≪†ロマノフ財団†≫黄金の埋蔵金と鋼鉄の岩妖精?


<オープニング>


「ふう……」
「優輝殿、どうなされた?」
「いや、不景気な記事ばかりでつい」
 優輝は紅葉の問い掛けに苦笑いをしつつ答えると、読んでいた新聞を折り畳む。
 ここは結社「ロマノフ財団」の休憩所。
 例の如く、財団のメンバー達はまったりとした時間を過ごしていた。
「なんか心が躍るような、楽しい事ってないのかなー」
「そうね、楽しい事……愉しい事……」
 退屈そうにソファに寝転がるシズリィと、物憂げな様子で彼女なりの楽しい事を夢想している様子の月子。
 彼らは、束の間の平穏に多少の退屈感を覚えていたのである。
「皆さん退屈されているようですね?」
 そこへやって来たのは、サーシャ・ロマノヴァ(魔女王・b49614)。
 彼女の手には、何やら怪しげな1枚の写真が有った。

「これは……炭鉱か宝石鉱山か?」
 ヒビキは写真を覗き込み、それがどこかの山に掘られた坑道ではないかと推理。
「そこ、右上の所に映りこんでるの、残留思念だよな?」
 一方カタナは、めざとく残留思念の存在を察知。
「はい。そこは北関東のとある山に、ある目的の為に掘られた横道です。聞いた事ありませんか? 江戸時代、強欲な商人が莫大な大判小判を埋めて隠した伝説を……」
「埋蔵金伝説……では、それを探すために掘られた坑道ですか」
「ご名答です」
 サーシャの言葉に、ぽんと手を打つ風香。

「つまり、残留思念処理にかこつけて、私達でその埋蔵金を頂いちゃおうって事ですねぇ?!」
 と、何故か財団に遊びに来ていた涼子。
「かこつけてと言うと聞こえが悪いんですが……」
「残留思念も放置すれば、被害者が出る可能性は有りますからね。処理の必要はあるでしょう」
「よし、じゃあ手早く処理して宝探しといくか!」
 かくて、一行は出発の準備に取りかかるのだった。

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参加者
桐生・カタナ(修羅龍眼・b04195)
星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・b15890)
彼岸花・紅葉(それでも全てを守りたい・b31310)
朔月・風香(虚月光陰・b34778)
木霊・ヒビキ(音使いの牙道忍者・b42488)
サーシャ・ロマノヴァ(魔女王・b49614)
山科・月子(ディープブラッド・b61466)
シズリィ・サイドラック(疾空無尽・b71191)
NPC:志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)




<リプレイ>

●つわものどもが……
 結社「ロマノフ財団」と、オマケ1名は、ある任務を果たすためにこの土地へやってきた。
「北関東某所。江戸時代の豪商が隠したとされる財宝を求めて、私達はこの地に降り立った……ですぅ」
 記録を残す為、ボイスレコーダーへ声を吹き込んでいるのが、オマケこと志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)。
「この地に眠ると言われている財宝――果たしてそれは何なのか」
「流石は黄金の国ジパングですね、はい」
 例えそれが何であれ、それなりに浪漫溢れる宝物となる筈。期待に胸を膨らませる山科・月子(ディープブラッド・b61466)と、ダウジング用に購入したと言う南米産の水晶を持参した、結社長のサーシャ・ロマノヴァ(魔女王・b49614)。
「昔のTV番組みたいだな」
「あぁ、こんな時代には夢が有って良い。……皆やる気満々だな」
 埋蔵金関連の雑誌や書物を読み、予習はばっちりの桐生・カタナ(修羅龍眼・b04195)。そして、その言葉に頷く星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・b15890)も、ヘルメット・ヘッドライトは勿論のこと、動きやすく多少保温性のある長袖・長ズボンのインナー、ハーネス、ブーツとフル装備だ。
「ここがその坑道で御座るか……では、程々に張り切ってトレジャーハントと参ろうか」
 暫く山道を歩き、立ち入り禁止のフェンスを退けながら歩いて辿り着いたのは、坑道の入り口。ぽっかりと漆黒の口を開けている。
 彼岸花・紅葉(それでも全てを守りたい・b31310)はヘッドライトと、腰につけた大きめのライトを点灯し、早速足を踏み入れる。
「というわけで、さっそくダウジングですよー」
 坑道に入るなり、ダウジングロッドを使い始めるシズリィ・サイドラック(疾空無尽・b71191)。
「お宝も良いけどよ、まずはゴーストを撃ち砕こうぜっ、誰かの大切な人たちが傷つくのは嫌だからなっ!」
 と、宝探し一色に染まりそうなメンバーを呼び戻すのは木霊・ヒビキ(音使いの牙道忍者・b42488)。
 彼も大きなツルハシを背負ってはいるが……。
「……も、勿論残留思念への対処も全力でやりますよ?」
 慌てて体面を取り繕う朔月・風香(虚月光陰・b34778)も、荷物は埋蔵金伝説に関する資料ばかりだ。
 やや先行きが不安ではあるが、そんな一行は坑道を更に奥へと進んで行く。

