更紗の誕生日 〜今年も称号を考える会〜


   



<オープニング>


 『あなたの称号考えます』

 御鏡・更紗(白き娘・bn0014)は教室の外にそんな看板を出していた。その彼女の後ろから麦畑・知代子(ブラウニー・bn0137)が資料を持って近づいてきた。
「……今年もこれなのね」
「はい、中々好評でしたから」
 更紗は知代子の荷物を半分預かって空き教室の中に入る。机をいくつかつなげて筆記用具などが用意されていた。
「……それにですね」
 よいしょっ、と荷物を下ろす知代子に更紗が先程の答えに付け加える。
「……今年から色々変わりそうじゃないですか。学生としてだけじゃなくて」
 それは先月の戦いのてんまつの事だろうとすぐに思い至る。
「そうじゃなくても新年度ですし新しい気持ちで一年を始めたいという人もいますし」
「……あなたも?」
 『どうでしょうね?』と更紗は微笑む。
「変わったわよねえ……」
 知代子は苦笑しながら、外に人がいることに気づく。
「来たわよ、お客さん」
「あ、じゃあ通してもらいますか? 一番最初の人以外には自己紹介と希望のペーパーも配っておいてください」
 知代子はその更紗の様子に笑みをこぼしてから言う通りにする。手元を覗けば『「自分に対するイメージ」「好きに・大事にしているもの」「モチーフの希望」等々ご自由にお書きください』と書かれている。
「さてと、それじゃお願いします」
 更紗は一番最初の人物に頭を下げ、目の前の人物から話を聞き始めた。

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参加者
NPC:御鏡・更紗(白き娘・bn0014)




<リプレイ>


「いつもは周りをまきこんだりぃ引っ掻き回す事が多いってよく言われるなあ。モチーフは『嵐』だね!」
 凪は最初に、まさに風の様に現れてさくっと面談を終える。
「『絆の螺旋』って、あ……」
 凪は立ち止まること無く更紗に感謝の言葉を残して去っていってしまった。それこそ嵐のごとく。

「………」
「どうしましたか?」
「いや、なんでもない」
 アリシアは何かを思い出していたのを更紗に問われたが取り敢えず濁しておく。ここで言うわけにはいかないことだし。
「ええと、それでは始めますね」
 アリシアの言葉を聞きながら更紗はじっと考えこむ。英語辞典を色々探して引き出した言葉は。
「『トレードル』ですよね。アクセルを踏むというのと……」
「と?」
「ミシンのイメージですね。本当はそういうものを求めていませんか?」

「うーん……」
「もっとこう……柔らかい、ふわっとした感じ?」
「ふわっととか曖昧なことを言ったら更紗さんが困るでしょ」
「いえ、そう言うのは結構……」
「そうだ! ふわっとしたと言えばこの前食べたロールケーキ! ふわふわクリームですっごいおいしかったんだよ!」
「今はロールケーキの話じゃないでしょ! 称号の話でしょ!」
 ロールケーキを挟みながら(主に食べてるのは遊姫の方)鳴羽姉妹と相談中。
「遊恵さんは今のでいいんでしょうか?」
「今の称号はお気に入りよ?」
 微笑む彼女に更紗は頷いて遊姫に向き直す。
「うーん、ギブアップしてもいいですか?」
「このままじゃ決まらないし、また会う時までに考えておいてくれたら良いよ?」
「すみません、じゃあそれでお願いします」

「言われた事があるのだと……大人っぽくて年の割にはしっかりしてる、とかですね。あとたまに黒いとか、我が強いとか」
「あ、私と同じですね」
「……あと恋愛の事なので、関係ないかもですが「しっかりしてるのに恋愛はピュアだね」とか」
「深く聞きたい所ですが我慢します」
 笑弥にそんな言葉を返しつつ、称号を返す。
「舞城先輩は『手繰る人』です。何かを呼び込むには、足元がしっかりしていないともってかれてしまいますから」

「よ、更紗。久しぶり」
「こちらこそ、久しぶりです」
 ちょうどタイミングで悩んでいたと雪は言う。
「大事にしているもの、ね。絆、あと守りてえモノ。人だったり物だったり誇りだったり。……抱えすぎ注意かなと思ってるトコ」
「そんなこともないと思いますけど。わたしも似たようなものですし、抱えられると思っているうちはきっと大丈夫ですよ」
 更紗はそう返しながら一言で称号を言い表す。
「『ノットロンリー』とかどうでしょう。誰かを守りたいっていうのも一人じゃできないです」

