が楽しくワイワイ食べられる様な料理をテーマに食材を用意。 お菓子ハウスから子供を救う為には、見た目や味も勿論のこと、食事の持つ楽しさと言うものも織り込んでいかなくてはならない。 「いろんなものがみんなと一緒に食べられる給食って、小学校のときは毎日楽しみだったな〜。がんばっておいしいご飯を食べさせてあげよう」 浅倉・郁(息抜きの合間に生きる者・b17286)が大量に用意したのは、子持ちししゃもと牛乳。 子供の食事といえば、やはり栄養の問題は切っても切れない。カルシウムを豊富に含んだこの2品は、理想的だろう。 どうやら全員、食材と器具の用意は完了した様子。いよいよ調理へと取りかかる。
●厨房は戦場 「今回の料理は時間勝負! ア・レ・キュイジーヌ!!!」 調理開始を宣言する琴子。 能力者達に残されたのは概ね1時間程度だ。無駄は許されない。 まずはなかなかの手裁きで舌平目をおろす香澄。薄めに塩胡椒で味付けし、小麦粉を絡める。 バターとオリーブオイルを敷いたフライパンにそれを並べ焼くのと平行し、海藻サラダやサンドイッチに用いる野菜をざくざくと切る。 舌平目に焦げ目が付いたら、手早くひっくり返して裏面を焼くのも忘れない。30人分ともなると、モタモタしていては焼き加減に差がついてしまうから大変だ。 肉団子を量産しているのは琴子。下味をつけた合い挽き肉を丸め、中身もそれぞれチーズ・マッシュポテト・カレーと子供が好みそうな具材のコンビネーションだ。 デザートのマンゴーのカップケーキの為に、大量の缶詰を開ける作業も時間を見付けて平行する。 「野菜とパンどうぞ」 「ん、ありがと」 サンドイッチに関しては、香澄と琴子の手が空き次第、行程を進めて行く事で効率的に作る事が出来そうだ。 「合い挽き肉、使うか?」 「あぁ、貰おう」 大量の卵を割りながら答える凶司。こちらも巨大な肉団子を作る予定だが、その中に仕込む分と、たこ焼きに使う為だ。 それらのボリューム料理に加え、海老とアボカド・サーモン・マグロの3種類とタレを掛けた少しお洒落な生春巻きが彼のメニューだ。 「炊飯器OKですわ」 「海苔も30人前となるとかなりのものだね」 ファルチェの言葉に頷きながら、秀樹は丁度良いサイズに切った焼き海苔を大量に積む。 ご飯が炊けるまでの間、2人はそれぞれの巻き寿司に用いる具材に取りかかる。 秀樹の方は彩りに趣向を凝らす予定で、でんぶ、野沢菜や味付細牛蒡にソーセージに加えてご飯に色を付ける食紅なども用意されている。 ファルチェの方は、マグロの赤身にシソ、鶏肉と卵の二色そぼろと言った王道の具材に加え、ツナ缶と野菜によるサラダ巻きの為の具材を確保。 その向こう側で、フードプロセッサーをフル回転させて居るのは翠。 豆腐と茹でたササミ、パン粉をミキサーする事で、蒸しバーグのタネを作っている。これが白の料理だ。 続いて、ポタージュスープにカリフラワーを細かく砕いて入れれば緑。 最後に赤をイメージしたイチゴのラズベリーソースは、蒸しバーグを蒸す間に平行して作る事が出来そうだ。 「うん、ばっちりアルデンテです」 「良かった。あ……浅倉さん、右の方のししゃも大丈夫?」 「あっ! ……っと、大丈夫みたいです」 大量のパスタを茹でる亜利亜は、ゆで加減の調整が鍵。郁の手を借りつつタイミングを見計らう。 郁の方も焼き加減が唯一にして最大のネックと言った所。焦げすぎないように、タイミングを見てししゃもを焼き上げて行く。 大量の牛乳に関しては、持って行く時に冷蔵庫から出せば良いだろう。 時間は瞬く間に過ぎて行く。完成させるだけでなく、盛りつけや運ぶ時間も考えると、1分も無駄には出来ない。
●実食 「皆さん、お待たせ致しました」 5年生の教室は、まさに混沌の支配する空間となっていた。 空腹を我慢しきれなくなった子供達が、お菓子になった教室を貪っている。 「ほら皆、こっちの方が美味しいぞ!」 琴子はびっくりミートボール大皿盛り、クォーターサイズレタスサンドを机にドンと置いてみせる。 「……この匂い、肉だ!」 いかに子供がお菓子好きとは言え、食欲を満たすには肉と主食は不可欠。デミグラスソースの良い香りと、肉の圧倒的ボリュームに引かれて数人の腕白小僧達がやってくる。ヘルシーで食べやすいレタスサンドは、女子に人気の様だ。 「遠慮無く召し上がって下さいませ」 香澄は舌平目のムニエルと海藻サラダをセットに並べてゆく。この後の戦闘を鑑みて、極力教室の端の方に子供を誘導する意図もある。 「わ、美味しそうな匂い……」 少しお洒落なこの料理は、やはり女の子を中心に引き寄せる。 