対人狼情報封鎖作戦:バスティーユをはしる旋律


<オープニング>


●フランス、花の都にて
 パリ市内を走るメトロに乗れば、頻繁に目にする車内や路傍で演奏するミュージシャンたちの姿。
 ここ、バスティーユ駅構内でも数人の若者たちが集い、ジャズやタンゴといった音楽を奏でていた。
 しかも上手い。
 チェロをこよなく愛する21歳の青年ロイク・ベルトワーズがリーダーをつとめる路傍演奏バンド『パーティキュール』の7人だ。
 けれど行き交う人々のほとんどはすでに見慣れた日常の一場面なのか、歩みを止めてまで聴き入ろうとする事は無い。だが、それでも足元に置かれた彼らの楽器ケースの中にはそれなりの金額が集まっていくのだった。
「よし。今日はこのくらいで引き上げだ」
 『パーティキュール』は、街角での演奏活動を表の顔とする、人狼騎士の小規模結社である。
 パリの夜に音楽でちょっとした彩りを添え、そしてその日稼いだ小銭でカフェにたむろする。これが彼らの楽しみなのだ。
 もちろん、人狼騎士としての務めや日々の鍛錬もおろそかにしてはいない。しかし彼らが世間一般に対して、そういった裏の顔を見せる事など無いのだ。

●パーティキュールの日常的風景
 ロイクは普段、結社の仲間たちと共にバスティーユ広場から程近いシャロンヌ通りのカフェで夜のひとときを過ごす。
 この日はフルート奏者であり恋人でもあるマリーズと肩を並べてゆるゆるとシードルを口に含むロイクの向かいで、バンドネオンを操る最年少のリュックが次の結社企画のアイデアを楽しそうに語っていた。
「ジャポンでは『オ・ハナミ』って言って、春になったらチェリーの木の下でピクニックを楽しむっていう伝統があるらしいんだ。それでさぁ――」
「オ・ハナミにはどんな料理が出されるんだ?」
 そこへ大男のギタリスト、ピエールがガレットを頬張りながらいつもの調子で料理について口をはさむ。
「も〜お、ピエールぅ!」
 すると、ヴァイオリン弾きの少女ニコルがこう言ってくるくると笑いながら、食べ物と楽器の事しか頭に無いこの朴念仁を、さも愛おしそうに見つめるのだ。
「今のところ、特に目新しい動きもないしな。シェフ(※団長)さえ異論なければオレは賛成だ」
 夜でもサングラスを外さないサクソフォン吹きのヴィクトルはリュックの案に一票を投じる。
「ここいらで一番の近場ってーと、シャン・ド・マルスあたりかね? ところでキモーノはやっぱり……着るのか?」
 と、人一倍オシャレにうるさいヴァイオリニストのシリルが心配そうに尋ねる。
「他国の文化を取り入れるっていう発想は面白いとおもうわ!」
 ロイクの隣でマリーズは楽しそうに答えた。
 ……春の結社イベントについての話はまだまだ膨らみそうだ。

●銀誓館、教室
「まずは、フェンリルとの戦い、お疲れ様でした。
 あれほどの強敵を相手にここまで戦果を挙げられたのは、本当に素晴らしい事だと思います。そのおかげで人狼勢力によるヨーロッパ侵攻は事実上不可能となりました。改めて皆さんのはたらきに感謝します」
 運命予報士は、先のフェンリルとの戦いにおける功績について称えた。
 くわえて処刑人やヤドリギ使い、一部の人狼騎士など、かの地でも多くの協力者を得た現在、未だ洗脳下におかれている全ての人狼たちをネジから解放する一大作戦を行えるかもしれない、という旨の報告もおこなう。
「ただし、この作戦を進めるためには、処刑人やヤドリギ使いたちの準備が整うまで人狼勢力に彼らの動向が知られてはまずいのです。人狼騎士の大半は森の拠点にいますが、ヨーロッパの各地には情報収集などを目的とした秘密結社も少規模ながら存在しています。ですからまずはヨーロッパ各地に点在する人狼の結社を制圧して、情報が流れるのを防いだ後、作戦を遂行する必要があります。――きたるべき決戦のために、またヨーロッパへ飛んでほしいのですが、引き受けて頂けますか?」

