京都 桜遊戯 〜宇治上神社・塔の島身の丈桜と抹茶スイーツ〜


<オープニング>


 朱の大きな鳥居をくぐれば、深緑ののれん賑やかな茶の葉屋が軒を連ねる。
 人好きのする笑みを浮かべた女将さんが「良かったらお茶のんでかはります?」と微笑みかける。
 平等院を右手に更に進めば、宇治川にたゆたう塔の島。
 柔らかな風の中ひやりと水含みの感触に振り向けば、それは身の丈に咲き誇る薄紅花の悪戯。
 小さな島を背の低い桜が彩り飾りあげる。

 京都駅から電車で20分ゆられれば、茶の里宇治市にたどり着く。
 観光都市京都が洒落た都会の中に歴史を潜ませているとすれば、ここ宇治は日常の所々に古の足跡が刻まれている街だ。 
 
「てことで、宇治に行かない?」
 いつもながら星崎・千鳥(高校生運命予報士・bn0223)の呼びかけは唐突にして突然だった。
「うじぃ??」
 北国で西には馴染みのない鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)が、桜餅を頬張って琥珀をぱちくり。
「ん。京都府の南。京都駅から電車で20分ぐらい」
「なにがあんだ?」
 当然の質問である。
「お茶が有名ですよね、静岡と並んで」
 これも宇治のお茶ですよ、と詩条・美春(兄様といっしょ・bn0007)が急須から青丹の液体を湯飲みに落とした。
「ん。あとさ、10円玉の表の平等院が有名かな」
 ぴんと弾いた10円玉を空中でしぱっとつか……もうとして椿に取られた。
「ぜぜこで遊ぶなぁ? んで、そこ行ぐのか?」
「んー……平等院もいいけど、ボクのオススメは宇治上神社、かな」
 スマートフォンに呼び出したのは古びた小さな小さな神社。
「あ、世界文化遺産の神社ですよね? 神社建築では、日本で1番古いと聞いたことがあります」
 覗き込む美春に頷き、千鳥は緑茶で喉をしめらせる。
「そ。小さな焼き物のうさぎおみくじが可愛いよ。白い仔と桜色の仔が、いる」
 宇治をその昔「菟道」(うさぎのみち)と書いたことにちなむらしい。
 可憐なまんまる赤いおめめのうさぎさん。
 大吉・中吉・小吉・凶、おなかに隠しているのは一体なぁに?
「岡崎神社にもあるそうですね、うさぎさんのおみくじ」
「ん。あっちのはころんってしてて愛嬌があったよ。宇治上神社のは素朴な感じかな」
 岡崎神社は双良達が行くし集めて比べてみるのもいいかも、と珍しくはっきりと相好を崩す少年。
「あと、着物姿の人型人形にひとつだけ願いを書いてお供えしたら叶うとかね」
 願い封じてみるのも一興か。
 宇治七名水の沸く桐原水は、他の六が失われた今は唯一のもの。小さな殿の中満ちるその冷涼さは身も心も清めてくれることだろう。
 千年近い時を数える日本最古の場に身を置き、しばしの時間旅行としゃれ込むのも悪くない。
「あー……でもなぁ、やっぱ桜見てぇよ、私は」
 静かなところは退屈でと頭を掻く椿に、千鳥はぴっと指をたてる。
「じゃ、平等院表参道で抹茶スイーツでも買って食べて、塔の島で桜見てるといいよ」
「抹茶スイーツかぁ……流行もんだべな」
「ああ、でも舐めない方がいいよ? お茶屋さんの本気が見れるから」
 千鳥曰く。
 すっごく抹茶。
 昔ながらの茶団子はもとより、抹茶ソフトも抹茶シェイクも、シフォンケーキに抹茶ワッフル、野点のお茶がついたセットもあったり……その全てがお茶屋さんの意地を賭けてか、とにかく抹茶のお味が濃くて美味しいのだ。
 スイーツだけでなく、通りに軒を連ねるお茶屋さんで試しにお茶を飲んでみて、気に入った宇治茶を買い求めるのも楽しいだろう。
「お花見も出来るのですね。桜は好きなので楽しみです」
「塔の島の桜は背が低くてさ……」
 美春の頭のところで掌をすっとかざし計るように千鳥は紅を細めた。
「背伸びしなくても、手が届く。木の下を歩けば、桜の花が間近で香るよ」
 深呼吸すれば桜の香りで胸が満ちる。
 桜の水気が涼やかに頬を撫でる。
 もちろん届くからと言って枝をつかんだり折ったりは絶対ダメだけれど。
「あとは20分ほど遊覧船に揺られて宇治川を下るのも、一興」
 川から見る塔の島の桜は、これまた別の顔。
 時間の流れを封じ込めた京都。更にちょっとだけ欲張って、宇治にも足を伸ばしてみませんか?

