フェンリル撃破作戦:頭使いたくない奴この指とまれ!


<オープニング>


「みんな喜べ、思いっきりバトれるぞ!」
 かつて銀誓館を恐怖させた巨大ゴーストフェンリルの絵図に思いっきり被る形で、揚羽夏希が立っていた。
 『フェンリル? 何だそれは、こいつは私のオーラだぜ』と言われてもうっかり信じられる程度には隠れていた。
 この光景の時点で大体は分かってもらえる気がするのだが、一応夏希の説明を聞いておくことにしよう。
「皆知ってるあのアリスからの情報なんだが、ヨーロッパで処刑人達の世話をしていた奴があの、なんとかって指輪で操られてたのを覚えてるか。私は勿論覚えてたぞ、その……なんとかって指輪だ。この問題を解決しにヨーロッパに向かったチームはラプンツェルや狼使いのローラのネジ解除に成功したんだが洗脳を解かれた彼女達から新たな情報がうがあああああああ!!!!」
 夏希は謎のA4用紙を八つ裂きにした。
「ええい、三行で書け三行で! とにかくアレだ、カリストの奴がフェンリル20体用意したんだってよ! すげえな!」
 未曾有の大危機を『すげえな!』で済ませる夏希である。
 まあ確かにすげえな!
 超すげえな!
「そんなワケで、私達のチームは20体のうちの1体……このフェンリシュウー……ルールブ……ええと……名犬ゼットワン!」
「明らかに別のヤツだそれ!」
「いつかのゴーストウルフだそいつ!」
「細かいことはいいんだよ、ぶん殴る分には困らん! じゃあアレだ、『ゼットツー』にしようぜ!」
 別のA4用紙を引き裂いて、夏希は黒板をぶっ叩いた。
 つくづく説明とか解説とかに向かない女である。
「ちなみにフェンリルの居場所には他の人狼騎士が近づかないようにしててな、現地までは銀誓館に協力してくれてる人狼が案内してくれる。それでフェンリルのスペックなんだけどな、周りにはゴーストウルフが居てこれがうがあああああ!!」
 謎のA4用紙を細切れにする夏希。
 三枚も用紙を千切った所為で何か紙ふぶきみたいな状態になっている。
「いや、敵戦力についてはちゃんと教えてくれよ」
「大丈夫だ。ゴーストウルフは案内役と私でなんとかすっから」
「なんとかするのかよ!」
「第一1〜2匹しかいないしな!」
「人望薄過ぎないかゼットツー!」
「それにゼットツーのやつ、パンチしかしない!」
「脳筋過ぎるぞゼットツー!」
「その代わり滅茶苦茶強いからな。攻撃力にしろ体力にしろ、他のヤツの比じゃねえ」
「お、おう……」
 最後の用紙(恐らく現地写真)をぐしゃっと潰す。
「まあ、やることはいつも通りだよ」
 そして夏希は、壮絶に笑って言った。
「どデカいフェンリル『ゼットツー』……叩いて殴って、ぶっとばぜ!」

マスター:空白革命 紹介ページ
『頭はヘッドバットの道具』アヤナシ アラタメです。
 皆、先に言っておく!
 このシナリオは、頭使ったら負けだ!
 頭脳より根性だ!
 知性より気合だ!
 作戦よりも情熱だ!
 頭空っぽにしてフェンリルと殴り合いたいそこのキミ!
 武器だけ持って、かかって来い!

●名魔狼ゼットツー(今命名)
 馬鹿みたいにデカく、馬鹿みたいにカタく、馬鹿みたいにタフで、馬鹿みたいにバカだ!
 それが名魔狼ゼットツー!
 他のフェンリルは魔炎だの何だの使えるらしいが、それがどうした下らねえ!
 コイツの自慢は腕っ節!
 狼パンチと狼ファング(近接爆発範囲の物理攻撃だぜ)!
 痛みは我慢だ痛くねえ(回復手段なんてないぜ)!
 BSなんざ気合で回復(幸運度バカ高いぜ)!
 目の前の敵をぶっ潰すことにかけては、右に出る奴ぁいねぇぜ!(そもそもアビとか使えねえしな!)

●オススメ作戦
 俺達は頭を使いたくない!
 だから作戦も簡単だ!
 ひたすら回復しまくる『メディック』担当を5人!
 ひたすら殴りまくる『クラッシャー』担当を25人!
 まずクラッシャー全員で敵を取り囲め!
 大丈夫だコイツでかいから25人くらいで丁度良い!
 そしてメディックは周りを駆け回って味方を回復しまくるんだ! 一秒たりとも休めないが、そこは気合でなんとかする! なんとかするって、良い言葉だよな!
 そしてクラッシャー! お前は殴れ! とにかく殴れ!
 お前が現時点で最大のダメージを叩き出せる技を叩き込め!
 リスクだのデメリットだのはメディック達に任せとけばいいんだ。今はそんな細かいこと言ってる時じゃねえ!
 ここまではいいか!
 要するに……囲んでぶっ叩けってことだ!
 合体プレイ、派手なプレイ、カッコイイプレイ。そいつは普段軽視されてる。だが今回だけは別だ!
 腕っ節自慢のゼットツーに対抗するには、やっぱり派手さでも勝てなきゃならねえ!
 勢いで勝てば、多分勝てる!
 魂で勝れば、多分勝てる!
 きっと沢山の重傷者が出るだろう。
 だが知ってるか。魂を燃やしておった重傷は、勲章なんだぜ!

