春探し、香り茶 ―山桜の下で―


<オープニング>


「……で、今年はどこがいい? 兄様と一緒に」
 不意打ちの問いに、詩条・美春(兄様といっしょ・bn0007)の烏羽色の瞳がきょとりとまたたいた。
 脈絡もなく思いつくまま口にする星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)との付き合いも長くはあるがやはり戸惑いはあがるわけで。
「ええっと…………」
 手元の薔薇をあしらった紅茶で喉を潤しながらしばし考えた後で、少女は去年みんなで祝ってもらった誕生日を思いだす。
「あ、去年はありがとうございました」
 深々と頭を垂れる少女に「で? なにがいい?」と重なる問い。
「おめぇは、もうちっと会話のテンポ読むべっちゃ」
 すぱんと藍髪を軽くはたき、鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)は穏やかな眼差しで美春に微笑みかける。
 そんな彼女が手にしているのは透明ポット。
 香ばし色に染まりゆく茶の中、菊の黄色と金平糖がふわりふわ、愛らしく彩りを添える。
 一方で千鳥が緑茶に塩漬け桜の塩を払いおとし泳がせれば、湯のみの中に春が宿った。
「……お花のお茶を飲みながら、桜を見に行けると素敵ですね」
 口をついてでた台詞に、目の前の年上の友人2人は顔を見合し「じゃ、それで」と即答した。
 山奥の広いロッジを借りて、様々な茶葉と花、その他茶を飾るものを持ち寄り、世界にたったひとつしかないお茶を紡ぎあげよう。

 お化粧なしの茶葉は、緑茶、ほうじ茶、紅茶、中国茶。飾るのはあなただ。

 例えば花なら――。
 香り身目ともに華やかな、バラ。
 楚々とした、キク。
 鮮やかさが元気をくれる、マリーゴールドにハイビスカス。
 もちろん、サクラ。
 心安らぐ香りの、ラベンダー。
 などなど。
 香ばしさを添える、玄米、黒豆、味なしポップコーン、白胡麻、黒胡麻。
 果実の華やぎ、リンゴ、苺、マンゴー、オレンジ、みかん、柚、かぼす、桃。
 甘さはほんのり、砂糖(和三盆、黒糖、三温糖、きび砂糖)、金平糖、アザラン。
 趣旨に沿っているのであれば、それ以外の持ち込みも歓迎だ。

 何度も試飲しながら作り上げるのは、どこか実験に似ているかもしれない。
 もちろん感覚だけで作るのだって楽しいに違いない、口にした時あなたに幸せな驚きをもたらすことだろう。
 ロッジの回りには山桜が咲いている。
 肌寒い中、薄紅に春を感じればきっと身も心もあたたかくなるだろう。
 ロッジには能力者以外が訪れることはないので、使役ゴーストさんも一緒に気兼ねなく楽しめる。
 美春を知らない人でも遠慮せずに遊びに来てほしい。
 親しい人と内々に、仲間でわいわい……過ごし方は全てあなたに委ねられているのだから。 

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参加者
NPC:詩条・美春(兄様といっしょ・bn0007)




<リプレイ>


 花冷え。
 春が遅い今年、さらに山の中とくれば寒さもひとしお。
 ければ山桜のトンネルの奥にぽつりとあるログハウスは優しく聞いた空調が暖かく皆を迎えてくれた。
 まずつんと、木の香り。
 続けてふわり、茶葉の香り。
 遅れてくるのが華やかで微かな花の香り。

