迷える夢見鳥


<オープニング>


 すべてを失った後、私に手をさしのべてくれたのがここだった。もうどこにも行かなくていい、私は永遠にここで生き続けるんだ。
 泣いている私に、あなたは声を掛けてきた。
「何故泣いている」
「私は悪くない、私は罠にはめられたの」
 そう叫ぶと、いつの間にか私は暗い牢屋の仲に居た。薄汚れた囚人服を着た私を、身綺麗な男性が見つめている。よくある日本のファンタジー小説に出てくるような……貴族か騎士?
「貴女を罠にかけた者は、責任を持って処分しておきましょう。さあ、外に」
 夢……?
 ここは実家の六畳間ではなく、どこかの宮殿にでも来たような美しい装飾と美術品に囲まれていた。案内が無ければ迷ってしまうような、広大な敷地。
 窓から見える庭には、色とりどりの花が咲いていた。
 鎧を着た騎士達の誰もが、この男の人に礼を尽くしている。
「名前を聞いてもよろしいですか?」
「え?」
 名前は……。
 アヤカ。
「エメロードです」
「美しい名前ですね。僕はイヴェール、若輩ながらこの領地の伯爵として統治しています」
「何故……私を助けてくれたの?」
 夢だ。
 ここは夢なのだと分かっていた。それでも、すべてが現実味にあふれていて、そして魅力的だった。
 素敵な貴族が現れて、そして私を助けてくれるなんて。
「エメロード、あなたの祖国は地下の冥府からあふれ出した死者の軍によって占領下に置かれました。……我が国にも、すでに彼らの密偵が入っています」
 どうか、あなたの力を貸してください。
 イヴェールと名乗った貴族は、そう私に言った。私はここに居る限り、いつだって特別でいつだって優しくしてもらえるんだ。
 ……だからもう、帰る事なんてない。

 冷たい風は、窓をキシキシと響かせている。扇・清四郎が吐いた息は、教室内といえど少し白くかわっていた。
「年末年始と、ナイトメアビーストとの戦いお疲れ様。……バレンタインは楽しめた?」
 ふ、と笑って聞いた扇の顔をどつきたい者も居たであろうが、今は依頼の話が先である。
 ……今、ナイトメアと言ったか?
「ナイトメアの勢力は滅びたけど、実は今またその力を利用した一般人が現れた。……彼女達は夢の中に自分の思う世界を作り上げ、そこに閉じこもっている」
 扇が指し示したのは、一人の高校生であった。
 困ったように扇は笑い、話を続ける。
「学校の同級生に熱烈恋愛をしていてね、実家に押しかけたりストーカーまがいの事をしていたんだよ。実家でもあまり家族間の関心が薄い所でね、彼女は寂しかったんじゃないかな。それで相手や同級生から叩かれて閉じこもった」
 扇は夢の中に入る為、皆にティンカーベルの粉を手渡すと、また夢の中に入るように言った。手はずは、それほど難しくないはずである。
 だが夢の中での出来事は、現実に直結する。命を落とせば、それもまた夢では済まなくなるだろう。
「そこはよくある日本のRPGに出てくる世界で、広いお城の中から始まる。君たちは何らかの設定を持ったキャラクターとして配置されると思うけど、いずれにせよ目的は二つ」
 一つは、この城と彼女の心を支配している象徴『イヴェール伯爵』を倒し、彼が持っている『ナイトメアの力』の元である駒のようなものを破壊してくる事。
 二つ目は、おそらく伯爵の自室にかくまわれている夢見人、アヤカを説得して連れ出す事である。
「アヤカを説得せずに戻ってきても、それだと彼女は閉じこもったままだ。それに彼女の拒否感が、イヴェール達の力を増大させる可能性もある。そうなれば依頼を成功させるのは難しいだろう。この世界は、彼女の夢だから」
 誰かがイヴェール達と戦っている間、誰かがアヤカを説得するのだ。