●同行者
 案内人の人狼と夏希は、現地でゴーストウルフ処理を担当する。大丈夫だ、ここは任せてお前はフェンリルを討て!
(つまり今回のフェンリル戦には参加しないってことだ!)

●戦場:森
 木が生い茂った森だ!
 木っていいよな! 高いから!
 フェンリルに飛び移るのに役に立ちそうだぜ!

参加者
秋枝・昇一郎(テクノジャンクス・b00796)
梶浦・暁(焔の刀狼・b06293)
紫月・双牙(光焔真牙・b08033)
一花・糸(撚・b13033)
天羽・十六夜(闇に囚われし者・b21674)
紫倉・古湖(夕陽色の憧憬・b22979)
砂川・義春(カッター狂い・b24095)
加奈氏・さりあ(は痛い腐女子です・b26943)
神原・勝義(ムーンサルトリ・b28635)
サラ・モラトリアス(日陰の眠り姫・b36309)
鉄・徹也(白琥の牙を磨く水の刃・b36313)
天宮・羽衣(全ての目覚めの白星歌・b43783)
白銀・美雪(真なる白・b45941)
蒼薙・朱里(蒼天紅翼・b47186)
アルスラン・クロスネイル(蒼い月の吸血猫・b48476)
黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)
天峯・叢(霧の騎士・b49920)
小暮・蔵人(魔弾の狙撃手・b49923)
ソフィア・エーデルフェルト(ローゼンクロイツの吸血姫・b50597)
水守・蒼月(迷走忍者・b52134)
セレス・ヴィエルジェ(斬鉄姫・b57815)
リリエル・ガブリエラ(絢華爛咲・b62071)
有珠川・茉莉花(有珠川宮の揺れない震源地・b62582)
ソーシェ・バッハーズ(中学生魔弾術士・b64686)
アリア・パーハーツ(キアロスクーロ・b65371)
黒桐・妃音(朱に染まりし相思華・b67511)
東亜・珠羅(純白殺戮兵器・b72105)
伊吹・詩歌(白夜儚月・b72989)
麻多・狂夜(うたねね・b74760)
ジークフリード・ポルタ(透き通った空の様に綺麗な青・b77237)



<リプレイ>

●イキナリ大剣戟
 欧州某所某森林地帯。
 並み居るフェンリル20体の内、一番巨大で一番強固で一番強靭。
 その名も雄雄しきフェンリス・ウールヴ・テュール・ラルキ……略称Z2!
 Z2はその巨体で大木を薙ぎ倒すと、総勢22名の能力者に向け威圧の咆哮を……て、あれ?
「行くぜ――!」
 秋枝・昇一郎(テクノジャンクス・b00796)が、フェンリルの頭上に飛び上がった。
 彼にそれだけの跳躍力があったわけではない。
 あろうことか、Z2の薙ぎ倒した大木の頂上に予め立っていたのである。
 昇一郎はおかしいデカさのスパナを振り上げる。
 レンチからのジェット噴射。
「遂にこのデカブツと殴り合えるが来たぜ……この時を待っていた!」
 最高度にてサンシャインドライブ。
 天高く、激しい斜め回転をかけながら昇一郎は自由落下した。
「ドタマかち割ったらあああああ!」
 Z2の首根っこに、身体ごとのロケットスマッシュが叩き込まれる。
 流石のド級フェンリルZ2と言えどこの一撃はこたえた。
 衝撃が大地まで響き、粉塵を僅かに巻き上がる。
 が、それで終わる彼らではない。
 別の木から跳躍した鉄・徹也(白琥の牙を磨く水の刃・b36313)が、戦闘開始直後に関わらずインフィニティエアを発動させた。
「本日はァ――最初ッから手加減抜きの大暴れだ!」
 風を巻き込み嵐を生み、ここで安全牌のクレセントかと思いきや……、
「リミッター解除、行くぜェ!」
 まさかの霧影爆水掌の構えをとった。
「鉄心流、秘伝っ!」
 落下速度もそのままに徹也は分身。Z2の両脇を挟み込む形で爆水掌を叩き込んだ。
「空焔ぁぁぁ!」
 ダメージ量にして約600。
 Z2の巨体が激しく振動し、地面の粉塵が跳ね上がった。
 その様子を、伊吹・詩歌(白夜儚月・b72989)は大木の上から眺めていた。
「ド級フェンリル……正直怖いですけど」
 シザーズのネジをガチリと鳴らし、二翼の剣へと分離させる。
「私には帰る場所があるから」
 跳躍。
「帰りたい場所があるからっ」
 一転。
「犬畜生ごときにまけてなんかやらないのです!」
 さよならの指先を纏わせて、詩歌はZ2の背中に飛びついた。
 否、突き刺さったと言うべきだ。
「どんな敵だって、どんな強い敵だって……!」
 深々と突き刺さった二本の剣を、詩歌はしかし抜くことなく、背骨を駆けるようにしてZ2の背を一直線に引き裂いた。
「積み重ねれば、勝機はある!」
 身体の端まで引き裂いて、シザーズを振り上げる。ネジを組んで一本に纏めた。
「この位置なら、私のターンですよ」
 ばきり、と傷口が一気に凍りつく。
 Z2は悲鳴に似た咆哮をあげた。