「いらっしゃいませ」
 嬉しそうに頭を下げたのは部屋を暖め待っていた黒髪の少女だった。
 そんな少女に差し出されたのは甘い甘い香りのブーケ。
「お誕生日おめでとうございます」
『おめでとうございます』
 チョコブーケを差し出す克己と白板を手にお辞儀の乙姫に驚き、美春は目を丸くする。
「おめでとう、美春ちゃん」
「良い1年になるとええな!」
 ポニーテールを揺らし沙希とウルスラも顔を出す。
「今年もお祝い出来て嬉しいな」
「おめでとさんっ」
 未都と緋邑も手放しの笑顔で。
「ありがとうございます」
 そんな様を見守る椿にいつも通りのうきうき声。
「素敵なロッジですね♪」
 ジングルはじめ天体観測同盟の面々に破顔し輪に。
「ながらはお行儀が悪いのですが」
 キッシュ囓る靜の指でゆれる焙烙の中、黒豆達が踊る。
「きっしゅか? 同盟で覚えたべ」
 勧められつまむ千破屋の橙は皆の手元へ。
「千破屋は作らないのか?」
 几帳面に緑茶を計るジャックに、去年作った時大好きを詰め込んだからと思案顔。
「うわぁ、めんこい花だべ」
 黄と赤の花が連なり綻ぶ、千日双花。ヴァイスは自分らしく仕上げるには、と問うた。
「石榴はどうだべ?」
 石榴のように華やかな髪の崇之に寄ってきたのは千鳥だ。
「超久し振り! 元気にしてた?」
「ん。シンディさんも元気そう、また会えて嬉しい」
 自信ねぇけどと差し出されたのは桜が香る緑茶。
「これはいい、春」
「じゃあ美春にも、ハピバ☆」
 朱色巾着2つを掌に。
「1年前のデートを思い出すなぁ♪」
 桃が似合わないと笑うなと照れるジャックに微笑みジングルは瑠璃色の花を散らす。
「その花は?」
 チハヤの花とは答えず内緒とはにかみサンタ。
「できたでー」
 落栗の海泳ぐ沈丁花、ちらちら金平糖。
 香ばしき靜の穀物番茶。
 揃いつつある香茶に、崇之は一句。

『久遠より苦楽暗くも茶に浮かべ干して仕舞うは良き慣しよ』

 同じく言葉紡ぎ手ジャックが目を細めた。
「嫌な事は飲み干しちまう、か…いいもんだな」
「そうだな」
「桜が見えるのですね」
 ヴァイスと靜が小窓示せば、控えめに覗く薄紅。
 笑み絶やさず椿達を手伝うジングル通し見た桜、千破屋の悩み顔がすっぱり晴れた。

 ――俺はね、皆と、貴方のいる春が、好き。

 好きを形にと、指先が茶葉に伸びた。

「香ばしい感じにしたいんやけど」
 細めの瞳を瞬かせ久遠は豪快にほうじ茶の葉を入れた。
「多いと苦くなっちゃうよ」
 リーベンデイツは靜から分けてもらえた白胡麻と玄米を置く。
「ええ香りやなぁ…リーベちゃんはどんな感じなん?」
「桃を入れようかな」
 緑白の葉に桃の果実を抱かせて湯を注ぐ。
「金平糖合いそうやね」
「いいね♪」
 ころんと星ふたつ、交換すれば笑み浮かぶ。
 初めてのデート…雪花兄様をまともに見れません。
「香りが柚子で甘みはオレンジなんだよ」
 懸命に好みを問う声に頷きカクテルフルーツを飾り切り。蜂蜜絡めシャリマティの予定。湯が沸く間も紅茶の手ほどきを。
「うん。美味しいよ」
 苺を潰さぬ淡い味、苺のように頬染める夕菜が愛しくて思わず抱き寄せキスを。
 黙りこくり、でも袖をつかむ指が嬉しいと物語る。
「イェルバマテ茶は緑茶を思いっきり渋くした感じらしいぜ」
「いえるば! 待て!」
 五十鈴の張りある声に空気が凍り付く、師匠は一瞬手を止めるがすぐ梅と昆布とミントを置く作業に戻る。
 鷹男はマイペースにドザーに緑茶を掬いほうじ茶を掬い紅茶、中国茶も…皆、混ぜた。
「砂糖を入れずにチャレンジだ!」
 三者三様、どんなお茶が出てくるのやら。
「まっず!」
 暁は茶葉が多すぎたらしい。
「うへ、なんか渋くてスースーしてまろやかで言い表せなーい!」
 眉を顰める五十鈴。小首を傾げる師匠、評価は微妙。
「意外と美味しいものだな」
 茶葉を欲張らなかったのが功を奏したのか、鷹男は茶請けの最中と共に勧めた。

