<リプレイ>
●恐るべき旧スク ナイトメアビーストの息つかせぬ猛攻は、新しい年を迎えても続いていた。 今回の襲撃者は「リメンバー昭和・百目鬼面影」。 彼はノスタルジーを感じさせる昭和の物品をゴーストに変え、バザー会場である体育館周辺を占領している。 しかもこれまでの襲撃失敗を踏まえてか、それらのゴーストには颯爽菱子が特訓を施してあると言う。 「……やりにくいですね」 歴戦の能力者であるカイル・クレイドル(シリウス・b51203)でさえ、表情を険しくする。 「旧式とか旧旧式とかよくわかりませんが、マニアの方には大切なことなのでしょうか?!」 ……いや、どうやら別の部分で考え込んでいた様だ。 旧式と旧旧式の先述の通りなのでここでは割愛するとして、どちらがより強力な萌え力を有しているか、そもそも旧式と旧旧式を区別するか否かなど、専門家達の間でも議論は尽きない。 「旧旧式の水着は後部にもスカート状のデザインが施されているとのことですが、パレオのようなものなのでしょうか?」 小首を傾げる八月宮・真藍(小学生真符術士・b74515)。 パレオをロングスカートに例えるなら、旧旧式スク水のそれは超絶マイクロミニと言った所だろうか……。 「昔の学校の水着は、今の銀誓館の水着よりもファッショナブルだったようですね」 確かに銀誓館指定の水着は、極めてノーマルなスクール水着。どちらがファッショナブルかは個人のセンス次第だろうけれど、少なくとも萌え力では大きく水をあけられていると言って良いかもしれない。水着だけにね。 「変態さんですね。超悪いやつです。退治です」 姫宮・心(称号を勢いだけで変えちゃ駄目・b42378)はヒキ気味でそんな言葉を繰り返している。 確かに昭和は遠くなりにけり……かつて当然の様に、学び舎で用いられていた旧・旧旧式スク水は姿を消し、現在はサブカルチャーの分野でその姿を留めるばかり。 「旧式スク水が大好きです」とか「旧式スク水着てます」と言えば、一発で変態の称号をほしいままに出来る事は疑い無い。 「……よし、百目鬼・面影は変態って事で問答無用決定!」 と、早速琴吹・紗枝(青空駆ける春一番・b49528)により変態認定が為された。 まぁ、スク水を手に1人で絶賛していたのだから、仕方有るまい。 「ペタン娘じゃなかったら超退治です。異論は認めません」 さすが魔法少女たる心。旧式スク水は貧乳によりその殺傷力を増す、これは多くの研究者の間では常識である。 世の中には旧式スク水を巨乳キャラに着用させて色気を前面に出したがる創作物も多いが、所詮は奇をてらった邪道と言わざるを得ない……と思う。 「冬場のすくみずは、寒いだけなのです!」 元々雪女であった山崎・ましろ(雪風桜の小命婦・b45247)は寒さに強いが、真冬に水着という視覚的体感温度(?)の低下を経験済み。 今回の敵、スク水ゴーストもそう言う意味ではかなり寒々しい見た目であろう事は疑い無い。 「多分見てるだけで風邪ひきそうなんよ……」 うんうんと頷く八神・沙奈(見習いマジックナイト・b22636)。 (「きっとその水着、元は大切に使われてたものなんやろけど……だからと言ってうちらの学校を滅茶苦茶にさせるわけにはいかないんよっ」) スク水自体に罪はないが、学校を守る為、確実に葬らねばならない。 「では、まずは囲みを破りに掛かりましょう」 ネイト・スタンッア(は暴れたいお年頃です・b77107)の視線の先、体育館とそれを守る様に陣取る昭和ゴースト達。 「これ以上の被害、出すわけにはいきませんね。速やかに排除しましょう……!」 洗脳を解かれて以降、数多くの水着を着こなしてきた(その中に旧式スク水は含まれないが)ソフィー・セルティウス(深蒼雹刃・b60749)の言葉に一同は頷く。 戦いの時だ。
