スコップ


<オープニング>


 とある雪国に、今は誰も住む者がいなくなった一軒の廃屋があった。
 深夜、1人の若者がその家の前を通りかかると……一瞬彼は不思議な感覚に包まれ、気付いた時、彼の前にスコップを手にした男が1人立っていた。
 こんな時間に雪かきだろうかと不思議に思いつつ素通りしようとしたが……男はさっと横に移動してそれを妨げ、手に持ったスコップで若者の頭を思い切り殴りつけ……真っ白な雪の上に真っ赤な液体が飛び散った。

「今回の現場は北国のとある町、スコップを持ったおじさんの地縛霊が相手となるよっ」
 神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)の説明によれば、とある北国にある廃屋の前を通りかかると地縛霊の特殊空間へと引きずり込まれ、そこに待ち受けるスコップを持った男性の地縛霊に襲われるという。
 地縛霊が現れるのは午後11時頃であり、廃屋の前を通りかかる者全てを特殊空間へと引きずり込むという。
 特殊空間内部は脱出できないという点以外は特に通常空間と変わりないものの、現場周辺にはかなり雪が積もっているため、多少足をとられるかもしれない。
 住宅街の中に位置するため、その家に一般人が近づかぬようにする必要があるかもしれない。
 地縛霊は50代くらいの男性の姿をしており、スコップで殴りつける攻撃を行う。
「なんでも、北国では雪かきしてる途中で屋根から落ちてそのまま生き埋めになったりだとか……そういう事がたまにあるみたいだね」
 もっとも、今回の地縛霊がどういった理由でゴースト化してしまったのかは優希にはわからないようである。
「それじゃあみんな、防寒対策もきちっとねっ」

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参加者
ガイ・ブリアード(雷鳴の拳士・b00913)
藤城・新次郎(魔剣士・b07138)
青神・祈赤(凶剣・b15162)
獅子守・大地(黄金獅子座の氷結士・b30011)
綾瀬・千鞠(高校生真月のエアライダー・b31068)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)
クロエ・ノーティス(耀く小虎・b65526)
斎東・黎(濃紫の摩天楼佇む追跡者・b78933)
都築・要(繰燐・b79462)