 さて、察しの良い読者諸君はもうお気づきだろう。
 冒頭にて足りなかった8名の能力者。彼等は先刻の3名のように、樹木の上に陣取っていたのだ。
 それが今、残り5名一斉に飛び掛る。
 空中でアンチェインエアを纏い、高速回転を始める紫倉・古湖(夕陽色の憧憬・b22979)。
 橙色の螺旋が天へと昇った。
「木ってイイよな! 高いトコダイスキ!」
 四肢を広げ、もっさん(モーラットヒーロー)と共に急降下する黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)。
「当たっても凌駕で乗り切れ! 最後まで経ってみせるのですよー!」
 三本の木を飛び移り、連続跳躍で駆け上がる神原・勝義(ムーンサルトリ・b28635)。
 目の奥にラジカルフォームラを展開
 頂上まで達した所で、大きく宙返り。インフィニティエアを発動させた。
「勝利を信じて見送ってくれた皆の思いを乗せた一撃――!」
 三人の風が一つに集まり、Z2の巨体へと抉り込む。
「「クレセントファング!!」」
 巨体を半分まで貫いた所で彼等は止まる……かと思いきや。
「もっきゅー!」
 もっさん必殺Vキャリバー。
 直角のカーブを描いて彼らは外へ飛び出した。総ダメージにして1500強!
 Z2の巨体に開いた穴はしかし、燃え上がる闘気で無理矢理塞がった。
『グオオオオオオオオオオ!!!!』
「げ、回復じゃなくて気合で我慢ってこと!?」
「ないわー。生命力高すぎるわー」
「おいこらゼットツー! 全力で相手してやるから全力でかかって来いよ!」
 びしりとZ2を指差す古湖。
 対するZ2は、彼女達に向けておもむろに腕を振り上げていた。
 ただそれだけで空圧が生まれ、気流が乱れる。
 勝義達は、逃げ場の無い空中で咄嗟にガード体勢をとった。
「……あ、やば」
「うわああああああああ!!」
 Z2パンチ炸裂。
 単純に振り下ろしただけの腕が、彼女達三人を一斉に吹っ飛ばした。
 犬の足だからと言って甘く見てはいけない。Z2の腕は鋼鉄のように固いのだ。
 くるくる回りながら飛んでいく三人とすれ違うように、蒼薙・朱里(蒼天紅翼・b47186)がZ2に飛び掛る。
「初めから全力で行かせて貰います! サンシャインドラァイブ!」
 全長1mの六角スパナを身体の周りで一周させ、朱里は両手で振り上げる。
 すぐさま始まるジェット噴射。
「必殺の一撃、受けてみろッ――です!」
 Z2の横面目掛け、ロケットスマッシュが叩き込まれた。
 わずかにぐらつくZ2。
 その側面に両脚をついて、朱里は即座に飛びのいた。
「一撃で倒れるなんて思ってませんから! 一気に畳み掛けますよ!」
「おうよ、っと」
 木の上から砂川・義春(カッター狂い・b24095)がひょいっと飛び降りる。
 空中でカッターナイフをチキチキと露出させると、Z2の顔面目掛けて退魔呪言突きを叩き込んだ。
 この連続攻撃に流石のZ2も大口を開けて呻く……と、思いきや。
「俺はデカブツはキライだしな……と、お?」
 Z2は開けた大口で、義春をばくんと食った。
 一口だった。実ダメージにして2000近くの一撃であった。
「よ、義春さーん!」
 空中で振り返る朱里。
 人が見れば、完全に彼の死を考えるだろう。
 が、しかし。
「小さくて下らねェ脆い刃でもよ……デカイモンを殺せンだよ」
 Z2の口が、ぎちぎちと、僅かに開く。
 その隙間から、義春が顔を除かせた。
 腕は既に牙に貫かれていたが、なんとカッターナイフを歯茎に突き刺し、ギリギリの所で生き延びていたのである。
「体力と攻撃力が能のデカブツにやられて溜まるか俺も大差ねえけどな!」
「パトリーィ!」
 地上から発射されたファイナルキャノンが、Z2の喉を直撃した。
 そのポイントを鋭く指差す黒桐・妃音(朱に染まりし相思華・b67511)。
 彼女の隣には、黄金の鎧を纏ったパトリー(フランケンシュタインFW)が立っていた。
「負けません、倒します……たから、一緒に戦ってねパトリー」
「…………」
 指に繋いだ糸を通し、パトリーと妃音は同時に構える。
「待ってる人も、会いたい人もいる。必ず一緒に帰るの……だからサポートは任せてねっ」
 喉に向けて射撃を集中させる。
 Z2は身体をびくんと痙攣させた。
「よっし今だ!」
 ソーシェ・バッハーズ(中学生魔弾術士・b64686)の眼前に魔法陣が展開。
 激しい雷が日本刀の周りを一周した。
「刀使うの初めてなんだけど、なんじゃこりゃ……薄っぺらくてかなり不安なんだけど」
 などと言いつつ、なぜかスイング体勢に入るソーシェである。
「にひひひひ……」
 片足上げて、腰をひねり、全身をねじ回しにして……
「派手にいくぜぇベイビー!」
 雷の魔弾発射。Z2の喉に直撃し、口内の義春を吐き出させた。
「続きましては――ダクハン!」
 同じ体勢でダークハンド発射。
 Z2の巨体を斜めに切り裂く。
「えーっと次はー……いいか、尽きたら斬るか!」
 とその時、別方向で黒燐暴走弾が爆発した。
 何故か木の頂上での爆発である。
「とーーーーーーーーーう!」
 麻多・狂夜(うたねね・b74760)が、爆破を背景に跳躍。
 妃音達の所へ着地。
「うふふ、あのね、僕この世界大好きなんだ。壊させやしないよ」
 片目を押さえて立ち上がる。
 そして狂夜は、目の色を変えて叫び出した。
「あんたの凶器は本物かぁい? ……あはは!!」
 腕を広げ魔眼発動。Z2目掛けて呪いの魔眼を乱射した。
「あはははは! そこは笑えよ! あははははははは!!」
 Z2が僅かに押される。
 流石に射撃が鬱陶しくなったのか、妃音達に狙いを定めるZ2。
「おっと、狙われちゃかないませんね……」
 魔弾の射手を展開していたアルスラン・クロスネイル(蒼い月の吸血猫・b48476)が、すいっと指をZ2へ向ける。
 その途端、Z2の顔面に蒼の魔弾が命中した。
「さすがに大きいでござるね……でも絶対倒すでござる!」
 続いて、水守・蒼月(迷走忍者・b52134)の水刃手裏剣が顔面にざくざく突き刺さる。
 立て続けに打ち込まれる顔面への攻撃に呻くZ2。
 咆哮をあげて威圧した。
 そして振り上げる巨大な右腕。
「フェンリシュなんとかさん。さっさと諦めて沈んでください!」
「ゼットツー覚悟しやがれでござるよっ!」
 アルスランの魔弾と蒼月の水刃手裏剣が射出される。
 競うように飛んだ二つの凶弾は、攻撃直前のZ2の……なんと右目に直撃した。
『グッガアアアアアア!!』
 明後日の方向に振り下ろされる腕。
 粉々に粉砕される樹木。
 妃音へ吹き飛んできた枝を、パトリーが弾き飛ばした。
「おお、ラッキーヒット」
「この調子で行くでござる!」
 次の射撃体勢に入る蒼月達。
 そんな中。
「……お待たせしました皆さん」
 祈りの姿勢にあったジークフリード・ポルタ(透き通った空の様に綺麗な青・b77237)が、すくりと立った。
「それでは、行きましょう」
 彼の周りには、四人のメディック担当が集まっている。
「英霊達よ、我に力を!」
 幻影兵団発動。
 それを受けて、白銀・美雪(真なる白・b45941)は面を上げた。
「……回復、始めます」
 自分に白燐奏甲をかけた上で、美雪は両手を翳した。
「……気合、根性、努力、熱血、魂」
 瀕死状態にあった義春を初め、Z2の攻撃で倒された仲間達を次々と回復し始める。
 彼女の最大回復量、なんと800!
「……まだ、いけますね?」

