優しさの裏で


<オープニング>


●都内某所
 いくつかの条件さえ飲めば、無償で失業者達を受け入れる施設があった。
 この施設では『困っている人を助けるのが我々の仕事。もちろん、お金入りません。ただし、いくつか条件があります』と言った感じで沢山の人達を集めていたらしい。
 施設内では毎日の採血と薬の服用が条件づけられており、区域ごとに食事の量や条件が異なっていた。
 そのため、利用者達の中には『何だかおかしい……?』と思う事もあったようだが、施設関係者達が張りついたような笑顔で、『大丈夫です』と答えていたため、信用しきっていたようだ。
 だが、実際には利用者達に許可なく新薬を試していたり、人体実験紛いの事をしていたため、問題視されて廃業してしまったようである。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、廃墟と化した施設。
 この施設は言葉巧みに利用者を集めて、言葉巧みに契約書にサインさせ、酷い事をしていたようなの。
 しかも、問題が明るみになっても、『危険性に対しては、きちんと説明した』、『いや、あの説明じゃ、そうはとれねーだろうが』、『そう理解しようとしなかった、あなた方の責任だ』といった感じで責任を取らず、結局うやむやになっちゃったみたいなの。
 リビングデッドと化したのはここの犠牲者達で、両腕には注射の痕が残っていて、物凄く顔色が悪くなっているわ。
 しかも、生きている人間を見つけると、施設の関係者だと思い込み、問題無用で襲い掛かってくるから要注意。
 それと、部屋のひとつが特殊空間と化していて、白衣姿の男が地縛霊と化しているようなの。
 この地縛霊はマヒや毒効果のある注射器を飛ばして来たり、暴走黒燐弾の如く注射器を飛ばしてくるから、くれぐれも気を付けてね。

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参加者
天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)
灯神・漣弥(高校生魔剣士・b03209)
ユリア・ガーランド(天上の蒼・b03877)
境・鷹男(帰ってきた真の努力家・b06261)
天乃宮・頻(紅雪白兎・b30003)
ジェニファー・スウィート(暗黒なる氷雪の女皇・b30598)
綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
花屋敷・幽兵(軸のブレは波動・b32720)
山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)
コロナ・サンライト(超光戦士・b77156)
比良坂・夜魅(死神代行・b78427)