「さあどうぞ子供達、好きな物を自由に食べたまえ」 秀樹は、赤と緑のコントラストに加え、柊と月の模様をあしらった飾り巻き寿司を披露。 「何これ、マジで可愛いんだけど!」 チューリップなど、花の模様の巻き寿司は、デコレーション好きの女子に好評の様子。 「さぁ皆さん、こちらですの」 ファルチェの手招きと手巻き寿司にも、数人の子供達が引かれてやってくる。 「マグロうめぇ!」 シソが良いアクセントになる鉄火巻きと、ツナに野菜を合わせたサラダ巻きはどちらも好評の様だ。 また、自分で好きな具材を巻けると言うのは手巻き寿司の醍醐味でもある。そうした遊びの要素も、子供達には魅力だろう。 「こちらもどうぞです」 翠は美味しいだけでなく、ヘルシーなお豆腐とササミの蒸しバーグとグリーンスープを配膳。 「豆腐に鶏肉……そして油を使ってないんですね、とても健康的です」 カロリー計算や栄養に気を遣う子供も意外と多い様で、こちらも瞬く間に数人がやってくる。 「慌てないでゆっくり食べて、僕も一昔前は給食が楽しみだったからね」 亜利亜はがっつく子供達をなだめながら、ミートソース、たらこ、カルボナーラのパスタを配ってゆく。 「給食のよりソースが多い!」 給食のミートソーススパゲティは、なんであんなにソースが少なかったのだろう。 たっぷりとかかった各種ソースと山盛りのパスタに、やはり大食い自慢の子供達が群がる。 「これ辛ぇ! でも俺、辛いの好きだから」 凶司の作ったロシアンたこ焼きでは、早々と当り(外れ?)を引く子供。 とは言え、罰ゲームではないので七味唐辛子は少量だ。 「中々美味しいわね、ソースが良いわ」 一方で、3種類の手製ソースが掛かった生春巻きは、上品そうな子供達を中心にウケている様だ。 「背が伸びたり胸が大きくなったり」 「!」 「……するとは限らないけど……夢を見られるのはいいよね」 郁が用意したししゃもと牛乳は、それ自体が好きな子供達に加えて、やはり身体が小さい事を気にしている子供達や、発育が気になる子供達に大人気。 「まだまだ、デザートだってあるんだぜ」 「美味しそう……」 頃合いを見計らって出されるのは、琴子によるマンゴーのカップケーキと、翠によるイチゴのラズベリーソース。 殆どの子供達は、彼らの手料理に満足したと言って良さそうだ。
●お残しは…… 8割方のはらぺこドラゴンが消滅したのを見届け、香澄は音のない歌声を紡ぐ。 満腹になった子供達は次々に眠りへと誘われ、そのまま熟睡してしまう子供も多そうだ。 残ったドラゴンを片付けるのは容易いが、この後に控える戦いを見据えれば時間のロスはしたくない所。 「ナニ残しちゃった? 好き嫌いの激しい子にはオシオキだー!」 琴子の白燐蟲達が、郁の詠唱マントと宿る。 「ぎゃーす!」 ドラゴン達もまた、火を噴き必死の抵抗を試みてくる。 「そうはさせないよ」 けれど、亜利亜の巻き起こした浄化の竜巻は、仲間の手傷を瞬く間に癒す。 「さあ消える時間だ」 「さっくりいくよ〜」 秀樹の黒燐蟲がドラゴン達を飲み込むのに合わせ、敵中に躍り込んだ郁が舞う様にドラゴン達をなぎ払う。 「子供達は眠っています、今のうちに」 悠久の葬送歌から、冷気の波動を放ちつつ言う香澄。 「いくぜ!」 「とどめですっ」 琴子の放った炎弾は、ドラゴンの一体に直撃。翠の呪殺符をゼロ距離で受けたドラゴンと共に、消滅する。 「がおー!」 「そうはいきませんの!」 ドラゴンの吐く炎をかいくぐったファルチェは、その指先でドラゴンの鼻に触れる。見る見るうちに魔氷に包まれるドラゴン。 間を置かず、紅蓮の炎を帯びた凶司の拳がドラゴンに炸裂する。 圧倒的な戦力差でドラゴン達を次々消滅させてゆく能力者。残った1体のドラゴンは、ついに戦意を失って逃走を始めた。 「よし、追いかけよう」 「はい!」 一行はすぐさまドラゴンの後を追う。 「もう大丈夫だからね」 教室には、すやすやと眠る子供達。 彼らが二度と危険な目に遭う事が無い様、なんとしても菓子子と決着をつけなくてはなるまい。
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参加者:8人
作成日:2010/12/21
得票数:楽しい4
知的1
ハートフル9
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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