豪華客船ティターニャル号で行くクリスマス殺人海峡日帰りツアー 〜沈む理由は爆発でも超常現象でも恨みでもなんでも可〜


<オープニング>


 銀誓館学園のクリスマスパーティー。
 毎年、様々な趣向を凝らすパーティーが開催され、学園はクリスマス一色に染まります。
 終業式を終えたクリスマスイヴの日は、様々なパーティーが開かれているようです。

 クリスマスパーティーは無礼講。
 たとえ、今まで一度も口をきいた事が無い人とでも、一緒にパーティーを楽しむ事ができます。
 クリスマスパーティーは、新しい友達を作る為のイベントなのですから。

 気に入ったクリスマスパーティーがあれば、勇気を出して参加してみましょう。
 きっと、楽しい思い出が作れますよ。
 
「クリスマスに豪華客船で夜景を眺めながらパーティとか、ありがちだけどロマンチックだよね」
 それが星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)の本心なのかどうかは、淡々としすぎて傍目にはわからない。
「恋人ふたりっきりで『街の明りが宝石みたいだね』とか言ってみたり、資産家の持ち船でパーティしたり……」
 甘い恋への憧憬もイチャイチャしやがってな嫉妬も見出せない。だから何を思ってこんなことを口にしてるのかやっぱり不明。
 しかし続きを聞いて誰もが『ああ』と納得する。
「そういう船は大抵沈む。だから殺しても証拠が、消える」
 ……やっぱり殺人事件なんだ、と。
「そんなわけで、この教室を豪華客船に見立てて、殺人事件ごっこをしようと、思う」
 千鳥が語る概要はこうだ。
 まず、食べ物や飲み物をみんなで持ち寄ってテーブルに並べる。
 それを楽しく食べつつ、お芝居開始。
 基本舞台は、豪華客船。
 吹き抜けの広いサロンではクリスマスパーティが開かれていて、主催や客人を演じて楽しむのだ。
 もちろん、甲板に出て海風にあたりながら夜景を眺めたり、操舵室で船長や船員を演じたり、通信士になって泣きながら通じない救難信号を出すのもアリだ。
 演じるキャラクターが船に乗った理由は、想像の翼を羽ばたかせて自由に設定してくれて構わない。
 船長が一杯いようが細かいことはいいっこなしだ。
 なんとでも、なる。
 てか、する。

 彼らは様々な愛憎を抱えている、だから起ってしまうのだ殺人事件が。
 ティターニャル号はこれが最後の航海だ、だから沈んでしまう。
 ――それが形式美というものである。

「船は『沈む』って誰かが言い切れば沈むから。パニックモノに絡めた殺人事件ってのも、いいね」
 乗り込んでいるのは、誰かを殺したい【犯人】だったり、やたらと恨みを買っている【被害者】だったり、罪を着せられる【スケープゴート】だったり。
 もちろん【探偵】役も欲しいところ。心ゆくまで迷推理を披露すればよい。
 それ以外の配役も、思いつく限り作ってもらって構わない。
 しょせんはお芝居だ。
 整合性を求めるよりは、思いっきりやってしまったモノ勝ちである。
「今年は殺されたいかな。船を沈めるとか妄言吐いてればいいかな」
 ……瞳輝かせて言うこっちゃない。
 とまあ、千鳥はこの通り参加する気満々で、詩条・美春(兄様といっしょ・bn0007)と鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)は誘えば来るだろう。
 なお、推理劇という性質上『毒を仕込む』とか『ナイフで斬りつける』などの演出が出てくるかと思うが、全て相手に実害がないようにすること。間違っても本物の毒を持ち込むとかやってはならない。
 ――このパーティに必要なのは、想像力であり妄想力である。
 
「最近、色々大変だったよね。ナイトメアビーストの襲撃とかさ」
 ふいに能力者を送り出す運命予報士の表情で、千鳥は胸に手を置き瞳を閉ざす。
「……こんな時だからさ、クリスマスパーティは楽しむべきだよ。銀誓館学園の力の源は、皆で過ごす学園生活なんだし、ね」
 うん。
 クリスマスパーティの内容が殺伐とした殺人事件じゃなければ、とてもいい台詞だ。
 企画が全てを台無しにしていてとても残念に聞こえるのは、この少年の仕様だから仕方ない。
「もしかしたら、このパーティに参加するコトで、ナイトメアビーストとの決戦における力を手に入れられるかも、ね」
 希望よりもうさんくささを。
 でもまぁそれもよし。
 なにしろこれより腹に一物抱えた登場人物に成り代わるのだから――。