●超巨大立体迷宮
「ふふ、なかなか雰囲気があるじゃないの」
 薄暗い坑道を、自分達のライト頼みに進んでいく一行。
 月子は相変らず楽しそうだが、前も後ろも真っ暗で、もしかしたら二度と地上に出られないのではないかと言う気さえしてくる。
「また行き止まりでござるか……」
「なんかさっき通った道に似てないか?」
 溜息混じりに、上下左右を見回す紅葉と優輝。
 坑道の中は大いに入り組んでいて、しかも似たような道ばかりが続いている為、一行が完全に方向感覚を失うまでにそう時間はかからなかった。
「……マッピングって誰がしてます?」
 ふと、風香の発言に顔を見合わせる一同。
「安心しな、俺が迷わないように標識を立ててるぜ」
「「おおっ」」
 シズリィのファインプレーにより、最悪でも地上に帰れないと言う事態は避けられそうだ。
 勇気を得た一行は、更に奥へと進んでいく。
「おっ、反応あり……また空き缶か」
 ダウジングは度々反応を示すが、いざ調べてみるとがらくたばかり。優輝の今回の反応も、結局は古いスチール缶だった。
「そのダウンジングって言うの、本当に効果あるのか?」
「サーシャちゃん、機材は用意できなかったの?」
 古典的なダウジング探索に、やや懐疑的なヒビキ。それを受けて、月子がズバリ尋ねる。
「えぇと……義妹のサンドラさんから頂いた予算が足りませんでした」
 と、ニッコリ笑顔で答えるサーシャ。
「ロマノフ財団って言うくらいだから、金属探知機とかドラゴンレーダーみたいのが絶対有ると思ったのにぃ」
 早くも歩き疲れたのか、ツルハシを杖代わりによろよろ歩く涼子。
 だが、埋蔵金が埋められた時代には当然ハイテク機材は無い。故に、財宝は人の力で必ず見付けられる筈だとサーシャは確信していた。
 大量のガラクタを掘り返しながら、9人は更なる深層部へと進んで行くのだった。

