白百合は赤き糸を手繰る


<オープニング>


「お姉様……来て、くれたのね」
 その少女は、うっすらと笑みを浮かべて言った。年の頃なら12、3か。おそらく美少女、と呼ばれる可愛らしい美貌。
 だが、少女の足には鎖が生え、それが大地に繋がれていた。それは少女が、地縛霊である証。
「嬉しい……ずっと一緒に居ましょうね、お姉様」
 少女は微笑みかけ、身体から赤い糸を伸ばす。糸は易々と大地を、瓦礫を切り裂いていった。
 だが、『お姉様』と呼ばれたその女性……妖艶な笑みを浮かべたその女性は、そんな光景にもその微笑を消さず……。
「ええ。ずっと一緒にいましょう?」
「え……」
 しゅるり、しゅるりと。女性の艶かしき肢体に絡み付いていた無数の蛇が、鱗を煌かせてうごめいた。

 放課後の教室。依頼の説明を聴きに来た能力者を出迎えたのは、何故かメイド服に身を包んだ、長い黒髪の少女だった。彼女は能力者達が集まると、深々と一礼する。
「はじめまして、ご主人様。本年度より銀誓館学園中等部に入学致しました、紫崎・芽衣香(中学生運命予報士・bn0057)と申します。能力者の皆様に仕える運命予報士として精一杯のご奉仕をさせて頂きますので、如何様にもお申し付け下さいませ」
 表情の読めない顏を上げ、全員を見回す芽衣香。自分の自己紹介を全員がきちんと聞いた事を確認すると、再び口を開く。
「ご主人様は、同性の方に恋慕の感情を抱かれた事はございますか?」
 そしていきなりドン引きされた。
「今回の依頼では、そのようなリリスと、そして地縛霊を退治して頂きます」
 だが、芽衣香は気にせず依頼の説明を始める。多分、引かれた事に気づいていない。
「地縛霊は、とある洋館に住み着いた少女です。そしてリリスは、能力者の素質を問わずに人間を誘惑し、洋館に招きいれて地縛霊に殺させています」
 おそらく、リリスは地縛霊と友好関係を築くつもりなのだろう、と芽衣香は語る。そして、地縛霊を自分の欲望の為に利用するつもりなのだろう、と。
「地縛霊の少女は生前非常に病弱で、若くして帰らぬ人となりました。ですが、彼女には非常に親しくしてくれる女性がおり、『お姉様』と呼んで慕っていたのです」
 少女の死後、女性も家族も屋敷を離れた。今や、屋敷は時折管理人が訪れる程度で、誰も住まなくなった。
「ですが、少女は『縛られて』いたのです」
 少女は、死の間際まで『お姉様』と離れる事を恐れた。否、死した後も。故に彼女は、地縛霊となった。
「それゆえに、地縛霊は女性に執着するようになり……リリスはそれを利用しているのです」
 少女は、『お姉様』の代わりを求めた。今度は、二度と離れないように。リリスは、少女の『お姉様』となった。そして、少女は更に貪欲に、更に多くの『お姉様』を求めて女性を殺し続けている。
「ご主人様には、この洋館に赴いて頂き、地縛霊を退治して頂きます。出来ればリリスも退治して頂きたい所ですが、それは難しいでしょう。ですから、地縛霊を倒しリリスの企みを挫く事が、最も重要な目的とお考えくださいませ」
 リリスは、劣勢を悟れば地縛霊を見捨てて逃亡を図る。逃げに回ったリリスがどれほど厄介かは、ご主人様が一番良く知っているだろう……と芽衣香は語る。
「地縛霊は、『赤い糸』を放って攻撃してきます。これは、ご主人様の使う『鋼糸』と同様の物……と考えて下さい。特殊な能力は持ちませんが、それなりに強いでしょう。
 リリスは蛇を操ります。蛇は彼女たちの身体に絡みついて、武器として地縛霊達の力を増し、防具として彼女達の身を守ります。それから、魅了の能力も持ちますが、これは奥の手として、逃げる時にのみ使用して来るようです。
 他には、地縛霊が『お姉様』を得ようとしたなれの果て……腐敗型のリビングデッドが3体います」
 そして、地縛霊は、『お姉様』を失う事を恐れている。故に、リリスを身を呈して守ろうとする。リリスは地縛霊の影に隠れ、地縛霊を強化し、そして地縛霊が劣勢になるか自分が命の危険に陥ればすぐさま逃亡を図る。
 少女達がいるのは洋館の一室。扉はもちろん、一階なので窓からでも逃げられ、リリスの逃亡を阻止するのは難しいと言える。
「リリスをどうしても倒したいならば、策を練れば出来ない事は無い……かもしれません。選択はご主人様にお任せ致します」
 他に何か注意すべき点は無いかと、芽衣香はしばし考え、思いついたように口を開く。
「今回のリリスは能力者の存在を知っています。気配を感じればすぐに地縛霊の元に戻りますから……各個撃破は、難しいでしょう」
 全ての情報を出し終わると、芽衣香は両手を身体の前で重ね、深々と一礼した。
「お気をつけていってらっしゃいませ、ご主人様。無事のお帰りを心よりお待ちしております」

