≪銀誓剣術士団SSM≫七魂の墓標


<オープニング>


 ────!!!

 8人が足を踏み入れたのは、朝露が煌く山奥の合間だった。
 少しだけ開けた場所を見つけた小鳥遊・桐音(御伽草子・b53243)が休憩しようと仲間に声を掛けた刹那、只ならぬ気配に身の毛が総立つ。
「何かいるわね……」
 しっとりとした空気と濃厚な森の香りに混じるのは人の気配ではない。
 その明確なまでの殺意は、この山奥に来た理由すら、忘れてしまう程で……。
「皆さん、気をつけて下さい!」
 メモリア・フォルゴーレ(追想の蒼雷・b77665)の警告に即座に起動する能力者達。
 同時に。武者鎧を着た7人の亡者が8人の前に降り立った。
「地縛霊か!」
「おそらく、戦乱の時代に没した傭兵集団の成れの果てだと思いますが……」
 その足や腕に絡まるのは、怨嗟という名に縛られた鎖。
 宮城野・澄雪(人生送りバント・b76467)と氷川・小雪(薄氷白符・b46013)の背に汗が滲む。
「俺達と互角……それ以上か」
 桂木・司狼(緋色の裁定者・b34341)の呟きが、張り詰めた空気に溶ける。
 それぞれ刀や槍で武装しており、何れも手練であることは、眼に見えて明らかで……。
 ──その時。
『我の名は、島・又七(しま・またしち)。汝らは我等の死合に相応しき存在で在るか』
 7人の中で、最も精悍で勇猛そうな武者が名乗りをあげる。
 彼等から何かを感じたのだろう、風間・雷(シルバーライトニング・b61308)が一歩前に出て声を張り上げた。
「私達は『銀誓剣術士団SSM』、その強さに相応しいことを証明してみせましょう!」
 同時に。その手の詠唱兵器の切先を己に近い敵に真っ直ぐ向ける能力者達。
 彼等の気迫に満足したのだろう、島・又七の低い声が洩れるともに、その身に巻き付いた鎖が乾いた音を鳴らす。
『汝らの手前に立つのは「轟・五狼(とどろき・ごろう)」「剣村・六蔵(つるぎむら・ろくぞう)」「里見・三葉(さとみ・さんよう)」。何れも死も恐れぬ猛者なり』
 低く響く声に応えるかのように腰を落とし、鯉口を切る3体の武者達。
 何れも力強く、研ぎ澄まされた太刀のよう。
『我の両脇に控えるのは「凶・一兵衛(まがつ・いちべえ)」「土屋・久二(つちや・きゅうじ)」「片斬・四平(かたぎり・しへい)」。彼等の切先は我のより速い』
 その言葉に偽りはない。
 傍らで槍を担いでいた武者達も、何時の間にか鋭利な穂先を能力者達に向けていた。
「戦いは避けられないみたいだな」
「相手が近接でガチで挑んでくるなら、あたし達も同じように迎え撃つまでだねっ」
 その殺意に臆する者は、此処にはいない。
 気だるげに呟いた守御・斬人(護天の龍華・b71491)の瞳には既に闘志が宿っており、冬城・ちか子(疾風旋律駆け巡る空色娘・b76885)も強く唇を結び、真っ直ぐ前を見据えていて。

 地縛霊達の未練は只一つ。
 己が力を発揮できず、潰えていった己等を全力で滅ぼしてくれる存在ならば──。

「「いざ、尋常に──」」
『『──勝負せんッ!』』

 両者が強く地を蹴った瞬間、刃と刃が朝露に包まれた山間に響き渡る。
 此処に。死闘の幕が一つ、斬って落とされた。

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参加者
桂木・司狼(緋色の裁定者・b34341)
氷川・小雪(薄氷白符・b46013)
小鳥遊・桐音(御伽草子・b53243)
風間・雷(シルバーライトニング・b61308)
守御・斬人(護天の龍華・b71491)
宮城野・澄雪(人生送りバント・b76467)
冬城・ちか子(疾風旋律空色娘・b76885)
メモリア・フォルゴーレ(追想の蒼雷・b77665)



