<リプレイ>
●さすがに限度はあるらしい 「よいしょっ……よいしょっ……」 水の入ったバケツを両手で持ち、本堂の廊下を走る巫女さんが1人。 「きゃうっ!?」 しかし、何も無いところで躓いたかと思うと……。 ――ばっしゃーん。 「はわわ……またやってしまいましたのですぅ」 転んだ拍子に投げ上げられたバケツから、もろに水を被ってしまう。 「くしゅん! すっかりびしょ濡れですぅ……」 何故かグラビアアイドルさながらの両手つき横座り。水を被ったせいで巫女装束は透け、二の腕の辺りも露わだ。 「あっ……お客様、良い所にぃ……良かったら私を温め――」 「もう良いわい!!」
「それで……面接に落ちたのか」 憐れみ深い視線を向けつつ、問うのは武内・恵太(真牙道忍者・b02430)。 男性陣は門の前で作戦開始に備えている所だ。 「水まで被ったと言うのに全く酷い話ですぅ。へっくしょいちくしょー! 時代は萌エロだと説明したのに、あの堅物和尚……くっしゅん!」 ヲタク風の衣装に着替えた志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)だが、髪は濡れたまま。しきりにくしゃみを繰り返している。 「まぁ……他の女性陣に期待しようぜ」 黒瀬・和真(黒のレガリス・b24533)の言葉に頷く2人。 彼ら3人以外の女性陣は、これから面接が始まる。少なくとも何人かは合格してくれないと困る訳だが、涼子と違って心配は不要だろう。 「俺達の方も、世界結界の為に頑張って萌え萌え煮え煮えな演技しなきゃな」 「あぁ、巫女さんをガン見する参拝客の役だからな!」 「武内氏、黒瀬氏、気合いを入れて行くで御座るですぅ」 さて、その頃他の巫女さん達は……
●それぞれの萌え巫女 「ほうほう……なるほど……ふむふむ……なんと……よし解った、皆合格じゃ!」 割とあっさりと全員合格していた。 「それでは早速じゃが、お勤めに励んで貰いたい。何かあったらわしはここに居るから」 いそいそとコタツのある居間に下がって行く和尚。 「それじゃ行くか」 「ええ」 それぞれ装いもバラバラな6人の巫女さん達は、本堂を後に境内へ。
「何かこれ、丈が短くないですか……?」 ソフィー・セルティウス(深蒼雹刃・b60749)はスカート(本来は袴と呼ぶべきなのだろうけれど)の短さをしきりに気にしている。 もはや彼女が身に着けているそれはミニスカートと呼んで差し支えもないレベルであり、本来の巫女装束からはかなりかけ離れた衣装だ。 (「地縛霊の気持ちもわからなくはないですが……)」 本来日本の寺院が持っている情緒や趣と言った物を少なからずぶち壊しにするその装束。ソフィーは思わず地縛霊の心中を察してしまうが、敵は敵。 すぐにかぶりを振ってひとつ息をつく。 「うにゃ〜、脇から脇腹の辺りが紐の編み上げですし、スースーしますわ……なんだか落ち着きませんの」 自前の箒「A broom of Minerva」で境内を掃きつつ呟くのは七瀬・瞳亜(パパラチアの魔女・b25292)。 萌えに精通すると言う姉が作ってくれた巫女装束は、さすがに数々の萌えポイントを抑えた見事な出来。パニエの着用によりファンシー感も大幅アップだ。 「……」 こちらも箒を片手に仁王立ちしている豹童・凛(近寄り難き者・b33185)。 短い袴に加え、さらしを巻いた胸と襷で捲り上げた腕。見ているだけで寒くなりそうな露出度の高さだが、さすがアスリートとして心身を鍛え上げている彼女は寒そうな素振りも見せない。 しかし……凛だから健康的な色気で済んでいるが、下手をすればエロである。 (「ん〜、アタシが言うのもなんだけどゴーストの言ってる事もちょっとわかるかな。伝統的な世界に生きてきた人には萌えとか理解できないだろうしね」) さて、こちらは神社に生まれ、その跡取りとして育てられた八乙女・舞華(高校生真土蜘蛛の巫女・b54352)。正真正銘の巫女さんである。 だが、厳格な父親に反発して逃げて来ただけあって、今回の格好も当然普通の巫女装束ではない。 と言うか……完全に別物っ……圧倒的チャイナドレスっ……! 申し訳程度に携えられた榊が、微かに巫女の面影を残している程度。 巫女装束を着たアルバイトの娘さんと、チャイナドレスを着た本物の巫女、どちらが巫女さんらしいと言えるのか、難しい問題だ。 (「この俺が萌え巫女の演技をしなければならないとは……正直な気持ち屈辱だがこれも仕事」) 幼い頃から帝王学を教え込まれた御雷・雷華(黒き雷・b72662)。 誇り高き彼女にとって、萌えを体現する事は忸怩たる思いがあるのだろう。 それでも任務と割り切ってか、メイドさんの様なカチューシャをつけ、手には魔法少女風のマジカルステッキ。モデル顔負けの長く綺麗な脚も披露している。 (「まぁ、この場合はわかりやすく、あざとくでしょうね」) 他の巫女さん達が高い露出度で攻める中、別方向からのアプローチを掛けるのが幸田・泉水(琥珀色の夢・b22961)。 頭にはネコの耳を模したカチューシャ。袴の腰部分には同じくネコの尻尾。手にはネコの手袋。 そう、ネコ耳巫女である。とても解りやすくあざとい。 「さぁ着いたで御座るよご両人」 「おう、ここが噂の萌え寺か!」 「別に萌えに興味があるわけじゃないんだからな。就職出来るように祈願しにきただけなんだからな?」 「おうふ、武内氏ツンデレキタ。キタコレ」 と、タイミングを見計らって涼子、和真、恵太の3人も境内へやって来た。
●罰当たりな私達 「へぇ、こんな可愛い外国人の巫女さんも居るのか。最近の寺は凄いな!」 「いえ……私は……」 「真面目で控えめ、まさに巫女さんの鑑で御座るな! ついでにコレを掛けてみるで御座るですぅ」 涼子が手渡したのは、度の入って居ない伊達眼鏡。 「こう……ですか?」 「はっ……この感じ……眼鏡巫女……!?」 眼鏡を掛けたソフィー巫女に、すぐさまファインダーを向ける恵太。巫女属性は無い彼だが、眼鏡がプラスされれば巫女も十分萌えの対象になるらしい。 「あら、おかえりなさいませ」 にっこり微笑みながら参拝客の元へやって来た瞳亜。 「さ、最近の巫女さんはスゲェな……」 その露出度の高さに思わず圧倒される和真。 「全くで御座るよ、こいつはけしからんで御座るですぅ」 やけにテンションが上がっている涼子。 「おい、そこのお前! 今いやらしい目で見ただろう? こうしてやるっ!!」 「えっ? ちょ、待っ」 ――ばきっ。 「ごふぁっ!!?」 そんな涼子を蹴り飛ばしたのは凛。 「お前達、よく来たな。ただし、巫女達に触ったり変な目で見たら私が容赦しないぞ」 「「おおっ……」」 びしっと決める凛。思わず感嘆する男性陣。 「いやー絶景で御座るですぅ」 「うわっ! 袴の中をガン見するんじゃない!!」 「へっへっへ、良いではないか減るものでも無しにぃ……おぼぶ!」 「いらっしゃい、寒いのに良く来たね」 涼子が蹴りつけられている間にも、チャイナドレス巫女の舞華がやって来た。 こちらも深く入ったスリットと、開いた胸元が眩しい。 「最近の巫女さんは……」 「すげぇな……」 取りあえずシャッターを切りまくる男性陣。 「いらっしゃいませ〜、マジカル巫女寺へようこそ〜♪」 きゃるるーん♪ とステッキの電子音と共に現われたのは、マジカル巫女の雷華。 