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参加者
戸張・節五郎(はぐれ魔剣士純情派・b02025)
ニーニアルーフ・メーベルナッハ(被虐に濡れた黒い月・b02883)
狐火・だきに(スーパーファイアフォックス・b03563)
メグミ・ベネポーチット(舞刃・b09432)
古原・拝音(禍殃の紋・b10002)
叢雲・凛(透月裁輝・b12936)
藤原・桜(暁のくノ一・b17677)
足利・舞衣子(愛情一本・b20161)
衣笠・圭太郎(うっかり侍・b21391)
高嶺・絃也(高校生青龍拳士・b22137)



<リプレイ>

●館の前で
「このリリスはほおっておけんのぅ……」
 洋館を見ながら、足利・舞衣子(愛情一本・b20161)が呟くと、衣笠・圭太郎(うっかり侍・b21391)は頷いてそれに同意する。
「少女の心を弄ぶとは。必ず仕留めるでござるよ」
 それは、多かれ少なかれこの場にいる全ての者が抱く想いだ。
「しかし、姉妹愛でござるか。拙者は一人っ子故その心はわかり申さぬが……」
「地縛霊とはいえ自分の欲望の糧にするとは、姉の風上にもおけんやつじゃのう」
「え?」
 だが、2人の『勘違い』に気づくと、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(被虐に濡れた黒い月・b02883)はそれを指摘する。
「『お姉様』と言っても、本物の姉妹じゃないですよ」
「ぬ、そうなのか?」
「正直、恋愛や同性愛というものはよく分からないが……」
 恋愛にもいろいろあるのだろうな、と首を傾げつつ古原・拝音(禍殃の紋・b10002)。
「ボクの姉様もそんな感じなんだけど、ボクはまだまだ恋愛自体良く分からないなぁ」
「つまり、血縁関係とかそう言うのじゃなく、精神的に姉妹のような繋がりが有るって事です」
 叢雲・凛(透月裁輝・b12936)も同じように首を傾げると、ニーナが解説を入れる。
「そういうものでござるか」
「ええ……もちろん、精神的だけじゃなく、肉体的に繋がりが有っても良いんですけど……」
 何故か顔を赤らめて言った言葉は、幸か不幸か他の皆には理解されなかったようである。
「それにしても、リリスってのはー……他のゴーストに比べると成り立ちの条件が特殊だよなー……」
 感情の無い言葉の中に、僅かに疑念を潜ませるのは狐火・だきに(スーパーファイアフォックス・b03563)。
「なんか裏があるんじゃねーかと勘繰っちまうなー……」
「まあ、どんな裏が有るにせよ……初依頼、足を引っ張らないように頑張るよ……」
「あたしも、久しぶりのお仕事がんばるでやんすかね」
 決意を込めて言うのは藤原・桜(暁のくノ一・b17677)、そしてメグミ・ベネポーチット(舞刃・b09432)。
「さて、それじゃあまあ、行くか」
 館の外観を調べ終えると、高嶺・絃也(高校生青龍拳士・b22137)は皆に声をかける。
「ええ。あちらも待っているようですし……」
 戸張・節五郎(はぐれ魔剣士純情派・b02025)は洋館の一つの窓を見つめて言った。
 その視線の先に有るのは、窓から外を見て妖艶に微笑む1人の女性。こちらを見つけてはいないようだが……『感じて』はいるのだろう。
「……では、行きましょうか」
 彼女が窓から離れるのを見ると、能力者達は洋館への侵入を開始した。