「人狼勢力の協力者から得られた情報を元に、皆さんが向かって頂く国はフランスです。
 世界史の授業などで聞いたことのある方も多いかとおもいますが、パリ市内にバスティーユと呼ばれる区画があります。その周辺で演奏活動をする秘密結社『パーティキュール』を制圧し、一同の身柄を拘束するのが目的です。
 今回、皆さんのするべき事は人狼騎士たちを追跡して抵抗をやめさせ、あるいは捕らえて、巡礼士の方々へ彼らの身柄を引き渡すところまでです。
 そこから先は、今後の作戦が終了するまであちら側で捕虜として預かってくれるそうなので、あちらにお任せしちゃいましょう」
 そして運命予報士は渡航の手続きや宿泊施設、現地到着後の行動などに関する諸々の説明や注意事項などを述べ、最後に一同へ激励の言葉をかける。

「今後の作戦を左右する重要な任務ですから、どうか頑張ってください。そして何よりも、無事にまたここでお会いできる事を願っています! いってらっしゃいませ!!」

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参加者
フェンリル・フローズヴィトニル(氷狼・b05682)
玖堂・統夜(黒の確約者・b05760)
桜庭・柚樹(寒緋桜の雪夜叉・b32955)
儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)
イェル・ベネヴォルメンテ(高校生真フリッカーハート・b43964)
鬼灯・遙(天道のディシプリン・b46409)
輪廻・殺機(小学生真霊媒士・b57185)
不知火・レイ(星の欠片・b71576)
NPC:桃之井・鼎(ドリームハンター・bn0030)




<リプレイ>

●序幕
 パーティキュールは今夜もバスティーユで音楽を奏でる。
 毎日繰り返される光景。ある人は通り過ぎ、ある人はチップを投げ入れる。今日もおそらく昨日までと同じ様に一日が終わっていくものだと信じるのは、決して愚かな間違いでは無いだろう。
 重厚なチェロの音色を夢へ誘うバンドネオンの旋律に運河の如きヴァイオリンの調べ。
 ギターはロマンスを語り、フルートは風に寄り添う。
 しかし、時として思いがけない形でストーリーは動き出す。

 夜のバスティーユは多くの若者で賑わっていた。行く先々で実に様々な音が耳に飛び込んでくる。
 そして我らが銀誓館能力者一行がバスティーユ界隈を歩く中、街の人々は彼らを興味深げに振り返り、或いはカメラに被写体として収めていった。
 何故なら桜庭・柚樹(寒緋桜の雪夜叉・b32955)の雪のように白い羽織、鬼灯・遙(天道のディシプリン・b46409)の黒の艶やかな振袖、そして不知火・レイ(星の欠片・b71576)の藍色の着流しという和装に惹かれて。
 場はちょっとした興行の態を醸し、そうして珍しがるパリ人たちを掻き分けながら一行は人狼たちを探し歩いて、遂に発見する。