<リプレイ>


 ざっざっと足音をたてながら、不慣れな雪道の中で数名の若者達が立ち入り禁止の看板等を設置していた。
 そう、彼らこそ銀誓館学園が誇る能力者達であり、この辺りにある廃屋に現れるという地縛霊を倒すため、遠路はるばると北国へとやってきたのである。
「雪国か……私はずっと都会暮らしだから、この環境でも住み続けるのは凄いな……ここまで来る間も見かけたけど」
 地縛霊となってしまった人物は、もしかしたら発見が早ければ助かったかもしれない、翌日に大切な事があって亡くなってしまってここにとどまっているのかもしれない。
 地縛霊を救う……というのは変な話だが、斎東・黎(濃紫の摩天楼佇む追跡者・b78933)は今回ばかりはそう思ってしまっているようであった。
「最近は暖冬続きで雪が積もるところも少なくなったわよね。雪国でもあまり雪が降らなくなってるそうだし」
 地縛霊も今の時代なら、生き埋めにならなくてもすんだかもしれないと醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)は思う。
 様々な要素が重なり地縛霊となってしまった男性……ホントに不運であるとしか言いようがないだろう。
「でも……寒くなってきましたねぇ、北の方では大雪で雪かきが大変なようですね」
 雪というのは全てを覆い尽くしてしまうため、意外と事故が起こりやすいのだと伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は改めて感じつつ、今回の地縛霊が事故にあってしまった者なのだとしても、地縛霊として存在し続けるのは許されない事であると彼は思う。
「防寒対策をしていないと戦う前に気力を削がれてしまいそうですね」
 はぁ……と白い息を吐き出しながらとう呟くクロエ・ノーティス(耀く小虎・b65526)。
 彼女は戦闘に不向きである事を理解しつつも、コートを着用してブーツを履き、防寒対策をしっかりしてきていた。
「この寒さも、修行の一環としてはちょうどいいな」
 グッと拳を握りしめながら気合を入れるガイ・ブリアード(雷鳴の拳士・b00913)。
 彼はつい先日にも北国で地縛霊を撃退しており、
「というわけで寒稽古シリーズ第2段、きっちり倒させてもらうぜ!」
 冬の寒さにも負けない熱き闘志を燃やしていた。
「地縛霊も強いようだが、それ以上に雪国での戦闘は慣れない場所だから気を引き締めて戦わないとな」
 不慣れな雪上戦、足を滑らせたところを……などという事も決してあり得ない事ではない。
 ガイに感化されたのか、藤城・新次郎(魔剣士・b07138)もまた決して油断しないようにと心に決めたようである。
 ……そうして、慣れぬ足場に四苦八苦しながらも能力者達は作業を完了させ、獅子守・大地(黄金獅子座の氷結士・b30011)以外の者達は地縛霊が現れるという廃屋の前へと集合した。
「廃屋の前を通りかかると特殊空間に引きずり込まれてしまうのですね」
 最近は廃屋マニアや廃墟マニアという者達も増えており、予報士が告げていたようにたまたま通りかかる者もいるだろう。
 これ以上そういった者達が巻き込まれ、悲しい事件が起こる前に皆と力を合わせて綾瀬・千鞠(高校生真月のエアライダー・b31068)は改めて決意する。
「ぼちぼちやるか」
 時計を確認しながら青神・祈赤(凶剣・b15162)がそう呟いた直後、能力者達は不思議な感覚に包まれ……気づいた時、彼等はスコップを肩に担いだ初老の男性と対峙していた。
 一見すればごくごく普通の男性のように見受けられるが……能力者達は感じていた。
 彼から発せられる禍々しい気を……。
「何があったかなどは知らない。だが、人を手にかける者は倒されなければならない」
 そう言いながら都築・要(繰燐・b79462)はすぅっとカードを取り出し、仲間達と共にそれを一斉に起動させていき……それぞれの武器を手にした能力者達は、地縛霊に敢然と立ち向かっていくのであった。


 戦闘開始早々、千鞠はギンギンカイザーXを作り出してそれを自分に振りかけ、
 祈赤は生命エネルギーを低下させる事と引き換えに作り出した氷を両手の長剣へと纏わせながら地縛霊に接近、地縛霊の両肩へとそれらを振り下ろし、打ちつける。
 更にガイが祈赤の後を追うようにして、しっかりと地面を踏み締めながら地縛霊へと迫り、
「くらえ、真・ブリアードインパクト!」
 偉大なる獣の守護霊、トーテムが宿った拳を地縛霊の腹部へと食らわせ、彼はぐぅっと唸り声をあげるが、すぐさまスコップを振り上げ……ガイの脳天へと勢いよくそれを振り下ろす。
 直後、がーんという鈍い音と共に彼の頭に凄まじい衝撃が駆け巡り、さしものガイも一瞬意識がぶっ飛びくらくらしてしまう。
「無理するなよ、奴の攻撃を連続で食らったらやばい」
 そうガイに注意を促しつつ、黎は心を静寂に保ちながら大自然の息吹を感じ取り、深呼吸を行う事によって肉体を大幅に強化し、洋角は中衛へと配置につき、
「我が内に眠りし獣よ。目覚めよ!」
 夕華は己の内に手眠っていた力を呼び覚まし、皮膚に虎の模様を浮かび上がらせ髪の毛を逆立たせ、クロエは肉体に負荷がかかる事を承知の上で指先から電撃ビームを発射し、地縛霊の体を閃光によって包み込んでいく。
 そして新次郎は自らの武器である斬馬刀へ、要は傍らにいた千鞠の武器へと黒燐蟲をそれぞれ纏わせ、攻撃力を上昇させていくのであった。