●鋼鉄の三重殺
「だがっ! 何か『面白い物』が出てくるまで、ダウジングすることをやめないっ!」
「サンライトイエロー・ダウジングッッ!!」
 上半身を反らせながら、必死にダウジングを続けるシズリィと涼子。
 他の7人も鵜の目鷹の目で財宝の手がかりを探しているが、一向にそれらしい物には出会えていない。
 ――ガツーン、ガツーン!
 と、行く手から聞こえる採掘音。
 まさか現在に至るまで採掘を続けて居る人間など居る筈も無い。となれば……
「えんこらせっ」
「どっこいせっ」
 詠唱銀の煌めく中に居たのは、ファンタジー作品に出て来るようなずんぐりむっくりとした初老の男性3人組。
 かなり小柄だが筋力は強いらしく、大きなツルハシ、パイルバンカーを手に洞窟を掘り続けている。その中の1人に至っては、ダイナマイトと起爆装置を手にしているではないか。
「……え? 何、お客さん? …………ごめ、素で忘れかけてたわ。本当にごめん」
「ダウジングには集中力が必要なのです。ドワーフみたいな外見の癖に邪魔をしないで下さい」
 と、一方財団の面々はと言えば、せっかくの登場に対しても散々な物言い。
 完全にお宝メインになっている様だ。
「死んでからも一攫千金を狙うとは、山師の鑑? だぜっ」
 そんな中、ヒビキだけが彼らの執念に敬意を表する。
 残留思念を残す程強欲だと言ってしまえば、それまでだが……。
「あぁ? お前らなにもんだ!」
「さては、俺達の財宝を横取りに来たんだな!?」
「やっちまえ! トリプラーを掛ける!」
 彼らは目に付いた生者に対し、早速襲いかかってくる。体型に似ず、動きは割と俊敏だ。
「まさに山の男って感じ。夢は引き継いであげるわ」
 不敵な笑みを浮かべる月子。
 黒燐蟲達がその呪髪に宿ってざわりと揺れる。
「無茶すると、発掘楽しめそうにないな……なら、今回は堅実に」
 シズリィにとってのメインはやはり宝探し。ここでゴースト相手にリスクを負うワケにはいかないと、隙の無い戦闘態勢を取る。
「お宝は俺達のモノだぜっ」
 相手を評価しながらも、やはりお宝を譲る気は無いヒビキ。心を無にし、深呼吸をする事で肉体を一層強化する。
「少しは開けている場所なのが救いか」
 優輝の魔導書【武神】のページが捲れ、青白い魔方陣が形成される。
「どぉぉぉりゃぁぁ!」
 ツルハシを持った男が飛び掛かるのは、カンテラを手にした風香。
 ――ガッ!
 ツルハシが最上段に振り上げられるのと、風香のRavenが男の気脈を破壊したのはほぼ同時だった。
「自慢の連携とやらも…石となっては発揮出来ないでしょう?」
「な、にぃっ……!?」
 気の流れを止められた男の身体は、石のように硬直し身動きが封じられる。
「良くも兄弟をぉぉ!」
 パイルバンカーを手に、突貫を仕掛ける男。
 ――ザシュッ。
「ぐううっ!?」
「もう、人が一生懸命に探しているのに邪魔をするとは不届きな」
 だが、これも能力者達の前には無駄な攻撃でしか無かった。サーシャの式絶・神隠シに凝縮された怨みの念は、凄まじい破壊力を帯びた一撃となってゴーストを突く。
「発破ぁぁっ!」
 ダイナマイトを手にした男は、そのうち一本に火をつけると能力者目掛けて投げつける。
 ――ドンッ!
「つっ……これでも食らうといいぜッ!」
「見切れるか!」
 爆破の土埃も晴れきらない内に、カタナの千首斬魄が炎を帯びて周囲を紅蓮に染める。これに呼応し、坑道の横壁を蹴って一気に間合いを詰める紅葉。
 ――ゴォッ!!
「ぬわあぁぁーっ!」
 たちまち激しい炎が男を包み、鋭い弧状の蹴りがこれを追撃。
 さすがに海千山千のロマノフ財団は強く、残留思念程度のゴーストに遅れを取る事は無い。
 ただ、頑丈だけが取り柄のゴーストらは未だに現世にしがみつく事をやめていない。
「良い連携ね」
「あぁ、こっちも連携で負ける訳にはいかないな。月子、木霊、行くぞ!」
「任せておけ! 獣の咆哮、喰らいやがれっ!」
 ヒビキの放った衝撃波が3体のゴーストを貫いた直後、詠唱停止プログラムを宿した優輝の拳がダイナマイト男の顔面を打ち据える。
 更には、動きを奪われたままの男目掛けて月子の回転突撃が炸裂。
「「ぐわあぁぁぁっ!」」
 圧倒的な能力者たちの波状攻撃の前に、さしものゴースト達も燐光を散らしながら掻き消えて行く。
「これで終わりです」
 ――ズンッ!
「がっ――」
 風香のナイフが浄銭を纏って剣と化し、最後の一体の心臓を貫く。
「――紫電、一閃!」
 断末魔の声を上げ掛けた地縛霊だったが、紅葉の心剣名残之刃が閃き、その声さえも永遠に封じたのだった。

