<リプレイ>
● 今年も銀誓館学園にクリスマスがやってきた。 戦いは続くが、暫しパーティを楽しもうではないか。 ――と言いながら、その会場を訪れる人々の顔は、今一つ冴えない。 過ちを悔い改め、禊を行う事で、聖夜を……新たな年を清い身と心で迎えようと言うパーティ。「聖なる懺悔祭」の会場である。
「準備は完了だよ」 ドリンク、ビックリ鍋共に準備が整ったようだ。茂理からOKサインが出る。 「ボクが手に取るからには食べられるって言うこと。ボクが口を付けるって事は、美味しいって言うことさ!」 笑顔で言うだけあって、確かに美味しそうに見える。今年の罰ゲームは甘いと言う事だろうか。 一同の緊張も心なしか和らぐ。それが錯覚だと気付くのにさして時間は掛からないが。
「私の罪は、彼女が居ながらも彼女と一緒に過ごせる夢のようなゲームに嵌った事だ! キリッ!」 誇らしげに言い放つ陣だが、女性陣の視線は冷ややか。 「お兄さん今年も頑張るよ! さぁ、何が来る!?」 「次元の壁を越えていようと、浮気は浮気ですぅ」 熱々の昆布を取り出す涼子。 「そんな罰ゲームで大丈夫か?」 ふと参加者の誰かが尋ねる 「大丈夫だ、問題な」「一番いいのを頼む」 覚悟を決める陣だが、会場からは生ぬるいと言う反応。 「神は言っているですぅ。手加減すべき時ではないと」 涼子は汁をたっぷり吸ったがんもどきを掬い上げる。 「!!」 彼女の接吻に勝るとも劣らない、熱い口づけをがんもどきと交わす陣であった。
「料理とか片付けとか掃除洗濯とか家事はあらかた同棲2年目の彼女にして貰っ」 「裁きを!」 「『良いから座ってて』って言われるとつい彼女のエプロン姿を後ろから見守るお仕事」 「執行人!」 恵太ののろけ発言を、観衆の怒声が掻き消す。 「武内さん覚悟ですぅ」 「愛してるぜーいつもありがとおぶっ!?」 恵太の口に押し込まれたのは熱々卵。 (「眼鏡様! 俺に力を!!」) しかし眼鏡さえあればそんな苦難も乗り越えられる。恵太は涼子の眼鏡に意識を集中。 「イメチェンしますかねぇ」 「!」 おもむろに眼鏡をケースに仕舞う涼子。一瞬誰だか解らない。 心の拠り所である眼鏡を失った恵太は、灼熱卵との死闘を余儀なくされたのだった。
祐一郎は、受験により能力者としても恋人としても役目を全うすることが出来なかったと言う懺悔。 ラブラブでもそうでなくとも、懺悔は尽きないものだ。 ――ばっ。 既に覚悟を決めていた祐一郎は制服を脱ぎ捨て、水着姿に。 躊躇いもなく熱湯風呂へと歩んで行く。 「待って下さい。祐くんの罪は私の罪でもあります」 と、こちらも制服姿の明日香が進み出る。 やはりおもむろに制服を脱ぎ始めたではないか。思わず見入る男性陣。 彼女も水着を着込んできていた様だ。 「いこうか」 「はい」 2人は手に手を取り合って、熱湯風呂へ。 見ている方がゆだってしまいそうな誰得罰ゲームである。
「僕は葦原淳が大好きだ! 付き合ってください!」 壇上に立った昇は、唐突に愛の告白。 「えっ?」 一同驚くが、一番驚いたのは淳だろう。 「なっ……な……」 普段見たこともないくらい、動揺した様子の淳。それでもようやく、心が決まったようで。 「……お、OKだけど……」 「わっしょいわっしょい!」 OKが出ると同時に、数人が昇を胴上げ。そして熱湯風呂へと投げ込んだ。 ――どぼーん。 手荒い祝福……と言うか、八つ当たり。 2人の前途に光あれ。
投書により、混浴温泉で女の子をエッチな目で見ていた容疑が発覚した龍麻。 「ちょっ、ちょっと待て。確かに混浴温泉には何度も出掛けたが、別にそんな事はないぞ!」 女性陣から注ぐ冷たい視線。男性陣からは羨まし、もとい、けしからんと言う声が上がる。 「デバガメに裁きをですぅ」 涼子が熱々のこんにゃくを箸で掴み、龍麻の口元へ近づける。 「なんで楽しそうな顔してるんです? ギャーッ!」 かくして正義は遂行された。
