【魔に魅入られしモノ】偽ノ覇者

<オープニング>


「……みんなのおかげで、スーパーは防衛できたよ。本当にありがとう」
 集まった能力者達に向けてぺこりと頭を下げる、武羽・和史(小学生運命予報士・bn0099)。
 スーパーは暫くの間、臨時休業になると思われるが、目立った大きな被害はないという。
 その報告に椎名・秋良(真ヘリオン・bn0043)は口元を緩めるが、その瞳の奥は鋭い。
「私達を集めたということは、また『大帝の剣』に何か動きがあったということだな」
「……いや、『事件が起こる運命予報』があったわけではないんだ」
 思わず「???」という単語が脳裏に浮かぶ、秋良。
 不思議な空気が漂う中、和史はキリっと表情を引き締めた。
「……今回は『これまでの情報を元に、大帝の剣所持者を見つけて先制攻撃をする』のが目的だ」
 ――沈、黙。
 大胆不敵にも無責任とも取れる強烈な発言に、しーんと静まる教室。
 そんな中、大羽・輝流(闇夜を照らす琥珀の月・b25702)がすっと手を挙げてくれた。
「つまり、武羽達が予報する前に、俺達が大帝の剣の所持者を見つけろということか?」
「……ああ」
 和史、即答。
「その、何だ。そういう結論に至った理由等が、あってもいいと思うのだが」
 全員の心の声を代弁してくれたのは、神野・零(禮禮たる月を抱く夜・b25963)。
 流石に、何の根拠もなく「運命予報なしで頑張れ!」は、ないだろう……。
「……俺、この事件が起きてから、図書館で、学園が大帝の剣を入手した事件をいろいろ調べていたんだけれど……」
 大帝の剣の所持者の元にはゴースト等が集まって来るため、時間が経過する毎に事件が大型化する可能性があると、和史は告げる。
「……だから、事件が分かるまで待つんじゃなくって、俺達から攻撃を仕掛けたいんだ」
 再び、しんと静まる教室。
 けれど、先程の沈黙とは違って、今度は張りつめたものが漂っていて。
「十分な理由だ」
 口を開いたのは、柳城・明来(夜嵐・b23790)。
 その言葉を聞いた立見・鑑三郎(電光影裏斬春風・b21872)も、同意するように頷く。
「ふむ。今回は『犯人の推察』と『その犯人に先制攻撃をかける作戦』が要となるか」
「……現在、誰が大帝剣の所持者であるか特定する情報は、入っていない」
 ――けれど、この事件に関わったみんななら、きっと、真実に辿り着けるはず。
 そう、和史は言葉を結んだのだった。
 