<リプレイ>

●七の剣、八の魂
「又七さんには小雪さん、斬人さんのツーマンセルで対応して下さい。後は任せます!」
 風間・雷(シルバーライトニング・b61308)の一言で素早く散開する団員達。
 中でも、冬城・ちか子(疾風旋律空色娘・b76885)は誰よりも速く駆け出していた。
「あたしの名前はちか子だよっ。……女忍者さんで通じるかなぁ」
 名乗る必要はないと思いながらも、ちか子は自分に近い槍兵の懐に素早く潜り込むと、練り上げた水練の力を叩き込む。
『隠(なばり)の者と刃を交わすのも、本望である』
 槍の柄で水撃を受け止めた槍兵は狂気じみた笑みを浮かべ、凶・一兵衛と名乗った。
 その気迫にちか子は息を飲みながらも、反撃に備えて両手のナイフを交差させる。

『御主、面白い獲物を持ってるな』
「いいだろ? 毒とか炎とか氷とかもついてくるニクい奴なんだぜ」
 両手の詠唱兵器を注視された宮城野・澄雪(人生送りバント・b76467)は思わず笑みを浮かべてしまうものの、直ぐに真剣な眼差しを眼前の槍兵に返す。
 8人の中で一番未熟なのは自分であるのは、分かっている。
 力を使いきるどころか、その前に倒されるかも知れない……それでも!
「正々堂々と死合開始だ!」
 澄雪はペンを握り締めた拳に螺旋状のプログラムを纏わせると、惜しみなく土屋・久二と名乗った槍兵にぶつけていく。

「戦場に立つ一人の騎士として、貴公の御相手を勤めさせて頂きます!」
 長柄の得物同士の勝負となったのは、メモリア・フォルゴーレ(追想の蒼雷・b77665)と槍兵の1人である片斬・四平。
 黒曜の輝きを秘めた轟槍で四平の攻撃を強引に弾き逸らしたメモリアは、更に内側に踏み込んで行こうとする、が。
『些か強引でござろう』
 大きく旋回するように振われた一閃を四平は槍の穂先で巧みに操って捌いてみせる。
「元より力量で劣る身なれば、死線の一つも潜れずに貴公と戦う事も……戦友の皆さんと肩を並べる事も、如何して出来ましょうか!」
 非力と嗤うなら笑うがいい。
 されど、己は欧州血族の末裔。それを赦しはしないとメモリアは前を見据える。
「侮られるならば御覚悟を」
 刃に怯え、力に慄きながらも、亡き一族の誇りのため。そして、仲間のために――。

『儂の相手は貴殿か』
 己を射抜くように見据える小鳥遊・桐音(御伽草子・b53243)に、里見・三葉と名乗った刀兵は静かに切先を向ける。
 その刹那。放たれた矢の如く一気に距離を詰めた桐音はガンナイフを三葉に見舞った。
「私の名は桐音。鷹の最後の姫。私に斬られる誉れをもって黄泉路につきなさい」
 初手を受け止められた桐音は微笑を浮かべて名乗り上げるが、その手元では激しい鍔迫り合いが繰り広げられていて。
「根の国までは、我が二振りの愛刀が案内しましょう」
 一足一刀の間合いで立ち回る桐音に三葉も力強い猛攻で斬り返す。
 毒なる刃を紙一重で避けた桐音は更に半歩踏み込み、舞うように斬り込んでいく。

「名前に狼の文字を刻む者同士、どちらの牙がより鋭いか試させて貰おう」
 仲間の邪魔にならぬよう、少し離れた場所で刀兵と対するは、桂木・司狼(緋色の裁定者・b34341)。
『某(それがし)の名は轟・五狼。某と同じ名を刻む者、その名を問いたい』
「姓は桂木、名は司狼。生憎と剣士ではなく、忍の技を主とする身だが――参る」
 心ゆくまで死合えるよう力を尽くさんとする司狼に五狼は重く鈍い斬撃で応戦する。
 闇色の装束に奔らんとする漆黒から司狼は距離を取るものの、互いの視線は激しく火花を散らしていた。

『先程の指示から察するに、手前が主格か!』
「首領格に複数で当るのは、指揮系統を働かせないための常套手段ですよ」
 刀兵と互角の戦いを交わしていた雷は口元に笑みを浮かべるが、その瞳は鋭い。
 主格である又七に団員を2人を当て、残る6人で1対1の戦いを行う作戦は成功したとも言えるが、何れも手練れであるのは間違いない。
「紫電一閃。銀誓剣術士団 SILVER SWORD MASTERS、推して参ります!」
『ならばその首、この剣村・六蔵が取って見せようぞ!』