銀麗の懺悔は、能力者の激務ゆえ、大学生としての本分を全う出来なかったこと。 成績や課題は問題無くこなしているが、本人曰くケジメの問題なのだとか。 「ふーふー。はい、あーん」 罪の軽さと本人の希望から、莉緒がおでんを適度に冷まして食べさせる。 「うん、美味しい」 自分に厳しい銀麗には、罰ゲームは余り必要ないだろう。 「同じ大学に通ってたら課題をコピーさせて貰えるのにぃ」 むしろ、彼女を見習わなくてはならないダメ大学生が多そうだ。
摩那の懺悔は、依頼中に妖しげなキノコを仲間に食べさせ、幻覚を見せたと言う物。 「私としては、おいしいものを食べてもらおうという思いだったのよ。ほら、フグでも危ないところほどおいしい、っていうし」 やや苦しい弁明。 「ふーっ……はい、あーん」 「あーん」 「ちょっと待てですぅ! なんでそんな軽い罰なんですかぁ」 本人も反省している(?)し、被害も軽かった(?)からと言う事らしい。 「莉緒さんに食べさせてもらえるなんて、実は幸せ〜。あ、私、猫舌だったー!」 ただ、当人はそれなりに熱がっているので良しとしようではないか。
今年は特に反省する事も無い様子の円。 「今年はちゃんとプレゼントも忘れずに贈ったしなぁ」 「えっ?」 「志筑は『友好度が足りません』からまた来年だな」 円曰く、志筑に優しくしたら負けかなと思っている。 正しい判断だ。 「そんな巴衛さんには、私からおでんのプレゼントですぅ」 が、にっこり笑顔の涼子が厚揚げを近づける。 「今度焼肉でもおごるから勘弁してくれ」 「焼肉? 全くもう、それを早く言うですぅ。ふーふー。はい、あーんですぅ」 適度に冷ました厚揚げを食べさせる涼子。しかし焼肉代を考えると、熱い厚揚げの方がマシだったかも知れない。
「去る10月10日、静岡で友人同士で集まった時の事だ。あの会場に『激辛スナック』を大量にばら撒き、楽しい集まりを阿鼻叫喚の地獄絵図に変えたのは私だったのだ!」 と、告白した凛。実際にその時のスナックを持参したと言う。 手招きされた涼子が一つ食べてみる。 「ごぶぁっ!?」 辛党の涼子でさえ咽せるレベル。そんな危険な食べ物でテロ行為を行った罪は重い。 よって、凛はスク水姿で熱湯風呂の刑に処される。 「熱くない……熱くなんか無いぞ。私は熱いお風呂が大好きだ!」 どうも、余り懲りては居ない様だ。
「万華堂の皆、申し訳ない!」 受験や日々の生活に追われ、満足行く結社運営が出来なかった事を悔やむ煌輝。彼はびっくり鍋で罪を清める。 が、蓋を取るとそこに広がっていたのはブラックホール。 「一体この鍋ナニ入れたんだ! って食えるのか、これ!?」 及び腰になる彼を、執行委員達が拘束する。 「この鍋食べる位なら死んだ方がまし……ぐぼぉ!」 そして無理矢理、苺大福の残骸らしき物を押し込んだ。 「この鍋は宇宙そのものカオス……」 赤くなったり青くなったりして、ついには突っ伏した彼が最後に口にした言葉である。
「だってほら、ウチが美しすぎて皆素直になってくれないのですよー? こんなにせくしーでびゅーてぃーなのにね?」 しろの懺悔は、銀誓館のアイドルになれなかった事。 罪かどうかは別として、悔い改める必要はありそうだ。 スペシャルドリンクが運ばれる。当然、彼女の苦手とする納豆もたっぷりだ。 「納豆は無理だから無理無理むぎゃぁぁー!!」 流し込まれるドリンク。 銀誓館のリアクション芸人としては、もはや一人前と言って良さそうだ。