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参加者
NPC:星崎・千鳥(高校生運命予報士・bn0223)




<リプレイ>

●平等院表参道
 こぢんまりとしながら左右には名高き茶葉の店がずらり並ぶ。
「うちは桜見れますよ〜」
 手招く女将の声が柔らかく耳たぶを撫で、旅人を誘う。

 客引きねーさん曰く『桜が自慢』そんな店をくぐる『やや屋』の3人。文句に違わぬ大きな桜に目を奪われる藤十郎。
「上見すぎて団子詰…げふごふ」
 けらり笑う蝶子のお茶で飲み下す。
「抹茶が濃くて美味いな」
 ストロー鳴らすエルも機嫌良し。
 曰く、京都凝り性。
 曰く、エルとお蝶の増量計画。
「運動してるから大丈夫、なはず!」
「…とっておき羊羹は味わってみたいかも」
 つられた。
「目指すは全メニュー制覇! 綾瀬ちゃん」
「はい、受けて立ちます〜」
『剣山刀樹』団長テオドールからの慣れぬ呼び方にはにかむ綾瀬。
 古風な門構えの店は老舗らしくメニュー盛り沢山! 自信ありと闊達に食べる綾瀬にテオドールは相好を崩した。
 柔らの日差しを受けまずは一服。『季ヶ亭』の2人は沢山のお茶屋に目移り。
「できれば一さじ、アイスを分けてほしいな…なんて」
 すすとシフォンケーキさしだし有栖に「わ、いいの?」零も破顔。
 桜から頂戴するは特別な冠、花飾り。ふわり淡い香りのプレゼント。
「夜雲さんのも一口頂戴」
「一口といわずに、一串どうぞ」
 雪笹の簪が揺れて茶団子をぱくり。結梨のワッフルもバターに負けぬ抹茶の香りが濃厚で。
 舞い遊ぶ春の一片を掌に包み込みそっと開けば笑み花が綻びひらく。
「すご…予想以上の、本場の本気だ」
「ちょっと苦いけど」
 おいしい!
 濃厚な生クリームに負けぬ抹茶に歌穂と悠亜はしばし唸り。頬緩め瑞羽は本場のお抹茶に舌鼓、チョイスは茶団子。
「苦いかもしれないが、甘味が引き立つぞ」
 勧められたお抹茶にきゅーっと目閉じ。
 クリームぜんざい、パフェ…スイーツ談義にはしゃげば、はらり一片、桜が自己主張。
「いろいろ試すと良い」
 相棒悠仁の台詞に十六夜は自重を見抜かれたかと照れ笑い。
 一緒の抹茶ソフト、ワッフルも香ばしい。
「悠仁は日本茶は好きか?」
「違いは分らないがあれば飲む」
 気に入りを買い、桜に夢中ではぐれそうな悠仁を追いかける。
「…ふく、似てたから」
 こちらははぐれたドロシー。人違いをやらかしていたところを浅葱に保護される。
 雅な春はどこへやら。ふらつくレテノールを小突き、ドロシーの手を引き嘆息。
「いっそ全員で繋ぎますか」
 お父さんな浅葱に吹き出す凛が、今度はレテの裾を引く。
「まっちゃ!」
「一口食べますか」
 交換してあむあむ幸せな異国の友に、いつか手ずからの茶を振舞いたいと浅葱。
「夏目謹製抹茶スイーツの方が喜ばれそうだ」
「リクエスト受け付けますよ」
 巡る桜に瞳奪われ。
「さくら、日本が、すきだわ」
 平等院に思い馳せるアヤカの前にはシフォンケーキのアイス添え。食べ過ぎかしらに別腹ですとはしゃぐ六花、桜色ワンピが愛らしい。
「団子もアイスも美味しー!」
 皆に勧めつつも奏司のワッフルに目を奪われる信乃。
「どうぞ」
 お返しはアイスを添えて六花のソフトもトッピング。
「色に香りが素晴らしいわね」
 自然、話は風蝶荘へのお土産へ。
「日持ちするもので…」
「お茶はいかがでしょうか?」
 試飲してとはしゃぐ所を奏司がカシャリ☆
「また皆一緒に…」
 信乃の望みを吸い花びらは空へ舞い上がった。