●魔に魅入られしモノ 〜推理編
「まず、大まかな流れから追っていこうか」
 教室には、和史が用意したケーキと飲み物が置かれている。
 テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)は一口だけ飲み物を口に含むと、早速とばかりに話を切り出した。
「大帝の剣所持者が今回の事件の関係者であることは、間違いないね」
 それは運命予報の情報と、自分達がこの目で見た2つの事件が証明している。
 これに否を唱えるものは、いない。
「これは、僕の推測ですが……」
 続いて話を切り出したのは、鏡・月白(シルバースター・b37472)。
「大帝の剣所持者は、配下になった1人目のカースブレイドであるアンノウンを通じて、新しいカースブレイドを仲間にしていると考えられます」
「カースブレイドと運命の糸が繋がった大帝の剣所持者ということね!」
 アンノウンがどうやって大帝の剣所持者と接触したのは、本人に問うしかない。
 しかし、月白の推測は理に適っていると、壱目・侑李(深紅の埋火・b62347)は思う。
「事件内容や商店街での情報が不自然に少なかったことからすると、現時点では商店街側が怪しいところですが……」
 そう、呟きながらも言葉を濁していく月白に、テオドールが付け加える。
「怪しいのは商店街側だけじゃない。スーパー関係者、それに町長も関係者かな」
「確かに、被害者も関係者ではあるな」
 鑑三郎は相槌を打つが、ふと侑李は首を傾げてみせた。
「店長さんを殺したのは、商店街側である可能性は高いけれど、町長さんを殺そうとする理由が商店街側にあるのかな?」
 それは、のどかな田舎町で自分達が関わった最初の事件。
 新興スーパーと地元商店街のトラブルの中でスーパーの店長が殺され、両者の仲介に入っていた町長が、大帝の剣所持者が操るカースブレイドに暗殺されそうになったのを、自分達が防いで見せた。
「町長さんの時は、あんなに殺る気やったのにね」
 それとは反対に、スーパー襲撃事件の『逃げる人は殺さない』に違和感があると皆に告げたのは、加賀地・蘭(ドレッドノート・b71130)。
「そういえば、大帝の剣は所有者にとっての「敵」を、周囲の存在にも敵だと認識させる能力を持っているんだよな」
 ふと、呟いた輝流に、零が「皆に伝えたいことがある」と仲間を見回す。
「スーパー襲撃事件の後、屋上から1階を見て思ったのだが、アンノウンは何故屋上を選んだのだろう?」
「確かに、商店街の誰かが大帝の剣所持者なら、店長を殺したように、スーパー関係者を殺していく方が自然な気がするね」
「それなら、わざわざ屋上ではなく、人が多い1階の出入口を選ぶはずだ……」
 考え込むテオドールと明来。ふと、零の脳裏に1つの答えが浮かんだ。
「店長と町長は直接の「敵」だが、スーパーの客は直接の「敵」ではないということか」
「アンノウンは大帝の剣所持者と接触している筈ですし、可能性としては殺人を控えるように命じられただけ、なのかもしれませんね」
 それでも、月白は願わざるを得ない。
 小さな背に付いた傷跡は『主』の意思でもなく、あの子自身の意志であって欲しいと――。
「『スーパーが襲撃される事で特をするのは誰か』という所も、焦点になるかのぅ」
 単純に考えると、やはり、商店街である可能性は高い。
 しかし、それにしては、やり方に違和感を感じると鑑三郎は眉をしかめる。
「主人とかいう人、案外アンノウンより年下やったりして……」
 しかし、蘭の推理に異論を唱えたのは、意外にも輝流だった。
「大帝の剣の力の代償は『己の欲望を理性で抑えられなくなること』だ。使うたびに理性的な判断が出来なくなっていくことを、忘れてないか?」
 店長が殺された最初の事件、町長が襲われた2番目の事件、スーパーが襲われた3番目の事件では、後の事件ほど『理屈の通らない衝動的な事件』である可能性がある。
「つまり、最初の店長殺害事件はそれなりに理性的な理由があったかもしれないが、最後のスーパー襲撃事件は、非理性的な理由によるものである可能性が高いということか」
「確かに、子供が店長という個人を「敵」と見るんは、少し不自然やね……」
 犯人は支離滅裂な行動をしているように見えるが、それならば説明はつくと明来が頷く。
 後の事件は理性的では無いのなら……と考え込む蘭に、侑李が明るく声を掛けた。
「まずは『店長を殺したい』と考えそうな人をピックアップするのが良さそうね!」
「だとすると、犯人は……」
 
 ――謎が、少しづつ紐解かれて行く。

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参加者
テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)
立見・鑑三郎(電光影裏斬春風・b21872)
柳城・明来(夜嵐・b23790)
大羽・輝流(闇夜を照らす琥珀の月・b25702)
神野・零(禮禮たる月を抱く夜・b25963)
鏡・月白(シルバースター・b37472)
壱目・侑李(深紅の埋火・b62347)
加賀地・蘭(ドレッドノート・b71130)
NPC:椎名・秋良(真ヘリオン・bn0043)