 ふ、とアヤカが顔をあげる。
 柔らかなベッドの上に身を起こすと、ドアの近くにいたイヴェールが険しい表情をした。何かあったのだろうか?
 アヤカが声を掛けると、共に何か話していた騎士がさっと出て行った。
「エメロード、城内が騒がしい。もしかすると、件の密偵達が動き出したのかもしれん。それとも、叔父上が僕の地位を簒奪する為……」
「イヴェール……」
「心配ない、僕が必ず君もここも守るから」
 イヴェールはアヤカに近づくと、そっと頬を撫でた。

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参加者
野乃宮・彩華(花鎮の末なる姫巫女・b01251)
市原・丹伊南(高校生フミックマスター・b39590)
稲田・琴音(蟲人・b47252)
富士野・彩香(白昼夢の雪娘・b54301)
四季・紗紅(白虎拳士・b59276)
川辺・結花子(夢現の紡ぎ手・b60907)
レイル・フランクス(ギャンブルブライト・b78238)
護堂・真愛(パラベラムフィール・b78714)
NPC:環・ローザ(白であり黒・bn0126)




<リプレイ>

 目を開くと、そこはヨーロッパで観光に訪れるような広くて素敵なお城の中であった。ぽつんと落とされた後、周囲をゆっくりと見まわして城内を見ながら野乃宮・彩華(花鎮の末なる姫巫女・b01251)は自分の服を静かに見下ろす。
「中々広くて素敵なお城ですわね」
 つんと澄ましてレイル・フランクス(ギャンブルブライト・b78238)は言うと、彩華の横を通り過ぎて歩き出した。
 廊下の向こうに騎士らしき者が居るが、怪訝そうにこちらの様子を伺っている。
「とりあえず戦闘に備えた方がよさそうですわね」
 彩華もイグニッションを済ませると、白いレースとミニスカートのワンピースを身につけた。淡い藤色の呪髪も、彩華をファンタジックに彩っている。
 一方レイルは銀誓館の小学生制服であるが、今回は襲撃する側である為衣服の差異はあまり気にする程ではあるまい。
 ローザを含めてレイル、彩華、川辺・結花子(夢現の紡ぎ手・b60907)、四季・紗紅(白虎拳士・b59276)がイヴェールと戦い駒を破壊する事になっている。
 残る四名は、エメロード……アヤカの元へと向かい彼女を説得する段取りになっている。
 しかし広い城内をさまよううち、お互い段取りに相違があったのかイヴェールの元へローザと結花子と紗紅、および結花子のケルベロスオメガが向かい、彩華とレイル、フランケンシュタインFWがエメロードの部屋の前に居るロッシュの討伐に向かった。
「ロッシュ様でございましょうか」
 彩華が声をかけると、ロッシュはちらりと彼女達を見返した。長身で、他の騎士とは違い豪華な装飾の鎧を身につけている。
 彩華は恭しく一礼すると、ロッシュに城内が混乱している事を告げた。
「ロビーの方で戦闘になっているらしく、イヴェール様がおいでくださるようにと」
「そうはいかん。わたしがここを動けば、エメロード様をお守りする者がいなくなる」
 きっぱりとロッシュは言い返した。
 やっぱりそうなりましたわね、と小さな声でレイルが呟く。が、そうなればそうで実力行使といくだけだ。
「彼の相手をお願いしますわ」
 レイルが声を上げると、後ろの部屋のドアが開いて大きな影が現れた。護剣を構え、彩華もそれにならう。
「素直に来て頂いていれば、ここで争わずに済みましたものを。……私はアルシオーネ、この世界に終焉をもたらす為に参りました。死に行く前に覚えておいてくださいまし」
 剣先をロッシュに向け、彩華が冷たい声で言った。
 そっと目を伏せ、ロッシュが剣を引き抜く。ロッシュと同時に、周囲を護っていた数人の兵士もこちらを睨み付けながら剣を抜いた。
「やはり冥府の手の者か」
「冥府、と言われれば冥府ですわね。ええ、そうですわ。わたくし、チェスの駒のようなものを探しているんですの。お知りでしたら、出してくださらないかしら」
 チェスの駒と言われて、ロッシュが眉を寄せる。
「何だそれは」
「ご存じないなら、もう話はございません」
 たおやかにレイルが笑うと、それは攻撃の合図となった。彩華の黒燐蟲がロッシュの体にまといつくと、レイルが手を翳す。
 指につけたリングが光ると、レイルとフランケンシュタインが赤い糸で結ばれた。
 ロッシュの剣を受け止めていたフランケンは、力を増してロッシュを突き飛ばす。一瞬体勢を崩したものの、即座に持ち直して剣を水平に薙いだのはさすがと言うべきか。
 パワーを生かして攻めてくるフランケンを、ロッシュはよく攻撃を流していた。やや離れて、後ろからレイルがリングで、彩華は黒燐虫を使って周囲の兵士達を食らいつくしていく。
 斬りかかった剣を受け止め、レイルを護りながら虫を放つ彩華。レイルも彩華の側を離れぬようにして、フランケンに指示を出し続けた。
「籠の鳥の夢見姫は返して頂かねばなりません。……あなたは分からずとも、彼女はその意味をよく分かっているでしょう」
 彩華はそう言うと、目を細めた。