「あの、その、更紗お姉さんみたいな、きれーなお姉さんになるに、どううすればいーですか?」
「えーっと、きれいなんでしょうか」
 更紗はちぃの問いに首を傾げる。
「よくわからないですけど、今の自分がそうならきれいになることにこだわらないことじゃないでしょうか。私は何も考えていませんし」
 そんな事を間に挟みつつ実際の面接を始める。
「わたし、音楽が好きなの。静かすぎるところって落ち着かないでしょ?」
 矢継ぎ早に言葉を紡いでいく彼女に更紗は刻々と首を縦に振って答える。
「おねーさんはどんな音楽を聞くの? わたしはねー、こんなの!」
 ちぃはヘッドホンの片側を出して、更紗に渡す。小さなスピーカーからは軽快なポップスが流れだしてくる。
「あ。称号ですね。『ライフリズム』とか」
 彼女のテンポに巻き込まれていたらしい。

「えっと、私……これといった特徴も無いただの可憐な美少女だけど……、一丁お願いしますほい。さ、ドーンと。なぁに私達の間で遠慮なんていらないワ。さあこい」
「遠慮なんてした記憶が」
 キエラは平常運転、更紗もそれに付き合って平常運転。
「でも、そう、あえて自分をPRしてみるなら、目指せ銀誓館のお笑い一番星とかカオスの海で水泳部かな!」
「はあ」
「でもね、私思うんですよ、それがどんな道であれ理想を追い求める奴ってのは酷く孤独なもんだ、ってね。……ええ、例えば私の場合、美少女という名の浪漫とかね」
「そうですか」
 きらん、と擬音でも付きそうだが更紗はスルー。いつもどおり。
「『美少女主義ロマン派自爆風味』とか全部入れてみました」


 神楽の願いに更紗は答えていた。
「内助の功ですね」
「ご自身は申しておらぬじゃろうが……」
「そうでしょうね、でも先日の活躍は聞いていますよ」
「……?」
 今までの更紗の微笑よりも、何か深いものがあるのを神楽は感じる。だが、それは一瞬の事ですぐに元の笑顔に戻る。
「ええと、直球ですが『狐舞』とかどうでしょう? 両方共古くから信仰の対象ですしね」

「……悪目立ちしてる自覚はあんだわ」
 頬杖を付いたシーナの目付きは更に鋭くなっている。普段の彼なら言わないであろうこともあまり接触のない相手故か。
「目付きも口も悪いせいでロクな印象抱かれねーし、カッコつけて名乗るのもおこがましいかと最近は遠慮がちでな」
「大丈夫ですよ。他人は他人、自分は自分だと思います」
 更紗の言葉にシーナは苦笑いをする。けれどその口元も別の意味のものに変わる。
「……情に流され始めてから、損な役回りも多くてよ。運命の糸がつながる敵はこぞって倒しづらい奴ばっか、それに幸か不幸か多くのものを背負っちまった」
「……はい」
「あいつらのためにも俺は生きなきゃなんねえ。四肢を折られて這い蹲ってでも、銀の雨降る世界で生き抜いてやる。……似合う二つ名、あるかね」
「『拳拳服膺』……意味は自分で調べてもらった方がいいと思います」

「……高貴な胸ってなんだろうな……?」
「それって高貴な祝福って訳じゃないんでしょうか?」
 メイベルと『ノーブルブレスト』の解釈をやりとりする。調子のって称号で遊ぶと大変よくわからない事になる一例である。
「ともあれ、いい加減元に戻したいのだが、せっかくだし新しいネタをとも思う」
 自重しないモードで、とも言われる。
「このモチーフだとかっこ良くにしかなりませんね……」
「そうなのか?」
「難しいんですよ、色々と。……『銀月卿』とかどうでしょう?」

「更紗さんは誕生日おめでとうございまする。この青汁はサービスだから、まず飲んで喉を潤して欲しい。うんいつものお約束なんだすまない」
 青汁を飲んだまま更紗は海の言葉を待つ。
「はてさておいて。この称号とも1年間のお付き合いとなりましたが。めでたく? 卒業もしましたゆえ、また新しいのつけていただこうかと思いましてな。ここは大人っぽくかっこいいのをひとつお願いしてみますかのー。……はいそこ「どこが大人やねん」とか言わない」
 どこが大人やねん……ハッ!?
「そうですねえ、進路は?」
「看護大学ですな」
「じゃあ『爆裂看護師』で」