「シュークリーム美味しそうっ」
「んっ♪ラングドシャも美味しいよ♪」
 先に手を出したのは互いが買ったもの。ほっぺたに緑のクリームひっつけて、霞とフゲは笑い合う。
「お兄ちゃんクリームついてるの♪」
「…そう言う夢も」
 すくってぺろり☆
「ふ、ふふ…久慈宮、唇真緑だよ」
「つーか青青さんも一緒じゃないっすか」
 ふわり濃厚な抹茶化粧。
 ワッフルと茶団子を摘みながらの今日の礼に、景蒔はこちらこそ、と。
「更にバッチリ堪能して帰りましょうね」
 仄かな苦みに舌鼓。
 アイス・ババロア・わらび餅…瞳キラキラ姫菊に珈琲を啜る優輝は笑んだ。
「今日の服似合ってるよ」
 桜より綺麗は照れて言えないけど。
「ん? フフ、ありがとね」
 可憐な笑みに、友情から変じた想いを悟らされて鼓動が跳ね上がる。

●お茶をどうぞ
 茶屋の店先で喉潤しながら桜は硝子の裾をそっと握った。
 雪のように散る花びら見て、ぽつり。
「桜はこういう雰囲気が似合うな」
「あ、あぅ…硝子さんも似合ってると思うのですぅ…」
 互いが持たない部分に素直な賞賛を、固い友情に添えて。
「舞皇くん、覚悟は良い?」
 のんびりさんの禅の瞳が光った!
「うん、全力で!」
 舞皇も『つぶつぶ苺抹茶ロールケーキ』に本気を出した!
 新茶予約しようかなとか、10個セット宅配でとか!
 さっきは京桜は凛としてるって愛でてたのに、やっぱり花より団子?
「美春は気に入ったお茶は見つかったか?」
「はい」
 玉露の甘みに惹かれたと暈人に見せる。
 古都にはハイカラさんが似合いそう、桜簪をさした美春をカシャリ。
「ほうじ茶とは渋いね」
「あ、千鳥君だー。お勧めってある?」
 人懐っこい小春の笑みに指さすのは抹茶わらび餅。
「あと、たこ焼き抹茶塩かけ」
 それはスイーツなのか?
「早く行きましょ、早く!」
「笑弥、急がなくても店は逃げないぞ」
 名の通り笑み似合う少女に晴臣も相好崩し。
 茶団子と羊羹、饅頭頬張り、むむ。今までの抹茶菓子は皆謝れな、本気!
「お茶屋さん、本気です!」
「ん、確かに」
 シェアして幸せ2倍は、三樹と歌戀もまた同じ。
「あ〜ん」
 三樹からの抹茶ソフトに歌戀はほくほく。
「じゃあ、三樹さんにもあ〜ん」
 ワッフルに抹茶クリームを絡ませて。
「甘味と御茶の苦味と香りたまりませんよね」
 合言葉『ダイエットは明日から』
「あーん」
 わけっこ『あーん』は至福のキーワード。
 たまには逆もと陸は『あ〜ん隊長』息吹にお団子を。
「愛美ちゃん、あ〜ん」
 微笑み見ていた愛美もケーキをぱくり。
 恒例の遣り取りに頬緩めていたら、
「みっちゃん、あーん」
 玄蕃から月吉に団子。
「げんちゃん、あーん」
 クロスカウンター団子。
 男同士でもぐもぐもなぁと思ってたら、
「はい、月吉さん、あ〜ん♪」
 息吹と愛美からダブルあ〜ん。
 儚く散る花弁が移ろう自分達と重なり、こみあげる想いもあるけれど。
「幸せを表すとしたらこの光景ですね」
 陸を皮切りに『Andante』の皆に灯る笑み飾るように薄紅がさざめいた。

●塔の島
 流されそうな華奢な島の縁を彩る桜が頬を撫でる。
 中程の大きなしだれ桜は円山公園からの株分け、姉妹想い枝花揺らす。

「ソルスさんも届くね」
 しだれ桜を前に涼太はほわり。制服姿なので一瞬違う人と見紛うが、この柔和な笑みは涼太に相違ない。
「まるで桜が滝になって降りてきたみたい!」
 小丘から垂らす枝だにかんなは目をまんまる。腰に下げた木刀は古風な武士気取りか?
 塔の島の所以をかんなが問えば、ラクスの唇が滑り出す。
「嗚呼、眩しい」
 でも悪い気はしないとラクスは目元に手を翳し空を仰いだ。 
「平安の古式が生々しく残る町だ」
 宗吾達の前には抹茶スイーツの群れが。焼肉屋のデザート選定も兼ねているのだ。
「とりあえずお品書きの全部なのじゃ!」
 とか亜璃砂が張り切った事もあり、山とある。
 たてた抹茶を勧めユリアは、ワッフルにアイスをのせてみたらと提案。
「食い応えがあってはいかんのかな?」
「いいと思います」
 2人の声に共に在る時に寿ぐ亜璃砂。