●イキナリオンステージ
「準備良し……さりあさん、サラさん、初めて下さい!」
「おーけー!」
 ジークフリードの声を受け、加奈氏・さりあ(は痛い腐女子です・b26943)は特製インカムをスピーカーに接続した。
 ……突然だが読者諸君に質問したい。
 皆は、フリッカースペードというものをどう考えているだろうか?
 世には様々なフリッカーが存在すると思うが、ここにいる加奈氏さりあは……こういう奴だ。
「ミュージック、スタート!」
 大きく息を吸い、さりあはなんと、大音量で歌い出した。
「はぅ、私は皆さんの回復を……全力でさせていただくのですよぅ」
 その最中、慈愛の舞を始めるサラ・モラトリアス(日陰の眠り姫・b36309)。
 突然のオンステージに、Z2は気圧された。もっと言うと筆者も気圧された。
 これが、どんな圧力を持っているのかを知ってもらうため、今回はあえて歌詞をまるまま書き残そう。

 私の願うこと この声が届きますように。
 一つ一つの言葉を集め 今あなたに届きますように。
 終わらない激動の時代 絶え間なく流れ続ける血肉。
 後どれ位まてばいい? 止まぬ 戦火の中で。
 待ち続ける? このまま?
 NO! 私は叫んでいた…。
 一滴の勇気を出そう 闇を打ち払うソウルで。
 あなたに届け 今打ち砕く 言葉を!
 私の願うこと この声が届きますように。
 一つ一つの言葉を集め 今あなたに届きますように。
 今 一つになり 光へ!
 ――GO FIGHT!!!
 いざ! はじめよう終わりのバトル!
 さぁ! おわらせる悲哀のロンド!
 いま! 打ち砕け巨大な敵を!
 ゆけ! いざ参る30の勇者!
 ガンガガンガガンガン!
 ザ・クラッシャー!