 そしてその海の弟子であるらみかが更紗の前に座っていた。
「お噂は師匠からお聞きしております! なんでも「くーるびゅーてぃー」だとか。意味はさっぱりわかりませんがなんだかすごいですね!」
「ええと、ありがとうございます」
 よくわからない勢いに更紗は押されていた。珍しい。
「どうして青井先輩を師匠と?」
「悪夢から救い出してもらいました。なので私も師匠みたいに立派な人になりたいと思っています!」
「……」
 適当に相手してやってくれと言われた意味が分かった気がする。
「ええと称号、いいですか? 『ナイトメア適合者ランページ改』です」

「今年もよろしく頼むぜ」
 エルを迎えた更紗は早速話を聞き始める。
「春から大学生だし、心機一転しようかなーと」
 話を挟みつつ、締めの言葉が。
「あとはまァ、自重しないンで御鏡から見た俺のイメージで考えてくれると嬉しいな。格好良い感じで頼む」
「『ペーシェンス』なんてどうでしょう? どっちの意味でも独り言は外せませんよ」

「名前の似てるおねーさん……『が』のないみかみ・さらさです……よろしくお願いします」
「『が』のある御鏡・更紗です。よろしくお願いします」
「今まで称号なしだったから……よろしくです……」
 しばらく悩んだあと彼女は口を開いた。
「『お天気雨』なんてどうでしょう。雰囲気的に何ですけど」

 ノーマは自分の事を説明している。
「いつもはあまり真面目ではなくて、ごまかしたりはぐらかす物言いをするし、話の半分は冗談だけど、いざとなると、特に依頼の時は、常に情熱をもって立ち向かう、じつは熱い男……」
「つまり『ハーフボイルド』ですね!」


「ついに私も高校生! だから、また更紗ちゃんに称号を考えてほしいのっ」
「はい、今年もよろしくおねがいします」
 ぺこり。
「……去年はまだまだ高校生になる自覚が足りなかったんだと思うの。……でも、今年は去年より一年お姉さんだから、きっと堂々と英語で自己紹介だってできる立派な高校生になってる……はず!」
「つまり『上を目指す』んですね。がんばってくださいね、上尾先輩」

「イメージなぁ……」
 舜はゆっくりと自分の事を語り始める。
「あー……俺のこと弄ってくる奴らが多いが、本来は逆で弄るのが好きなんだ。怖い物知らずな奴らが多いよな、ったく」
 更紗は頷きつつも何か思いついた単語を辞書で引き始めた。
「ま、弄られるのも交流の一環だから別に嫌でもないけど……やっぱり弄る側だよな、俺は。ってもうできたのか?」
「両面対応って事で『リバーシブル』っていうのはどうでしょう?」

 尚人の前で更紗はペーパーを読んでいた。
「色々といまさらなので大丈夫ですよ。だいたいのことは分かってますし」
「……なんか不安だが、任せた」
 頭を捻る彼女に尚人は思い出したように手を打つ。
「あ、そうそう。御鏡のために称号を考えてきたんだ。『ダンボールには耳も目もあり』とかどうだ?」
「さすがにこの歳にになってそれはしませんよ」
 微笑みながら更紗は返す。
「じゃあこちらからも。『人智』で。大事なことを分かっていると思いますので」

 小春は妙にそわそわしながら更紗に要望を言う
「ジョブに合う感じで称号を考えて欲しいんだー」
 あれこれと並べられる言葉に更紗は耳を傾け、決まったのか口を開く。
「『獣の術士』ですね。経緯を見れば」
「分かった! じゃあありがとう!」
 挨拶も置き去りにするように彼は教室の外へ走っていった。『銀華布』のカードを残して。

 和泉から更紗はプレゼントを受け取った。
「プレゼントは蓮の髪飾り『パパラチア』です。4月8日の誕生石のパパラチアサファイアからとりました。ま、そのままなんですが」
「ありがとうございますね」
「安直ではありますけど、ちゃんと意味があるんですよ? この石は『出会いの石』です。そして宝石言葉は『光の花』」
「参考にさせてもらいますね」
 色々と贈り物を受け取りながら今度は和泉の言葉を聞く。
「で、僕自身の事だけど。実は今春銀誓館に来たばっかりなんだよね。能力者の義務はおいおいという事にして、まずは魔術をもっと勉強したいかな」
 こくりと頷いて次の言葉を促す。
「好きな人? はギリシア神話のヘカテーだよ。月と魔術と十字路の女神。んー……そんな風に闇に惑う時の微かな標になりたいね」
「分かりました、それじゃ『炎の兆し』とかどうでしょう? 松明を持っていたとも言うそうですし」