 ふわふわ。
 ログハウス内に桜の花びらが降るように、涼太の袖が行き来する。
 お皿の茉莉仙桃は、二度の別れを経験してもなお穏やかであたたかな幸子さんから…やはり馴染むのは淡い白茶。
「自信作ですよ」
「とても柔らかですね」
 美春に向けて二度は出来ないけれどと照れ笑い。
『苦い?』
 乙姫の白板に頷く克乙の隣、透明ポットに湯を注ぐ未都。くすみ色の果実は龍眼、その他珍しい果実に感心する美春に瞳細め。
「具材は食べる事も出来るから、無駄がないよ」
「宝物が一杯ですね」
 氷砂糖が溶け透明ベールをかけ始めれば、出来上がり。
「これからも健やかに、願いを込めて」
 飲みやすい口当たりに舌鼓。
「あ、桜餅」
「だって好きなんだもん」
 姉妹のように仲良しの2人は同じ桜の和三盆。
 美咲は紅茶、美春は緑茶。
 底の花に目を奪われいたらプレゼント。
「遅くなってごめんねー、おめでとー」
 フリージアとスノーフレークのバレッタが黒糸の上で花開く。

「リラックスするとしたら、何がいいかな?」
「華やいだ気持ちになれるコト、請け合い」
 沙希のリボンに似た薔薇、更に香り控えめ干しブドウ。
(いつも本当に私達の為にがんばってくれてありがとうね)
「和むね、ラベンダー」
 緩む紅にお礼は伝わったかなと1人ごつ。
「やっぱサクラをいれるのは絶対」
 桃と金平糖、桜をふんだんに。
「どうだ?」
「彼女、喜びそ」
「最近バカップル過ぎた。すまん」
 頬をぽりぽりにくくっと笑う。
「嫉妬深いよ、ボクの恋人。閻魔帳書き書き…てのろければ、おあいこ?」
「…な脳内恋人が実は実在」
「周りで殺人」
 やはり推理話がお似合い。
「準備が整いましたよ」
 マサトの背では龍麻と椿が最後の机を運び出している。更にその奥では大切な友人に囲まれ寿ぐ少女の姿。


 赤茶の衣を連れほのり色づく山桜。
 一斉に花開く街中のソメイヨシノとはまた違った趣があり、皆の目を楽しませてくれる。

「お祝いにひと席受けて下さいな」
「喜んで」
 琴音からは素のままの高山烏龍茶と…華やかな花茶菓子。
「あ…」
 抹茶の花寒天を噛みしめたとたん零れる蜜に驚く、狙い通りと悪戯っぽく破顔。
「美しき春の誕生に、私からは桜の花を。末永く新たに巡り、咲き誇りますように」
 春が綻ぶ。お礼と共に。
「美春はどんなお茶を作ったの?」
「由衣さん、飲んでもらえますか?」
 兄様から保温ポットを受け取り淹れる傍らに、由衣は桜茶をそっと置く。
 和三盆の甘さが柔和な笑みを呼ぶ。
 華やかさと僅かな塩味の桜茶が、由衣さんのようですねとは美春。
「おめでとう、また一緒に春が過ごせて嬉しいわ」
「美春、おめでとう」
 暈人が振る舞うのは鬼饅頭。サクラソウの水色と合う芋の黄金。
「綺麗な桜だねぇ」
 由衣の桜餅の隣、龍麻からは愛らしい土筆。
「土筆の砂糖煮だよ!」
 噛みしめればじんわりとした苦みが大人びた味わい。
「風流ですわね」
 明度の高い凍頂烏龍茶の中、薔薇と金平糖が揺れるポットを手に現れた芽亜は切りそろえた髪を揺らす。
「クラスでは1年お世話になりました」
「芽亜さんが色々誘ってくださったので、とても楽しく過ごせました」
 ソフトボール大会、学園祭打ち上げ…指折り数え改めてのありがとうが零れた。芽亜も穏やかに微笑みドーナツを置く。
「おめでとうございます」
 マサトからのハンカチは丁寧な刺繍のクチナシ。馴染む手触りに美春は瞳を細める。
 お茶会も頃合い、暈人は桜を撮りに美春を誘う。
「兄様、お花だらけでお綺麗ですよ」
 枝に指を伸ばしたり、花びらを兄様に降らせたり…と、出会った頃の無邪気さのままに切り取られていく。
「良かったら美春も撮ってみないか?」
 緊張気味で美春はカメラを天に向ける。焼き付けたのは、桜天蓋。