<リプレイ>

●偽りの善意
「……人体実験か。ひどい事をする輩が居るものだ」
 当時の状況を想像しながら、花屋敷・幽兵(軸のブレは波動・b32720)が溜息を漏らす。
 ゴーストが確認された施設では、沢山の失業者を受け入れ、無料で食料や部屋を提供していたが、実際には色々と裏があったようである。
「……何て酷い、事を。医療に携わる身としてあるまじき行いです。……絶対に許される事では、ありません」
 激しい怒りに包まれながら、天河・翼(蒼冥の蛍・b03014)が拳を震わせた。
「……とは言え、医学の進歩には治験も必要です。少しでも早く完成させ、世のためになるのであれば、危ない橋を渡っても……と考えてしまうのも理解はできますが、そこまでの信念があったか甚だ疑わしい。セーフティに憑りつかれ技術の進歩を止めるのは愚の骨頂ですが、進歩の為と言う皮を被り弱者から目先の利益を吸い上げる等言語道断です」
 不機嫌な表情を浮かべ、灯神・漣弥(高校生魔剣士・b03209)が吐き捨てる。
 おそらく、施設の関係者達は医学の進歩よりも、自分の探究心を満たすため、失業者達を実験台として自分達の傍に置いていたのだろう。
「無償で失業者達を受け入れる施設というのは、いくつか条件があっても、つい……いいと思ってしまいますよね。でも、毎日の採血と薬の服用や区域ごとに食事の量や条件が異なるというのは、こうして聞いただけでも怪しすぎますよね。それなのに、どうして信用してしまったんでしょうか。私にはそれがとても不思議に思えるんですけど……。契約書があったようですけど、それも見ただけで怪しさがにじみ出ているようなものだったのではないかと思うのですが……」
 色々と納得がいかない様子で、ユリア・ガーランド(天上の蒼・b03877)が疑問を口にした。
「ちょっと考えれば分かる事になのに……。『ただより高いものはない』だっけ? あんまり意味が分かってなかったけど、きっとこういう事を言うんだよね」
 犠牲者達の気持ちを理解できず、山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)が口を開く。
「それだけ、魅力的だったんじゃないのかなぁ、この施設にいる事が……。でも、人体実験は同意の上が基本なのに……」
 進達に対して答えを返し、ジェニファー・スウィート(暗黒なる氷雪の女皇・b30598)が入り口付近に学校から借りてきた『立ち入り禁止』の看板を立て掛ける。
「困ってる人への優しさに付け込んで、当人に確認を取らずに人体実験にしちゃうなんて酷いよね」
 被害者達について考えながら、天乃宮・頻(紅雪白兎・b30003)が哀しげな表情を浮かべた。
 どうやら、施設の関係者達は『どうせ、あいつらは金がなくて困っている。断る事なんて出来やしない』と言った考えを持っており、ほとんど具体的な説明をせず盟約書にサインさせていたようだ。
「まあ、切羽詰っていなければ、見破れたのかもしれませんけど……。後先がわからない状況では、藁にも縋る状況だったんでしょうねぇ。自業自得とも言いにくい話です」
 失業者達の状況を考えた上で、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)がある程度の理解を示す。
 もしかすると、失業者達も『何かおかしい』と思いつつ、後々の事を考えてサインするしか選択肢がなかったのかも知れない。
「気を付けよう、甘い言葉と暗い道? 上手い話には裏がある? ……でしたっけ? そんな標語があったような、なかったような気がしますっ。この施設も、実際に困ってしまっている人にはとてもありがたい、お話だったんだと思います。ただ悲しい事に純粋な善意ではなかったという結果になってしまいましたが……」
 頭の中に標語がぽかんと浮かび、綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)が何となく口にした。
「なんという偽善。新薬を開発の為に、困っている人々の弱みに付け込むなんて……、絶対に許せないわ!」
 当時に新聞記事に目を通し、コロナ・サンライト(超光戦士・b77156)が叫ぶ。
 記事には施設について書かれていたが、事件が明るみになった後も曖昧な対応をして、うやむやのまま事件が闇に葬られてしまったようだ。
「都内で暴れるやつは俺が許さん! 東京に住んでいる身として、常に平和であって欲しいのが願いだからな。必ず退治してやる!」
 覚悟を決めた様子で気合を入れ、境・鷹男(帰ってきた真の努力家・b06261)が廃墟と化した施設に入っていく。
 室内にはリビングデッドと化した犠牲者達がおり、鷹男達に気づいて身構えた。
「事件が発覚しても犯人達に責任を取らすことも出来なかったなんて、無念だった事でしょう。あなた方が迷い出てしまった気持ちも分かります。でも……、あなた方が恨みを晴らす必要はないのですよ。私達がきっと罰を与えてやりますから!」
 リビングデッド達と対峙しながら、比良坂・夜魅(死神代行・b78427)がイグニッションをする。
 しかし、リビングデッド達は『そんな事、信用できるか! どうせウソだろ!』と叫ぶ。
「さて、気を引き締めてまいりますかな、皆さん」
 仲間達に対して激励のポージングを繰り出し、幽兵がリビングデッド達の行く手を阻む。
 その間に仲間達が地縛霊を倒すため、特殊空間が確認された場所へとむかうのだった。