●たおやめに託したるは
 バスティーユ駅構内、乗り場をつなぐ路の傍で。
「……この曲、どっかで聴いたことあるかも」
 歯切れの良い主題を奏でるバンドネオンに次いで弦楽器が優雅に歌う。
 遙は早速飛び込むや、振袖を揺らして踊り出す。輪廻・殺機(小学生真霊媒士・b57185)も相棒から教わった通りに踊ってみる。こうして次々に踊りの輪を広げていく能力者たち。
 最後まで傍観を決め込んでいたフェンリル・フローズヴィトニル(氷狼・b05682)も仲間に手を引かれてようやく輪の中に入る。元々器用な彼女は初めてとは思えないほど軽やかに演奏に乗っていた。
 突然やって来た東洋人のグループに初めは困惑気味だった人狼たちも、彼らの屈託無い陽気さで次第に意気投合し始める。
 玖堂・統夜(黒の確約者・b05760)は持参したサックスを手にヴィクトルと並ぶ。
 同様にギターを引っ提げて踊るように演奏に混じるイェル・ベネヴォルメンテ(高校生真フリッカーハート・b43964)をピエールが笑顔で迎え入れると、ニコルは不安そうな表情で二人の様子を気にしていた。
 儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)は歌姫の装いで即興の歌を吟じる。
 柚樹の日本舞踊に目をとめたパーティキュールはスローテンポのジャズ曲へ移行し、普段ほとんど立ち止まる事のない通行人たちもこの日に限っては強く興味をそそられた様子で、ノリの良い連中などは一緒に手を叩いてひとしきり見物した。
 いつの間にか周りに小さな人垣が出来上がって、気分は両洋のコラボ・ステージ。拍手や喝采と共に楽器ケースには普段よりもずっと多くのチップが投げ込まれていた。
 気を良くした七人はおもむろに日本のアニメソングを演奏し始めた。
 それは彼らからの歓迎のしるしだった。今度は能力者たちの間から拍手喝采が湧く。
 演奏を終えて、すっかり打ち解けたロイクがにこやかに能力者たちへ話しかける。
「どうもありがとう。あー……、あなた方、日本人? 観光?」
 彼の問いに遙は親しげな笑みで答える。
「私は日本から来た、鬼灯と申します」
「わお、驚いた。素晴らしいね君の喋りもキモーノも!」
「ありがとうございます」
 率直な賛辞に粛々とお辞儀を返す。
「みんな学生友達のようだけど、春のヴァカンスかい?」
 彼の問いに一瞬静まる。
 そして意を決した様子でこう返した。
「人狼騎士の結社パーティキュールの方々と御見受けいたしました。私達は銀誓館学園の戦士です。突然ではありますが、どうか私達と一戦交えて頂きたいです」
 瞬間その場の空気が硬くなる。ロイクは眉を顰め、差し出しかけていた右手を引っ込めた。
 銀誓館の名は知っている。
 しかし何故わざわざそんな遠方から?
「目的はなんだ?」
 と、ロイク。
「事情は話せない、けど……私達と、戦ってほしい」
 フェンリル。
「おいおい、おおっぴらに怪しいぞ。何が狙いかはっきり言え」
 鋭い目付きでシリルが口を挟んだ。
「全国武者修行の旅?」
 と、殺機は言ってみる。
「いくら敵とはいえ、無闇矢鱈に剣を交えるのは我々の望むところじゃない。命あるうちにさっさと自分の国へ帰ることだ」
 彼らの返答は否だった。
「終わってから、なら……全部話す」
 都合の良い事を言ってるのは重々承知の上だと、フェンリルは食い下がる。
「さぁ、どうですか? 私達と正々堂々と、勝負して下さらないかしら?」
 柚樹も最後の一押しとばかりに加勢に入った。
 しかし、
「野蛮な奴らだな。真意を明かさないくせに正々堂々だと?」
「先程までの好しみで今回は見逃してやる……去れ」
 ロイクたちの目が段々に敵意を帯び始める。まるで縄張りへ踏み込もうとするならず者を威嚇する狼のように。
 だが、今後の作戦のために銀誓館側も引き下がる訳にはゆかない。次に出すべき交渉のカードを思いあぐねていると、人狼側が口を開いた。
「てゆっかさぁ……戦いに来たんなら何でわざわざ、あたしらみたいな末端を狙う必要があるのよ? それとも本気で、武者修行なワケ?」
 ニコルが問うた言葉に、マリーズはハッとした表情でロイクへ何やら耳打ちし始めた。
 神妙な面持ちで頷くロイク。
 その様子に芽亜は嫌な予感がした。
「……そうだな。おい、リュック」
 ロイクはマリーズへ答えて、リュックを呼んだ。リュックはシェフの所へ進み出る。
「シェフ」
 ロイクは無造作にチップを掴むとリュックへ手渡し、掌で拳を二度打って見せた。
「予約を取って来い。客人のもてなしだ」
「了解」
「マリーズ、付いてってやれ」
 そしてリュックはマリーズを伴って何処かへ去ろうとする。
「いいえ、歓待でしたらこの場で結構ですわ」
 咄嗟に芽亜が彼らを引き止めようと進み出たところへ、大男のピエールが立ち塞がった。
「あら、誇り高き騎士が敵前逃亡ですの?」
「誰も逃げたりはしない。使いに遣っただけだ」
 二人は一度此方を振り返ると足早に人通りの中へ紛れてゆく。
 今回は情報封鎖が目的なだけに、どんな理由であっても人狼たちを逃す訳にはゆかない。
「こうなっては止むを得ませんね」
 芽亜は悪夢クラスターを投げようと試みるがピエールに邪魔される。
 ――と、その時。
「ごめんなさあいっ!!」
 なんと、桃之井・鼎(ドリームハンター・bn0030)がピエールにロケットスマッシュを見舞った!
 野太い呻きと共に殆ど不意打ちの態で吹き飛ばされるピエール。周囲の目が集まった隙にリュックたちは走り出した。
「ちょっと待った〜っ!」
「鼎様!」
 芽亜と鼎も二人を追って走り出す。
「……チッ、やってくれるじゃねえか!」
 シリルは怒りを露に能力者へ剣を抜こうとする。
「待てシリル。……銀誓館よ、決着を付けてやる。だが、流石にここでは拙い。北東に墓地があるのは知ってるか? そこでなら存分に戦えるだろう」
 ロイクは北東のペール・ラシェーズ墓地を決闘の場として指定してきた。能力者側は従う旨を伝えて一行は墓地を目指す。