「スコップは人を傷つける為の道具ではありませんっ」
 そう指摘しながら、千鞠は華麗なるペン捌きによってあっという間に地縛霊そっくりのイラストを描き出し、イラストは実体があるかのように動きだして地縛霊に向かっていき、手に持ったスコップで彼の体を力いっぱいたたきつけ、
「そんなもので武装している者の技量など、たかが知れている」
 あざ笑うかのように呟きつつ、祈赤は再び生命エネルギーを限界ギリギリまで低下させ、それと引き換えに作り出した氷を左右それぞれの長剣と纏わせ、バチで太鼓をたたくようにして地縛霊の腹部を強打し、
「頑張れみんな、ブリアードスピリット!」
 ガイは先程拳へと宿らせたトーテムの力を仲間達へと分け与え、能力者達の力が少しずつではあるが強化されていく。
「ジャマダ……」
 地縛霊はうっとうしそうな顔をしながら、槍で突き刺すようにして、スコップで祈赤の腹部を強く打ち付け、さしもの祈赤もグッとうめき声をあげるもののその場に踏みとどまり、
「じいさん、ここの住民だったなら、同郷のモン殺っちゃいけないだろうが」
 この町の住人であったなら、彼が殺めてしまったのは、そしてこれから殺める事となるのは知り合いであるのかもしれない。
 地縛霊にそのような事をさせないため、黎は獣のような姿勢を取りながら目には見えない衝撃波を放ち、地縛霊は強風に覆われたかのように体を大きくのけぞらせ、
「一気に決着をつけましょう」
 洋角はそっと目を瞑りながら瞳へと禍々しい怨念を込め……カッと見開き、眼鏡こしに地縛霊をキッと睨みつける。
 直後、地縛霊は体内をズタズタに引き裂かれ、がくがくと体を震わせながらもがき苦しむ。
「ブリアードさん、無理しないで」
 仲間の身を案じつつ、夕華は彼の武器に白燐奏甲を施して体力を回復させ、
「……なんとかなりそうです」
 予想していたとおり、不慣れな足場とはいえ後衛から射撃をしているだけならばそれもたいして気にならない。
 クロエはしっかりと地面を踏み締めながら人差し指を突き出してそこから電撃ビームを発射、地縛霊は電流によって体を蝕まれていき、
「チャンスだな」
 今が攻め時と判断した新次郎は漆黒のオーラに染まった斬馬刀『白雷』を肩に担ぎながら地縛霊へと迫り、ズサァァァと音をたてながら滑りこみ、その勢いを利用しながら地縛霊の体に横一文字の斬撃を刻み込み、地縛霊はがくっとその場に膝をついてしまい、
「終わりだ」
 そして要は地縛霊がいる地点目がけて黒燐蟲の群れで出来た弾丸を放ち……爆発。
 直後無数の黒燐蟲が散らばり、それらは雪原を真っ黒に染めながら地縛霊に群がっていき……黒燐蟲が全て消え去った時、地縛霊の姿もまた消え去っていた。


 地縛霊が消え去って間もなく、能力者達は通常の空間へと帰還を果たしていた。
「安心して眠れ……」
 呪縛から解放された男性の冥福を祈り、そっと目を瞑る黎。
 これで男性の魂は、真の意味で救われた事であろう。
「お疲れ様です」
 そう言いながら洋角はイグニッションを解除し、誰1人欠ける事無く無事に依頼を終われて良かったとホッと胸を撫でおろしていた。
「今回は良い経験になったな」
 様々な場所で任務を行う能力者といえど、雪上での戦闘はめったに経験できない事だろう。
 今回の戦闘で得たものを次に活かせるようにしっかり覚えておこうと、新次郎は思っているようであった。
「さて、設置した看板を片付けて撤収しないとな」
 寒稽古の続きもあるし、と思いつつ、ガイ達は看板等を設置した場所へと向かっていく。
 後片付けもまた、能力者達の立派な仕事なのである。
 互いに協力し合った結果、作業は思いのほか早く終了した。
「さて、さっさとこの場を離れるか」
 こんな時間に若者達がうろついていては怪しまれるかもしれない。
 祈赤は皆に期間を促し、仲間達もまた誰もそれに反対するものはいなかった。
「さすがに寒いな、せっかくだし何か食べていこうか、こういうところの料理は美味そうだ」
 気に入ればあのじいさんも喜ぶだろうと考えつつ、黎は仲間達を食事に誘う。
 そうしてその後の予定について話し合うなどしながら、能力者達はざっざっと足音をたてながら、現場をあとにしていくのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/12/31
得票数:カッコいい12 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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