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参加者
NPC:星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)




<リプレイ>

 闇。
 闇よりなお暗い髪のなつきは古びた本を開く。
「――豪華客船ティターニャル号」
 スポットライトの中、舞う埃は天使の羽の如く。
「航海の終わりに微笑むは探偵か犯人か、はたまた事件は闇へ葬られるのか」
 ぱたん。
 本が閉じられると同時に全てが闇に沈む。まるで語られる物語を暗示するように。


「毎年、ご招待いただきありがとうございます」
「来てくれて、感謝」
 沙紀に返す千鳥についっと苺大福。
「こちらの方がお好みかと思いまして」
「由衣さん、ご両親元気?」
 ぴき!
 青筋が。両親は千鳥に騙され自殺、その復讐にやってきたわけで。
「個性的な味だね」
 何故死なない?! 苺→梅干な猛毒大福なのに。
「どこかに手がかりがある筈」
 千枝のクラス:探偵。
「あら、神崎様もいらしてたのね」
 トレーを差し出すは深紅家執事の常磐。
「お久しゅうございます。奥様秘蔵のワインです」
 千鳥はグラスの縁を触った後、沙紀に。
 ぱたり。
 飲んだ沙紀、吐血。
 みゅぅぅ!
 沈黙斬り裂く鳴き声に「坊ちゃま!」と常磐。華麗に友人を放置した。
「みゅぅぅっ」
 猫しっぽを膨らませ父桟敷をふみふみ。
「…流…く、げほっ」
 遺言残したいっぽいから鳩尾ふむの止めてあげて。
「流火は相変わらず可愛らしいのう」
「違ッ」
 桟敷死亡。
 トドメは流火のふみふみかKY実父颯斗の杖の追撃ぷるぷるか。
 泣きつく流火をていっと避けシュレーンは夫に駆け寄る。
「私が殺したかったのは貴方ではなかったのに!」
 あ。
 今さりげなく犯人宣言しなかったか?
「なるほど」
 顎を撫で家庭教師玲は沈思黙考。
「玲先生、流火の成績は?」
 奥さん、死体あるしごまかされるわけ…。
「『流火の成績は?』と言う訳なんですね」
 ごまかされた。
 得意げな玲の周りでみゅぅみゅぅな流火を常磐はピコハンでぺちっと、躾けですよ。
「そう、犯人はあなただ!」
「え?!」
 ずびし!
 指された給仕ジブリールは硬直、猫じゃらしだけが揺れた。
「違います。お子様と遊ぶのが好きなので…ほぉら」
「みゅぅ〜♪」
 お坊ちゃま猫扱い。
「あ、奥様のワインで友人が死…」
「それよりレーンさんや、薄い本はまだかのう?」
「お義父さま、もう読んだでしょう?」
「ぐー」
 常磐の追求を逸らす見事な連係プレイ! ところで桟敷は寝てるだけじゃ…。
 混沌を遠巻きにする千鳥の肩が叩かれた。
「ここまでの活躍見事と誉めておきましょう」
 謎めいた微笑みで紫織は千鳥を実行犯認定。
「や、犯人、兄さんだから」
 さらっと兄のせいにした。
 その兄ですが、本当に実行犯になりなんとしていた。
「嫌というなら君の弟が俺に殺される」
 弓矢に緋邑はギリと歯がみ。
「大切なものはどちらか、よく考える事だ」
 覚悟の瞳で標的を探す兄の背後を抜けて、弟はのうのうとカジノへ。
 ざわっ!
 更紗の牌に沸くギャラリー。
 主人の窮地でも冷静なメイド梓杜乃は紅茶を給仕。
「九蓮宝燈ってあがったら死んじゃうんだってね」
 ぱたん。
 索子の九蓮、当り牌は一索。
「何で死ぬか知ってる?」
 千鳥が懐に手を入れた瞬間、悲鳴が。