「こっちも行くぜ!」
 サビ部分、一花・糸(撚・b13033)はレックギロチンをガチリと鳴らし、幻影兵団を展開した。
 総勢30体の幻影兵団が一気に戦場へと解き放たれる。
「はぅ……」
 それに加え、サラのサイコフィールドが展開。
 戦場全域に、ガードアップ、射程アップ、更に毎ターン幸運度ダブルチェックの支援が加わった。
 ジークフリードと糸によって撒き散らされた幻影兵団、そしてサラの慈愛の舞。そしてさりあのヒーリング(?)ヴォイスにより、毎ターン300以上の全体回復が実現したのである。
 この性能は、Z2パンチをガードさえすれば無傷且つBS無しで次ターンを迎えられる程度の威力である。
「殴らない戦い……メディック魂、見せてやろうじゃん。フェンリルが折れるまで、僕は僕らを折らせない!」
 チェーンソーのエンジン音で、糸は地面をかき混ぜた。
 そして彼はニヤリと笑う。
「これで勝てなきゃ、そりゃ嘘だ」

 大音量でBGMが流れる中、紫月・双牙(光焔真牙・b08033)がZ2へと駆け込んだ。
 両脇を固めるように、天羽・十六夜(闇に囚われし者・b21674)とセレス・ヴィエルジェ(斬鉄姫・b57815)が走る。
「さ、打ち合わせ通りに行きますよ」
「それはいいんだが……技の名前どうする」
「任せておけ。私が考えてきた」
「……じゃあそれで」
 双牙と十六夜はZ2の手前で左右に散開。
 セレスだけその場で急ブレーキをかけた。
 黒燐奏甲の力を旋剣の構えへ連結。二倍になった威力を黒燐暴走弾にして撃ち放った。
「十六夜!」
「…………」
 青く光る剣を水平に構え、十六夜は黙ってZ2の腹に黒影剣を叩き込んだ。
 ばっくりと開いた傷口。
 そこへ、双牙が斬馬刀を担いで突っ込む。
 剣から吹いた炎が、巨大な剣の如く燃え上がる。
「シンプルに行きましょう」
 傷口に、渾身の紅蓮撃を叩き込む。
 腹を抉られたZ2は牙を見せる。 
 が、そこで攻撃は終わらなかった。
 先刻放たれた黒燐暴走弾が抉り込まれた腹へと突っ込まれたのである。
「今命名――」
 セレスの手が開かれて、
 閉じられた。
「Reckless Fire」
 黒い爆発が、Z2の腹部で巻き起こった。
 悲鳴に近い声をあげるZ2。
 着地した十六夜が、その姿を振り返って呟いた。
「これはもふもふ感が味わえそうも無い……実に残念過ぎる」
「まあ、それは帰ってからということで」
「今はこっちが優先だ。二発目――!」
 双牙達は一箇所に集まり、同じ合体攻撃を繰り出そうとした……のだが。
『グウウウウオオオオオオオオオオオ!!!!』
 Z2が、なんと両腕を彼等に向けて振り上げていた。
「……うわ」
 みるみるげっそりする十六夜。
 次の瞬間、三人は大地の土と一緒に四方八方へ飛び散った。
 激しいダメージを負い、彼等はそれぞれ樹木の幹に叩きつけられた。
 四肢がくっついていたのが不幸中の幸いだと言うほどである。
「う……く……」
「ガード……しそびれたか……」
 瀕死の状態で転がるセレス達に、Z2は再び狙いを定める。
 その時、双方の間を遮るように梶浦・暁(焔の刀狼・b06293)が滑り込んだ。
「メディックに任せて下がってくれ」
「……頼みます」
「いってらっしゃい、ここは任せて!」
 刀を二本抜き放ち、暁はZ2へと身構えた。
 そこへ、天宮・羽衣(全ての目覚めの白星歌・b43783)とアリア・パーハーツ(キアロスクーロ・b65371)が駆けつける。
 三人寄り集まるようにして身構えた。
「流石にでかいですね……」
 巨大な鬼棍棒を握り締める羽衣。
「ふふーふー、ボク様達が負けるはずがないんだぜ」
 アリアの耳元で、ルビーのイヤリングが揺れる。
 そして、Z2の腕が振り下ろされた。
 地面に激突するその直前に、三人は散開した。
「うおおおおおおおお!!」
 刀を構えて飛び掛る暁。柄の狼が吼えたのか、刀はかん高い音を立てて巨大な氷塊へと変貌した。
「――喰らえ!」
 強烈なフロストファングが炸裂。
 Z2の右足に深い傷が生まれる。
 その反対側では、羽衣が棍棒を輝かせ、高く高く振り上げていた。
「燃え盛れ――」
 能力も才能も無い土蜘蛛が、家族の為に願い、守るべき人の為に想い、運命を切り開くべく鍛えたただの暴力――別名大物喰らいが激しく燃え上がった。
 羽衣はそれを両手で掴み、全力でもってZ2の右足に叩き込んだ。
「鬼喰らいの一撃!」
『グオオオオオオオオオ!!』
 右足の力が一瞬弱まる。
 その時を狙って、アリアは暁の肩を踏んだ。
「踏み台よろしく!」
「よし、いっけえ!」
 咄嗟に手をジャンプ台にした暁により、アリアは高く跳躍した。
 宙で一転。大鎌を振り上げ彼女は叫ぶ。
「フェンリル、君の炎とボク様の炎、どっちが強いか試そうか!」
 渾身のフェニックスブロウが炸裂し、Z2の体勢は大きく崩れた。
 ぐらりと傾くZ2。
 しかし。
「倒れ……え」
 倒れる勢いをそのまま利用して、Z2は左腕を振り上げていた。
 震えだす足を叩いて、暁は身構えた。