 外が静かになったようだ。
 そっと顔を上げ、エメロードはソファから身を起こす。あのロッシュという騎士は? イヴェール様は? わたしはどうなるの?
 ここから出たくない。
「エメロード様、侍女のマオでございます」
 まだ幼げな声が、ドアの向こうから聞こえた。
 か弱い子供だと思ったから、エメロードはそっとドアに近づいて鍵を開ける。まさか、ここに居るのが自分の夢を終わらせる為に来たのだとは思わなかった。
「ああ、ご無事ですね」
 まだ幼げな顔立ちながら、しっかりとした言動で護堂・真愛(パラベラムフィール・b78714)はエメロードに挨拶をした。そっと手を取り、エメロードを見上げる。
「お怪我などしておりませんか、心配しておりました。イヴェール様が今ホールで侵入者を鎮圧しておりますから、心配はいりませんよ」
「そう、よかった」
 エメロードはそれを聞くと、ソファまで戻って崩れるように背体を預けて座った。表情から、不安と緊張が見て取れる。
 真愛は同行した残り三名を振り返り、エメロードの名を呼んだ。
「エメロード様、こちらの方々はエメロード様と同じように避難して来られている方々です。それから、ニーナはイヴェール様がエメロード様をお慰めするようにとおよびしたものです」
 市原・丹伊南(高校生フミックマスター・b39590)はそっと跪いて挨拶をすると、エメロードを見つめた。
「おつらい思いをされていると伺っております。……ボクは『小さき頷き』ニーナと申します。妖精達の会話を聴き書きする書庫からやってきました」
「妖精? ……ふふ、聞いてみたいわ」
 ふわりとエメロードが笑った。
 ああ、ようやく笑ってくださいましたねと丹伊南と真愛も笑う。こういった世界に妖精は付きもの、誰だって心誘われるものである。
「では、少しお話ししまょうか」
 丹伊南はエメロードの横に腰掛けると、妖精の話をしはじめた。悪戯な妖精の話、優しい妖精の話。丹伊南は、エメロード……いやアヤカも本当は傷付けた相手にすまないと思って居るんじゃないかと思って居た。
 それでも言い出せないまま頑固になり、そしてまた傷付けてしまう。彼女が自分の気持ちに気付いてくれれば、現実に戻るきっかけになるはずである。
 いつの間にか、富士野・彩香(白昼夢の雪娘・b54301)も混じって丹伊南の話に聞き入っていた。
 稲田・琴音(蟲人・b47252)は黙って聞いていたが、皆が話しの流れを作ってくれるのを待っているようだった。
「楽しんで頂いたようで、ニーナめも幸せでございます。今まで、どれだけ耐え忍ばれて来られたのかと心を痛めておりました。お国の事も心配でしょう」
 丹伊南が聞くと、アヤカは俯いた。
 表情が沈み、何か言いたそうにしている。四人はそれを、何も言わずに待っていた。やがてアヤカは、顔を上げるとスカートの裾をぎゅっと握った。
「心配なんかじゃ……ないわ。私、逃げてきたんだもの。だから、ここに来られてほっとしたわ。だってここにいると辛い事は何もないもの」