<リプレイ>

「お帰りデスか?」
 積み重なったダンボールの上でブラブラと足を動かしていたアンノウンは『主』を見つけると、素早くその上から飛び降りる。
 アンノウンの脳裏には、煌々しき覇王ともいえる姿が映っているのかもしれないが、一仕事を終えた『主』は酷く疲れている様子で、実に地味な人間だった。
「護衛しまス」
 鮫剣を担いだアンノウンが見回せば、背に刃を生やした猫や兎の妖獣が集まってくる。
「ガキなのに随分勇ましいな、お前は一体何なんだ?」
 普通の人間なら、その禍々しい呪剣を見るだけで臆するだろう。
 けれど、理性のタガが外れた『主』には、眼前の子供は忠実な下僕にしか映らない。
「アンノウンはアンノウンデス」
 ただそれだけだと淡々と答えるアンノウン。
 『主』は興味が失せたように一瞥すると、黙ってそのまま横を通り過ぎようとして。
「俺にも、お前くらいの娘がいたな」
 『主』が洩らした言葉に、微かに目を見開くアンノウン。
 自分を真っ直ぐ見上げた下僕を『主』は背を向けたまま、鼻で笑った。
「フン、離婚しただけだ。ここに飛ばされてからは、さらに会う機会が減ったけどな」
 護衛を引き連れて外に出た『主』は、胸ポケットからタバコのパッケージを取り出す。
 夜空を見上げれば、月は厚い雲の後ろに隠れており、普段は灯りが途絶える事がない『ここ』も、今は闇そのものだ。
「ざまあ見やがれって──ん?」
 オイルライターの蓋を弾き上げ、口に咥えた至福の一本に火を点そうとした、その時。
 
「こんばんは。素人探偵の推理に少し付き合ってくれないかな?」
 闇の中から少年と思われる声が響くと同時に、周囲を複数の若者達が取り囲んだ。

●魔に魅入られしモノ 〜解決編(前編)
「ちょっと確かめたいことがあってね」
 薄闇の中、一歩進み出たのは、テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)。
 アンノウンは咄嗟に攻勢に出ようとするが、周囲を取り囲まれた上に、己の近くに立ち塞がった加賀地・蘭(ドレッドノート・b71130)に警戒され、動こうにも動けずにいて。
「な、何なんだ、このガキ共は?!」
 背後を鏡・月白(シルバースター・b37472)に、両脇を柳城・明来(夜嵐・b23790)、大羽・輝流(闇夜を照らす琥珀の月・b25702)に固められ、前方を壱目・侑李(深紅の埋火・b62347)、椎名・秋良(真ヘリオン・bn0043)に挟まれた『主』は、しかし狼狽えるだけで。
「折角だ、みんなでこの町で起きた事件を順に考えてみよう」
 月がさらに雲間に隠れて行く中、テオドールの声が静かに響く。
 ──此処に。1つの謎が、紐解かれようとしていた。

「まず、スーパーの店長が屋上駐車場で殺された1件目の事件からだ」
 テオドールの声と同時に、周囲を警戒しながら一歩前に出たのは、明来。
「店長は安売り攻勢で商店街側の反感を買っていたものの、それは町長の仲裁で納まる筈だった」
 その矢先に命を奪われた、という事は、犯人はそれまでの安売り攻勢に恨みを持つ者か。
「あるいは、安売りを止められると困る者の、どちらかになる」
 前者の場合、約束を守るどころか更に安売り攻勢を強めて行く副店長に恨みを持つ事になるだろう。
 しかし、そうはならなかった。
「次に狙われたのは、再度安売りの仲裁に入った町長だったからだ」