「御主人様たちは何を買っていってくれるのかなぁ?」 にっこりと笑顔の雷華。 さすがはプロ、さっきまで嫌がっていたのにそんな素振りは微塵も見せない。ノリノリに見える。 「じ、じゃあ俺はお守りを」 「俺はお札を買うぜ!」 「拙者は檀家になるで御座るですぅ!」 これによって一層盛り上がりを見せる参拝客達。 「皆さん」 そこへ現われたのは―― 「いらっしゃいませです、にゃん」 片足を後ろへ上げながら、手は招きネコポーズ。泉水の構えには寸分の隙もない。 「ネコ巫女キター! 地球に生まれて良かったー!」 「アパムアパーム! フィルム持って来い!」 盛り上がりも最高潮に達しようかと言うその時、さすがに我慢出来なくなった様で「奴」が現われた。 「貴様らぁぁぁぁ!! ここを何処だと思っておるかぁぁ!!」 声に振り向けば、そこには大薙刀を手にした荒法師。数人の僧兵と巫女を引き連れている。 「ちっ、出て来やがったか……皆、いくぞ」 「「イグニッション!!」」 能力者達は一斉にイグニッション。舞台は整った。
●天罰を下すのは 「やっと出てくれましたわね、気恥ずかしい思いした甲斐がありますわ」 瞳亜はやや安堵しつつ魔方陣を展開。 「不浄が生きしものに何を言うか。彼岸に去りなさい、にゃん」 まだネコ口調が抜けていない泉水。しかし、びしっと見得を切って言い放つ。 「わらわらと出て来やがって……」 獣性の集合体である漆黒のオーラを纏い、身構える恵太。 「さっきまでの演技……いや、演技だよ? はさておきサックリとゴーストは片付けてやんぜ!」 誰かに弁解しながら旋剣の構えを取る和真。 「神聖な境内で地縛霊の跳梁を許すものか!」 凛は自らの得物である「紅蓮の葬花」に黒燐蟲を纏わせる。 「気持ちはわかりますが、やはり放置してはおけません……!」 限界を超越した覚悟を示すソフィー。 「高速演算プログラム、起動ッ!」 雷華の瞳には、おびただしい量の文字列が流れる。 「愚かなりゴースト、侘び寂び萌えが日本固有の美意識である事はもはや疑い無い事実ですぅ!」 体内の気を激しく巡らせながら、言い放つ涼子。 「黙れ黙れぃ! 貴様等にはこのわしが罰を下してくれるっ!!」 能力者達の物言いに一層激怒した荒法師地縛霊は、顔をタコのように真っ赤にしながら薙刀をぶんぶん振り回す。 「放てぃ!」 ――ヒュッ! ヒュヒュッ!! 巫女達が和弓を次々に放ち、矢の雨を降らせる。 「っと……これも萌えっちゃ萌えなのかな?」 矢を紙一重でかわしつつ、妖狐の力を覚醒させる舞華。耳と尻尾は確かに萌えのシンボルとも言われるが、この場合の地縛霊にとっては凶器でしかないだろう。 自ら意志を持った生き物の様に、彼女の尻尾は巫女目掛け猛然と襲いかかる。 「グウッ!!」 「おのれ……!」 薙刀を手に、僧兵らも押し出してくる。 「いくぞ!」 「ええ」 しかし恵太は、それら僧兵を物ともせず巨大な手裏剣を創り出し、瞳亜は燃え盛る隕石を召喚し空を赤く染める。 ――バッ!! 「覚悟してください……!」 獣のオーラと燃え盛る火球が炸裂し地縛霊を飲み込むのと同時に、ソフィーの拳に宿る守護精霊の力が爆ぜる。 「ギャアアーッ!」 「ええい、くらええぇい!」 風を唸らせ大薙刀を振るう荒法師。 ――ガキィン!! 「くっ……この程度!」 凛は長剣でその一撃を受け流すと、背の蜘蛛脚によって痛烈な反撃を見舞う。 「往生せぇい!」 僧兵2人も彼を援護すべく、薙刀を振るうが―― ――キィン! 「……貴様らの動きには、無駄が多すぎる!」 雷華もまた、二振りの電光剣でこれを受け止める。回復手段を瞬く間に封じた能力者たちの次の狙いは、援護ゴーストの僧兵だ。 