「こ…………来い!」
 流石は気合と根性のフェンリルと言うべきか。狙いなんてあったもんではなく、その辺に居たアリア達めがけて無造作に腕を振り下ろしたのである。
「く……!」
 寸での所で天峯・叢(霧の騎士・b49920)が割り込み、ガラス剣でガード。
 そんな彼を巻き込んで四人は思い切り吹っ飛ばされた。
 それも、地面に叩きつけられた反動でのバウンドである。
 空中で口元を拭う叢。腕のリボンが風に靡いた。
「……そろそろ本気を出させてもらおうか」
 ガラス剣を振って着地。
 と同時に、叢の背後からブロッケンジャイアントが姿を現した。
「大怪獣戦争と行こうか」
 霧の巨人がZ2へと瞬断撃を叩き込む。
 その上で、がっつりとZ2に組み付いた。
「そろそろ終りにしよう……行くぞ、皆!」
 巨人の振りかざしたトールハンマー……否、ガラス剣が、二発目の瞬断撃を打ち込む。
 一瞬送れてZ2の腹が大きく裂けた。
 その光景を、リリエル・ガブリエラ(絢華爛咲・b62071)は小さく息を吐いた。
「クロード、そちらは準備できてる?」
「ああ、大物相手だ。一丁張り切っていこうぜ」
 小暮・蔵人(魔弾の狙撃手・b49923)は自動小銃のマガジンキャッチを叩いてメモリ状のアイテムを引き抜いた。
「ええ……では……」
 Z2は全身の傷口を闘気で覆い、高く激しく咆哮した。
 びりびりと震える空気を跳ね除け、リリエルは鎌を掲げる。
「小細工は無し……叩き潰します!」
 リリエルが叫んだその瞬間、Z2の頭上に聖葬メイデンが出現した。
「葬送の儀と共に送る!」
 ばくんと、アイアンメイデンがZ2を挟み込んだ。
「クロード今です!」
「OK合わせるぜ!」
 マガジンにワーウルフメモリを叩き込み、蔵人はライフルをフルオート射撃した。
「同時攻撃、喰らえやワン公!」
 ただのフルオートではない。
 二重強化のクロストリガー。ダメージ量実に1000強!
 鉄の棺を貫く大量の弾丸。
 産み落とされたばかりのように、Z2は全身から流血しながら地面に落ちた。
 しかしそこはZ2。後の両脚と前の左足、計三本だけで地面に立つと、牙をむき出しにして吠え立てた。
 しかしそんな威圧をものともせずに、有珠川・茉莉花(有珠川宮の揺れない震源地・b62582)は剣を構える。黄金の刃が黒い光に包まれた。
「覚悟せよ。神剣の錆になるがよい!」
 地面を蹴り、Z2の左足めがけて突撃する茉莉花。
 彼女に並ぶようにして、東亜・珠羅(純白殺戮兵器・b72105)が走り出した。
「行きますよ」
「任せよ!」
 剣を横向きに、茉莉花はZ2の左足に渾身の一撃を叩き込む。
「図体のでかさが汝の欠点じゃ――雷光一閃!」
 盛大な血が、Z2の足から漏れ出した。
「次――!」
 茉莉花から見て反対側。珠羅が黒影剣を叩き込む。
 Z2の左足は限界に来た。
 その筈だった。
「……っ!」
 茉莉花と珠羅は、自らにかかる影を認識できなかった。
 と言うより、する必要が無かった。
 ド級フェンリルZ2は、まるで二足歩行をとるかのように、高く前半身を振り上げたのである。
『ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
 直後、二人めがけて左足が叩きつけられた。
 衝撃で、周囲にあった木々が根っこごと吹き飛んで行く。
 咄嗟にガードを試みた茉莉花だが、あまりのパワーに足元からひっくり返され、鞠のように弾みながら飛ばされていった。
 そんな彼女の視線は、地面に突き立ったZ2の左足に集中している。
 なぜなら。
 あの下には。
「がっ……珠羅!」
 鋼鉄のような腕に押し潰された珠羅は、全身を粉々に潰され……ていなかった。
「ふふふ……」
 土に半身をめり込ませ、剣を頭上で交差させる珠羅。
「ははは……」
 珠羅は赤い目を光らせて、頭上のZ2を睨んだ。
「楽しい、楽しい、楽しいですねえ……これですこれ、求めて焦がれて止まらなかったァ!」
 Z2の足が、僅かに跳ね上げられる。
「もっともっともっともっともっともっと味あわせて下さい貴方を!」
 闇一閃。
 天へ走った一筋の軌跡は、Z2の左足を真っ二つに裂いた。
『グアアアアアアアアア!!』
 バランスを崩し、顎を地面につけるZ2。
 そんなド級フェンリルの頭上にかかる影。
 小さい一つの影だったが、彼女は確かにそこに居た。
 誰あろう、ソフィア・エーデルフェルト(ローゼンクロイツの吸血姫・b50597)その人である。
「さぁ、あの可愛そうなゼットツーに引導を渡してやるわよ!」
 拳を握り、振り上げる。
 多分、恐らく、推測するに、全人類で最もポピュラーな技名を、彼女は叫んだ。
「顔面パンチ!」
 Z2の鼻面に、ソフィアのプロトストランダムが炸裂した。
 衝撃が四方に広がり、粉塵が巻き上がる。
 顔を潰される形になったZ2は、牙をむき出し、痛みに耐える。
 ド級フェンリル、フェンリス・ウールヴ・テュール・ラルキル・ラウンダバウト。通称Z2。
 その上で、ソフィアは凄惨に笑った。