 明来が下がると同時に『主』の背面を抑えていた月白が頷く。
「調査の結果、商店街側には特に怪しい人物はなく、店主達は仲介に尽力している町長に一目置いていました」
 警戒を濃くしたままの月白に、侑李が「頑張って考えたのよ」と言葉を重ねる。
「商店街は異様なくらいに無関心だったわ。最初は商店街側に犯人がいると思っけど……」
 実は、そうでなかったと侑李は指摘する。
「逆にその無関心さが商店街の無実を示してるの」
「目立った人物がいなかったという事は、そもそも商店街側はスーパーに余り関心が無かったとも言えるのではないか?」
 侑李と神野・零(禮禮たる月を抱く夜・b25963)の推理に『主』が異を唱えようとした時、蘭が一歩前に踏み出す。
「一見、スーパーが攻められとる現状に合う気もするけれど、それやったら町長さんも、わざわざ間とりもったりはせんよね?」
 そんな回りくどい事はせず、直接スーパーを敵視し抗議するはずだと蘭は話を続ける。
「町長さんもシロや。折り合い付けてんのに店長を殺害するには動機薄いし、そもそも自身を襲わせる理由が見当たらへん」
 そして「あの時の殺意、紛れもなく本物やった」と、蘭はアンノウンを鋭く見据えた。

「最後に、スーパーへの襲撃事件」
 特に、客の足となる自動車や駐車場を念入りに破壊してから店内に踏み込む手段をとった点に着目したのは、テオドール。
「大型店舗で駐車場が使用不能になるのは、致命的だからね」
 テオドールの推理に、さらに零と蘭が肉付けして行く。
「それこそ犯人の狙いが、スーパーを営業させないように、だ」
「犯人は、自身を田舎へ固着させとるスーパーの存在を邪魔に感じてることは、確かやね」
 確信に満ちた視線に射抜かれた『主』は動揺を隠せず、唇を震わせる。
「分かったことが幾つかある」
 テオドールは1本づつ、指を立てて行く。
 ──1つ。犯人は、スーパーを無くしたいと思っている。
 ──2つ。犯人は、自分の思い通りにならなそうな人物を葬ろうとしている。
 ──3つ。犯人は、商店街とは無関係の可能性が強い。
「これらの条件を全て満たし、さらに……」
「前回の襲撃の狙いがスーパーだったこと、町長さんが狙われたこと、それ以前に起きた店長さんの事故から考えると」
 仲間が灯りを『主』に向けると同時に、侑李とテオドールは指を真っ直ぐ突きつける。
「一連の事件の犯人、大帝の剣の持ち主、それは──」
「──副店長、貴方だ」