「緋邑様が…」
「立てる?」
 震えるジブリールを支えるようにセラエノが肩を撫でれば、
「…」
 少女は無音で崩れ落ちる。
「信じる人は殺されるんだよ」
 と。
「君は死んで罰を受ける」
「先輩、これは…わたしの、罰なのですか?」
 諦観を滲ませ笑弥は困ったような笑み。
 弓矢の恋人を救えなかった後悔の煉獄もこれで終る。けれど気掛かりなのは、
「それとも…先輩の罰なのですか?」
「そして俺は君を殺した罰を受ける…」
 覚悟を見て取り涙一粒瞳を綴じた。

 いつの間にか死んだ更紗。犯人はオーナー次男?!
 本当の凶器は一索に仕込んだ毒針BYセラエノ。
「貴方は知りすぎてしまいました」
「恨むなら君の兄を恨め…ごめん、な?」
「ご主人様、危ないッ」
 紫織と弓矢の迫る凶器を梓杜乃は身を挺して庇う。
「いーなー、2人から刺されるとか、超ご褒美…」
 うわ報われねぇ。
「だったら船と共に終ればいいわ…」
 由衣が静かに微笑めば、甲板の巨大ケーキから火花咲く。
 沈みゆく船の中、やりきった犯人数名。
「ちょっと…それは計画外ッ!」
 ミスった人1人。
「もう食べられないよぉ」
 …夢の中の人、1人。


 ピアノ:庭井よさみ。
『♪クールジャズ』
「さて、パーティの始まりだ」
 白いマントの怪盗健一、狙いは恋人のアクセ。
 眼下で黒リボンつき狼ぬいぐるみを掲げて千鳥。
「恋人」
 えー、カップルこれだけー?!

 重苦しい。
 よさみのメロディを消す勢いで喉振るわせる縫。
「ふむ…ここにもない、と」
 推理作家鞠絵はぷっくりと頬を膨らませるとサロンを出た。
 天才作家の残した小説が船のどこかに隠されてるとかなんとかで、やってきたらしい。
「わ〜綺麗だね剣さん!」
 鞠絵が過ぎる横、一は爽やかな笑みで剣一郎を見た。
 良かったカップルいたよ!
 そんな健一の安堵もつかの間。
「あのひとを奪ったのは…あなた?」
 縫、剣一郎をでっかい薩摩芋でぶん殴る。
 剣一郎がホモか縫がレズ、地獄の2択。
「チッ…」
 ブラインドを目の前に下げ隙間から見る黒い影。
 不意に灯台の光がその正体を照ら…せない、全身黒タイツだからな!
「そ、そんな、シュヴールさんが犯人?!」
 鞠絵、さらっと黒タイツの人の本名バラした!
「クックックッ、知らなければ良かったものを」
 ガッ。
 やっと殺せたと一安心なシュヴールである。

『♪ラプソディ』
「memento mori クリスマスを楽しもう!」
 ウェイター縁が陽気に出て行った厨房にて。
「死を忘れるな、か。こちとら余命数日…ゲホッ」
 口元の血をぬぐいパテシェいちるは毒入りプチフールをメイドのハンナへ。
 さて。
 幾人が奈落へ道連れとなるか楽しみだ。
 ぱたり。
「全ての傷病はネギがあれば治る」
 ネギ医療の権威斗輝の登場。介抱していた寅靖は眉を顰める。
「確かにネギは素晴らしい」
 煮物には最高だよね。
「だが富裕層しか受けられない治療だ!」
 最近お野菜高いもんね。
「治る、のか?」
 縋るようないちるに、
「でもネギ忘れた」
 がくっ。
「お客様の中にネギはいらっしゃいませんかー?」

 アオザイ美女彩晴のバイオリンが彩を添える。
「熊」
 白熊ぬいぐるみを抱く少女に狼の首を傾け話しかける。だが少女は人形の様に無言。
「ティターニャルは呪い女神」
 設計士の娘はたるに千鳥は嗤う。
(「私は見届けるだけ」)
「この船は沈む」
 ね、狼さん。
 それは声にならなかった、ダーツが後頭部に刺さったからだ。
「ふふ、私の計画は完璧よ」
 カーテンの影で沙希はほくそ笑む。
(「なんで他の人をみるのかな?」)
 更に天井裏からの視線。
 ミシッ!
 ストーカー翠、怒りの余り近くの柱を握り締めた。

 メリー♪
 縁の配るドリンク。
 クリスマス♪
 ハンナの配るケーキ。
 数多へ死を。
 胸の谷間に隠したナイフで斗輝に迫るハンナ、だが…。
「ネギならここにあるぜ」
「助かる」
 舜の元へ駆け出したので外した…ので腹いせに千鳥を刺しとく。
 ネギをふりふり寂しい場所に誘う舜について行く斗輝の運命や如何に!