「ずっと一人、分かります」
 彩香はそっと側に立ち、彩香がぽつりと口を開いた。
 灰色の髪を揺らし、丹伊南と反対側に腰掛けると窓の方を指した。そこは暖かな日差しが差し込む、春の陽気と景色に溢れている。
「昔は、春が嫌いでした。だって、雪が解けると姿が見えなくなって、私の居場所はなくなります。…ずっと冬ならいいのにと思っていました」
 冬の象徴である雪女。雪のただ中にあるからこそ雪女が畏怖され、そして語られる。彩香は寂しく一人、眠り続けていた。
「でも今はそうじゃありません。私に気付いてくれる人がいて、色んなものを見せてくれます。その出会いは……私にとってのお日様です」
「私にとっての出会いは……そんなのじゃなかった」
 エメロードが応えると、彩香は首を横に振った。
「あなたにも、きっとある。ここには無いものです。お日様は、夢の中にはありませんから」
 エメロードが、その言葉を聞いて彩香を見返した。静かに頷くと、戸惑いを表すように視線を泳がせる。
 きつく彩香は手を握り、言葉を続けた。
「ここにはあるのは、見えているだけの世界です。でも外は、もっとたくさんのものがあります」
「あなたももう気付いているはずです」
 琴音が語りかける。
 ここが夢の世界で、目を覚まさなければ永遠に体が現実に残されたままであると。ここにあるのはまやかしで、決して幸せなものではないのである。
 扉の前に立った琴音は、さっと幻影兵団の力を放った。
 本当は自分と扉を光らせる事が出来れば、それが一番インパクトがあったはずである。しかし白燐蟲達の力は周囲を明るくさせるだけで、それが叶わなかったのは少し残念だ。
「あなただけの夢の国に、輝ける騎士。憧れるのは分かります点私もそうですもの。だからこそ、こうして語り合い、夢を広げていかなくては」
 琴音は剣を抜き、それを掲げてみせた。
 剣は窓からの光に反射し、熱く敷く輝いていた。眩しそうに彼女はそれをじっと見つめている。
「こんな素晴らしい夢を見ているんですもの、あなたも沢山の物語を読んできたのでしょう。そのたびに夢は鮮やかになったと思います。篭もっていては、もう新たな物語は得られません」
 剣の柄を握り閉め、琴音は扉を叩き斬る。
 力を込めた一撃は、扉を押し開いた。ゆっくりと剣を鞘に収めた琴音は、肩越しにちらりと振り返る。
「何度だってやり直せるんです。大丈夫、よく相手の事を考えて、寂しければそう言って、失敗したら謝って。……それだけで、意外な程世界は簡単になるんですから」
 すうっと琴音は、扉の向こうに歩き出す。
 続けて丹伊南が立ち上がると、扉の側で立ち止まって振り返った。真愛が手を差し出し、ゆっくりと立たせる。
「エメロード様、さあ」
「……アヤカよ」
 彼女は少し迷って、それから小さく呟いた。
 こくりと頷き、彩香が手を取る。
「同じ、名前ですね」
 ずっとずっと眠っていたという少女は、自分も彩香と名乗った。