 闇夜の中、幾つもの灯りに照らされて、眩しそうに手をかざす男。
 整った顔立ちが鮮明に移された男は、紛れもなく副店長その人だった。

●魔に魅入られしモノ 〜解決編(後編)
「で、でたらめだッ!」
 その声に、最後衛の後詰の位置で周囲を警戒していた立見・鑑三郎(電光影裏斬春風・b21872)は眼鏡の端を上げ、一歩前に進み出る。
「それが貴方ですと、全てがすんなり納まってしまうのでございまする」
 ふざけるな、と声を荒げる副店長と睨み合う鑑三郎。
 その時、決定的ともいえる援護射撃をしたのが、明来だった。
「……副店長、貴方の場合は功績をあげて本社に帰りたがっていたという動機がある」
「それが事件とどう関係するんだ、犯人はスーパーに恨みを持っている者で決まりだろ!」
 俺とは関係ないと吠える副店長を、明来はさらに追い詰めていく。
「この事件が安売り攻勢に反感を持つ者であるなら、貴方にも矛先が向きそうだが、ここに至るまで一度も狙われていないのは、些かおかしくないか?」
「店長が殺されているのに、それ以上に恨まれそうな貴方が襲撃されない点は、僕も気になります」
 それが、疑いを濃くした理由の1つだと告げる明来と月白に、副店長は髪を掻きむしる。
「俺が店長や町長を斬りつけたっていう証拠すらねェのに、何を面白可笑しく──」
「──え?」
「今、斬りつけた、と……」
 侑李と零が疑問を口にしたその時、副店長は己が犯した重大な過ちにハッと目を見開く。
 聞こえたか?と周囲に視線を巡らせた輝流に、鑑三郎も心象が確信に変わったと頷いた。
「これで、証拠も出揃ったんね」
 1件目の事件の動機は上司であった店長を殺害して本社へ帰ろうとしたのだろうと告げる蘭に、副店長は平然と答えた。
「ククッ、あれは、事故だよ、事故」
「──!」
 元は本社のエリート社員だったが、些細な失敗から支店への異勤を言い渡されてしまう。
 上司は、地元商店街との摩擦を解決すれば、直ぐにでも本社に戻す、と言うものの──。
「いざ支店に来ると、事なかれ主義のジジイがのんべんだらりとしてやがったからなッ! そんな奴より、この俺が店長の権限を持つべきだろう」
「確かに、易々と町長の要請を受け入れてしまう店長では、本社の売上目標を達成できるとは思えませんね」
 それは、副店長の評価にも響くだろう。
 なおさら本社への切符が遠のいて行くと感じていたのではないか、と月白は思う。
「それに、店長がいる限り、自分の功績を買われて栄転、ということもなさそうだな」
 最初に殺害された店長は、その存在自体が邪魔だったのだろう。
 月白と零の指摘に「鋭いな」と副店長は、さも他人事のように嘲笑う。
「……っ、十分ありえる話しだ」
 例え、殺害する気がなかったとしても、大帝の剣がその背を押したのなら──。
 改めて実感したメガリスの力に輝流は唇を強く結び、蘭はさらに追い討ちをかける。
「1件目の事件後、あんたは目的通り、本社から事実上の店長の役目を与えられた」
 ──これで利益をあげれば、本社へ帰れる!
 そう思って意気揚々と仕事に取り掛かるが本社からは過剰なノルマが課せられるばかり。
「苛立ってるところへきた町長さんの釘刺しにカッとなって、衝動的に殺害を依頼した。これが2件目の事件やね」
 ご明察だと冷笑を浮かべる副店長に、輝流も畳み掛けるように推理をぶつける。
「調査によると、本社からの要望に随分憤っていたそうだな」
 そこに町長から自粛の連絡が来たとすれば、衝動的に殺意が向かってもおかしくはない。
 その後、町長が襲われていない事からも推測できるし、大帝の剣の代償にも一致する。
「町長の方こそ民事不介入だろ、俺が何か悪いこと、したか?」
 こいつ……!
「そして、スーパーが閉まれば、この町に居続ける必要がなくなる、と」
 重く響く零の声に、副店長は悪びれる様子も無く、言い放つ。
「ノルマについて本社に相談しても「地元商店街との摩擦は何処にでもある」とか「そのような泣き言は自分の能力の無さを喧伝するだけだ」ってさ。ハッ、何とも無能な奴らだぜ」
 ──ならば。
「スーパーが無くなれば全て解決、俺は本社に戻れるッ! ハハッ!」
 狂っている……!
 怒りに拳を震わせる仲間を背に感じながら、テオドールは真っ直ぐ前を見据える。
「本社へ帰るには、商店街と協調路線を取る店長や町長は邪魔な存在だった。そして、理性のタガが緩むにつれ、自分を田舎に縛り付けている店そのものを敵視するようになった。これで間違いはないね」
 不満は誰にでもあるだろう。
 けれど、借り物の力で、それも人を殺める事は、決して赦されない行為だ。
「理性失って派手な行動に出たん、裏目やったね。お縄、ついてもらうよ」
 射抜くような蘭の眼差し。
 自暴自棄に陥った副店長は、自身を護衛していたアンノウンを殴りつけた。
「殺したのは俺じゃねェってんだろ、全てコイツが殺ったんだッ!」
 アンノウンは何も答えず態勢を整えると『主』のため、再び呪剣を構え直すだけで。
「もう、その子を『剣』の呪縛から解放してあげませんか?」
 その様子を哀れと思ったのだろう、月白がぽつりと呟く。
 輝流と鑑三郎も喉元まで込み上げてきた怒りを押し殺し、詠唱兵器の切先を突きつける。
「お前の「これさえなければ」と言う思いを、その子が受けてしまっただけだろ……!」
「カースブレイド達を配下にした経緯、その件についても吐いてもらおう」
 アンノウンと副店長の間に明確な繋がりは見えない。
 けれど、大帝の剣がほぼ無差別に周りに影響を与えならば、『自分の意思』で『所有者のために』行動すると言う裏付けは、十分取れる。
「さあ、『剣』を渡して貰おう。あれは只の人が持つには危険すぎる」
 取り巻きの妖獣達を見回し、それらを倒してでも取り上げてみせると言うテオドール。
 しかし、その挑発は副店長を怯ませるどころか、癇に障ることとなる。
「その減らず口、コイツらを全て倒してから言うんだなッ!」
 ──刹那。取り巻きの妖獣達が一斉に能力者達に襲いかかる。
 が、増援や襲撃を警戒して陣形を固めていた能力者達の対応は早く、誰1人傷を負う事なく妖獣達を葬り去る。
 副店長側も襲撃されるとは予想すらしていなかったのだろう、妖獣達は据え置きの雑魚程度の実力しかない。
「油断するな、外である以上、何が何処から現れるかわからない」
 取り巻きの妖獣を全て片付けながらも周囲に漂う殺意に零が警戒の意を濃くした、
 ──その時!
「こっちだ!」
 出入口の扉が勢い良く開いて、複数のカースブレイドと共に現れたのはヤマト。
 月白1人で背面を庇いきれないだろうと判断した明来が動いた瞬間、アンノウンは副店長の手を取ると仲間に護られながら店内に逃げ込む。
「何だこれ、スーパーの中から前よりも多くのゴーストの気配を感じる」
 輝流の警告に、すかさず追い掛けようとした侑李の足が止まる。
 それは、つまり──。
「危険ではあるが、大物を釣るには飛び込むしかない、と言うことか」
 闇夜にそびえ立つ2階建ての店舗を見上げる鑑三郎に、輝流が頷く。
 この中に、きっと『大帝の剣』がある──と。

