蒼天の鬼神

<オープニング>


『ガ、アアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 その『鬼』が、吼える。
 体長は六メートルほど。その額から伸びるのは二本のねじれ角。その身の色は蒼――透き通る空を思わせるその色に身を染めた『鬼』が、天地を揺るがすほどの咆哮を上げた。
 その声は、大気を震わせ周囲を薙ぎ払う。命のあるモノ、命のなきモノ、その破壊は一切合財の区別なく打ち砕いていった。
『アアアアアアアアアアアアアッ!!』
 そう、『鬼』にとっては別段何の事はない――己がもたらした破壊が、人の命を奪ったとしても――。

「みんな、集まった?」
 昼下がりの公園。そこで八重垣・巴(高校生運命予報士・bn0282)は集まった能力者達の顔を確認すると口を開いた。
「今回、あなた達に頼みたいのはとある山に出る地縛霊の対処よ」
 その山は登山客などほとんどおらず、たまにその周辺のお年寄りが用事があって山に入る、そんな人気のない山だった。元々は、古くは『人食い鬼が住まう山』と恐れられ、人がみだりに足を踏み入れるのを禁じていたその名残だという。
「今回は、運悪くそのお年寄りの一人が犠牲になってしまうわ。幸い、この運命予報は未来の出来事だから今から対処すればそのお年寄りも助けられるわ」
 巴はそこで一度言葉を切ると、懐から一枚の地図を取り出す。
「で、地縛霊が出現するのはこの辺りよ。辺り一面、木々が薙ぎ払われて台風の後みたいになってるからすぐにわかると思うわ。少し足場が悪いけど、あなた達ならイグニッションすれば大した問題にはならないわ」
 そこに出現するのは、ただ一体の地縛霊――だが、この相手が曲者だ。
「体長は六メートルほど、ねじくれた二本の角を持つ蒼い肌をした鬼の姿をしているわ。攻撃手段は三つ、遠距離の全周を薙ぎ払う咆哮、近接の単体のみながら強力な相手の精気を吸収する拳の一撃、近接の全周を雷を落す攻撃の三つよ。咆哮には『追撃』の効果が、雷には強力な『マヒ』と『猛毒』の効果があるから、十分に注意して」

 巴はそこで表情を厳しいものにして付け加えた。
「でね? 周辺に、『打出の小槌』のメガリスゴーストが出現するみたいなのよ。『打出の小槌』のメガリスゴーストは、倒したゴーストを復活させる上、巨大化させてしまうんだけど……これ以上巨大化させてどうするんだって感じよね? とにかく、ゴーストを倒しても、それだけでは終わらない可能性があるから余力を残した戦い方も必要となるわよ、覚えておいて――大丈夫、あなた達なら出来るって私は信じているわ」
 じゃあ、頑張ってね、と巴は信頼の笑みと共に能力者達を見送った。

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参加者
浅葱・悠(星黎の紡ぎ手・b01115)
アラストール・セブンセントラル(高貴なる義務・b05350)
小笠原・宏道(真魔剣士・b08417)
儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)
霧積・アレサ(ホワイトグリント・b37087)
木之花・さくら(混血種・b47400)
西条・霧華(高校生真魔剣士・b53433)
霧凪・玖印(刻異・b56220)
黒菱・涅雅(覇鬼・b62200)
御神・深月(破天の戰・b63397)
犬神・リューシャ(真クルイークヴォルク・b73419)
織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)



<リプレイ>


「人食い鬼が住まう山、ですか」
 その自然に溢れた山を見やり、小笠原・宏道(真魔剣士・b08417)がこぼす。それと一緒にその光景を見回し、西条・霧華(高校生真魔剣士・b53433)もしみじみと呟いた。
「人の力を超えたものを鬼と呼ぶそうですが……無作為に破壊を齎す蒼鬼はある意味では天災とも言えそうですね」
 目の前に広がるのは、山の中腹辺り、根元から木々がねじ伏せられた――天災の跡、そう呼ぶしかない光景だ。
「芽亜はかなり久しいな」
「悠様、ご無沙汰しております。あの方とは何とかうまくやっておりますわ」
「……奴が迷惑をかけていなけばそれでいい」
 知己である浅葱・悠(星黎の紡ぎ手・b01115)と儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)が笑みを交わす中、アラストール・セブンセントラル(高貴なる義務・b05350)が小さくこぼす。
「蒼天すでに死すとは誰が言った言葉だったか……蒼天とは天命を意味する時も在るとか。天命の鬼と考えると何か凄そうだ――」
 不意に、アラストールの表情が変わった。それとほぼ同時、全員が反射的に身構える。
 身構えさせたものの正体――それは、荒れ狂う殺気だ。その殺気の放たれた先に、その巨大な蒼い鬼の姿があった。
『アアアアアアアアアアアアアッ!!』
 咆哮が、青い天へと木霊する。体長は六メートル、巨体と表現する他ない鬼の姿に織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)が小さくこぼした。
「鬼っぽい!」
「現実的に見て十分に天を衝くような鬼神なのに、これで巨大化したなら、鬼神と呼ぶより凄そうです、なんと呼べば良いのでしょうね?」
 しみじみと、蒼天の鬼神の姿を見やり木之花・さくら(混血種・b47400)も呟く。
「鬼のゴーストに打出の小槌……? 日本の諺に言う、弱り目にあたりめという奴ね……あたりめ? まあ……戦う限りは、全力で叩く」
 犬神・リューシャ(真クルイークヴォルク・b73419)も呆れたように、その肩をすくめた。しかし、霧積・アレサ(ホワイトグリント・b37087)は不敵に笑う。
「……大きければ強いってもんじゃないんだけどな」
「一筋縄じゃいかない相手なのは百も承知だ。それでも、鬼を斬るチャンスなんて滅多にあるもんじゃないしな。その鎖、断ち切らせて貰うぜ」
 スラリと長剣を引き抜き、黒菱・涅雅(覇鬼・b62200)が言い捨てた。
「鬼、か。神と鬼とは同じモノらしいが……まあ、討つ」
「確かに戦闘能力は驚異だが、単体な上に行動の幅が少ない分、楽な相手とも言える」
 御神・深月(破天の戰・b63397)が、霧凪・玖印(刻異・b56220)が、淡々と吐き捨てた瞬間、蒼天の鬼神がズンッ……! と重い足音と共に踏み出した。
『アアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 殺意が、圧力が、増していく――戯れに破壊をもたらす鬼神が、能力者達を破壊する対象だと認めた瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。


『アアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 ただ一体で立つ巨大な蒼天の鬼神に対して、能力者達は陣形を組んでいく。
 前衛に悠とアラストール、涅雅、中衛に宏道とアレサ、霧華、玖印、リューシャ、深月、後衛に芽亜とさくら、ラジェリといった布陣だ。
「――リフレクトコア」
「七星光アターック!」
 まず立ち位置を調整した深月が四つにリフレクトコアを周囲へと展開し、ラジェリが狐の耳と尻尾を生やし七星の光を光臨させた。その幻楼七星光の輝きを蒼天の鬼神はかざした右手でねじ伏せ、抵抗する。
「霧の巨人よ」
 淡々とした玖印の呼びかけに応じるように、その背後にブロッケンジャイアントの霧の巨人が起立する――そして、悠とアラストールがほぼ同時にかけた。
「鬼狩りとはまた一興……鬼の名に恥じぬ戦を見せて貰おうか」
「お前の相手は僕達だ――!」
 二人の長剣が闇色に染まる――下段から振り上げる悠の斬撃と大上段に振り下ろすアラストールの斬撃、それを蒼天の鬼神は左右の拳で火花を散らし受け流した。
「さて、鬼退治といくか」
 そして、同じように間合いを詰めた涅雅が長剣を振り上げ、旋剣の構えを取る。
「僕が――自称――天才人狼騎士を名乗ってる理由を見せてやろうじゃないか」
「夢幻の壁よ――!」
 アレサが長剣を振り上げ、芽亜のサイコフィールドが仲間達を包んでいった。
「さあ、蒼天の下、戦いの舞踏を踊りましょう」
「参ります」
 さくらが優雅に一礼し魔狼のオーラを身にまとい、霧華が旋剣の構えで自己強化する。
「さて、覚悟はいいわね……?」
 長槍を構えたリューシャが、クルセイドモードで自己強化した直後――その雷が、悠とアラストール、涅雅の三人へと降り注いだ。
「…………ッ!」
 その雷に、三人の膝が揺れる。そこへ、赤い影の鉤爪が走る――宏道だ。
「剣技……地疾りっ!」
『アアアアアアアアアアアアアッ!!』
 その宏道のカラミティハンドを、蒼天の鬼神は右拳で殴り砕いた。
「単に図体がでかいだけ――って、訳じゃないわけか」
 アレサが長剣の柄を握る手に力を込めて言い捨てる。怯まぬ能力者達を見て、蒼天の鬼神はギシリ――と拳を握り、迎え撃つように身構えた。