●せめて夏なら 「スクスク、スックスク!」 三つ編みのお下げを揺らしながら、スク水怪人は能力者たちを指差す。何を言っているかは解らないが、自信ありげな様子は伺える。 「あれ? 思っていたのとちょっと違ったようです……」 真藍が思い描いていたデザインとは、大分違った様子。ロングスカートを好む彼女にとって、飾り程度のスカートは余り可愛く思えなかったのだろう。 そのスク水怪人に加えて、古びたビート版や古めかしい浮き輪がふわふわと彼女の周りを漂っている。 「うわ、浮き輪にビート板までいるし……」 じりじりと間合いを計りつつ、思わず身震いする紗枝。 「この時期にプールの怪人なんて、季節外れですよ?」 限界を超えた覚悟を決めるソフィー。 「それでは、プラン通り参りましょう」 ネイトも同様にクルセイドモードを発動して戦闘力を高める。 「寒いから、見えないように白で上書きしてあげるのです!」 ましろは吹雪の竜巻を巻き起こし、前衛の浮き輪を飲み込んでゆく。 寒々しい景色が一層助長されるのは致し方ない。 「数が多いのは厄介ですね!」 カイルはそんな激しい吹雪に紛れるようにしながら間合いを詰め、下弦の月を振るう。 ――ヒュッ! 深々とついた傷口から空気を噴き出し、くるくると回転する浮き輪ゴースト。 「スーックスク!」 スク水怪人の呼びかけに応えてか、戦闘態勢を取るビート板達。 浮き輪達は高速で回転しながら一気に能力者たちに襲い掛かる。 ――ゴォッ! 「つっ……えらいミスマッチやなぁ」 沙奈は浮き輪の体当たりを腕で防ぎ、逆に弧状の蹴りを繰り出す。 「本物の夢の力を見せてあげます! ユメノさんGOー!!」 傷ついた浮き輪が跳ね飛ばされたのを見て、心はナイトメアのユメノを召喚。猛然と突進させる。 ――ボンッ! ランページの直撃を受け、瀕死の浮き輪はたまらず破裂。 「さぁ、一気にいきましょうか」 敵中で自らのブラックヒストリーを展開するカイル。無数の原稿用紙がまたも援護ゴースト達を嵐の中へいざなう。 「時代は今、別の水着なのです! かわいさは今の方が上なのです!」 ましろの手によって更に巻き起こる吹雪。 彼女もまた、旧式以前のスク水を余り評価していない様子。 「スーック!!」 圧倒的な範囲攻撃の連続で攻める能力者たちに対し、スク水怪人は竹製の水鉄砲で反撃。 ――バシュッ! 「たっ……冷たいやんか!」 沙奈は声を荒げながらも、狙いは冷静に手負いの浮き輪ゴーストへ。 燃え盛る炎弾を放つ。 「ここで時間を浪費するつもりはありませんわ」 間を置かずネイトの片手が上がる。 彼女の周囲に姿を現したのは、数十匹に及ぼうかと言う針金細工の猟犬達。獲物たちへ獰猛に襲い掛かる。 ボロボロの浮き輪ゴースト達も高速回転し、能力者たちへ必死の反撃を試みる。……が、範囲攻撃を見越した能力者たちは散開陣形。その被害を最小限に留める。 「ほらほら、あなたの相手はこっちですよ」 ソフィーのフリーズアクトが、更に浮き輪ゴーストの1体を貫いた。 腕利き能力者達による重厚な波状攻撃は、戦いの主導権をいち早くたぐり寄せる。 「スークスク……」 散開陣形を取る能力者達に対し、スク水怪人達は密集隊形。 範囲攻撃を甘んじて受ける代わりに、集中攻撃で少しでも能力者達に打撃を与えようと言う事らしい。 ――ヒュッ! 3枚のビート板は、一斉に心目掛けて飛び掛かる。 「っ……この程度なら……!」 得物のまじかるちょっきんを振るってビート板の直撃を避けると、至近距離から再度のナイトメアランページを繰り出す心。 「……この人たち硬いです!」 しかしどうやら、このビート板は堅さが取り柄の様子。巧みに弱点を突いたユメノの攻撃もさほどの打撃を与えられない。 「纏まってくれれば好都合、ガンガン削るよっ!」 今度は紗枝の手から乱舞する原稿用紙。ブラックヒストリーは純粋なダメージに加えて猛毒によりジワジワとゴーストを追い詰める。 「みなさん、回復いたしますわ」 早く勝利するに越したことはないが、焦る必要は無い。真藍は清らかな風で味方を包み、その手傷やアンチヒール状態を癒す。