●偽ノ覇者
「ふむ、前に調査した時は、異変すらなかったがのぅ」
 鑑三郎が驚くのも無理はない、スーパー内は今は妖獣達の温床と化していて。
 スーパーの被害が酷くなかった事が幸いに、店内に潜む妖獣達はアビリティを使わなくても倒せる小物程度だったが……。
「あのね、ここに突入する前に気になったことがあるの」
 後方で敵の増援を警戒していた侑李の警告に鑑三郎も「俺もだ」と、頷く。
 自分の目に間違いはないと確信した侑李は、共に一陣の風となった仲間に告げた。
「はっきり見えなかったけれど、敵の増援がここに向かって来ているみたい」
「──!」
 その言葉に一同は息を飲む。
 合流には少々時間が掛かりそうであるが、猶予があると言える状況ではないだろう。
「俺達の『結論』が的中した結果、副店長は相当動揺しているようだな」
 この状況が良い証拠だ、と零は周囲を見回す。
 事実、妖獣の動きに統率は見られず、死角が多いバックヤードは待ち伏せや奇襲を仕掛ける格好の場所なのに、カースブレイドが潜んでいる様子や襲ってくる気配がないのだ。
「逆に、少しでも外れていたと思うと、笑えないな」
 何処かほっとしたような零とは反対に、軽い溜息を洩らす輝流。
「当初は、人の出入りが激しい仕事場に大層な物を持ち込まない程度の理性はあったのかもしれませんが」
 しかし、自分の邪魔をする何者かが現れた事、理性が失われてきた事が拍車をかける。
 走りながらも推測を積み立てて行く月白に、蘭と明来は確信を持って頷いた。
「大帝の剣を常に身近において置きたくなって、今度は護衛が手放せなくなったということやね!」
「ならば、全ての根源、ここできっちり断ち切ってやろう」

 これ以上、『剣』に翻弄される犠牲者を出さないために――!


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/04/23
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