義妹が秘蔵していた高級アイスクリームを黙って食べたと言う懺悔はサーシャ。 「猛暑なのに自分のアイスに名前を書いて置かない方が悪いのです」 全く反省の色がない彼女には、熱湯風呂でおでんの刑。 「あつ……っ!」 しかしさすがは魔女、気丈にも熱さを耐えておでんを完食。おもむろに風呂から上がる。 「二度同じ手は食らわないわよサーシャ!」 危険を察知して身構えるめぐる。 「貴女も莉緒さんや涼子さんのお菓子を食べてしまった事があるに違い有りません」 「な、無い……っていうか、ほぼ無い……そんなには無い……たまにしか」 「隙有りです」 「ぎゃー!!」 身に覚えがあったらしいめぐる。熱湯から飛び出したサーシャに熱々のちくわを見舞われたのだった。
「テスト全部ヤマ勘でしたーっ! まったく勉強してませーん!」 と言うデューテ、デジャビュだろうか。しかしキャンパスで100位以内はキープしていると言う。 「ところでめぐるちゃんはどうだった?」 「な、なんで私に振るの」 「2人で熱湯風呂に入ろうかと」 「わ、私は罰ゲームやったし!」 だが勉強せず、点数も悪いめぐるは罰を受けるより無さそうだ。 「「あづーっ?!」」 水着に着替えさせられためぐるは、デューテに引っ張られ熱湯風呂へ。やはり勉強は学生の本分である。
「ごめんなさい、買い食いを何度もしてしまいました」 中学2年にも関わらず、小春の懺悔は随分と可愛らしい物。旧家に育った彼ならではかも知れない。 「スペシャルドリンク、ですか……」 厄落としの意味も籠めて、覚悟を決めた小春は、一気にドリンクを飲み干す。 「っ……まず」 顔色を悪くしながら、ぐったりの小春。 ただ、今年の悪いものを全て清算することは出来た……筈である。
「む、胸の小さい女の子の地縛霊に同情して魅了されちゃった……」 と言う里音は、かなり豊かな胸の持ち主。 「わわ、水着で熱湯風呂でも何でもやるから許してよぅ……」 罰ゲームを宣告されるより先に、怯えつつ白いビキニに着替える里音。 「でも1人じゃ不安だなあ……優しい後輩がいるって聞いたんだけど……」 「わ、わたし?」 「一緒に熱湯風呂に入らない?」 うるうると涙目で訴える里音。 「か、勘違いしないでよ。ちょっと温まりたくなっただけなんだからっ」 頼まれると弱い莉緒も、着替えて一緒に入ることに。 「熱さより、視線が恥ずかしいです……」 (「そりゃ注目されるでしょうね」) 熱湯に入った里音もさることながら、その水着姿にパーティ会場の熱気も高まったようだ。
美玖は義兄から、危ないから後方でのサポートに徹しろと言われていたが、内緒で幾度と無く危険な任務に身を投じてきたと言う。 能力者として勇敢である事は大事だが、義兄を心配させた罪を清算したいのだろう。 運ばれるドリンクだったが…… 「すごく美味しいわ!!! 美味よ!」 なんと、一杯飲み干しても平気な顔をしている。 「おかわり……おかわり下さい!」 その上、お替りまで要求している始末。 この様子なら、過酷な任務も最前線も問題ないかも知れない。
銀誓館で洗脳を解かれた壱。彼の罪は簡単に清算することは出来そうにない。 けれど、この学園で生徒として、能力者として生活する事が償いになるだろう。 と言うわけで、熱湯風呂でドリンクの刑が贈られる。なぜか女子用のスク水なのはお約束。 「熱すぎるし、不味すぎます!」 こんな事もあったねと、笑って振り返れる思い出になると良いのだが。