「春ってね、一番好きな季節かも」
 春の陽そのままに微笑む柚流に見とれる事しばし。去年より更に格好良くなってるとれいあは頬染める。
 半分こすれば、ほろ苦抹茶のお味も甘く。
 鎌倉に帰ったららぶ一杯の柚流がたてたお抹茶が待っている。
「大好きな人と一緒なだけで嬉しいのに、綺麗な春に心が躍る気分ですよ♪」
 出海からの屈託ない愛にすだちは小首を傾げる。
「春で心躍るのか?」
 つないだ手の甲に降る桜。
 唇に残る抹茶の香り。
「でも、その気持ち…解らなくもないな」
 混ざり合う幸せに、破顔。
 てこん。
「もー、馨くんったら」
 猫が甘えるように稲穂髪がひなたの膝に。
「んー、綺麗」
 梳られるのが心地よくて。
「うん桜綺麗…」
 桜の影はどこか柔らかく。
「桜を背にするひなちゃん、が、綺麗なんだよ」
「あ、ありがと…」
 幸いの時にずっと浸りたい。
「イギー、こっちですよ」
 花のせいでつい目線が空へと言われ膨れるも、
「どうです、この木の横に並んだら、背が高く見えませんかっ?」
 ルシアはたちばな橋の袂、肩口の桜花と並び胸を張ってみる。
「んー…見える見える」
 イグニス、棒読み。
 また膨れ、でもすぐ機嫌を直し遊覧船に手を振るルシア。可憐な彼女にほくほく。
「桜の中のお嬢さんー」
「船もよがすちゃよー」
 ウルスラと椿がルシアに嬉しげに振り返すin遊覧船。
 桜さざめく川を割り、天体観測同盟を乗せた船はゆらりゆら。
「…」
 賑やかさを遠巻きに、指先の花びらを川に逃がす英史。
「大丈夫だよ」
 ジングルの声に千破屋はこくり頷き裾を掴む、少しずつ解ける表情に心配気に見ていたヴァイスも一安心。左右で枝揺らす桜迷路に心委ね。
「どうぞ」
 はんなり笑顔でおうすを配るのは心結璃だ。
「おうすと云うのは薄いの丁寧語か?」
 手に馴染む陶器のぬくもりに頬緩め、ジャックは日本語の奥深さに感嘆。
「英史さんもよろしければ」
「あ、ありがと」
「ふふ、桜茶というのも雅でございましょう?」
 春の悪戯、緑に浮かぶ花びら、喜ぶ面々につられ英史も破顔。見守るジャックの頬も緩む。
「終わりなき桜景色…本当ですね」
「贅沢なものだ」
「んだけ咲いとっても、豪華! とはちゃうよね」
 顔色を取り戻した千破屋もヴァイス達の隣に並び桜を見つめる。
 皆と一緒だから、船に乗れて特別な桜も、見れた。
「ああ今年も良き春デシタ」
 続けて誰かが言った。
 ――来年もその次も、ずっと一緒に桜が見れたら。