 ――島・又七。
 そう名乗った武士に刃を向けていたのは、氷川・小雪(薄氷白符・b46013)と守御・斬人(護天の龍華・b71491)。
「銀誓剣術士団SSMが一人、薙刀使いの氷川小雪――参ります」
 武人の作法を解さぬ身なれど、せめて死合の望みだけは叶えてあげたい。
 初手は尋常に。という小雪の意を察した斬人が見守るように少しだけ下がった、刹那。
『いざ、尋常に勝負せん!』
 今世に留まる程に戦いに拘った亡霊の力量とは、如何なものか。
 斬人が見守る中、至近距離で氷と漆黒が弾け、切迫した両者は後方に飛び引く。
「流石、ですね」
 又七の肩が魔氷に覆われると同時に、小雪の銀髪の先がはらりと宙に舞う。
「折角だ……龍華双天流、刻んで逝け」
 斬人も鯉口を切るや否や、宝刀の先に纏わせた螺旋状のプログラムで又七を狙い撃つ。
『汝の名を、まだ聞いておらんな』
「何者であるかは問わん。如何な場であれ、この剣にかげりは皆無と知れ」
 螺旋を帯びた一刀はしかし、半歩踏み込みが足りない。
 刀を横にして捌いでみせた又七を、反撃に備えた斬人が鋭く見据える。
「一対一をお望みでしたら申し訳ありません。ですが、この身は未来を望む生者ですので」
 力比べは初手の一手のみ。
 後は勝利の為に全力を尽くさんと薙刀を構え直す小雪に又七は『構わぬ』と告げる。
『乱戦もまた、戦に身を置く者の定めが故』
 ――それ故に。
『汝等を地に伏す事が出来れば、更なる高みに繋がらん』
 低く響く声に交じるのは、圧倒的な強さ。
 その気迫に唇をきつく結ぶ小雪。薙刀の房飾りが流麗な線を描いた。

●血と刃の応酬
 一方、既に決着がついた者もいる。
「……我が母様の教えに在ります」
 槍使いには槍使いゆえの矜持や戦い方がある。それを逆手に取ったメモリアは至近距離まで肉薄すると、四平の懐に潜り込むように体を深く沈みこませたのだ。
『っ!』
 相手を見失い、行き場のない槍先が彷徨った瞬間、メモリアは拳を強く握る。
「例え剣砕け、業尽きようと……戦う意志は失うなと! 己の誇りは砕かせるな、と!」
 そのまま四平の横腹目掛けて守護精霊の力を込めた掌撃を見舞うメモリア。
 四平は身を捻って攻撃を避けようとするが、間に合わない!
「穿ち貫け、轟雷の一矢!」
 渾身の一撃の前に四平の体が折れ曲がり、そして崩れ落ちる。
 軽く呼吸を整えたメモリアは仲間を助けるべく踵を返したのだった。

『浅い攻撃よの』
 漆黒のマントを翻しながら叩き込まれる桐音の斬撃を、三葉は刀を横にして受け流す。
 初手からほぼ同じ軌道の攻撃が三度。
 けれど、そのリズムを意識させるこそ、桐音の狙いだ。
「言いましたよね、根の国まで案内しますと」
 眼前に突き出された漆黒を桐音は両手のガンナイフを交差させてしっかり受け止める。
 そのまま押し返すように切先を弾き上げ、態勢を崩した三葉の懐へ滑り込んだ。
「正しい場所にお還りなさい」
 それは、先程とは打って違った華やかな輪舞曲を思わせる流麗な動き。
 虚を突いた崩しに三葉は態勢を整えようと距離をとろうとするが、桐音はその隙を逃さず、二度、三度、舞うように斬り込んでいく。
『貴殿と相見えた事、本望であった……』
 少なくとも数百年……。
 長く長く彷徨い待ち続けた一つの魂に、終焉の輪舞が終わりを告げたのだった。