 振りかざす剣を受け流し、駆け抜けざまに紗紅が拳を叩き込む。後ろにちらりと視線をやると、真ん中に挟み込むようにしたローザと結花子を護るようにして、ケルベロスオメガのけるさんが兵士に襲いかかった。
 紗紅は一旦足を止め、後ろを振り返る。
「本来ロッシュを先に倒す手筈だったのです、ここで一旦二人を待つべきかと思います」
「迷ってしまってすみません……」
「いえ。しかしイヴェールの動きが気になります。ずっとホールに居ればいいのですが」
 応戦をしつつ、紗紅が結花子に言った。
 流れるような動きで兵士を打ち倒し、どさりと床に放る。その体は戦闘不能状態になると、ざあっと霧のように消えていった。
 結花子は枕をぎゅっと抱えたまま、その様子を見下ろした。
 これは自分の中に作られた世界、決して生きた人間ではないのである。それでも結花子にも、その影に縋りたくなる気持ちは分かっていた。
 夢の中なら、自分は特別で唯一だから。
「……けるさん、大丈夫。もうじき二人とも来てくれるよ」
 優しく結花子は、けるさんに声を掛けて激励した。それに答えるように、けるさんは周囲に群がる兵士達を蹴散らしていく。
「ここを抜け出して歩いていくのは、辛いよね。とっても暖かくて、優しいから」
「夢とはそういう物ですよ。……ねぇ、イヴェールさん」
 紗紅が声をかけると、結花子がはっと顔を上げた。
 廊下の向こうの扉がゆっくりと開き、紺色の柔らかな衣服を身につけた青年が足を踏み出した。片手にレイピアを持ち、剣先を床に落としたまま歩み続ける。
「ここはエメロード様の為の城。あなた方は招かれざる客人なのですよ」
「何をおっしゃいます。貴方方がエメロード様をここに連れ去ったから、祖国は暗黒に包まれてしまった。あの方を不幸にしているのは、あなた自身ではないですか」
 すうっと、紗紅は姿勢を低くして構える。
 鋭い視線は、イヴェールだけを睨んでいた。
「…行けますか?」
「ご支援致します」
 紗紅が聞くと、ローザがこくりと頷いた。白燐蟲が紗紅を優しく包み込み、紗紅は白燐に護られながらイヴェール目がけて駆けだした。
 ちらりと後方を振り返り、結花子がけるさんの動きを見やる。
 結花子自身は、護りの力を解放した。
「みんなを護って……」
 放たれた力が、兵士達から身を守る盾となる。
 支援を信じて、紗紅はイヴェールに殴りかかった。針のようなレイピアが空気を切り裂くと、紗紅は鋼糸を引き出してかざす。
「いいでしょう、来るがいい」
 イヴェールは笑みを浮かべると、手を軽く挙げた。
 広々とした廊下に、続々と兵士が駆けつける。広々とした廊下も、兵士が押し寄せると次第に空間を圧迫してくる。
 その時、扉は開いた。
「いらっしゃいましたわ!」
 ローザの声で振り返ると、廊下の向こうから彩華とレイル、フランケンが駆け込むのが見えた。
 頼もしい彼女達の姿に、ローザも結花子も、そしてイヴェールと戦っていた紗紅も表情を和らげる。レイルは駆けながら、即座にフランケンに紗紅の支援を指示した。
「まずはキャノンで吹き飛ばして、雑魚は邪魔ですわ!」
 無言でフランケンは腕を構え、一斉射撃を開始した。
 傷だらけであったが、彩華もフランケンもレイルもまだまだ戦う体勢にある。隙を見てレイピアを前に突きだしたイヴェールに気付き、紗紅は横に身をひねって躱す。
 そのまま後方に回り込むと、鋼糸で巻いた拳ごとぶつかって行った。
 重い踏み足で繰り出される拳が、イヴェールの体をぐらりと揺るがす。
「……くっ……と、とらえろ!」
「いけません……!」
 紗紅の背後から剣を振り上げて斬りかかった兵士達に、結花子が暗黒の爆弾を降らせた。黒い夢の力が兵士達を制圧すると、力を取り戻した彩華が魔眼の力をイヴェールに向けた。
「イヴェール、終わりにしましょう」
 夢の力が作り出した人形達は、崩壊を迎える。
 イヴェールのふところで小さくガラスのようなものが砕ける音が聞こえるとともに、世界は崩れ始めた。
 欠片は手に入れる事なく、世界とともに消えていくようだ。
 美しいお城も、騎士達も総て消える。

 ふと周囲を見まわし、真愛がアヤカを振り返る。
「どうやら、終わったようですね」
 アヤカ様をお守りするお務め、ご苦労様でした。
 真愛は小さく、呟いた。彼女のつぶやきは、多分イヴェールに向けたものだったのだろう。安心して夢に還ってください、と言葉を続ける。
 残されたアヤカは、現実に戻っていくのだ。
「……覚えていてくださいね」
 意識が戻る直前、琴音が言った。
 鮮やかで美しいお城の中で出会った侍女や少女、妖精さんの話はきっと忘れない。もちろん、彼女の為に戦ってくれた四人の事も。


マスター:立川司郎 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/03/03
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