「クックッ、ティターチャル号、恐怖のどん底に落としてやる」
 ドスッ。
「ティターニャル号の名を汚す者は全て消せ、が依頼でさ」
 倒れる黒タイツを見下ろし少年は瞳眇め笑った。
 着慣れぬ執事服、つい先日まで貧民層のどん底に居たから当然。
 ユエはナイフを仕舞うと、真なる標的を探し歩き出した。
「あ」
 そんな決定的瞬間を見てしまったのは彩晴。
 ヤバイ。
 はやく変装を解いて逃げんと!
「お嬢さん…ッ」
 アオザイ半脱ぎ。
 胸から蜜柑ぽろり。
「いっそ殺して?」
「…」
 落ち着こうと苺ミルクを煽ればおっと猛毒。倒れる殺人鬼縁にもう笑うしかない彩晴(お色気)

『♪ラブソング』
 ――探偵海は斯く語る。
「被害者はこの船の秘密に触れたのだ!」
 縦ロールとドレスでバーン!
 ところで。
 被害者ったって、快楽殺人者が毒ばら撒いて死屍累々なわけだが。
 生きてる人ー?
「はーい」
「どうして生きてるの?!」
 背中からユエのナイフ生やして現われる千鳥に沙希が顔色を失う。
 略したけど5回は殺したはず!
「この船が沈むまで…」
 どすっ!
 きーわーど:沈む。
「お嬢さん…」
 トレンチコートを翻し海の前でターンして決めるのは圭介。
 ヒント:金づる。
 いやいやラブもありますよ?
 爆破のスイッチオン!

 どん!

「危ないお嬢さん!」
 シャンデリアだけのはずなのに、天井が落ちてきたのは計算外。寅靖が巻き込まれた。
「先輩?」
「わたしだけのもの…です」
 天井から降ってきた翠は沙希を後ろから抱きしめ刺殺。
「素敵な人なのだ…」
 庇いきった圭介は海のハートをゲットした!
 リア充だらけ?
 健一と縫はやるせなさMAX。
「殺されてなるものか!」
 キレた寅靖と3人で殺戮を開始!

『♪セレナーデ』
「これ以上の勝手は俺が許さねぇ」
「くっ」
 ネギで刺殺された斗輝の前でもみ合う湊と殺人鬼舜。
 湊の背後に庇われているのは探偵一。
「一殿、拙者がついているでござる」
「剣さん生きてたの?!」
 頭に芋のせた剣一郎と手を握り見つめ合う一。
「…」
 あ。
 無表情な湊の額に青筋がびしっと。
「お前ら人が戦ってる時に何してやがる」
「狼さん、綺麗な海だね」
 にごにご、もふっ。
 恋人同士の語らいをぬいぐるみを使って演出する千鳥、傍目にはイタイ人だが…。
「巻き込まれろぉおーっ」
 湊の気にめちゃ障ったっぽい。
 舜と争う振りし広げた両手に一に剣一郎に千鳥やらをひっつかみ海にダイブ。
「皆潰れてしまえばいいさ☆」
「潰れるついでに身長も縮むと良いな♪」
 なんだこの爽やかさ。
「狼さん、ボクを護って」
 腕を引っ張ると口からパンチ。
「痛てぇ!」
「頭てしてし」
「縮むだろぉお!!」
「額を押すと」
「ビームでるんだ。星崎が作っ…」
 どぼーん!!