●絶望と苦しみの中で
「これが悲劇の成れの果て……。最も、確認しようとしなかった辺りは自己責任の範疇ですな。せめて速攻で痛みを終わらせて見せる!」
 すぐさま黒燐奏甲を発動させ、幽兵がリビングデッド達をジロリと睨む。
 リビングデッド達は恨めしそうな表情を浮かべ、両腕には注射針の痕が幾つも残っていた。
「人間を恨んでいるのか……気持ちは良くわかる……騙され続けていたのだからな。だが、リビングデッドと化した今は倒すのみだ!」
 リビングデッド達に対してある程度の理解を示しつつ、鷹男が旋剣の構えで攻撃力をアップさせる。
 それと同時にリビングデッド達は『俺達は悪くない!』と恨み言を吐き捨て、鷹男達に襲いかかってきた。
「確かに……、貴方達には……何の罪も、無かった。ただ……犠牲になった、だけ
 今もなお残る注射の痕を眺め、翼が悲しげな表情を浮かべて氷雪地獄を使う。
 次の瞬間、リビングデッド達が悲鳴を響かせ、その一部が魔氷に包まれて動けなくなった。
「そんな青白い顔して、それでも戦ってるなんて可哀そう過ぎるの……。これ以上、辛い思いはさせないっ。一刻も早く成仏させてあげるの〜っ!」
 一気に間合いを詰めながら、進がフロストファングを叩き込む。
 その一撃を食らってリビングデッドが吹っ飛び、訳の分らない言葉を叫んで動かなくなった。
「あなた達は落ち着いて眠る事も出来なかったのでしょう。でも、もう恨みは忘れて……、あなた達の仇は私達がきっと取ってみせるから……。だから……、私があなた達を天国に送ってあげるわ!」
 リビングデッド達に語りかけ、夜魅が旋剣の構えを発動させる。
「あまり時間は取らせたくないですね。すみませんが眠ってもらいます」
 申し訳なさそうにしながら、洋角が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 それにあわせて、鷹男がカラミティハンドを放ち、反撃を仕掛けようとしていたリビングデッドを倒す。
「こんなところで人を襲っても何の解決にもないのっ。この一撃で倒してあげるから、迷わず成仏してねっ!」
 リビングデッドの懐に潜り込み、進が再びフロストファングを炸裂させた。
「舞い飛べ……、死告蝶!」
 リビングデッド達を射程内に捉え、夜魅が悪戯スピナーを発動させる。
 それでも、最後まで残ったリビングデッドが声を震わせ、『お、俺達は悪くねぇ!』と叫んで捨て身の攻撃を仕掛けてきた。
「……ごめんなさい。貴方達は何も悪くないけれど……。これ以上、放っておくことも、出来ないんです。……許して下さい、ね」
 リビングデッドに別れを告げ、翼がさよならの指先を使う。
 それと同時にリビングデッドの体が魔氷に包まれ、跡形もなく木端微塵に砕け散った。
「ふぅ……、悲しい最後だったんだろうけど、こういう形で倒すのが一番供養になるのだろうか……」
 やや神妙な面持ちで、鷹男が深い溜息を漏らす。
「優しさの裏がこんな物でしたが、全てがこうではないと思いたいですね。他人を信頼できないのも悲しすぎると思います」
 悲しそうな表情を浮かべ、洋角がどこか遠くを眺める。
「これで、安らかに眠ってくれると良いのですが……」
 祈るような表情を浮かべながら、翼が肉塊と化したリビングデッド達に視線を送る。
 彼らもある程度、覚悟をしていたはずだが、新聞記事を読む限り、大半はその副作用に悩まされ、もがき苦しみながら亡くなった。
 おそらく、そんな酷い事になるとは、本人でさえ考えもしなかった事だろう。
「まぁ、コレで浮かばれるとも思いませんが、苦痛からは解放されたと思いたいですな。だいたい笑顔だから安心出来るというのが間違いなのです。怖い笑顔ってあるではないですか。効果音が出そうな人とか……」
 思いっきりドヤ顔で、幽兵が答えを返す。
 もしかすると、彼らもその事に気づいていたのかも知れない。
 次第に蝕まれていく身体の痛みと共に……。
 何かが……おかしい……と!