●赤い糸と白い百合
 扉が開け放たれた。部屋へと飛び込むのは5人、桜、メグミ、拝音、圭太郎、絃也。敵を囲むようにして、素早く展開する。
「ふふ、来たわね。待っていたわ」
「私の……お姉様達」
 すでに特殊空間と化していたその部屋には、地縛霊とリリスが、リビングデッドを従えて彼らを待ち構えていた。
「可愛い子もいるじゃない。ふふ、美味しそう」
「あっしは、殺されるのはお断りでやんすがね」
 リリスに見つめられると、メグミは顔を不快げに歪めつつ返した。次いで視線を向けられた桜も、無言で符の作成に集中する。
「つれないのね……」
「お前の欲望を満たしてやるつもりもないしな」
 リビングデッドへと駆け寄ろうとしながら、無骨な長ドスを旋剣の型に回すのは拝音。他の面々も、次々と戦闘準備を整える。
 パリィィンッ!
「あら……?」
 戦闘の始まりを妨害するように、窓ガラスが破られ剣が宙を舞いながらリリスへと迫った。それを蛇で受け止めて、リリスは流し目のように視線を割れた窓に向ける。そのまま、窓からなだれ込むのは、残りの5人だ。
「なるほど、前から後ろから、挟み撃ちって訳ね……燃えて来るわ」
「燃えている所悪いが、おぬしは仕留めさせてもらう!」
 己の身体に白燐を纏わせながらリリスへと駆け寄るは舞衣子。彼女とリリスの間に、リビングデッド達が割って入る。
「サーキット・スタート……さぁ、ガンガン行くよ!」
 自分のモーラットであるフールをクッション代わりに部屋に飛び込んだ凛は、じたばたと頑張ってもがくフールを足の下に、魔弾の力を十字の杖剣に込める。
「様子見と言った所かしら?」
 自己強化に務める能力者達を見ながら、リリスも身に纏う蛇を地縛霊の少女に絡み付かせようと蠢かせる。
「させない……キミには眠ってもらう……よ」
 それに素早く反応したのは、最前から符を作っていた桜だ。眠りをもたらすそれを、リリスへと解き放つ。その符がリリスに吸い込まれると、膝がガクンと砕けた。
「ん……ぁ……」
 そのまま、妖艶な肢体を投げ出すようにして、床へと横たわる。
「お姉様に、手は出させない」
 そんな姿を見た少女は、リリスを守るようにしながら、近づいていた舞衣子へと赤い糸を放つ。
「く……ぅっ!?」
 舞衣子の表情が僅かに歪む。放たれた糸は分厚い西洋甲冑をも易々と切り裂いたのだ。
「お姉様を傷つけるのは、許さない……」
「気をつけろ、この少女、手強いぞ!」
 その言葉に、能力者達の表情に緊張が走る。この中で一番硬い防具を身につけていた彼女が狙われたのは幸いか、未だ甲冑はその機能を保ったまま……だが、このままではまず持たない。
「舞衣子さん……大丈夫……?」
 桜から、治癒の力を持った符が飛ぶ。彼女自身の旋剣、そしてニーナからも白燐蟲が飛ぶと、甲冑は急速に修復されていく。
「ともかく、リリスが起きる前に……」
 龍の顎を模した絃也の拳が、リビングデッドへと叩き込まれた。
「そうだな、まず邪魔なリビングデッドを片付けるかっ!」
 頭上で回転させていた長ドスを振り下ろし、拝音ももう一体のリビングデッドの身体を切り裂く。
「ダメ……私のお姉様たちを、傷つけるの……許さない!」
 それに対して繰り出されるのは、少女の赤き糸の報復。熾烈な攻撃は、全力で回復しなければ凌げるものではない。舞衣子がいなければ、あるいは桜の符やニーナの白燐蟲、だきにの癒しの歌声が無ければ、戦線はあっさりと崩壊していたかもしれない。
 それでも凌ぎながら、少女に、リビングデッドに、能力者達は攻撃を加えていく。
「梅雨払いは拙者の役目……」
 一体のリビングデッドの身体が切り裂かれ、元の死体へと変える。為したのは圭太郎の放った水刃。
「本命は任せたでござるよ!」
「っ……よくもお姉様を!」
 怒りに任せ、攻撃を振り払い、打ち落とし、さらに赤糸を振るう少女。そんな少女へも、攻撃が降り注いで行く。
 赤い血に濡れながら、少女はさらなる怒りに任されるように糸を振り上げた。
「許さな……あっ、んっ……お姉……様」
「ダメよ、落ち着きなさい」
 それを宥めるように、蛇が少女へと絡みついた。