『♪無音』
「ヤツはどこにでも『い』る」
「千枝さん…気づかない方がいいコトって、あるよね?」
 死体役が、足りない。
「舞台に優しい、りさいくる」
 ――ようこそ狂気の領域へ。


「今宵は良き星並び」
 星の使者が血を流せば、大いなる海神が目覚めるのです。

 ダイヤの首飾りをいじり令嬢斎夜は眉を顰めた。
『世界一美しい物をお目にかけます』
 招待状につられ乗船したものの一向にその気配はなく。
「怒りで船を沈めてしまいそうですわ!!」
「困ります」
 振り下ろされるカカシ。
 刻みつけるようにフラッシュが瞬いた。

 是空が梳るカカシを見つめるのは美春と少年探検家マサト。
「美春さんに似てますね、不思議です」
「――」
 是空の言葉に驚く美春へサンタ帽子が被せられた。
「似合う似合う」
「汀さん、びっくりしましたよ」
 緊張を強いられる社交パーティの中、クラスメートを見つけ美春はほっと緩む。
「いい笑顔だね」
 暈人がカメラを構え笑いかけた。
「撮らせて貰ってもいいかな」
「喜んで」
 フラッシュ浴びる横顔に怪盗姫菊は得物がいっぱいとほくほく。
「何時も通りその顔と口で気を引いておいて」
「了解」
 余裕の笑みで標的に近づく真魔、だが大柄犬耳メイドグラウに胸がずきゅーん☆
「愛が苦しい、否! 愛くるしいんだー!」
「もー!」
 真魔を追う姫菊の目の前でグロウは粉薬さーらさら。
「自由を取り戻してみせる!」
 檸檬はグラスを飲み干し、ぱったり。
「あ」
「いや、これは自由になれる薬であって…」
「カワイイから犯人じゃ…可愛くない?」
「可愛いよ、わんこだぞー」
 その隙に鞄を盗む姫菊。
 ニヤリ。
 影から見るのは薬を50円ぐらいで売った儚である。
「ふ、主を亡きものにして鞄を必ず奪うんだよ」
 鞄盗まれたけどなー。
「何の騒ぎかね、セバスチャン」
「自分はセバスチャンではありません、お嬢様」
 仲良し主従コンビは、真澄と彼方である。
「お嬢様、ちょびひげはいかがなものかと…」
「私は紳士だセバスチャン」
 あれ、仲悪い?
 カチリ。
 セバ…彼方の胸元で銃の安全装置が外れた。
「こっちです」
 どん。
 ケロベビのぬいぐるみが彼方に当たり引き金どきゅーん!
 当たると本死にと檸檬必死にかわす。
「探偵さんです!」
 かごめに手をひかれ現われたのは、
「まだ慌てる時間じゃないわ」
 わんこを掲げタルトを貪る透だ。
「探偵の絶対条件は事件が発生することよ」
 平たく言えば。
「もっとやれ」
 平たすぎ。
「あの」
「あ、推理作家の九曜先生」
 頼りになりそうと皆の瞳が輝くも、
「今、死体が動きましたよ? 実は死んでいない。え、でもそれだと読者は納得しませんよね」
 次作のアイデアに頭を悩ませ、ぽんっと手を叩く。
「被害者は殺されるのを予想して奥歯に解毒剤を仕込んでいたんです!」
 正解。
 起き上がるタイミングを逸した檸檬は心でそう返す。
「なるほどね〜。犯人わかっちゃったかも」
 思わせぶりに周囲を見回した後で、縫子は得意気に言い放つ。
「ヒントは『愛』ボクは自室に戻らせてもらうよ」
 あーそれ被害者フラグ! 縫子さんダメ逃げてー。
 ――暗転。
「そう、これは愛」
 彼女は縫子の体をかかえると無造作に海へ投げ捨てる。
「…を愛してるのは、わたしだけ!」
「君は?! 次に狙われるのは詩条ッ」
 斎夜殺しの決定的瞬間を撮った暈人にもカカシから死の接吻を。
「邪なる神が目覚めてしまう。これ以上血を流しちゃいけない!」
 マサトはゲソ足のブローチを握り締め駆け出した。
 
「斎夜殺しの犯人はあなたです」
「セバスチャンには、アリバイがないねぇ」
「ずっと一緒に居たじゃないですか!」
 九曜の前で始まる諍いをBGMに使えぬ駒を檸檬が悠然と『仕舞った』。