 同じく『LOHAS庵』も遊覧船にてお花見中。
 舳先近く、揺らぎにあわせ体揺らしさやかと芹亜は鼻歌まじり。
「花びら持ってかえって押し花にしたいな!」
「本当、綺麗ですね」
 伊良子も眼鏡越しの瞳を細め。
「こういうのを花筏って言うんだって!」
 水面の桜を指させば、
「花びらキャッチで願い事が叶うって」
 団長庵の一声に船縁にチャレンジャー達が連なるぞー。
「なるほど、願掛けだ」
「競争だったら負けませんよっ」
 ルアージュが優雅な所作で腕を伸ばし、ツバサは腕まくり。
「い、意外に難しいですね」
 アルファリアが首を傾げ。
「はしゃぎすぎて船から落ちるなよ〜?」
 方々で手を泳がす友にイナセな着流し焔弥は闊達に笑った。
 頬緩め見守るソフィアにひんやりとした感触が降る。
「ふふ、キャッチしてないけれどいいのかしら?」
 鼻の上に一片。
 同じく極上の茶を手にのんびりにこにこ、静歌の碗の中にも花びらが。
「あっ、これはどうなんでしょう…」
 嬉しげな静歌の隣、下敷きで袖を擦るヴィントミューレ。吸い寄せられる花びらにおおっと目を見開くのはある時を虎視眈々と待つ秀都だ。
「ここは船どすえ、暴れたら危ないやおへんか」
 最年少のミューが一番落ち着いてるっぽい。持ち込んだ抹茶ケーキに茶団子etcむぐむぐしつつ窘める。
 が。
「えいっとりゃっ」
「あー、もう少しっ」
 聞いてない。
「庵先輩そっちは」
 よろけたツバサはバランスを見事崩す庵に注意を促すが、間に合わない?!
「…あぶない!」
 あわやジークフリード抱き留め事なきを得る。お説教も差し出された花びらに挫かれて。願いを込め押し花に、10月に生まれ来る弟か妹の為にと微笑む。
 取れずしょんぼりの芹亜、取りたかった一成の前にも花びらが。君達の為に祈り手にしたからとルアージュは微笑んだ。
 一成の憧憬の先には肩抱かれ照れたアルファリア。
「もうっ」
 焔弥が口にした願いは『何十年先も、隣で桜を見れますように』
「落ちずに済んだから良かったけれど」
 桜どころじゃないと呆れの伊良子、気をとり直しヴィントミューレに撮影を頼む。
 和やかに桜を背に写真を写していたら……。
 ぴき。
 伊良子の眼鏡が嫌な音をたてて振動した?!
「ふはは、音痴だが正義は守るものっ! 敷島九十九式秀都参上っ」
 うわ、この人屋根にのってるよ。
「さー、桜の木々よっ、俺の音痴な歌をきけぇええーっ」
 阻止! LOHAS庵全員で、阻止!
 お腹の底から笑いながら、庵は願う。
「ロハスが幸せでありますようにっ」

 去年の桜の元で結んだ約束は『ずっと友達』
 絆は代わり、今年は恋人として茜とアルノーは手をつなぐ。
 間近の桜に微笑む茜に、他愛ない話からふと真顔。カタストロフでの言葉を思い出し違いに真っ赤に。
「でも茜ちゃんと一緒なら乗り越えていけるって…」
 とっておきの言葉はいずれ必ず。
「――」
 …触れていられるのが夢のようで。
 凜然さ纏うアルステーデが、今日は不安気に桜、いや自分を見ているのにアストラムは気づく。
「おい、アルス」
 引き寄せ掠めるような刹那の口づけを。
 言葉紡ぐのは苦手、けれど余計な不安は無用と伝えたい。
「ふ、ふふ」
 破顔は理解の証。

●時止りの古神社
 華やぎと憩いの塔の島から朱塗りの橋を渡れば、桜影のひやりとした道に出る。
 真正面には宇治神社へ続く階段。
 更に奥へ入れば、野山を背負いし宇治上神社の鳥居が出迎える。

 花賑わいから切り離された静謐な空間に、風香は息をつく。
「初日の時が凶だったのでリベンジです」
 平皿の上にずらり並ぶは素朴な瀬戸物の兎さん。きゅっと見上げてボクを連れてってとねだる。
 巳麻の桜兎、お腹の中には…大吉!
「みーちゃん良かったね」
 風香は小吉が。
「あ、でも願い思うままって」
 まるで自分の事のように喜ぶ様に風香の心がほわり。
 固まる緋鞘の指からめ咲夜も兎の前に立つ。
 最終学年で別のクラスは凶かなと言いつつ、咲夜が選んだのは白兎。
「赤いおめめが緋鞘さんみたいで可愛らしいですね♪」
「あ…ありがとう」
 去来する照れと焦りを押え笑む緋鞘が選びしは桜兎、また想い出がひとつ。
(笑顔でいられる世界を守れますように…)
 顔をあげた龍麻は椿達を発見。
「おー龍麻先輩。2個ひくべか?」
「兎好きな誰かさんのためにね」
 兎のようにぴょっこり髪結わえたあの子が浮かぶ。
 どの仔か選ぶ美春にかかる声。
「聞いた通り可愛らしいわね」
「由衣さん」
 どちらからともなく誘い合い桐原水に。触れた水の清廉さに瞳細め微笑みかわし。
 和紙の着物に人形を手に、沙希は小さく唸る。
(やる気があるんだかな誠司兄の願掛けもなぁ〜)
 結局記したのは銀誓館皆の無事。
 能力者も予報士も、もちろん一般生徒、誰が欠けてもなり立たない。

 古都桜。
 この薄紅達はいつからここにいたのだろう?
 毎年散り咲く花は同じものか刹那のものか、だがきっと彼らは憶えている。古から人の願いと幸せを。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:91人
作成日:2011/04/29
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