●偽りの笑顔
「まるで絵に描いたような悪人面ですね」
 特殊空間内に留まる地縛霊を見つけ、漣弥が警戒した様子で旋剣の構えを使う。
 地縛霊は張りついたような笑顔を浮かべていたが、漣弥にはその奥に隠されている邪悪な素顔が見えた。
「死んだ後もまだ一人で実験。悲しいですね」
 少しずつ間合いを取りながら、ユリアが魔弾の射手を発動させる。
 次の瞬間、地縛霊が『大丈夫。……怖くないよ』と言って、次々と注射器を飛ばしてきた。
「人間はあなた達のオモチャじゃありませんっ!」
 ギンギンカイザーXを一気に飲み干し、千鞠が注射器を避けるようにして横に飛ぶ。
「そこまでよっ! この世に正義がある限り、世に悪が蔓延る事はない。愛と勇気と友情の戦士、超光戦士サンライト、ここに参上ッ! 困っている人々を言葉巧みに騙して、人体実験の材料にする悪の怪人・魔ヤクダー。あなたの悪事もこれまでよ! この超光戦士サンライトが、悪の野望を挫いてみせるわ!」
 お約束とばかりに高い所から颯爽と登場し、コロナがピシィッとポーズを決めて旋剣の構えを使う。
 だが、地縛霊は素早く両手に注射器を構え、『黙れ、モルモットの分際で』と吐き捨てる。
「お相手、願おう……」
 邪悪にオーラを纏うようにして雪だるまアーマーを発動させ、ジェニファーが魔術用語を彫り記した右手を突き出した。
 それと同時に地縛霊が白衣を靡かせ、『後悔するぞ!』と叫んで、次々と注射器を飛ばしていく。
「勝手に人で実験しちゃうなら、まず自分で実験してみれば良いの!」
 注射器が当たって膝をつき、頻が地縛霊に光の槍を撃ち込んだ。
 その一撃を食らって地縛霊が『モルモットの分際でええええ!』と叫び、激しく怒りを爆発させた。
「人間はあなたのオモチャじゃありませんっ!」
 地縛霊の言葉を否定するようにして近接し、千鞠がクレセントファングを炸裂させた。
 その間に何本か注射器が刺さって体が痺れてきたが、千鞠は決して地縛霊から視線を逸らさない。
「散々何も罪のない方々を道具のように使い捨てした罪を償っていただきます。そこで痺れて施設にいた方の痛みを知るといいのです」
 すぐさまユリアが蒼の魔弾を撃ち込み、地縛霊をマヒ状態に陥らせる。
 そのため、地縛霊が唖然とした表情を浮かべ、必死になった身体を動かそうとした。
「みんな、あの世で待ってますよ。もっとも、歓迎されるとは限りませんが……」
 地縛霊に冷たい視線を送り、漣弥が断罪ナックルを叩き込む。
 それと同時に地縛霊の体が切り刻まれ、断末魔を上げる余裕すらなく、特殊空間もろとも消滅した。
「……新しいお薬の為に実験が必要でも、許可とか無ければ認められる訳がないのにね」
 特殊空間が消滅した事を確認した後、頻が寂しそうな表情を浮かべる。
 もしかすると、独自のルートがあったのかも知れないが、今となってはそれすら謎だ。
「薬かぁ……。にっちもさっちもいかない人は、後が絶ちませんねぇ……。ご利用は計画的に……って感じですかねぇ……」
 どうにかならないものなのかと思いつつ、ジェニファーが入り口に設置した看板を回収する。
「とにかく、この施設は二度と復活しないよう跡形もなく破壊してしまいましょう!」
 仲間達に声を掛けながら、コロナが辺りの物を壊していく。
 しかし、既に貴重な資料が持ち出されているため、例えここを破壊したところで意味はない。
 そう言った欲望を持つ者が存在する限り、研究が途絶える事はないのだから……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2011/04/14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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