●スーパークライマックス
 先刻の一撃で戦闘が終了した。
 と、誰もが思ったのだが。
「……え」
「……うそ」
「……マジかよ」
 気合と根性が全てで、物理攻撃一点絞りのド級フェンリルは。
 なんと。
 あろうことか。
 最後の力を振り絞り、全身を闘気で覆い、完全な形で立ち上がったのである。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
 打つ手は全て打った。
 Z2も最後の力を振り絞った。
 さあ皆さんお待ちかね。
 ルール無用、待った無し。
 死んだらまけの一本勝負。
 大乱戦の始まりだ。

「燃え盛れ!」
「消し飛べ!」
 羽衣と双牙の紅蓮撃が叩き込まれ、Z2の巨体を炎が包む。
 そこへアリアが無理矢理なフォームで突っ込んだ。
「さぁ、皆で笑って帰るために楽しむんだぜ!!」
 フェニックスブロウを滅茶苦茶にぶち込み、Z2の毛皮を焦がす。
 続いて、八方からソーシェ達が一斉に飛び掛る。
「うらー! あーもーこれ面倒臭い!」
 ソーシェ。日本刀の柄で黒影剣を叩き込む暴挙。
「前に出られる限りは前に出ますよ!」
 ハイスピード状態からのロケットスマッシュを叩き込む朱里。
「焔の刀狼、梶浦暁参る!」
 フロストファングを繰り出す暁。
「こっち向けオラァァァ!」
 クロストリガーをぶち込む蔵人。
「負けるかー!」
「もっきゅー!」
 しろのクレセントファングともっさんのVキャリバーが合わさりW型の傷を開く。
『ガアアアアアアアアア!!』
 首を振り回し、腕を叩きつけ、Z2は周囲に群がった能力者達を弾き飛ばす。
「弾幕薄いです、なにやってんのー!」
 幻影兵団を撒きながら叫ぶジークフリード。
 吹っ飛ばされた面々に向けて、美雪が遠隔白燐奏甲をかけていく。
「……この程度ですか?」
「まだまだ行きますよー!」
「はぅ、少しでも皆さんのお役に立てたら……」
 さりあとサラの連携プレイで皆の体力がカバーされ、ついでとばかりに自分封術やら何やらが解除された。
「もう一回、葬送されてみますか」
 その途端、リリエルの聖葬メイデンが発動。ばくりと食いつく巨大メイデン。
 そこへ、無数の弾幕が展開された。
「パトリー、フルバーストでお願いね」
「力押しは好みではないが……」
「あっはっは! 一発かましてくるさぁね!」
「弾幕は浪漫ですねえ」
「片目、いただくでござる!」
 妃音の射撃、パトリーのファイナルキャノン、セレスの黒燐暴走弾、狂夜の魔眼、アルスランの魔弾、蒼月の水刃手裏剣が次々と叩き込まれる。
『グオオオオオオオオオオオオオ!!』
 棺を食い破って襲い掛かるZ2。
 手加減無しの両手Z2パンチが彼等へと襲い掛かる。
 木々を吹き飛ばし、ちょっとしたクレーターがその場に出来上がった。
「げ、何ですかアレ!」
「10人近くが戦闘不能……まだ行けます!」
「くっそ、復旧復旧ー!」
「……任せて」
 糸が幻影兵団を撒き散らし、美雪が白燐奏甲を遠隔で放つ。
 まだ立っているメンバーを急速に復旧するメディック班。
「ここで負ければ被害は甚大だ……」
「この程度で引くと思うなよゼットツー! 今回はばっちり覚悟完了してるからな!」
「くふふ、参加できなくて可愛そうじゃのう夏希は」
 十六夜、古湖、茉莉花が、倒れた樹木を飛び越えてZ2へ突撃。
「地の底に還るがよい!」
「……!」
「横っ腹にお見舞いしてやる!」
 茉莉花の獣撃拳、十六夜の黒影剣、古湖のクレセントファングが炸裂。
 Z2の巨体を僅かに傾ける。
「思い出すなあ人工島の戦いを!」
「必ず勝つ。勝って、そして生きて帰る!」
 傾いたZ2に、昇一郎と叢が飛び掛った。
「切り裂け!」
「ぶっ倒れろ!」
 瞬断撃とロケットスマッシュがクリティカルし、Z2の巨体が轟音をたてて倒れた。
 が、それも一瞬のこと。
『グ……グ……グアアアアアアアアアアア!!!!』
 Z2はすぐさま起き上がり、地面を大きく引っ掻いた。
 追撃を仕掛けようとしていたメンバーが一瞬で吹っ飛ばされる。
「ひ、被害甚大! 残りメンバー数えて!」
「ひーふーみー……あ、やべ、12人しかいねーじゃん!」
「引くか?」
「まさか!」
 血の混じった唾を吐き捨てて、徹也が豪快に身構える。
 それに並んで、珠羅が地面から剣を引き抜いた。
「さあ首を差し出してください、珠羅達の前に――!」
 膨大な闇を含んで、珠羅の剣がZ2を切り裂く。
「ったく図体でけえぞ畜生が……仕込みの時間だぜ!」
 腹の下に滑り込んだ徹也が、腹部に霧影爆水掌を叩き込む。
「テメェなんぞに殺されるワケねえんだよ……根拠もねえが!」
 カッターナイフを指の間で回して、義春はZ2の後ろ足に退魔呪言突きを叩き込む。
 えぐるように打ち込まれた一撃で、座り込むような体勢になる。
 そのままの体勢で、Z2は大口を開ける。
『ガ……ガアアアアアアアアウ!!』
 そして、あろうことか大地に喰らいついた。
「う……おおおお!?」
「回避回避……ううわ!」
 口を閉じただけの衝撃で、周囲に居たメンバーが吹き飛ばされ、樹木に思いっきり叩きつけられた。
 その中にはメディック班も含まれていた。
「ざ、残存勢力……何名ですか」
 頭から血を流し、ジークフリードは呟く。
 答えは返って来ない。
 その代わり、たった三人の男女がZ2の前に立ちはだかっていた。
「これを止めなきゃ、ヨーロッパの人達が酷い目に遭うことになるんだよね」
 片腕をだらりと垂らした勝義。
「一人より二人、二人より三人……大丈夫。行けますよ」
 片足を引き摺った詩歌。
「こんな気持ち、ホントに久しぶりだわ……!」
 ボロボロの防具で笑うソフィア。
『ググ……グ……グガア!』
 口の端から血を吐いて、Z2は三人へと噛み付いた。
 瞬時に飛びのいて回避する三人。
「噛むことに関しては吸血鬼だって負けてないんだから!」
 ソフィアは即座にVターン。プロトストランダムをZ2の横っ面に叩き込む。
 が、直後に突き出された腕で弾き飛ばされた。
「ソフィア! ……この!」
 勝義は飛びついた先の樹木を足場に跳躍。上空からZ2へとクレセントファングを叩き込んだ。
 回転しながら着地。その瞬間Z2の腕が直撃した。
 死屍累々の戦場。
 Z2は血を噴出し、立っていることすらできずに巨体を地に横たえた。
 まだ息はある。
 無理矢理立ち上がろうとするZ2。
 その時。
「ラスト……一発です!」
 太陽を背に、詩歌が高々と飛び掛った。
 シザーズを一本にしたまま、人差し指を突き出す。
 Z2の眉間に、さよならの指先が打ち込まれる。
『グ……ガ……』
 首の力で撥ね退けられ、詩歌は力なく地面を転がる。
『ガアアアアアアアアアアアア!!!!』
 轟音が響き、Z2の巨体が燃え上がる。
 そして……。
 ド級フェンリル、フェンリス・ウールヴ・テュール・ラルキル・ラウンダバウト。通称ゼットツーは……欧州の空の下、完全に消滅したのだった。
 滅茶苦茶になった森林地帯。
「…………勝った」
 そこで最後まで立っていたのは、銀誓館学園生徒だった。
「なんとか……勝ったんだ」