●目覚めの蛇
「目覚めたか!」
「まだまだ。焦ってはダメよ……」
 妖艶な笑みを浮かべながら身を起こしたリリスは、周囲を見回す。
「戦う相手は選びなさい。硬い相手は後回し……狙うのは、例えば……」
「くっ……まずいでやんす!?」
 リリスが指差したのは、インフィニティエアの反動で大きなダメージを受けたメグミ。咄嗟に後ろに下がろうとする彼女へと、赤糸が襲い掛かる。
「分かったわ、お姉様……」
「あっ……くっ……!」
 武器で防いだ所で、その大威力がどうにかなるものでもない。強烈な一撃に、なす術も無く打ち倒される。
「メグミさん……!」
 咄嗟に眠りの符を放つ桜だが、今度のそれはリリスの蛇に弾かれる。
「何度も、同じ手は受けないわよ?」
「では、これならどうですっ!」
 影から手を飛ばすのは節五郎。奥義の威力を持つそれは、リリスの身体を抗わせずに切り裂いていく。
「まだまだ! 一気に畳み掛けるわ!」
 次いで放たれた凛の魔弾は、蛇に弾かれて火の粉がリリスの身体を焦がすに留まる。それでも痛みを感じたのか、顔を歪めてみせた。
「くっ……!」
 その痛みに顔を歪めるリリスは、自らに蛇を纏わりつかせてその傷を癒そうとする。
「そう、回復……」
 血に濡れて艶かしい肢体についた傷を覆い隠すように、蛇が巻きついていく。ますます妖艶さを増したリリスは、再び周囲へと視線を巡らせる。
「癒し手は、早めに潰して置くに限るわ……」
「あっ……!」
 視線を向けられたのはニーナ。蛇で強化された赤糸は、一瞬で纏う防具を切り裂いた。
「くふぅ……んっ」
 切り裂かれた服と相俟って、リリスに劣らず艶かしく響く声を上げるニーナ。だが、そのダメージは小さくない。
「随分と陰険だな、ババアー……」
「っ……!」
 咄嗟に、だきにの挑発が飛ぶ。少女に炎の呪縛を放ち……これは防がれるが、ともかくリリスの注意をこちらに引き付けようとする。
「見え透いた挑発ね……」
「その割には、表情が引き攣ってるけどなー……」
 無感動な口調が、逆にリリスの怒りを誘う。顔を紅潮させ、だきにを強く睨み付け……。
「ふん……相手はそのままよ」
「んー……ダメかー……」
 その怒りを押さえ込んで、なんとかニーナに視線を向けなおす。彼女は己の身体を白燐装甲で癒しながら、顔を俯かせている。
「もっと……」
「え?」
 そして、その口元が、笑みの形に歪められた。
「もっと……もっとしてぇ……♪ 切って、刻んで、突き刺してぇ♪」
「ニ……ニーナ殿?」
 圭太郎が思わず声をかける。本当に、『笑う』と言うより、『歪む』と言うのが相応しい、そんな、恍惚の表情を浮かべてニーナはリリスを、少女を見つめる。その姿は、思わずフールも一瞬たじろぐ程だ。
「私は、そういうの……嫌いではないわ」
 クスクスと笑みを浮かべながら、少女に命じてさらに鋭く切り裂かせるリリス。ふらふらになりながらも、ニーナはなお笑みを浮かべたままだ。
「そう、可愛いわ……殺してしまいたくなるほど……っ!?」
「余所見は、良くないよね!」
 そんなニーナに見惚れるように視線を向けた一瞬の隙を突き、凛の魔弾が再び放たれる。今度のそれは、確実にリリスを捉え、その身体を炎に包んだ。
「ねぇ……」
「何かしら、お姉様?」
 炎に焼かれ、苦悶の表情を浮かべるリリスは、ふと少女に目を向ける。
「私の事、好きよね……? なら、私を守りなさい!」
「っ……逃がしません!」
 身を翻すリリスに、それを守ろうと立ちふさがる少女。それを追いすがる能力者達。
「そう、守るのよ……ねぇ、可愛い可愛い貴女」
「く……っ!?」
 舞衣子とリリスの視線が合った。背けようとしても、抗い難い視線に、彼女の身体が揺らぐ。
「それじゃあ、よろしくね? 特に、あの小さい男を止めなさい」
 その横を駆け抜けるように、リリスは窓へと駆け出す。舞衣子は、意志を失ったような表情で節五郎へと襲い掛かる。
「足利さん!」
「ダメだよ……眠って」
「落ち着けー……」
 すぐさま、桜から眠りの符が、だきにから炎の束縛が飛ぶ。眠りにこそ抗ったものの、束縛に身体を縛られ動きが止まる。だが、舞衣子が壁となったせいで、節五郎の影が、間に合わない。リリスは、窓に足をかける。
「お姉様……逃げないで、もっと……!」
 ニーナの光の槍が放たれるが、蛇がそれを阻む。
「止まりなさい!」
「逃がさないー……」
 凛の、だきにの炎はリリスをなおも焦がすが、それでもリリスは止まらない。
 射撃は間に合わず、近づく者の前には少女が立ちふさがる。もはやそれを止める者はおらず……。
「逃がさないでやんすっ!」
「っ!?」
 否、メグミの……倒れた筈のメグミの水刃が、リリスを襲う。その痛みは、リリスを傷つけ……倒すまでには至らずとも、一瞬だけ動きを止めた。
「その、一瞬が有れば!」
 影の手が、リリスを切り裂く。もちろん放ったのは節五郎だ。その強烈な一撃に、やはりリリスは抗えない。その身体が血に染まり、ふらり、とよろめき。
「この借りは、いつか必ず返すわ」
 ……憎憎しげに言って、リリスの姿は窓の外へと消えていった。