 堅実に打ち込んでくる久二に澄雪は赤い軸のGペンと亡き友の形見を交差して、漆黒を帯びた穂先を受け止める。
 だが、久二も澄雪の拳を長柄で逸らして見せると、再び漆黒を奔らせた。
『打ち取っ──む?!』
 その身に響くのは鋭くも重い衝撃。しかし、澄雪は倒れない。
「歯ぁ食いしばれ! 見せてやるぜ現代っ子パワーを!」
 拳に秘めた力と武器は『現代』が生み出した、新しきチカラ。
 渾身の力を込めて螺旋を纏った拳を繰り出す澄雪に、久二も真一文字に槍を突き出す。
「『おおおおおおお!」』
 古き力と新しき力が交差し合い、それを制したのは――。
「こんな所で負けてたまっか!」
 肩で荒々しい呼吸を吐く澄雪。崩れ落ちた久二が消えていく。
 けれど、澄雪の足は止まる事なく、息継ぐ間も惜しいというように駆け出す。
 この戦いを乗り越えて、もっともっと強くなるために――。

(「回復が使えないというのは、辛いものがあるな」)
 力強く斬り込んで来る五狼に対して司狼は僅かに身を逸らして避けてみせる。
 ――敵は強い。ならば、受け止めるよりも回避する事に集中して、隙を狙えばいい。
『某の刃に臆したか!』
 五狼の見え透いた挑発にも乗らず、己のペースを保ちながら体の軸一つで上下攻守を意識していた司狼は、徐々に五狼を追い詰めて行く。
 まだ戦が始まってからそう時間は経っていないというのに、静かな山間は血と刃の応酬で激震していた。

●共闘
「周りを見ている隙はありませんね」
 雷は六蔵と交戦しつつ全体を見回さんとするが、少しの隙が命取りになるのは明確で。
 さらに、他の仲間が創意工夫を持って攻撃を仕掛けていたのに対して、ほぼ真っ向勝負で挑んでいた雷の消耗は激しい。
『この勝負、拙者が貰った!』
 勢いよく繰り出される、漆黒の刃。
 それをまともに受けた雷は瞬時に視線を巡らせ、そして……微笑む。
「いえ、私達の勝利です」
 圧倒的不利な状況なのにシニカルな笑みを浮かべる雷。
 それを訝しる六蔵の瞳が数秒後、みるみるうちに驚愕の色を帯びてゆく――。

「あたしの名前ね、本当は歴史の『史』の子でちかこだったんだよ。だからこの戦い、お互い好い歴史になるといいねっ」
『では、拙者もこの時を史にして、全てを賭すとしよう』
 一兵衛の鋭利な槍の穂先を両手のナイフを交差して受け止めたちか子は、そのまま三日月の斬撃を叩き込む。
 だが、一兵衛も手練の戦士。返された穂先がちか子の肩口を裂き、傷口を毒が蝕む。
「まだまだー……諦めないよっ!」
 しかし、ちか子は倒れない。
 戦闘不能になるまで戦うのは他の仲間の足枷になってしまうだろう。
 徐々に毒で蝕まれていく身に危険を感じたちか子が咄嗟に声を上げた、その時。
「加勢するわ」
 一兵衛の穂先が繰り出される前に其の動きを制したのは、桐音。
 ――刹那。反撃とばかりにちか子が叩き込んだ水撃が一兵衛の鳩尾を捉えたのだった。

 軽く身を捻るようにして打ち振われた司狼の刀を五狼が力強い太刀捌きで阻む。
 刃と刃が拮抗して上半身の動きが止まった瞬間を、司狼は逃さなかった。
「――今だ!」
 攻勢に転じた司狼が素早い連続蹴りを繰り出せば、五狼も刀を横にして迎え撃つ。
 返す刃の如く振われた横薙ぎの一閃を司狼は身を深く沈めてかわすと、五狼よりも更に踏み込んで懐に潜り込む。
『御見事……!』
 無防備となった脇腹に叩き込まれる水撃に五狼の体が何度も揺れる。
 前のめりに倒れ伏す五狼。彼が再び刀を振う事は、もう無い――。