●狼の棲む街
 万が一に備えて昼のあいだ地形の把握に時間を割いた事がこんな形で幸いするとは。
 人狼たちは街角を右へ左へうねりながら逃げてゆく。催眠爆弾で足止めをしたい所だが、今は悠長に立ち止まって狙いを定めている暇は無い。
「ま〜て〜っ!!」
 意外にも鼎が追跡に加担してくれた事は芽亜にとって非常に大きな助けとなった。
 相手はペアでいる故、独りで追っても二分されて取り逃がす。けれど此方も人数相当の追っ手がいる限り、可能性はまだある……。
 予想通り二人は途中から別個に逃げ始めた。鼎はマリーズを追い、芽亜はリュックを。
 遠ざかってゆく声を背に芽亜は少年を追い回した。路地裏へ入り込み、家屋の狭い隙間を器用に抜けて行く。
「流石ですわね……」
「しつっこいなぁ」
 サル顔負けの登攀でパイプ管を伝い、壁を交互に蹴っては軽々と階上へ跳び移る。少年は街のあらゆる地形を制覇していた。彼にとって屋根の上は勿論、窓の縁や戸板でさえ『道』なのだ。夜の喧騒の上を、まるで忍者のように駆けてゆき、人知れず彼らは活動していたに違いない。
「さいなら!」
 そして長屋の如く続く五階建てのアパートからリュックはおもむろに飛び降りた!
 すると聞き覚えのある声が悲鳴を上げる。
 見下ろせば、人狼二人に挟まれた鼎が攻撃を受けていた。
「よそ者のお前らなんかに、おれたちがコケにされてたまるかっ!」
「ううっ! こっちだって……みんなの為に負けられない!」
「残念だけど貴方は私たちに勝てないわ」
「勝ちたいんじゃないもん……!」
 出発前に遙が言っていた。「ネジが抜けたら友達になりたいね」と。
 鼎も同じ想いでいた。おそらく皆も――だから。
「マリーズ、一気にカタをつけよう!」
「分かったわ!」
 二人同時に魔狼のオーラを纏い剣を振り被った。
 鼎は防御の姿勢で待ち構える。

「――!!」

「ウッ……なんだこの声!?」
 反戦歌がきこえると同時に二人の剣は切れ味を失っていた。
「メアちゃん♪」
 裏路地へ着地した芽亜が立っていた。少し足を引きずっている。
「げーっ、飛び降りたのかよ……!」
「銀誓館……侮れないわね」
「ええいっ!」
 鼎のハンマーがリュックの腹を打つ。怯んだ隙に背後へ回って人狼を挟み込んだ。
「大人しくお縄に付いて頂きましょうか」
 芽亜を中心に上空から暗黒の塊が降り注いで人狼を眠りに落とし、白馬が疾走した。
「……うッ、くそぉ!」
 リュックとマリーズは力一杯剣を振り回すが、能力者たちに効いた様子が無い。
 その間に人狼らは追い詰められて、とうとう力尽きた。
「ちくしょお……」
「敵の手にかかる位ならいっそ……!!」
 マリーズは自害を試みた。しかし芽亜と鼎は彼女を抱き押さえて止めさせる。
「待って! ……ちがうの!」
「しばらくの間、じっとしてて頂くだけですわ。命まで取るつもりはありませんの」
 こうしてやっと二人の身柄を確保した。