●糸が切れる
「あなた達を倒せば……お姉様は、すぐ戻ってきてくれるわ……」
 残された少女は、能力者達に目を向ける。それは、完全にリリスを信じきった表情。
「だが……倒される訳には行かないんでね」
 三日月を思わせる弦也の鋭い蹴りが、地縛霊の死角から放たれる。リリスの知恵と蛇の加護を失った地縛霊は、それでも強敵だった。
 強敵ではあったが……能力者全てを打ち倒せる程の相手ではない。苦闘の末、少女の身体が攻撃を受けて大きく傾ぐ。
「どのような事であれ、二度も絆を引き裂く形になるのは……申し訳ない、事なのだろう、な」
 最後に、すまなそうに言いながらの、拝音の闇を纏った一閃が、少女を赤い糸ごと切り裂いた。

 地縛霊は撃破した。リリスを倒す事は出来なかったが……まあ、事件を起こせばいずれ運命予報にでもかかるだろう。
「すまぬ、私が魅了などされなければ」
「それを言うなら、そもそも舞衣子さんがいなければ地縛霊にやられていたかもしれませんから……」
 リリスに気を取られすぎた事が地縛霊の少女への対策を疎かにさせ、結果としてリリスを逃がす原因になってしまった。守り、回復に裂かざるを得なかった力を、もう少し攻撃に使う事が出来れば……と言うのは、もはや仮定の話に過ぎないか。
「まあ、目的は達したし、問題ねぇだろけど」
 絃也の言うように、ともかく地縛霊は倒した。この場はそれで良しとするべきだろう。
「願わくば、来世で最高の『お姉様』に会えることを」
 最後に、舞衣子が少女に花を手向け、皆で祈りを捧げ。
 それで、この事件は終わった。


マスター:一二三四五六 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2007/05/11
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