『むむ……!』
 先程まで圧倒的に優勢に進めていた六蔵が、今は窮地に陥っていて。
「私は一応、弱々のダメダメと言えど団長さんですから」
 これも『人徳』だとにっこり微笑む雷の横には、メモリアと澄雪。
 2人は決して軽くない傷を負っていたものの、気負う様子は欠片もない。
「ただ穿ち貫くのみです、――雷速剣舞!」
「敵さん手強いし、油断せずに行こうぜ」
 同時に。勘弁してくれと言わんばかりの六蔵の視線が3人に注がれる、けれど。
「これもまた、正々堂々の団体戦です。お覚悟を」
 言い訳無用の、3対1。
 雷は二刀の長剣に偉大なる守護精霊の力を宿すと、2人の攻撃に合わせて跳躍する。
 多勢に無勢となった六蔵は為す術なく、散りに散ったのだった。

●死闘
 雷、メモリア、澄雪が六蔵と交戦していた頃。
 主格である又七と刃を交わしていた小雪と斬人の闘いも、雌雄を決しようとしていた。
「俺を放っておいて良いのか?」
 疲労の意を濃くした小雪が下がると同時に、庇うように飛び出したのは斬人。
 仲間の闘いの邪魔をせず、また邪魔をされないように立ち回っていた2人も、今は呼吸を合わせて又七との決戦に集中する事が出来ていて。
 しかし、又七も只黙って2人と刃を交えていたわけでは――ない。
『我、汝の隙を見出したり!』
 又七は半歩大きく踏み込むと漆黒を纏わせた刀を振り下ろす。
 渾身の力で振り下ろされた一刀が白と青で彩られた装束を朱色に染め、その身を蝕む猛毒の息苦しさに斬人は体を折り曲げる。
 小雪の消耗も激しかったが、防具との相性が悪かった斬人の傷は計り知れない。
「手出し、無用です」
 ――願わくば、己が倒れる寸前まで。
 背に仲間の気配を感じた小雪は荒い息を吐きながらも真っ直ぐ又七を見据える。
 2人の消耗も激しいが、又七の動きもまた鈍くなっている。
「今は2人を信じよう」
 その意を察した司狼が頷き、駆けつけた5人も黙って死闘を見据える。
 次が、両者にとって、最後の攻撃になるだろう。
「行くぞ――衝龍」 
 螺旋状のプログラムを纏わせた斬人の切先が又七に真っ直ぐ突き進むと同時に小雪が動く。凍てつく息吹を帯びた指先が、又七の漆黒の斬撃が交差し合い――。
「わたくし達は、又七様の最期のお相手に相応しかったですか?」
 青色の瞳で、今まさに消え行く己を見つめる小雪に、又七は答える。
 ――然り、と。

●七魂の墓標
「何も残っていないな」
 せめて、武器の1つだけでもと、周囲を見回した澄雪は溜息を零す。
 静寂に満ちた山間は風に撫でられた木々がさらさらと囁くだけで、彼等の痕跡は無く。
「悔いなく逝ってくれたかなあ……」
 自分達ができるのは、それくらいだから。
 そう、ぽつりと呟いたちか子に桐音が頷き、雷も微笑む。
「彼等の想いが私達に届いたように、私達の想いも、きっと届いたと思いますよ」
 全力で交わした刃の重みが、そして、身に刻まれた傷跡が全てを証明している。
「目指す高みには、まだまだ遠いな」
 軽く黙祷を捧げた司狼は七つの魂に感謝を籠めるように、白塗りの刀を鞘に納める。
「俺達にできる事は、唯、只管に刃を磨き上げるのみ、か」
 斬人は装飾の一切を排した己の戦刀に視線を移す。
 守御は守護者。宝刀の封を解いた今、勝敗は戦の常、などと言ってはいられないから。
「私達は、貴公等の名を忘れません」
 その峻烈たる武の極地、何時かその場所に届くよう、鍛練を積み重ねていこう。
 瞑目し、気高き戦人達の冥福を祈るメモリア。小雪もそっと瞼を閉じる。
「いつの日か、必ず又七様のいた高みまで辿り着く事を誓います」
 日頃の鍛錬より遙かに貴重な経験をさせて貰った事への感謝を込めて――。

 己が力を存分に発揮した七魂の未練は、此処に潰える。
 そして、その志と強さは未来を望む八つの魂に受け継がれて行く事だろう。


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/04/18
得票数:カッコいい22 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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