●スク水よ永遠なれ ――ヒュンヒュンヒュン……。 あちこちから空気漏れを起こしながら、それでも浮き輪ゴーストは回転を止めない。 「今のこの状況が俺にとっては黒歴史のようなきがします。彼女になんといって説明するべきか……」 カイルの放った漫画原稿は、周囲に相当数散乱している。 兄と比べかなり常識人であるが故に、1ページ1ページの重みが違う気はする。 とは言え、それは彼がゴーストに与えたダメージの多さも表している。堅牢なビート板らも、さすがにボロボロと端から崩れ始めているのが何よりの証左だろう。 「季節はずれで、時代ハズレの人たちには負けないです! 水着は夏に着るものなのです!」 「ご自身の時代にお帰りなさいませ?」 「撃退されたばっかで何度もほいほい攻めてくるなー!」 それはましろやネイト、そして紗枝も同様。 彼女らが絶えず繰り出す攻撃により、ゴーストらに終焉の時が近づいてゆく。 「さぁ、そろそろ覚悟決め……何や!?」 沙奈がトドメの一撃を見舞おうとしかけた瞬間、スク水ゴーストが異様な構えを取っている事に気付く。 「例の、必殺技ですか……来ます」 身構えるソフィー。そして一同。 ――バッ! スク水ゴーストは美しいフォームで跳躍すると、そこが競技用プールであるかの様に着水(?)し、地面を猛然と泳ぎ出す。 1988年ソウル五輪、日本中が歓喜に湧いたあの100m背泳ぎを彷彿とさせる見事なバサロ泳法だ。……能力者達はまだ生まれていないが。 「ぐっ!! ……や、八月宮さん!」 足下をスク水ゴーストが通過した直後、強力な衝撃波を浴びた紗枝。痛みを堪え、自分の後方に控える真藍を振り返る。 「――っ!!」 真藍も硬く守りの姿勢を取る。が、強烈な衝撃はもろにその身体を襲う。 吹き飛ばされた彼女は、突っ伏したきり動かない。 「カイルさん!」 「解っています」 目の前を漂う浮き輪を一刀両断にしながら、ソフィーはカイルの名を呼ぶ。他者の傷を癒せるのは真藍とカイルだけなのだ。 「……いえ、私なら大丈夫ですわ……それより彼らにとどめを。過去の遺物は滅び去りなさいませ!」 しかし真藍はその魂の底力で立ち上がると、自ら浄化サイクロンを巻き起こす。 「よっし……フェチ、マニアック大いに結構! しかし! 人に迷惑かけちゃ、いけません!」 みたび、心によって召喚されたユメノは、ボロボロのビート板を貫くように駆け抜ける。 さしもの頑丈なビート板も、ついには砕け散った。 「これで、終わりなんよ!」 ――バキィッ!! 沙奈はスク水ゴーストに間合いを詰めると、流麗な動きでムーンサルトキックを見舞う。 「スッ……ク……」 彼女が地面に降り立つと同時に、スク水ゴーストは燐光を散らして霧散した。 後にはボロボロになった旧旧式スク水の残骸が残るのみである。
●いざ決戦 「大丈夫ですか?」 「有り難う、私は大丈夫ですわ」 カイルから受け取ったギンギンカイザーXを飲み干し、力強く答える真藍。 「いよいよ決戦なのです」 「ええ、幕を引きに参りましょう」 体育館を見据えるましろとネイト。 「うん、次は百目鬼・面影だね!」 こくりと頷く紗枝。 「バザーにスクール水着とか、よく申請とおりましたね」 ぼそりと呟くのは心。それは言わない約束だよおとっつぁん。 「百目鬼面影……チェックメイト、です」 ソフィーを戦闘に体育館へ斬り込む一同。 ノスタルジーを断ち切る戦いが、間もなく始まろうとしていた。
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参加者:8人
作成日:2011/01/24
得票数:楽しい12
カッコいい2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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