 薄紅世界の元で茶葉専門店『LEAVES』の特別なお茶会です。
「わー」
 山桜も風情があっていいと古杜の足下、桜がくるくるするお茶が冷めるのを待つリヒト。
「良かったら一緒にどうですか?」
 紅樹の声に龍麻が「裏方は任せて行っておいで♪」と椿達の背を押した。
「美春ちゃん、おめでとうー」
 桜シフォンのケーキを切り分けて、輪音は桜の頬で微笑みかける。
「この一年に喜びという花が溢れていますように」
 金平糖つまみ食いのミージュを抱き上げ、幻。
 口々のお祝いに美春はぺこりと頭をさげた。
「本当、色とりどりだなぁ」
 感無量な慎斗の前には、甘納豆とかりんとう。
「よろしければ、一杯いかがですか?」
 暖めた桜色カップに太一郎が注ぐのは甘やかなチャイ。
「可愛らしいカップですね」
 生クリームの泡に抱かれた桜花が可憐だ。
 ぎち。
 直が前足を伸ばし体を傾けおねだり。
「あなたの分もありますから」
 広がる笑顔の中、リヒトがちょんと指でお茶をつつきみゅう、と下を向く。
「熱かった? 大丈夫ですか?」
 紅樹は桜餅のひんやりをリヒトの指先にちょん。
「同じ桜餅でもお味が違うのですね。折角だからお茶も飲み比べませんか?」
 古杜の提案にあがる賛成の声。
「…さすが、お茶屋さん、美味しい」
 これ、お店におかないの? とは千鳥と慎斗。ミージュは慎斗のかりんとうが気に入りさくさく歯を鳴らす。
「本当にいい景色ですね」
「お茶会にはやっぱり桜かなぁって」
 瞳細め、輪音は天蓋の薄紅を仰ぐ。

「贅沢だねー」
 椅子に腰掛け足をぶらぶら、視線は空に。
「ん。おはぎ、いいね。金魚なこの葉も」
 梵天葉、可愛いよねと笑い合う。
「千鳥君はどんなお茶にしたの?」
「淡い白茶にブルーマロウ」
 青花をポットに降らせたらマサトもクッキーを手に合流。
「お立ち会い」
 ガラスカップに蓋を添え淹れたらすぐ閉じる。
「綺麗な青紫ですね」
「…夜明け」
 蓋を開け空気に触れれば赤紫に、驚きの声があがる。

 桜絨毯の上で、仲良く仕上げたお茶を注ぎ刹那と四音の姉妹は胸躍らせる。
「交換♪」
 椀に踊る花びらつつきそよがせて口にする姉をじっと見守る妹。
「あたしの作ったお茶…どうかな?」
「美味しいねぇ♪」
 四音の手元、バラが揺れる。刹那のスコーンに合う、艶やかなお茶に舌鼓。
「とってもおいしいよ♪」
 背中合わせで手をつなぎ見あげれば祝福のようにまた桜が降る。
 大好きだよ♪ はそっくりの気持ち。

 広げた腕の薄紅は、この春違う道に踏み出す2人を抱き祝福する。
「やっぱり桃といると楽しいな♪」
 言葉交わす内に久しぶりの緊張も解けたと、千春。
「桃もね、千春と一緒なの楽しいよ♪」
 スッキリの柚子添えの中国茶。
 春そのものの桜紅茶。
 どちらも素敵と和楽に染まる。
「新たな生活への門出を祝して乾杯ってしない?」
「うん! そうしよっか」
 進む道は違えど共に在りたいと願う。
 ――来年も一緒に桜、見ようね。

 鶯餅を頬張れば沙衣の口元が自然緩む。
「ん、俺好みに仕上がってるぞ」
「良かった」
 ゆるり、想夜も微笑み茶をついだ。
 まだ肌寒いけれど、互いの存在が心も体もあたためてくれる。
「こんな時間が、ずっと続くといいね」
「続けば。じゃない、続けんだ」
 同じ気持ちが嬉しいと素直に言えずの沙衣に、想夜は微笑み頷いた。
 …菓子に花に勝る程、綺麗。
 山桜は長生きなのだという――どうぞ2人の縁も末永く。