●決闘
 片や、広大な墓地に到着した一行。
「ここまで来た以上、命乞いは通用しないぞ」
「文字通り此処がお前等の墓場だな!」
 ロイクたちは剣を抜いた。
「さて、お手並み拝見と行こうか」
 レイたちも起動する。
「いざ!」
 一番にロイクへ肉薄する遙を後方からヴィクトルが狙撃する。
 白燐の光に包まれる柚樹へ、シリルが接近。
「シリルだ。正々堂々よろしく、ヤマトナちゃん!」
「やま……?」
 ――ヤマトナ・デシコ。勘違いもいい所である。
 殺機はG合体し、ニコルとロイクの攻撃を受け止める。レイが割って入り、Gスピンで二人を薙ぎ払った。
「ウォオオォアァ……」
 ピエールは魔狼のオーラを纏いながらゆっくりと近付いてくる。
「風の一薙ぎ、避けられますか?」
 遙は跳躍してクルリと舞い、薙ぎ払う様に蹴りを叩き込む。
「この炎の一撃を、受けてみなさい!」
 目の前でチャラチャラしているシリル目掛けて柚樹は紅蓮撃を叩き込んだ。
「ウォフ〜♪ そそるねぇ。もっとオレをノせてくれよ!」
 シリルに闘志が漲る。
「なら、こういうのはどう? それともこういう時はノリが悪い人?」
 ギターを掻き鳴らして挑発的にイェルはDユニバースを披露。クールな装いでくねる肩や腰付きにシリルは目を奪われる。
「バカな男」
「馬鹿が。遊び過ぎだ」
 ヴィクトルがライフルを構える。
 殺機の倍加された雑霊弾でロイクの体力を大きく削り取る。
「シェフ!?」
「……慌てる事はない。確実に仕留めるぞ!」
 ロイク、ニコルの二段攻撃。レイはGスピンで迎え撃つ。――互いに攻撃が命中し、双方共に仰け反る。
「くっ!」
 ――そこへ氷の牙を振り翳してピエールが突進!!
「ヌゥオオァアッ!!」
 具現化した氷まで弾け飛ぶ勢いで剣がレイの肩口にのめり込んだ。
 レイが苦痛に声を漏らす。
「噛み千切れ、スコル……吼え猛れ、ハティ……!」
 フェンリルは低く構え、
「特大の火の弾、ぷれぜんと」
 魔弾を放った。
 炎に包まれるロイク。――魔炎が蝕み、ロイクは倒れた。
 次の矛先をシリルに向け、遙は蹴りを繰り出す。
「ぬグッ! モテる男はつらいぜ……!」
 相変わらず口の減らない調子者へ、統夜が追撃。
「おいッ、野郎は来ンな!」
「少しはその忙しい口を、閉じなさい!」
「………」
 柚樹の宝剣を受け止め、シリルは白い歯を剥いてわらう。スパッと払われた胴部に赤い血が染まる。
 すぐにイェルによって回復が施された。
 ニコル、ピエールの時間差攻撃。レイは切り札のアンチェインエアを発動。
「おおおぉぉっ!!」
 ヴィクトルのクロストリガーが遙に命中。しかし構わずに跳ぶ。
 遙と柚樹の挟撃がシリルを討った。
「へっ……ダメだこりゃ」
「チッ。シェフに続いてシリルまで……」
「キャッ!!」
 殺機の雑霊弾にニコルが悲鳴を上げる。ニコルを庇ってピエールが前に躍り出た。猛獣の様な雄叫びをあげて殺機を攻撃。弾かれたC・ワンダラーが殺機の後釜を担って果敢に挑む。
 風を纏ったレイのGスピンがニコルを追い詰め、フェンリルの炎弾に倒れた。
「ニコル!!!」
 ピエールの太い声が墓場を震わす。レイを拳で薙ぎ払い、フェンリルに突進する。
「流石誇り高き人狼騎士……私も負けてられないな!」
 最後の追い込みに向けて遙は膂力を蓄える。ヴィクトルの執拗な狙撃を避けながら先ずはピエールに集中する。
 僅かながら統夜の注ぐ猛毒も効き始め、巨体が揺らぐ。
 柚樹はレイへ奏甲を施し、イェルのギターが火を噴いた。舌打ち混じりにヴィクトルがトリガを引く。レイとフェンリル、そして遙の連続攻撃にピエールも倒れた。
「シェフ……ニコル……すまん。逃げろヴィクトル、いくらお前でも、一人では……」
 サングラス男の背後にゆらゆらと魔狼のオーラが立ち上ぼる。
「貴様ら、よくもオレの愛しい仲間達を……」
 ヴィクトルはライフルを放棄して双剣を抜いた。統夜のDハンドをかわすとフェンリルへ一気に間合いを詰めて氷の刃で仕留める。
「速い……!!」
 おそらくは七人中最強。
 ヴィクトルは能力者の猛攻にも怯むことなく突き進み、全ての力を攻撃に注いだ。
 勝つ為ではない。仲間と共に玉砕する為に――。

 *

「……花見、するなら……銀誓館に来ると、いいと思う」
 連行されてゆく人狼へ、フェンリルは呟いた。
 日本の桜は綺麗だから。
 言った後、それは伝えたい事と少し違うと気付く。
「……友達は、たくさんいた方が……いいから」
「皆でお待ちしていますよ!」
「ノリのいい連中はまあキライじゃないし」
 遙やイェルも、再会を願う言葉を投げ掛けた。
「………」
 相手は固く口を閉ざしたまま過ぎ去った。
「何れ彼らとも分かり合える時が来る」
 統夜はそう零して、人狼騎士たちの背中を見送った。


マスター:楠司志雄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/03/17
得票数:カッコいい17 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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