「ティターニャル様と添い遂げるのはわたしだけ!」
 カカシ――血まみれのミハル弐号を抱えかごめは嗤う。
「あなたが零号なんて認めない!」
 倒れる美春と巻き込まれた汀に跪き項垂れるのは、壱号カカシを抱く是空。
 妹が欲しいとの願いで造られたティターニャル、彼女は三号。
「かごめさん、利用されてるんです!」
 手を伸ばすマサト。かごめの高笑いが不意に止まった。
 物のように倒れる様を見下ろし、光は恍惚と語る。
「星の使者が血を流せば、大いなる海神が目覚めるのです」
「アハハ」
 銃声が響き、艶然と笑むの光に穴が12345…。
「最後の航海は繰り返す! 私、3回ィい!」
 口元から涎を零し白目の千枝は新たな銃の撃鉄を起こす。
「み、美春さん…を…」
 汀に託された美春を抱え、マサトは一心不乱に逃げる。

 沈みゆく船。
「ここは俺が! 今のうちに脱出を!」
 ちっちゃなわんこの手で果たして船を支え…って、透、海にぶんなげたよ?!
 ああわんこ。
 海神を鎮めたまえ。
 うん。
 無理。


 三等水兵・藤野涼太は語る。
 この航海は楽しい旅になると、出発直前は信じていたのに。

「ようこそティターニャル号へ!」
「カワイイ水兵さんじゃん、お茶しねぇ?」
 きらきらの笑顔で乗客達を出迎える涼太に、旦は冷やかし半分でナンパする。
 その横を陰気な顔したラクスがすりぬけていった。

「今日はいちごのライブに来てくれて、ありがとうございまーす!」
 ミニスカサンタのアイドルいちご胸には秘宝、妖精の涙。
「いちごちゃん、いっくよー!」
 桃は桜色の髪をふわり揺らし、ピアノ演奏開始。
「この船であの人が…」
 取材で乗ったはずの輪音は、婚約者の死に捕らわれて仕事どころではない。
 輪音が立ち去った直後、室内の灯りが落ち歌が途絶えた。再び明るくなった舞台には倒れるいちご。
「い、いちごさんが殺されてる!!」
「妖精の涙が無くなってるよッ」
 もこっとしてもきゅって鳴きそうな首飾りがとても気になっていたので、桃、そこは目ざとい。
「ぬっ、ここでも殺人か」
「医師の資格を持っている僕が診てみます」
 シグマと、カメラ目線で走るという器用なマネをしでかすりおん。
「怪盗風戯、妖精の涙を盗むと挑戦状を送ってはいたが」
「彼は殺しをしないよ」
 答えた彼こそは怪盗風戯、その人である。
「桃ね、怪しい人見たよ。んーと」
 今考えてる今考えてる。
「あの人!」
「むぐ?!」
 ひたすら食ってたセドリックをずびしっと指さす。
「そういえば、さっき最後の晩餐とか言ってましたよー」
 愛も言い添えた。
 確かに言った『最後の晩餐ですからね、楽しみましょう』と。
 亡命したラクスもろとも爆破しろが指令で、もうポケットの起爆装置を押せばいいだけだし。
 そんな中こっそり出たのは玲音と撫子。
 あどけない面差しに込みあげる恋慕を押え、玲音は視線を海へ。
「先程の事件、犯人が私だったとしたら?」
「あなたが殺したいのは私でしょう?」
「ご名答」
 海風。
「お飲み物をどうぞ」
 楚々と給仕蘇芳が差し出すグラスは2つ。
「ふふ」
 冗談口に頬緩め、躊躇いなく口をつけた撫子。
 ぽたり。
「?」
 唇の端から零れる血の意味もわからずに。
「死なぬ限り…共に在ることが許されないでしょう?」
 蘇芳のグラスはどちらも毒入り。
 知った上で煽り、玲音は撫子の上に重なるように倒れ伏した。
「心中なんてどないしょけもあらへんお人どすなぁ」
 文雪は愉悦を塗した面で2人を見下ろす。
「これで良かったんだよね? 姐さん」
 おずおずと伺う蘇芳を銃であっさり蘇芳を撃ち抜く文雪。
「うちはまだ捕まりたくありまへん」
 …。
 一部始終を見ていた旦は口元を押え膝をガクガクならす。
(「誰に話せばいい? あの水兵か?」)
 ダメだ、やられそうだ。
 やはり探偵か。
 思い立ち走り出す彼は…銃弾の餌食に。
「――止めたかったんだけどなぁ」
 怪盗風戯は静かに肩を竦める。
 手にしているのはふわもこの中にあった金の石。これこそが妖精の涙。
「さて、あの探偵さんをどうやって彼女に導くか、だ」
 全ての黒幕、文雪へ。