●遥かなる宝
「勘で探していたらさっきの人の二の舞ですよ」
「男には……無理だと分かっていてもやらなければならない時がある」
 ――ガッ! ガッ!
「大分掘り進んだな」
 月子の忠言も物ともせず、持ち前の体力と根性で採掘を続けるカタナ。優輝は掘り出した土を運び出す。
 ダウジングは余り当てにせず、最初から己の勘が頼りだ。
「……ん?」
「どうかしたの?」
「いや……恐らく気のせいでござる」
 何か違和感の様なものを感じ取って紅葉は一瞬手を止めるが、すぐに月子が指示した場所の採掘を再開する。
「この辺り……怪しいですね。慎重に掘り進めてみてくれませんか?」
「おう、任せておきなっ」
 こちらは、古文書や伝説等を手がかりに独自の予測を展開する風香と、それに応えてツルハシを振るうヒビキ。
「涼子さんは埋蔵金を見付けたら何に使いますか?」
「そうですねぇ……南太平洋の島をひとつ買い取って、私の王国を作ろうと思いますぅ。そこで一生を面白おかしく暮らすんですぅ! 財団の皆さんも国賓としてお招きしますよぅ」
 サーシャの質問に、早くもその気の涼子。
「……この荒れ具合だと、その前に崩れたりしてなーあっはっは!」
「そんなまさか……」
 2人の会話を聞き、シズリィは縁起でも無いことを口にしつつスコップを振るう。
 この時点の彼らは、後に起こる悲劇の事など知る由も無かったわけで……。

「皆さん、そろそろ帰りませんか?」
「何言ってるですか朔月さん、まだまだこれからですぅ! リョウコアイランドの夢は始まったばかりですぅ!」
「私の除霊建築士としての勘が……い、いえ。やっぱり何でもないです」
 風香は何か胸騒ぎを感じている様子だが、金に目がくらんだ涼子は聞く耳を持たない。
 確信があるわけではないので、風香もそれ以上進言する事は無く、そっとその場を後にする。
「よし、そろそろ俺が最終兵器を出すぜっ」
 ――ジャーン!!
 中々宝を見つけることが出来ない状況を打開する為、ギターを弾きだすヒビキ。
 彼が言うには、音の反響によって宝を見つける……ということらしい。眉唾ものだが――
「そこにお宝が眠っているぜっ!」
「ほんとかよ……」
 ――ガツッ。
 半信半疑でその場所を掘ってみると、カタナのツルハシが何か硬いものにぶち当たる。
「フッ……ついに見つけちまったか」
「……財宝か?」
 カタナの様子に気づき、優輝は作業を止めて駆け寄る。
 そこに有ったのは……
「これはきっと何とかサウルスの化石に違いねー!」
 確かに、巨大な動物の化石らしき何かの一部が覗いている。
「それもそれなりのお金にはなる……んですよねぇ?」
 カタナ以外はどれくらい喜んで良いか解らず顔を見合わせているが、恐竜の化石ならそれなりに価値はありそうだ。
 ――ゴゴゴ……。
「これ、何の音?」
 低い音、そしてパラパラと天井から落ちてくる小石に気づく月子。
「まさか……え? ほ、崩落? ……に、逃げるぜっ!」
「化石はどうするですかぁ?!」
「死んだら元も子も無いぞ!」
 一斉に出口求めて走り出す面々。
「こっちでござる!」
「急げ!」
 シズリィの道標を頼りに、曲がりくねった坑道をひた走るが、ちらりと振り返れば、崩落が後から追いかけてくる。

●夢のあと
「はぁ……はぁ……」
「皆さん、無事ですか?」
 何とか坑道を脱した8人が後ろを振り返ると、道は完全に塞がっていた。
「俺の化石が……」
「そう言えば……逃げる最中に千両箱の様な物を見掛けませんでしたか?」
「財宝が……」
 疲労感に思わず崩れ落ちる面々。
「まあいいじゃねーか。皆で都市伝説に挑んだ時間――プライスレス。……何てな」
「そうですね、来て良かったです」
 前向きなカタナと風香の言葉に、皆も顔を上げて頷く。
 元より、宝を見つける事より皆で宝探し気分を楽しむ事が最大の目的だったのだから。

 かくして、ロマノフ財団の8人は凱旋の途についたのだった。
「重機を持ってこいですぅ! 一生掛けても宝を掘り出してやるですぅ!」
 1人を除いて。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/05/12
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