 無数の戦闘不能者、重傷者を出しつつも、対ゼットツー作戦は銀誓館側の勝利をもって終了した。
 30名ほぼ全員が重傷となったが、メディックの奮闘の成果があってか死亡者はゼロ。魂を賭けた重傷を戦士の勲章とするのならば、ある意味最高の状態での勝利だったと言えよう。
 尚、今回全く描写されなかった対ゴーストウルフ戦を終え、現場に駆けつけた夏希がZ2戦に加われなかった事を途轍もなく悔しがるのは、また後での話しである。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:30人
作成日:2011/02/25
得票数:楽しい1  カッコいい39  知的1 
冒険結果:成功!
重傷者:秋枝・昇一郎(テクノジャンクス・b00796)  梶浦・暁(焔の刀狼・b06293)  紫月・双牙(光焔真牙・b08033)  一花・糸(撚・b13033)  天羽・十六夜(闇に囚われし者・b21674)  紫倉・古湖(夕陽色の憧憬・b22979)  砂川・義春(カッター狂い・b24095)  加奈氏・さりあ(は痛い腐女子です・b26943)  神原・勝義(ムーンサルトリ・b28635)  サラ・モラトリアス(日陰の眠り姫・b36309)  鉄・徹也(白琥の牙を磨く水の刃・b36313)  天宮・羽衣(全ての目覚めの白星歌・b43783)  白銀・美雪(真なる白・b45941)  蒼薙・朱里(蒼天紅翼・b47186)  アルスラン・クロスネイル(蒼い月の吸血猫・b48476)  黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)  天峯・叢(霧の騎士・b49920)  小暮・蔵人(魔弾の狙撃手・b49923)  ソフィア・エーデルフェルト(ローゼンクロイツの吸血姫・b50597)  水守・蒼月(迷走忍者・b52134)  セレス・ヴィエルジェ(斬鉄姫・b57815)  リリエル・ガブリエラ(絢華爛咲・b62071)  有珠川・茉莉花(有珠川宮の揺れない震源地・b62582)  ソーシェ・バッハーズ(中学生魔弾術士・b64686)  アリア・パーハーツ(キアロスクーロ・b65371)  黒桐・妃音(朱に染まりし相思華・b67511)  東亜・珠羅(純白殺戮兵器・b72105)  伊吹・詩歌(白夜儚月・b72989)  麻多・狂夜(うたねね・b74760)  ジークフリード・ポルタ(透き通った空の様に綺麗な青・b77237) 
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