「涼子ちゃん好きです、理由? ……いや、なんとなく今年の罪は、所属クラブが降格……団体とかはダメ? 懺悔します、めぐるん愛して……ああっ、電話切らないでっ!?」 勇人は今年も、懺悔なのか何なのか解らない内容。 ――ひゅっ。 「ぎゃっ!」 熱々のこんにゃくを投げつけるクラレット。兄の不始末は妹が片付けるという事らしい。 「速坂めぐる! お兄様をたぶらかした罪、わたくし自ら一騎打ちを所望しますわ!!」 「へっ?」 と、ここで急展開。 ホムラが突然めぐるに宣戦布告だ。 「さて始まりました『第2回チキチキ餡かけ』対決! 解説は、美幼女記者歴ウン十年の『キシ勇人』さん。実況は昨年に続き『某セコンド』でお送りします。さてキシさん、ニーソのホムラ選手の方が露出度的に有利かと思うのですが」 「絶対領域という武器もありますから、そのアドバンテージは大きいでしょう」 「ただ、めぐる選手の黒ストッキングの方は下着が隠れると言う部分で、逆に油断が生じやすい。結果として、身体のラインが――」 「この人達に年を越す資格はなさそうね」 「同意見です」 「ジャッジメントですぅ」 莉緒、クラレット、涼子により次々とおでんが詰め込まれる。 「「ぬわー!?」」 かくして、訳の解らない幼女好き達は無事葬られた。 「この勝負、一旦お預けですわ! 覚悟しておきなさい!」 「あ、うん……」 ホムラとめぐるの対決も、ひとまず棚上げとなった様である。
「去年のクリスマス、なんと寝過ごして、カップル撲滅をまったく行わず終わったッス」 空之介にとって、クリスマスのカップルを野放しにした事は許されざる失態らしい。 「だが、今年は違う……そうっ、俺は許されるべき! なぜなら今年はすべての嫉妬イベントに参加したからだ! 聖なる夜は嫉妬の夜! レッツハルマゲドン!」 「他人の恋路を邪魔する奴は――」 「馬に蹴られてなんとやら」 「ふぐぉっ」 あわれ、執行委員の手により空之介の口に流し込まれるドリンク。 ――ドボン! そして着衣のまま、熱湯風呂へ。 「熱! 熱ーっ!!」 這い上がった彼の顔に、熱々の大根と良く煮えた革靴が押し付けられる。 「……ぐふっ」 嫉妬の戦士は死んだ――否、嫉妬の炎が燃え続ける限り、彼はきっと蘇る。 それが独り身達の夢だからだ。
善良な克乙だが、奇特なことに、懺悔を済ませないとクリスマスの気分が出ないと言う。 「釣さん、あなたの罪で一つだけすぐに償える物が有るわ」 長らく麻雀牌に触れず、煤けさせた罪。償うには禊ぎ打ちを置いて他に無い。 ――東一局。 「っと、和了ってるわ」 (「積み込んだっ?!」) と言う訳で、熱々おでん3割増しの罰ゲーム。 「あつつ……今年の追加罰ゲームとして、兄貴のパンチを頂いて来ます」 今年も自ら、追加の罰ゲームをプラスする克乙。血の涙を流しつつ、教室を後にする彼の背に、一同敬礼を捧げる。 「依頼の時に仲間を後ろからぶった斬るとかいってごめんなさい! むしろそれ実行しなくてごめんなさい! つーかそれ全部嘘でごめんなさーい!」 と、ポルテは今年も嘘八百の一年。 今年も罰ゲームフルコールで大丈夫か? まずはドリンクを一気。 「大丈夫だ、問題な……あまずいわボケェ」 走りながら脱衣すると、水着姿になって湯船へダイブ。 「神は言っている、熱湯に浸かる運命だとあちぃわー!」 湯気に包まれながらおでんの元へ走る。 「いちばん熱いおでんを頼む! やべはふふはぁ!?」 もはや自棄になっているとしか思えない様子で、闇鍋へ。 「神は言っている、すべてを掬えと!」 がしっと掴むと、一気に飲み干した。 ここまでされては、もう許すしかないだろう。
このパーティに集いし者達よ、全ての罪を許そう。 そして、メリークリスマス!
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参加者:26人
作成日:2010/12/24
得票数:楽しい8
笑える10
カッコいい1
ハートフル1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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