「『神出鬼没』の龍麻参上ッ!」
 ポーズを決める龍麻に更紗は拍手する。
「ねえねえ更紗ちゃーん、今年はもっとカッコ良い称号つけてよ〜♪」
「お願いの仕方がカッコ悪いから難しいですね」
「美味しいクッキーもあげちゃうからさー」
「買収するにももっとカッコ良いやり方はあると思いますけどね。『かっこいいかもしれない』とか」
「更紗ちゃんって『天邪鬼ガール』だよね。いっつも素直じゃないんだもの……」
「私は自分に素直なつもりですよ?」

「やっほう、更紗! 久しぶりねえ、元気してた?」
「はい、ソフィアさんも」
「称号はお手柔らかにお願いするわねっ。……とは言っても自分の事を紹介するのって地味に難しいわねえ」
 ソフィアは瞑目してから口を開く。
「……コレは更紗だけに話す、私だけの独白」
 ソフィアの口から語られるそれを、更紗は静かに聴きとげる。
「……だから、これからも戦うわっ。敵がなんであってもね」
「『ノーブルマインド』、これですね。気高いほうです」
 更紗はソフィアを真正面に見て言った。少し息を吐いてソフィアから目線を外し、彼女の手元にある文字列に気付く。そこには『真白キャンバス』と書かれていた。
「……もう真っ白とは言えませんね。私も」

「あ、一応わたしも更紗先輩に称号考えてみますよ♪」
 夏美はそう言ってはたと止まる。
「……『白き娘』って似合ってますよね。『雪割りの花』とか『雪割静』とか凛として咲いてる花のイメージなんですけど」
 悩みまくる夏美に更紗は助け舟を出す。
「前いただいた称号は大事に使ってますよ♪」
「ありがとうございます」
「でもレディの偉い人にはまだまだっぽいです」
「……あ、道の意味のロードのつもりだったんですけど」
 夏美と更紗の間に奇妙な沈黙が降りる。同音異義語って怖いね。気をとりなおして面接を開始する二人。
「好きなもの……、メリスちゃんです! 更紗先輩もです♪ あ、でもでもなつき先輩も好きですし……むむむ?」
 頭から煙でも出そうなくらい悩む。
「『抱えきれないフェイバリット』とか」

「心機一転。わらわもこれを機にいろいろ変わっていくつもりじゃ。例えるなら毒が猛毒になるように」
「はあ」
 テラの言葉に更紗は生返事を返す。
「小学生から能力者をやってきて、今年で中学三年生。今までは勢いや力押しで解決してきたが……やはりこれからも力押しじゃ。より強い毒パワー持ちのわらわになる! ……そんなわけで、強そうな称号を」
「じゃあ『ミドガルズオルム』で。多分強いはずです」
「それじゃわらわからも。サラサ、ハッピーバースディじゃ!」
 テラは『白い微笑をあなたに』と書かれた紙を渡す。
「しろ」
「聞くのは禁止じゃ! イメージじゃからな、これは」

「ええと。自分の事はそんなに、好きじゃない」
 斎はぽつぽつと言葉を紡ぐ。
「けど、私を好きって言って、くれる人の分だけ今は自分の事、好きになろうと思っています」
「私も」
「?」
「私も同じですよ。……『夜の虹』……いつでも虹は出ますけど見上げないと見えません」
 どこか静かな更紗。だが次の瞬間突然鳴り響いたクラッカーの音に更紗は驚く。見回せば複数の人間がそれを持っていた。
「誕生日なんだから、私達からもなにか、渡したくて」
 凪を手伝いながら持ってきたケーキ、添えられているのは『白百合は枯れない』『シルクドール』のカード。
「気に入ってくれたら嬉しいけど」
 斎は彼女の手を引いて準備済みの教室へといざなう。更紗の誕生日はまだ始まったばかりであった。


マスター:西灰三 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:27人
作成日:2011/04/23
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冒険結果:成功!
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