『初名草 一番槍と匂い立ち』
 梅の薫り高い茶を手にした青葉の瞳が見開かれた。
 寒さに耐え咲く梅は逆境に負けぬ青葉のようと、鴻之介は句を綴った懐紙を手渡す。
(返歌しなくちゃいけないのかな?)
 ぐるぐるした気持ちを梅香で宥め。
「団子も、旨い。桜も独り占めできたようでよいな」
 椀に浮かんだ花びらに、鴻之介は満足げな笑みを刻む。
「お口にあって良かったです」
 桜を見上げれば「また来年もおいで」と囁くようで…唇に乗せずに心で願う。

 共に過ごした結社『山と海の間』の最後まで賑やかに。
「ぁ、ボクがお茶つぐー!」
 てけてけと行き来する恋人に瞳を細め、晶は「珍しいね」と凪に語りかけた。
「そんなにあたしから誘ったら可笑しいか?」
「もきゅ☆」
 練り切りに真っ先に飛びついたのはゆうのらーくん。
「だって部屋で難しい本ばかり…」
 まぁまと手を振る憂に晶は続きを飲み込んだ。
「みー♪ お外おいしーよね」
 ちっちゃな指でクッキーつまみさくさく、ゆうとらーくん仕草までそっくりだ。
「らー君お菓子零さないの」
「むー、らーくんにばっかり…」
 膨れるゆうを宥める晶、見守る凪にぽつり。
「凪、親心にはまだ早いぞ?」
 チョコクッキー食べさせてと甘える仕草に、照れながらも応える晶。
「アイツ等も卒業で……」
「その台詞は爺臭いぞ?」
 お返し。
「うるさい」
 照れ隠しに緑茶をすすりらー君を撫でくり。

 刻んだ軌跡をいつでも想い出せるように――。
「チョコとか欲しい人いればっ」
 あすかが鞄をひっくり返せば、でるわでるわ…。
「桜饅頭、桜餡が美味しいのよ♪」
 小春の横でお重に詰まった桃色饅頭を配る秋夕。
「えび煎餅で正解だったな」
 クロリスの隣真珠が開けてと差し出す袋を受け取ったのは深槻。
「深槻先輩は結社長のお仕事、お疲れさまでしたなのです」
 ひょこっとお辞儀して桜は桜餅を包みから出す。
「わたしは苺味のマカロンさんです」
 ちるちるは箱一杯のまんまるを見せる。最後を楽しく飾りたいから、笑顔。
 螺旋に揺らぐ林檎の皮に眠気誘われ船こぐ尋の目を覚まさせたのはあすかの元気な声。
「こけ食べてもいいー?」
 ブラウニー指さすわくわくさんに「召し上がれ」と微笑みかえし。
「秋夕、もちもちしてて美味しいね」
「そりゃよかった」
 ほっぺの同じ位置にクリームをつける小春と秋夕を眺め、遙は眼鏡の奥の目を満足げに細める。
 米粉の桜カステラ、日本茶には餅や米の菓子が合うとは弟からの受け売り。
「私も真珠さんをもふもふさせて欲しいです」
「ギューっとはしないでね」
 クリームをいっぱいつけた真珠をクロリスはふきふき、むーたんはお膝。
「はぅ…やっぱりもふは正義…」
 羨ましそうな深槻にも真珠が飛び込んだ。
「花冷えの最中なのに、春って感じがしますね」
 そこら中から立ち上る、桜や果実の甘い湯気に尋は寿ぎゆるりとあくび。
「華やかに締めくくれて俺も嬉しいぜ」
 シーンを携帯カメラで切り取る遙。こんな何気ない瞬間の連続が、実は宝物だった。
「最後まで付いてきてくれてありがとう」
 それぞれの思い出を添えた「ありがとう」に感無量。
 ――皆と会えて良かった。
「同じ気持ちでしたら、嬉しいです」
 ちるちるの台詞が心の声に意図せず繋がり、深槻はますます笑みを深くした。

 長寿の山桜、彼らにとっては瞬きのような一瞬――そんなこの日の笑声と花茶の香を、忘れないで欲しい。
 集いし彼らは忘れはしないから。
 どうかどうか。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:55人
作成日:2011/04/07
得票数:ハートフル19  ロマンティック2  えっち2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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