「ああ、やっぱり…」
 一方輪音は、ラクスの部屋に辿り着いていた。

『○月×日 未明』
 目立つ行動は避けてきた筈だが、
 この船に巣食う亡霊の噂が、これ見よがしに吹聴されていたのだ。

 新聞の切り抜きに写る横顔は、確かに輪音の想い人だ。
「この船は、婚約祝いに乗船した男女が恋敵に引き裂かれたという逸話があるんだ」
「それは私です。でも私、この船に乗れなかったんです」
 だから1人で残されて仕舞ったのが悔しくて、と輪音はシグマから視線を逸らす。
「先生、そんな甘いものではないですよ」
 どこか熱に浮かされたような瞳でりおんは言った。
「ラクスという政治犯が乗ってい…げふげふっ」
 カッと吐血するりおんを支えるシグマも目眩と共に膝をついた。
「これは…新手の細菌兵器か?!」
「先生、ごめんなさい。実は僕、42度の熱で…」
 医者の不摂生。
 ロマンチックがぶちこわしである。

「桃、あのふわもこくれたら、犯人じゃないって証言してあげるよ!」
 ガタ。
「おっと」
 何かを落としたセドリックは、わざとらしく肩をすくめる。
「こ、これ…」
 黄色と黒のワーニング模様、いかにもな『爆破スイッチ』に桃は喉をゴクリと鳴らす。
 ――押してみたい、すっごく。
「押してもいいですよ」
 にっこり。
 セドリックの笑顔に後押しされて桃は――。


 舳先にて航路の無事を祈る乙女像に黄昏の頬紅さす頃、船内のラウンジには煌びやかな花が咲き始める。

「お招きアリガトウございます。セントエルモ楽団長のジングルです」
 鮮やかなワインレッドを穏やかに着こなす、それが彼女にそっくりで――ティターニャル号設計士のジャックは一瞬言葉を失った。
「こんなすごいところで歌えるんだ、俺たちー」
「やり甲斐あるな」
 好奇心に輝く千破屋に、アヒルのキーチェーンを下げた亮も頷く。
 物静かな勢だが、前髪で隠れる瞳を笑むように細くしている。セッションが心待ちらしい。
「…」
 こちらはいつも賑やかなウルスラが珍しく静か。
 注ぐ視線の先は、糸目のウェイターが立っている――双牙だ。
 目があいにこやかな会釈には頬を赤くして俯くのが精一杯で。
 だが。
「双牙。私は取材で来てるんだべっちゃ」
「まぁ、そういわず…厭な予感がするのですよ」
 仲良さげに話す女性が視線にかかり、ウルスラの瞳が陰る。
「セントエルモ楽団は、素晴らしい舞台を約束しますわ」
 マネージャー水歌が握手を求め手を差し出したところで、洸太が手を振りかけてきた。
「リハーサルのセッティング、整ったで〜」
 移動を開始する楽団。取材しそびれる椿を見かねてジャックが軽食の包みを渡す。
「頼まれてくれねェか」
「渡りに船だべっちゃ」
 …息子達の晴れ舞台に、ケチをつける自分にジャックは心底嫌悪する。
「おめェは…ひさめのために仕上げたってェのにな」
 瞳の先には乙女像。

「テーマパークへの改造設計は進んでるの? 古くさい楽団なんか…きゃっ」
 船舶会社社長令嬢千影の足にぶつかったのは、椿と時計。
「おばさんじゃまー」
「じゃーまー」
「おばッ…」
「椿ー、冒険いこうー」
「いこー♪」
 10歳にも満たない幼子達は縦横無尽に駆け巡る。千影が怒る暇などない。

「何で俺がこんな事…」
 密航がバレてこき使われている裕也は、舌打ちしながら計器室へ。
「ま、さっさと終らせて飯…」
 裕也の瞳が丸く開かれる。
「!」
 キィ、キィ…。
 木戸に吊されているのは――無残な千影。
「冗談じゃって…アンタ?!」
 それが不運なる密航者の最期であった。