「貴様が破壊を繰るならば我が白鷺の守剣にて護るのみ……星黎の理をその身に刻め」
「オオオオオオオオッ!!」
 蒼天の鬼神の真横へと回り込んだ悠が純白の長剣を闇色に染め横薙ぎに払い、中衛へと下がっていたアラストールの足元から影の鉤爪が走った。
『アアアアアアアアアアアアアッ!!』
 その斬撃と鉤爪を蒼天の鬼神はかろうじて左右に拳で受け止める。だが、その一瞬の隙に涅雅がプロミネンスパンチの一撃を胸板へと叩き込んだ。
「焼き斬ってやる!」
 その一撃に蒼天の鬼神の蒼い身が、魔炎に包まれる。
「――そこだ!」
「――――」
 畳み掛けるようにアレサのダークハンドが放たれ、伸びやかな芽亜のヒーリングヴォイスが仲間達を癒していった。
『アアアアアアアアアッ!!』
 アレサの地を這うような影の鉤爪を蒼天の鬼神は蹴りで受け止める――そこへ、長槍を構えたさくらと日本刀を下段に構えた霧華が続いた。
「貫いて――私の、光」
「災厄の爪よ――!」
 ダダダダダダダダッ! と蒼天の鬼神へとさくらクロストリガーが降り注ぎ、霧華の切り上げの軌道に沿って走るカラミティハンドが蒼天の鬼神の脇腹へと突き刺さった。
「まだまだよ――?」
 そこへ、リューシャが地を蹴って跳躍する。その足がしなやかに弧を描き振り払われ、クレセントファングの一撃が蒼天の鬼神の首元を切り裂いた。
『――――アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 その瞬間、天を仰いだ蒼天の鬼神が吠える。衝撃は戦場を駆け抜け、能力者達を打ちのめす――そこへ、宏道が斬馬刀を担ぎ駆け、一本の光の槍が放たれた。
「……チェリャァァァッー!!」
「黙れ」
 宏道の斬馬刀を薙ぎ払う横回転の斬撃と深月の投擲した光の槍を、蒼天の鬼神は両手をクロスさせ受け止める。
「ジェリいっきまーす!」
「やれ」
 ラジェリが慈愛の舞を舞い、玖印がレイピアを振り払ったのと同じ動きで背後の霧の巨人が斬撃を繰り出した。それを蒼天の鬼神はアッパーカット気味の拳の一撃で軌道を反らし、受け流す。
「うう〜ん、さすが人食い鬼って感じだな〜」
「押し切れない相手ではない、問題ないさ」
 ラジェリの苦笑に何という事はないと言う様に玖印が淡々と吐き捨て、身構え直した。
 ――能力者達と蒼天の鬼神の戦いは一歩も引かぬ乱打戦となった。
 蒼天の霹靂を中心に蒼天の叫びという優秀な範囲攻撃を惜しみなく使ってくる相手へ、能力者達はラジェリと芽亜という優秀な回復役の助けを受けながら耐え凌ぐ。その上で、それぞれが蒼天の鬼神へと着実に攻撃を重ねていく。蒼天の鬼神自体の防御は厚いが、能力者達はそれを超えたダメージを着実に与えていき――ついに、その時は訪れようとしていた。
「青空が夕焼け空に化けちまったな。そのまま燃え尽きな!」
「遅すぎる、これは」
 涅雅のプロミネンスパンチが、アレサのダークハンドが、それぞれ蒼天の鬼神を切り裂いた。グラリ、と魔炎に包まれた蒼天の鬼神へと芽亜がクロスシザーズの切っ先を突きつけ、さくらが長槍を構える。
「蹂躙するのですわ!」
「咆哮は歌声、戦いは舞踏――そうは思いませんか?」
 芽亜のナイトメアランページがその身を打ち抜き、さくらのクロストリガーがその身を串刺しにしていった。
 それでも、蒼天の鬼神は踏み止まる――そこに、霧華とリューシャが続いた。
「私も『選んで殺す』しか能の無い剣鬼ですが……これから起こり得る銀の雨の悲劇を防ぐ為に、私達人間を護る為に……あなたを斃します」
「私の牙、受けてみなさい!」
 霧華のカラミティハンドが胸板を貫き、リューシャのクレセントファングがその角を切り飛ばす。だが、蒼天の鬼神は体勢を崩しながらもその拳を悠へとその凶悪な拳を繰り出した。
「――ッ!」
 かろうじて、長剣のガードが間に合う。それでも膝を揺らした悠を守るように宏道が暴れ独楽を、深月が光の槍を投げ放った。
「チェリャァァァッー!!」
「光よ、貫け――!」
 斬撃が脇腹を深く切り刻み、光の槍が右肩を刺し貫く。
「もうちょっと、頑張って!」
「切り伏せろ」
 ラジェリの祖霊降臨が悠を回復させ、玖印の霧の巨人による振り下ろしの斬撃が蒼天の鬼神を斬り裂いた。
 そして、そこへ悠とアラストールが同時に長剣を振り上げた。
「飽く事無き破壊衝動に囚われし者……貴様を縛る因果の鎖を断ち終焉をくれてやろう」
「小細工はしない――堂々と、逝け――!」
 放たれる二撃の黒影剣――闇色の刃は吸い込まれるように蒼天の鬼神を切り裂き――ついに、その巨体が地面へと転がった……。


 長剣を振り抜いた体勢でアラストールは構えを解けなかった。
 本能が、構えを解く事を拒絶する――小さく、アラストールは呟いた。
「……いや、終わりじゃ、ない、か?」
 その言葉を肯定するように、目の前で大の字に倒れた蒼天の鬼神が見る見る巨大化していく。
「えっこれおっきくなるのー!?」
 ラジェリがその目を丸くして声をあげた。ただでさえ巨大であった蒼天の鬼神が更に大きくなっていく――さながら、空そのものになるかのように。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 天が、吠えた――そして、それを合図に、戦いの第二幕が始まる……。


マスター:波多野志郎 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2011/01/18
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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