雷華による鋭い弧状の蹴りが、僧兵の鳩尾を捉える。 「きっちりと終わらせてやるぜ……!」 「援護しますわ」 最上段に振り上げられた和真の斬馬刀。 ――ビュンッ! 勢い良く振り下ろされると同時に、泉水の瞳が呪の力を放つ。 「ぐわあぁぁーっ!!」 真っ二つに斬られた僧兵は、断末魔の悲鳴とともに消滅。 「よし、トドメだ!」 「しかし、この地縛霊は何処から沸いて出たんでしょうね……」 紅蓮に燃える恵太の拳が、トーテムの力を籠めたソフィーの拳が、同時に僧兵を打ち据え引導を渡す。 「おのれぇぇ……」 「あなたは天罰のつもりでこの様な事をやっているのかしら? だったら思い上がりも甚だしいですの。あの世で仏の説法でも拝聴するが良いですわ」 次元を歪める程のいかづちを魔弾にし、放つ瞳亜。 「ぐううっ!! 黙れ黙れぇぇい!」 「法師さん、耳とか尻尾とかは萌えかな?」 「もえ……だと? 訳のわからん事を!」 「萌えを解さぬとは哀れな奴ですぅ」 更に荒法師を追撃するのは舞華の尾獣穿と、涼子のクレセントファング。 「この程度……まだまだよ!!」 ――ぶおんっ!! 「っ……貴様の動きはすでに見切った!」 薙刀の切っ先を紙一重でかわす雷華は、すぐさま鋭い足技で反撃を繰り出す。 「変化を許さぬはあまりに狭量、その妄執断ち切ってさしあげます、にゃん」 再び呪いの魔眼を用いる泉水。 それにしても、ネコ口調はまだ抜けていない様だ。 「むうううっ……!」 「こいつで決まりだ!」 トドメとばかりに、和真が召喚するのはアイアンメイデン。荒法師の巨体を飲み込んでゆく。 ――ガシャーンッ! その扉が閉じ、憤怒の地縛霊はついにその思念を散らしたのだった。
●果てしなき萌えの果てに 「しかし何つか色んな巫女さんが揃ったもんだな、折角だし皆で記念写真撮ろうぜー」 と言う恵太の提案で、平穏を取り戻した境内で記念撮影を行うことにした一同。 「お待たせーですぅ。いやー、しかし普通の装束はやっぱり普通ですねぇ」 せっかくだしと言うことで、普通の巫女装束を着なおした涼子。 「うわ……眼鏡巫女なのにびっくりするほど萌えな……」 「あぁ?」 「何でもないです……あれ、雷華着替えちゃったのか」 「当然だ、任務は終わったんだからな」 「もったいない」「ですぅ」 頷き合う和真と涼子。 「私も着替えてくれば良かったですわ……」 と、こちらは恥ずかしそうな瞳亜。 「やっぱり、寺社は厳かな空気が一番良いと、思います」 「うん、まあ今回はゴーストの言う事の方が正論だったかな? 寺に萌え巫女とか色々間違ってるしね」 ソフィーの言葉にうんうんと頷く舞華。 「寺を埋もらせず、風化させざるための努力は大変でしょうが……もっとも、大衆におもねるのは邪道。住職がこの先にとる行動、期待させてもらいます、……にゃん」 正論の泉水だが、口調的な意味で説得力にはやや欠けるだろうか。 「よし、それじゃ行くぞ」 凛がセルフタイマーのスイッチを押し、能力者たちは本堂の前に整列。 ――パシャッ。 この寺が今後どうなってゆくか不安がない訳ではないが、ともかくゴーストによって人命が奪われる心配は無くなったのだから、良しとしようではないか。
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参加者:8人
作成日:2011/01/31
得票数:楽しい14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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