「違う! 僕じゃないッ」
「じゃあ、不自然な時刻に計器室に行った理由を説明してくれるかね、整備士の小春君」
 しーしー。
 爪楊枝を揺らしながら、インバネスコートの探偵レンフィートは、ふくれっ面の小春を見下ろした。
「最近、プログラムが勝手に起動して…様子を見に行ったんだよぅ」
 時計男。
 と、小さく囁けば、レンフィートは胡乱げに片眉を上げた。
「それ僕のことー?」
「時計、時計男ー」
 ピンクの瞳を瞬かせる少年に娘も囃したてるように騒ぐ。
「小春が犯人なのかい?」
「悠先生、違うッ」
 船医の悠に小春は反駁する。
 だって否定しておかないと…。
「犯人が見つかったら実験体してやりたいねぇ!」
 マッドなんだもんこの人。
「2人の死因はわかったんですか?」
 おっとり青年龍麻がごくごく自然に問い掛ける。
「んー。千影お嬢は眠らせた後に絞殺。密航者君は撲殺だねぇ」
「つまりそれは…」
「千影さんは計画的犯行、密航者さんは咄嗟の犯行」
 横から龍麻に台詞をひったくられてレンフィートは眉を顰めた。
「とりあえずその整備士を…」
「お勧め出来ないね」
 ぱっきりとぶった切ったのはニート探偵リーゼロッテだ。
「整備士を閉じ込めると当然手が足りなくなる」
「この船は呪われている。何度やっても悪いものしか見えない」
 連れの占い師灯雪の口上にリーゼロッテは肩を竦める。
「馬鹿馬鹿しいッ」
 レンフィートは吐き捨てるようにそっぽを向いた。

 死体を2つ乗せたまま、ティターニャル号は夜闇へと突入する。
「こぉら、こっち行っちゃだめだぞー」
「ちぇー」
「けちー」
 死体置き場の前で、亮は子供達を追い返した。

「つまり、嫉妬に狂ったあなたの仕業ですよ、ウルスラさん」
「!」
 ギリと唇を噛む少女を指さしレンフィートは告げた。
 暴れ逃げようとするウルスラを、双牙に促された椿が投げ飛ばす。
「まぁ概ね正解よ。でも甘い」
 ニート探偵再び登場。
「これは呪いに見せかけた殺人。恋心を巧みに操り誘導できるのは、占い師――」
 気怠げにリーゼロッテが指さす先は友人の灯雪。
「これは呪いだよ」
 動機を指摘しようとした刹那、船が大揺れした。

 波のように断続的に揺れる中、セントエルモ楽団の調べは未だ途絶えることなくホールに響き渡っている。
 アイリッシュソング。
「イマ、オレ達のなせるコトを致しましょう♪」
 喉振るわせ、音奏で。
 乗客の皆が迷わず生の道を辿れますように…。
 黙々と、勢。
 親友の残したアコースティックギターを掛け替えのない仲間と弾けるのがただただ行幸。
 千破屋は転びそうになる子を体を張って逃がす、もちろん歌は1度もとぎらせずに。

「いつまで此処に居るつもりだ…早くボートに乗れ!!」
 止まぬ旋律にジャックが…自らの『芸術』と、心中を決意した男が吼える。
 そこに駆け込んできたのは小春だ。
「この船は沈まない――時計男だよ」
 屈託なく走り回る子らは、あちこち探検と言えば聞こえがいいが、大事な中身を壊して海に捨てたりと悪戯し放題。
 小春の手にした箱に、洸太が目を開く。
「それ、チビ達が持ってたから取り上げたんよ」
 とりあえず。
 そう置いたのがまた影響の少ない場所で。
「な…なんだそりゃァ」
 がっくりとへたり込むジャックは、微苦笑…やがて破顔一笑。
「ジャック様は、強情な方ですから」
 水歌は、ふふと笑み零した。
 楽団の皆も朗らかに笑いながら、歌い奏で続ける。

「なかなか楽しい見世物だったよ」
 怪盗はそう嘯くと、ヘリにつかまり空の彼方へ。


 これら5つは全て『ティターニャル号最後の航海』の記録。
 信じるも信じないも、あなた次第――。


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参加者:91人
作成日:2010/12/24
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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